台風シーズンが近づいたら、ベランダの点検を最優先で行ってください。
2018年の台風21号では、関西空港で最大瞬間風速58.1m/s、大阪市中央区で47.4m/sを記録する猛烈な風が吹き荒れました。大阪市港区ではマンション8階に飛来したスレート材が窓ガラスを突き破り、室内にいた人に当たって命を落とす痛ましい事故も起きています(※気象庁・報道発表より)。
私の自宅マンションでも、台風の翌朝にベランダを見たら、どこからか飛んできたプランターの破片が落ちていたことがあります。自分のベランダから物を飛ばさないことは、周囲の人の命を守ることに直結します。
なぜベランダの片付けが最重要なのか#
飛散物は凶器になる(物干し竿の危険性)#
物干し竿は台風で最も飛びやすいものの一つです。
アルミ製の物干し竿は、長さ2〜3m・重さ1〜2kg程度の軽量な製品が多く、風を受ける面積が大きいため強風の影響を受けやすい道具です。竿受けに載せてあるだけの状態では、平均風速15〜20m/s程度から飛ばされる危険性が高まると指摘されています。
気象庁の「風の強さと吹き方」では、平均風速20〜30m/sは「非常に強い風」に分類され、「何かにつかまっていないと立っていられない」「飛来物によって負傷するおそれがある」とされる強さ。台風接近時には容易に超える数値です。
「竿受けのストッパーで固定しているから大丈夫」と考える人もいますが、一般的な竿受けのストッパーは台風レベルの暴風を想定した固定強度ではありません。
損害賠償責任のリスク#
台風などの自然災害による被害は原則として「不可抗力」と評価され、法的な損害賠償責任が発生しないケースが多いとされています。ただし、物干し竿や植木鉢など動産を放置して他人に損害を与えた場合は、民法709条(不法行為)に基づき、事前対策を怠った点について「過失」が問われる可能性があります。
「台風接近が事前に報じられていたのに物干し竿を放置していた」「以前から劣化していた設備を修理せず放置していた」といった事情があると、過失が認定されるケースがあると専門家は指摘しています。
賠償責任を負うかどうかは個別事情により判断されますが、万一に備えて個人賠償責任保険(火災保険の特約等で付帯されていることが多い)の加入状況を確認しておくと安心です。何より、事前対策は他人にケガを負わせないための最大の防御策になります。
台風前にベランダでやるべきこと一覧#
物干し竿の室内収納・固定方法#
最善策: 室内に取り込む
物干し竿は室内に入れるのが最も確実。「長くて入らない」という場合は、風呂場や廊下に斜めに置く方法があります。伸縮式の物干し竿なら短くして収納可能。
次善策: 地面に下ろして固定する
室内に入れられない場合は、竿受けから下ろしてベランダの床に置き、紐やロープで手すりに固定します。竿受けに載せたままは絶対にNG。
やってはいけないこと:
- 竿受けに載せたまま紐で固定 → 竿受けごと飛ぶ可能性がある
- 「重いから大丈夫」と何もしない → 風速30m/sは想像以上の力
植木鉢・プランターの移動#
植木鉢やプランターは全て室内に取り込みます。「重いから飛ばないだろう」は危険な思い込み。
土が入った大型プランターでも、強風で転がって排水口を塞いだり、隣のベランダに転がっていくことがあります。陶器の植木鉢が割れて破片が飛散するリスクも。
室内に入れるスペースがない場合は、ベランダの壁際(風の当たりにくい場所)にまとめて寄せ、ブルーシートで包んで紐で固定する方法もあります。
エアコン室外機の確認#
エアコンの室外機は通常、架台にボルトで固定されています。しかし、長年の使用で固定が緩んでいることがある。
台風前に以下を確認してください:
- 架台のボルトが緩んでいないか
- 室外機が傾いていないか
- 周囲に飛ばされそうなカバーがないか
室外機本体が飛ばされることは稀ですが、上にかぶせている防雪・遮光カバーは飛ぶ可能性があります。カバーは外して室内に保管。
ゴミ箱・小物類の片付け#
ベランダに置いているものを全てチェックします。
- ゴミ箱 → 室内へ
- サンダル・スリッパ → 室内へ
- 掃除用具(ほうき、ちりとり) → 室内へ
- 物干しハンガー、洗濯バサミ → 室内へ
- ガーデニング用品 → 室内へ
- アウトドアチェア・テーブル → 室内へ or 折りたたんで固定
「こんな小さなものが?」と思うかもしれませんが、風速40m/sの風は小石を弾丸のように飛ばします。軽いものほど遠くまで飛んで被害を広げるのです。
マンション・アパートのベランダ対策#
高層階ほど風が強い(階数別の風速目安)#
風速は高度が上がるほど強くなります。気象庁の地上観測は高さ約10m地点の風速を指しますが、上空では地表の摩擦の影響が弱まり、同じ気象条件でも体感する風は強くなります。
一般に、市街地では高さの0.2〜0.25乗に比例して風速が増加するとされます。地表面の粗度や周囲の建物配置により変動しますが、ざっくりとした目安は以下の通りです。
| 階数(目安) | 地上からの高さ | 地上比の風速(目安) |
|---|---|---|
| 1〜3階 | 〜10m | 1.0倍 |
| 5〜7階 | 15〜20m | 1.1〜1.2倍 |
| 10〜12階 | 30〜35m | 1.3〜1.4倍 |
| 15階以上 | 45m〜 | 1.4〜1.5倍以上 |
※上記はあくまで簡易的な目安であり、立地や周辺環境で大きく変動します。
高層階に住んでいる方は、低層階以上に徹底したベランダ対策が必要です。筆者が住んでいるのは5階ですが、台風時は地上にいる時とは比べものにならない風の強さを感じます。
避難ハッチ・隔て板の確認#
マンションのベランダには、緊急時の避難経路として「避難ハッチ(下階へ降りるはしご)」や「隔て板(隣戸との仕切り板)」が設置されています。ベランダは専有部分ではなく、法令上は共用部分(専用使用権付共用部分)として扱われ、避難通路としての役割を担っています。
台風前に確認すべきこと:
- 避難ハッチの上や周囲に物を置いていないか
- 隔て板の前に物を置いていないか
- 避難ハッチのフタが開くか
避難ハッチや隔て板は消防庁告示や各自治体の火災予防条例により、避難・破壊が妨げられないよう設置・維持することが定められています。物で塞いでいると、台風だけでなく火災時の避難にも支障をきたします。日頃から障害物を置かないようにしてください。
共用部分のルール確認#
マンションによっては、台風時のベランダ対策について管理規約や細則で定めているところもあります。
- ベランダに置いてよいものの規定
- 台風時の片付け義務
- 共用廊下への荷物搬出の可否
管理組合や管理会社からの台風対策の案内があれば、必ず確認して従ってください。
台風通過後のベランダ点検#
排水溝の詰まりチェック#
台風が過ぎた後、最初にベランダの排水溝を確認してください。葉っぱやゴミが詰まっていると、次の雨でベランダに水が溜まり、室内への浸水原因になります。
排水溝のグレーチング(金網)を外して中のゴミを取り除きましょう。
被害があった場合の保険対応#
台風で飛来物によりベランダや室内が損傷した場合、補償の窓口は被害箇所によって変わります。
ベランダ本体・建物躯体・共用設備の被害: ベランダは「専用使用権付共用部分」のため、管理組合が加入しているマンション総合保険(共用部分向け火災保険)で対応するのが原則。 窓ガラス・網戸・室内および専有部分内の家財: 個人で加入している火災保険の風災補償、家財保険で対応。
※どこまでが共用部分かは各マンションの管理規約によって差があります。被害に気づいた場合は、まず管理組合・管理会社へ連絡し、そのうえで自身の火災保険会社にも相談するのが確実です。
いずれの場合も、被害状況を写真で記録してから片付けを始めてください。日付入りの写真が保険申請の根拠になります。
よくある質問(FAQ)#
Q. 物干し竿は結束バンドで固定すれば大丈夫? A. 結束バンドは一定の効果がありますが、台風級の風では切れる可能性があります。室内に取り込むのが最善。どうしてもできない場合は、竿受けから下ろしてベランダの床に置き、太い紐で複数箇所を固定してください。
Q. 台風の何時間前にベランダの片付けをすべき? A. 台風接近の24〜48時間前がベスト。直前になると風が強まって作業が危険になります。天気予報で台風の接近が予想されたら、早めに動いてください。
Q. ベランダの手すりに干している布団はどうする? A. 必ず室内に取り込んでください。布団は風を受ける面積が大きく、飛ばされやすい。飛ばされた布団が電線に絡まって停電を引き起こした事例もあります。
Q. ベランダに置いている自転車は? A. 可能なら室内へ。無理なら横に倒してロープで手すりに固定。立てたままだと風で倒れ、ベランダの壁や窓を傷つける可能性があります。



