2023年の台風13号で、筆者の実家がある千葉県で大規模な停電と浸水が発生しました。幸い実家は被害を免れましたが、500m先の地域では床上浸水。事前の備えがあるかないかで、被害の明暗がハッキリ分かれた出来事でした。
台風は地震と違い、事前に「いつ来るか」がわかる災害です。つまり、備える時間がある。
台風が来る前にやるべき備え【時系列チェックリスト】#
台風シーズン前(6月まで)にやること#
台風シーズンは例年7月から10月。6月中に以下の準備を済ませておくのが理想です。
住まいの点検
- 雨戸・シャッターの動作確認(サビや建付けの問題がないか)
- 窓ガラスのひび割れチェック
- 屋根瓦やトタンのズレ・浮きの確認
- 排水溝・雨どいの清掃(落ち葉や泥の除去)
- ベランダの排水口の確認
- 外壁のひび割れ補修
備蓄品の確認
- 保存食・保存水の期限チェック
- 懐中電灯・ラジオの電池確認
- モバイルバッテリーの充電状態
- ポータブル電源の動作確認
- カセットコンロのボンベ残量
情報の確認
- ハザードマップで自宅の浸水リスクを確認
- 最寄りの避難場所と避難ルートの確認
- 家族の緊急連絡先と集合場所の確認
- 火災保険の風水害補償内容の確認
私はこのチェックリストをスマホのリマインダーに入れて、毎年6月1日に通知が来るようにしています。年に一度の作業ですが、これが被害を最小限に抑える最大の対策です。
台風接近3日前の準備#
気象庁の台風情報で接近が予想されたら、3日前から具体的な準備に入ります。
屋外の対策
- ベランダの物干し竿を室内に収納
- 植木鉢・プランターを室内に移動
- 自転車をロープで固定 or 倒しておく
- ゴミ箱を室内に入れる
- カーポートの補強確認
屋内の対策
- 浴槽に水をためる(生活用水として)
- スマホ・モバイルバッテリーをフル充電
- 車のガソリンを満タンに
- 現金を多めに引き出しておく(停電するとATMが使えない)
- 窓ガラスの飛散防止対策(後述)
食料・日用品
- パン・レトルト食品など、調理不要の食料を確保
- 水のペットボトルを追加購入
- カセットコンロ用ボンベの追加
3日前はまだスーパーやホームセンターに在庫があります。台風当日に買い出しに行くのは危険だし、売り切れている可能性も高い。早めの行動が肝心です。
台風接近当日の最終確認#
台風が最接近する数時間前に、最終チェックを行います。
- 全ての窓と雨戸を閉めてロックする
- カーテンを閉める(ガラスが割れた場合の飛散防止)
- 停電に備えて懐中電灯を手の届く場所に
- 風呂の残り湯をためておく(トイレの水用)
- テレビやラジオで最新の台風情報を確認
- 避難する場合は、早めに行動(暗くなってからの避難は危険)
当日になって慌てる人を何度も見てきましたが、3日前の準備がしっかりできていれば、当日はこの最終チェックだけで済みます。
台風から家を守る対策#
窓ガラスの飛散防止対策#
台風で窓ガラスが割れる原因の多くは「飛来物」です。風速30m/s以上になると、小さな石や枝が凶器になります。
効果の高い順に紹介します:
- 雨戸・シャッターの設置: 最も確実。後付けも可能で、費用は1窓あたり5〜15万円
- 飛散防止フィルム: ガラスが割れても破片の飛散を防ぐ。費用は1枚1,000〜3,000円
- 段ボール+養生テープ: 応急処置。ガラスの内側に段ボールを貼る
- 養生テープ: 飛散防止にはなるが、割れ自体は防げない
養生テープを「米」字型に貼る方法はSNSで広まりましたが、これは「割れた後の飛散をやや軽減する」程度の効果しかありません。過信は禁物です。
詳しい対策方法は「台風の窓ガラス対策|養生テープは効果ある?」で解説しています。
ベランダ・庭の飛散物対策#
台風で最も危険なのは「飛来物」。そしてその飛来物の多くは、誰かのベランダから飛んできたものです。
物干し竿は風速20m/sで飛ばされる可能性があります。竿受けに置いてあるだけでは固定されていないのと同じ。必ず室内に取り込んでください。
植木鉢も同様。重さがあるから大丈夫と思いがちですが、風速30m/sの風は想像以上の力を持っています。
飛散物が隣の家や車にぶつかった場合、損害賠償責任が発生することもあります。台風が来るとわかっていて対策を怠った場合は過失が認められるケースもあるので、ベランダの片付けは義務だと思って取り組んでください。
詳しくは「台風のベランダ対策|物干し竿・植木鉢はどうする?」をご覧ください。
雨戸・シャッターの点検#
雨戸やシャッターは台風対策の要ですが、普段使っていないと、いざという時に動かないことがあります。
- レールにゴミや砂が溜まっていないか
- サビで固着していないか
- ロック機構が正常に機能するか
- パッキンが劣化していないか
筆者の実家では、10年以上動かしていなかった雨戸が台風直前にサビで動かず、急遽CRC556をスプレーして何とか閉められたことがあります。普段から年1回は動作確認することをおすすめします。
排水溝・側溝の清掃#
大雨による浸水被害の原因として意外と多いのが、排水溝の詰まり。落ち葉やゴミで排水が追いつかず、水があふれるケースです。
- 自宅周りの側溝のフタを開けてゴミを取り除く
- ベランダの排水口を掃除する
- 雨どいの詰まりを確認する
マンションの場合はベランダの排水口が最重要。排水口がベランダの端にある場合、ここが詰まるとベランダに水が溜まり、サッシから室内に浸水する恐れがあります。
台風時の避難判断と行動#
避難すべきタイミング(警戒レベル別)#
気象庁と自治体が発表する「警戒レベル」に基づいて行動します。
| 警戒レベル | 情報名(発表主体) | 行動 |
|---|---|---|
| レベル1 | 早期注意情報(気象庁) | 災害への心構えを高める |
| レベル2 | 大雨・洪水・高潮注意報(気象庁) | 避難行動の確認(ハザードマップ等で再確認) |
| レベル3 | 高齢者等避難(市町村) | 高齢者・障害者など避難に時間を要する人は避難開始 |
| レベル4 | 避難指示(市町村) | 対象地域の全員が危険な場所から避難 |
| レベル5 | 緊急安全確保(市町村) | 命の危険・直ちに安全確保(すでに災害発生または切迫) |
※レベル1・2は気象庁が発表、レベル3〜5は市町村長が発令します。レベル5は「すでに安全な避難が困難な状況」であり、レベル4までに避難を完了しておくのが原則です。
レベル4が出たら迷わず避難。これが原則です。レベル5は「すでに災害が発生している」状態なので、避難が間に合わない場合もある。レベル4の段階で行動してください。
在宅避難の判断基準#
ハザードマップで自宅が浸水想定区域外、かつ建物が頑丈(鉄筋コンクリートなど)であれば、在宅避難が安全な場合もあります。
在宅避難が可能な条件:
- ハザードマップの浸水想定区域外
- 土砂災害警戒区域外
- マンションの2階以上
- 停電・断水に3日分の備えがある
避難所に行くべき条件:
- 浸水想定区域内にいる
- 木造住宅で強風に不安がある
- 高齢者や小さな子どもがいる
- 建物に不安がある(古い、傷んでいる)
車での移動が危険な状況#
台風時の車での避難は、状況によっては非常に危険です。
- 冠水した道路: JAFのユーザーテストでは、セダンで水深30cmを40km/hで走行するとエンジンが停止するケースが確認されている。水深が深くなるほど車体が浮いて流される恐れもあり、水深60cm程度になるとセダンは水圧でドアが開けにくくなる
- アンダーパス: 短時間で水没する可能性がある
- 強風時: 横風で車が流される。気象庁の風の階級では、平均風速20〜30m/s(非常に強い風)で走行中のトラックが横転する恐れがあるとされる
やむを得ず車で避難する場合は、冠水しやすい低地やアンダーパスを避けたルートを事前に確認しておきましょう。
詳しくは「台風で車が冠水したら?水没を防ぐ対策と脱出方法」で解説しています。
台風の種類別リスクと対策#
強風による被害と対策#
台風の最大の脅威は風。気象庁の風の強さの目安はこうなっています。
| 風速(平均) | 表現 | 被害の目安 |
|---|---|---|
| 10〜15m/s | やや強い風 | 風に向かって歩きにくくなる |
| 15〜20m/s | 強い風 | 風に向かって歩けない、転倒する人も |
| 20〜30m/s | 非常に強い風 | 看板が外れる、屋根瓦が飛ぶ、走行中のトラックが横転することも |
| 30m/s以上 | 猛烈な風 | 住家の倒壊が始まる、樹木が根こそぎ倒れる |
出典: 気象庁「風の強さと吹き方」(風の強さは「やや強い風」「強い風」「非常に強い風」「猛烈な風」の4階級)
強風対策のポイントは「飛来物を減らす」こと。自分の家から物が飛ばないようにすることは、周囲の安全を守ることでもあります。
大雨・浸水による被害と対策#
台風に伴う大雨は、河川の氾濫や内水氾濫(排水が追いつかない浸水)を引き起こします。
浸水対策のポイント:
- ハザードマップで浸水リスクを確認(最重要)
- 土のう・水のうの準備
- 家財・貴重品を2階以上に移動
- 車を高台や立体駐車場に移動
- 排水溝の清掃
浸水は「床下浸水」と「床上浸水」で被害の深刻度が大きく変わります。床上浸水になると家財のほとんどが使えなくなり、復旧に数百万円かかることも。
高潮による被害と対策#
高潮は、台風の低気圧による「吸い上げ効果」と強風による「吹き寄せ効果」で海面が異常に上昇する現象です。
沿岸部、特に湾奥や河口付近、海抜ゼロメートル地帯にお住まいの方は、高潮ハザードマップを必ず確認してください。1959年の伊勢湾台風では高潮により5,000人以上の犠牲者が出ました(気象庁「伊勢湾台風」資料より)。
高潮は台風の接近とともに急激に水位が上がるため、避難のタイミングが遅れると取り返しがつきません。
台風後にやること#
安全確認と被害チェック#
台風が通過したら、まず安全確認。
- 外出する前にテレビ・ラジオで最新情報を確認
- 切れた電線には絶対に近づかない(感電の危険)
- 冠水した道路を歩く際は、マンホールの蓋が外れている可能性に注意
- 自宅の屋根・外壁の被害を地上から確認(屋根に登るのは危険)
- ベランダの排水状況を確認
被害がある場合は写真・動画で記録を残してください。保険申請や罹災証明の取得に必要です。
罹災証明・保険申請の流れ#
台風で被害を受けた場合の手続きの流れ。
1. 被害状況の記録: 被害箇所の写真・動画を複数アングルで撮影
2. 罹災証明書の申請: 市区町村の窓口に申請。自治体の職員が現地調査を行い、被害の程度を認定。
3. 火災保険の請求: 保険会社に連絡し、被害を報告。鑑定人の調査後、保険金が支払われる。
注意: 片付けや修理は、被害状況の記録が終わってから行ってください。記録が不十分だと保険金が減額される恐れがあります。
筆者の知人は台風後にすぐ片付けを始めてしまい、被害状況の写真が不足して保険申請に苦労しました。気持ちはわかりますが、まず記録。これは鉄則です。
台風情報の読み方と便利ツール#
台風対策で重要なのは、正確な情報を早く入手すること。情報ツールを使いこなすだけで、備えの質が格段に上がります。
気象庁の台風情報 最も信頼性の高い情報源。5日先までの進路予報と暴風域の予測を発表します。予報円(台風の中心が入る確率70%の範囲)は時間が先になるほど大きくなるため、3日前の予報を鵜呑みにせず、最新の情報を常に確認してください。
防災アプリのプッシュ通知 Yahoo!防災速報やNHKニュース・防災アプリを入れておくと、台風関連の警報・注意報がリアルタイムで届きます。自宅と勤務先の2地点を登録しておくのがおすすめ。
ウェザーニュース 独自の観測網を持つ民間気象会社。台風のライブ中継や、ユーザー投稿による現地レポートが充実。気象庁の予報と比較して活用すると、より精度の高い判断ができます。
川の防災情報(国土交通省) 河川の水位をリアルタイムで確認可能。台風による大雨で河川の水位が上昇した際、「氾濫危険水位」に達しているかどうかをチェックできます。河川カメラの映像も公開。
よくある質問(FAQ)#
Q. 台風の進路予想はどこで確認する? A. 気象庁の台風情報が最も信頼性が高い。ウェザーニュースやtenki.jpも参考になります。米軍の合同台風警報センター(JTWC)の情報も併用すると、異なる予測モデルを比較できます。
Q. 台風で会社を休んでもいい? A. 公共交通機関の計画運休が発表されている場合は、会社も対応策を出すのが一般的。自治体から避難指示が出ている場合は、無理な出勤は避けてください。事前に上司や人事と対応方針を確認しておくのがベスト。
Q. マンションの高層階は台風に強い? A. 浸水リスクは低いですが、上空ほど地表の摩擦が少ないため風は高層階ほど強くなる傾向があります。ビル風や吹き上げの影響も受けやすく、窓ガラスの飛散防止対策は高層階こそ重要です。
Q. 停電はどのくらい続く? A. 台風の規模と地域によります。2019年の台風15号(令和元年房総半島台風)では千葉県で最長約2週間の停電が発生。通常は数時間〜2日程度ですが、長期化に備えてポータブル電源やカセットコンロの準備を推奨します。
Q. 台風が近づいたらお風呂の水は抜かないほうがいい? A. 抜かないでください。断水時にトイレを流す水として使えます。浴槽1杯で約200Lの水が確保でき、トイレ約25回分に相当します。



