台風の停電対策は、「停電する前にやる備え」と「停電してから乗り切る行動」の2段構えで考えるのが基本です。電源(モバイルバッテリー・ポータブル電源)を確保し、冷蔵庫は開けず、停電に伴う断水(給水ポンプ停止)にも水で備える――この3つを押さえれば、数日間の停電はぐっと乗り切りやすくなります。
台風による停電は、強風で電線に飛来物が当たったり、電柱や倒木で配電設備が損傷して起こります。復旧まで数時間で済むこともあれば、被害が大きいと数日以上かかることもあります。この記事では、停電前の備えから、停電中の冷蔵庫・照明・情報収集、見落としがちな停電に伴う断水、そして復旧時の通電火災まで、まとめて整理します。
まず最優先の3つだけ覚えてください。
- 電源を確保する(スマホ用にモバイルバッテリー、家電用にポータブル電源/容量目安は後述)
- 水をためる(飲料水に加え、停電→断水に備えた生活用水・トイレ用)
- 冷蔵庫は開けない・カセットコンロを用意する(食と熱源の確保)
台風が近づいたら何をするかの全体像は台風が近づいたらやることチェックリスト、台風対策の総まとめは台風対策の完全ガイドもあわせてご覧ください。
停電する前にやる備え(台風接近時)#
風雨が強まる前の「動けるうち」に、電源・水・熱源・情報の4つを整えます。
| 備え | 具体的にやること |
|---|---|
| 電源 | モバイルバッテリーを満充電/ポータブル電源を充電/スマホ・PCもフル充電 |
| 水 | 飲料水(1人1日3L)を確保/浴槽・ポリタンクに生活用水をためる |
| 熱源・食 | カセットコンロとボンベを用意/冷蔵庫を強冷にして保冷剤を凍らせる |
| 情報・明かり | 懐中電灯・ランタン・乾電池を手元に/電池式ラジオ/ブレーカー位置の確認 |
| その他 | 現金(停電でキャッシュレスが使えないことがある)/車のガソリン補給 |
ポイントは、充電が必要な物はすべて停電前に満タンにしておくことです。停電してからでは充電できません。冷蔵庫は事前に強冷にし、保冷剤や凍らせたペットボトルを入れておくと、停電後の保冷時間を延ばせます。
飲料水や備蓄品の中身は揃えておきたい防災・備蓄グッズ、屋外の片付けは台風のベランダ対策で詳しく解説しています。
電源の選び方(モバイルバッテリー・ポータブル電源・容量目安)#
停電対策の電源は、「スマホを充電したい」のか「家電を動かしたい」のかで選ぶ機器が変わります。
モバイルバッテリー|まずはこれを満充電に#
スマホでの情報収集・安否確認を維持するための最優先アイテムです。
- 容量の目安は20,000mAh前後。これでスマホ(一般的に約3,000mAh)を数回フル充電できます。家族の人数分あると安心です。(エレコム)
- 大規模停電は復旧に時間がかかることがあり、東日本大震災では停電の90%以上が復旧するまで約8日間を要しました。スマホやラジオを数日〜1週間使える分のバッテリーを見込んでおくと安心です。(EcoFlow Japan)
ポータブル電源|家電も動かしたいなら#
冷蔵庫・扇風機・電気毛布・照明など、コンセント家電を動かしたい場合の選択肢です。容量は**Wh(ワットアワー)**で表されます。
容量の目安は使いたい家電によって変わります。おおよその目安は次のとおりです。
| 容量の目安 | できることの例 |
|---|---|
| 〜500Wh | スマホ・タブレットの複数回充電、LED照明、扇風機を数時間 |
| 1,000Wh前後 | スマホ約50回充電(実効容量で換算)、小型冷蔵庫を一晩程度 |
| 1,500Wh以上 | 上記に加え、消費電力の大きい家電(電子レンジ等)も短時間なら |
- スマホ1回の充電は約15Wh。容量1,000Wh(実効約800Wh)なら約50回が目安です。(バッテリズム)
- 家庭用冷蔵庫の消費電力は約200W程度。稼働時間(h)は「容量Wh × 0.8 ÷ 消費電力W」でおおよそ計算でき、500Whなら冷蔵庫を約3時間動かせる計算です。(Anker Japan)
ポータブル電源にソーラーパネルを組み合わせると、停電が長引いても日中に充電できます。資源エネルギー庁も、家庭用蓄電池や太陽光を停電時の備えとして紹介しています。(資源エネルギー庁)
安全上の注意|リチウムイオン電池の発火#
モバイルバッテリーやポータブル電源の多くはリチウムイオン電池を使っており、取り扱いを誤ると発火することがあります。NITE(製品評価技術基盤機構)によると、2020〜2024年に報告されたリチウムイオン電池搭載製品の事故約1,860件のうち約85%が火災で、製品別ではモバイルバッテリーが最多でした。(消費者庁)
- PSEマークの付いた製品を選び、極端に安価な製品は避ける
- 強い衝撃・圧力を加えない、膨張したら使用をやめる
- 高温になる場所(車内・直射日光下)で使用・保管しない
- 充電は目の届く安全な場所で行う
停電中の過ごし方(冷蔵庫・照明・情報)#
停電したら、慌てずに「食品を守る・安全に明かりを確保する・情報を取り続ける」の3点を意識します。
冷蔵庫|とにかく「開けない」#
停電中の冷蔵庫は、できるだけ開け閉めしないのが鉄則です。ドアを閉めたままなら、冷蔵室でおおよそ2〜3時間は冷気が保たれるとされています(設置場所・季節・中身の量で変動)。(Panasonic)
- 事前に強冷にし、保冷剤や凍らせたペットボトルを入れておくと長持ちする
- 冷凍庫は、扉を閉じたままなら半分の量で約24時間・満杯なら約48時間ほど低温を保てる(冷凍品が冷蔵品の保冷剤代わりになる。設置環境で変動)
- 停電が長引くときは、傷みやすい食品から先に消費する
- 復旧後は、変色・異臭・ぬめりがある食品は食べずに処分する
照明|ろうそくより電池式・電源式を#
- 懐中電灯・LEDランタン・乾電池を手元に。停電直後に探さなくて済むよう、定位置を決めておく
- ろうそくは火災の危険があるため、強風・余震のある災害時は避け、電池式・充電式の明かりを使う
- ペットボトルに水を入れて懐中電灯の上に置くと、光が拡散してランタン代わりになる
情報収集|スマホの電池を節約しながら#
- スマホは省電力モードにし、画面を暗くして電池を節約する
- 電池式・手回しラジオで気象・避難情報を確保(スマホの電池消費を抑えられる)
- 停電の状況や復旧見込みは電力会社の停電情報で確認する
- 台風の進路は台風の進路予想の見方を参考に確認する
停電に伴う断水への備え(見落としがち)#
意外と知られていないのが、停電すると断水することがあるという点です。とくにマンションや中高層の建物で起こりやすく、台風の停電対策では必ず押さえておきたいポイントです。
なぜ停電で断水するのか(給水ポンプの停止)#
マンションなどの多くは、ポンプを使って各戸へ水を送っています。停電でポンプが止まると、水道本管に水があっても各戸に届かなくなり、断水します。守口市の案内でも「停電でポンプが停止すると断水になります」と明記されています。(守口市)
給水方式によって影響は異なります。
| 給水方式 | 停電時の挙動 |
|---|---|
| 高架水槽方式 | 屋上タンクから重力で給水するため、タンクに残った分はしばらく出ることがある |
| 受水槽+加圧ポンプ方式 | ポンプ停止で各戸への給水が止まりやすい |
| 直結増圧方式 | 増圧ポンプ停止で、とくに上階で水が出にくくなる |
大阪市水道局も、停電によるビル・マンション等の断水に備えるよう呼びかけています。(大阪市水道局) 自分の住まいの給水方式は、管理会社や管理規約で確認しておきましょう。
断水に備えて水をためておく#
停電前に水をためておけば、断水しても当面の生活用水をまかなえます。
- 浴槽に水をためる(トイレを流す・手を洗うなどの生活用水に。※小さなお子さんがいる家庭は溺水防止のため浴室を施錠する)
- ポリタンクやペットボトルに飲料用とは別に生活用水を確保する
- 飲料水は別途、1人1日3Lを目安に最低3日分(できれば1週間分)
トイレは、停電・断水時はバケツの水で流せる場合があります(建物の配管による)。汚水の逆流を避けるため、集合住宅では管理会社の案内に従ってください。
復旧時の通電火災に注意(ブレーカー)#
停電が「復旧したとき」にも危険があります。それが通電火災です。
通電火災とは、停電中に倒れた電気ストーブや破損した配線などに、復旧で電気が流れて発火する火災です。とくに地震を伴う場合に多く、避難で留守の間に出火すると気づくのが遅れて被害が拡大します。
- 長時間の停電中・避難で家を空けるときは、分電盤のブレーカーを落とす
- 復旧後は、電気ストーブ・ヒーターなどのスイッチが切れているか確認してからブレーカーを戻す
- コンセントやコードに、水濡れ・損傷・焦げがないか点検する
- 異臭・発熱・煙を感じたら使用を中止する
経済産業省や政府広報も、地震後の停電復旧に備えて電気を自動で遮断する感震ブレーカーの設置を勧めています。(政府広報オンライン) 仕組みや選び方は、地震対策の通電火災を防ぐ・感震ブレーカーの選び方でも解説しています(台風でも復旧時の通電火災の考え方は共通です)。
よくある質問(FAQ)#
Q. 台風の停電対策、最低限これだけは? A. ①スマホ用のモバイルバッテリー(20,000mAh前後)を満充電、②飲料水と浴槽のため水、③カセットコンロと懐中電灯――この3点を停電前に用意してください。冷蔵庫は事前に強冷にしておきます。
Q. ポータブル電源とモバイルバッテリーはどちらを買うべき? A. まずスマホを守るモバイルバッテリーが必須。そのうえで冷蔵庫・扇風機・電気毛布など家電を動かしたいならポータブル電源を追加します。容量の目安はスマホ中心なら20,000mAh前後、家電も使うなら1,000Wh前後が一つの基準です。
Q. 停電したら冷蔵庫の食品はどうすればいい? A. 開け閉めを最小限にするのが鉄則。ドアを閉めたままなら冷蔵室は2〜3時間ほど冷気を保ちます。事前に強冷・保冷剤の準備をし、長引くときは傷みやすい物から消費しましょう。(Panasonic)
Q. なぜ停電すると断水することがある? A. マンションなどはポンプで各戸へ水を送っているため、停電でポンプが止まると断水します。だから停電前の「ため水」が効きます。自分の住まいの給水方式を事前に確認しておきましょう。(守口市)
Q. カセットボンベは何本くらい必要? A. 一般的な目安は1人1週間で約6本とされています(気温が低いと多めに必要)。在宅避難を想定し、家族の人数・日数に合わせて備蓄してください。(岩谷産業 / 東京ガス)
Q. 停電が復旧したら、すぐ家電を使っていい? A. いきなり通電すると通電火災の恐れがあります。電気ストーブ等のスイッチが切れているか、コードに損傷や水濡れがないかを確認してから使ってください。避難で家を空ける際はブレーカーを落としましょう。(政府広報オンライン)
この記事の関連ページ#
出典・参考(公的機関・信頼ソース)#
- 政府広報オンライン「感震ブレーカー 地震発生時に電気を自動的に遮断」 https://www.gov-online.go.jp/article/202602/entry-11030.html
- 経済産業省「感震ブレーカーの普及啓発」 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/10/270105-1.html
- 資源エネルギー庁「『蓄電池』は次世代エネルギーシステムの鍵」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chikudenchi.html
- 消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_083/
- NITE(製品評価技術基盤機構)「リチウムイオン電池搭載製品の火災事故を防ぐ」 https://www.nite.go.jp/data/000158238.pdf
- 大阪市水道局「停電によるビル・マンション等の断水に備えましょう」 https://www.city.osaka.lg.jp/suido/page/0000515637.html
- 守口市「停電の影響によるマンション等での断水について」 https://www.city.moriguchi.osaka.jp/material/files/group/57/teiden.pdf
- 岩谷産業「カセットボンベの備蓄目安」 https://www.iwatani.co.jp/jpn/consumer/products/cg/useful/stockpile/
- 東京ガス「4人家族が1週間の食事に必要なカセットボンベは約5本」 https://www.tokyo-gas.co.jp/news/topics/20220202-02.html
- Panasonic「停電で冷蔵庫は何時間もつ?」 https://panasonic.jp/life/safety/130010.html
- Anker Japan「ポータブル電源で冷蔵庫は何時間動かせる?」 https://www.ankerjapan.com/blogs/magazine/power-refrigerator
- バッテリズム「ポータブル電源の容量Whの目安」 https://battery-ism.com/capacity/
- エレコム「災害に備えたモバイルバッテリーの選び方」 https://www.elecom.co.jp/pickup/mobile_battery/basic07.html
- EcoFlow Japan「非常用電源は停電・防災の備えに必須」 https://jp.ecoflow.com/pages/portable-power-station-disaster
