大きな地震が起きた後、命を守れても、そこから始まるのが断水・停電のなかでの生活です。電気・水道・トイレが使えない状況は数日から数週間続くことがあり、ここでの過ごし方が体調や安全を大きく左右します。
この記事では「地震 後 生活」をどう乗り切るかを、直後の安全確認 → 断水対策(水・トイレ) → 停電対策 → 在宅避難のコツ → 避難所での健康管理 → 支援制度の入口の順で整理します。
最初に結論として、地震後の生活で優先すべきは次の3つです。
- トイレを最優先で確保する(携帯トイレは1人1日5回×最低3日=1人15回分以上、できれば1週間分)
- 水は飲料用と生活用水を分けて確保する(飲料水は1人1日3L)
- 復旧時の通電火災に備える(避難で家を離れるときはブレーカーを落とす)
家庭での備え全体は家庭の地震対策ガイドもあわせてご覧ください。
地震直後の安全確認|まずこれをチェック#
揺れが収まったら、避難や生活の前に身の安全と二次災害の有無を確認します。あわてて動くとガラスの破片や転倒した家具でケガをしやすいので、順番を決めて落ち着いて進めましょう。
- 自分と家族のケガを確認(足元のガラス・割れ物に注意。スリッパや靴を履く)
- 火元の確認(揺れの最中は近づかない。収まってからガス・コンロを止める)
- ガスのにおい・異音を確認(においがあれば火気厳禁、窓を開けて換気、ガス栓を閉める)
- 建物の傾き・亀裂・ドアの変形を確認(危険なら無理に屋内にとどまらない)
- 正しい情報の入手(テレビ・ラジオ・自治体の防災アプリ。SNSのデマに注意)
在宅避難か、避難所かを判断する#
自宅が倒壊・延焼・浸水の危険がなく、安全が確認できれば、自宅で避難生活を送る「在宅避難」が選択肢になります。在宅避難はプライバシーが保てて感染症リスクも下げられる一方、ライフラインが止まった自宅で生活する備えが必要です。一方、建物に危険がある・余震が不安・火災が迫っているといった場合は、ためらわず指定避難所へ避難してください。
注意: 「家が無事なら必ず在宅避難」ではありません。津波・土砂災害・大規模火災の危険がある地域では、建物が無事でも避難が最優先です。自分の地域のリスクはハザードマップで平時に確認しておきましょう。地域ごとの想定は自分の地域の地震リスクを知るも参考になります。
断水を乗り切る|水とトイレの確保#
地震後の生活で最も困るのが水とトイレです。上下水道の復旧には時間がかかり、内閣府の被害想定では上水道の復旧目標が約30日とされるケースもあります。「すぐ復旧する」と考えず、まず手元の水とトイレを確保しましょう。
飲料水と生活用水を分けて考える#
水は用途で必要量が大きく異なります。飲料・調理用と、トイレや手洗いなどの生活用水を分けて確保するのがポイントです。
| 用途 | 1人あたりの目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 飲料・調理用水 | 1日3L | 最低3日(9L)、できれば1週間分(21L)。ペットボトルでローリングストック |
| 生活用水 | 1日10〜15L程度 | トイレ・手洗い・食器洗い等。風呂の残り湯、給水車、雨水などで補う |
断水時の水の確保方法は次のとおりです。
- 備蓄したペットボトルの水を飲料・調理に使う(賞味期限を切らさずローリングストック)
- 給水車・給水拠点を自治体の情報で確認し、清潔なポリタンクで受け取る
- 風呂の残り湯は生活用水(トイレを流す等)に活用する
注意: 浴槽に水をためておく「ため水」は生活用水として有効ですが、乳幼児の溺水事故につながる危険があります。小さな子どもがいる家庭ではフタをし、浴室のドアを施錠するなどの対策を必ず行ってください。また、ため水は雑菌が繁殖するため飲用には使わないでください。
トイレは「水・食料より先に」必要になる#
見落とされがちですが、トイレは断水後すぐに問題になります。排泄は我慢できず、断水で水が流せないと、便器に汚物がたまり衛生環境が一気に悪化します。マンションでは下水管の損傷を確認せずに流すと階下に逆流する恐れもあるため、地震後は安易に水を流さず、携帯トイレ・簡易トイレを使うのが基本です。
携帯トイレの必要数は、内閣府や経済産業省が示す1人1日5回を基準に計算します。
- 計算式: 5回 × 家族の人数 × 日数
- 例(4人家族・7日分): 5 × 4 × 7 = 140回分
- 最低ライン: 1人15回分(3日分)。できれば1人35回分(1週間分)
経済産業省も「1人あたり35回分(7日分)」の備蓄を推奨しています。携帯トイレは凝固剤と汚物袋がセットになったタイプが扱いやすく、トイレットペーパー・消臭袋・除菌シート・使い捨て手袋もあわせて備えておきましょう。備蓄品の全体像は揃えておきたい備蓄品も参考にしてください。
停電を乗り切る|明かり・情報・暑さ寒さ対策#
停電すると、照明だけでなく情報・調理・冷暖房・冷蔵庫まで一度に止まります。地震では停電が広範囲・長期になりやすいため、電気に頼らない手段を用意しておきましょう。台風など他の災害でも共通する対策は停電への備えも参考になります。
| 困りごと | 対策 |
|---|---|
| 明かり | LEDランタン・懐中電灯・ヘッドライト。ろうそくは地震後の余震で転倒・火災の危険があり避ける |
| 情報 | 乾電池・手回し充電ラジオ、スマホ+モバイルバッテリー(大容量を複数) |
| 調理・湯沸かし | カセットコンロとカセットボンベ(多めに備蓄)。換気を忘れずに |
| 冷蔵・食料 | 停電直後は開閉を最小限に。傷みやすいものから消費。クーラーボックス+保冷剤 |
| 暑さ・寒さ | 夏は手持ち扇風機・濡れタオル・経口補水。冬は毛布・カイロ・重ね着で電気を使わない保温 |
復旧時の「通電火災」に注意#
停電からの**電気復旧時に起きる火災(通電火災)**は、地震後の重大なリスクです。地震で破損・転倒した電気機器や傷ついた配線に、復旧で再び電気が流れて発火します。1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災でも、原因が特定された火災の多くが電気関係でした。
防ぐためのポイントは次の2つです。
- 避難で家を離れるときは、必ずブレーカーを落とす(不在中の通電火災を防ぐ)
- 電気が復旧したら、いきなり全部のスイッチを入れない。ガス漏れがないことと電気製品の安全を確認してから、一つずつ通電する。焦げくさいにおいがしたら直ちにブレーカーを遮断する
不在時や、ブレーカーを切る余裕がない場合に自動で電気を止める感震ブレーカーの設置も有効です。通電火災の詳しい仕組みと対策は地震後の通電火災を防ぐで解説しています。
在宅避難を快適に続けるコツ#
在宅避難は、住み慣れた環境でストレスを抑えられるのが利点ですが、自分で生活を回す必要があります。続けやすくするコツを押さえましょう。
- 生活スペースを安全な部屋に集約する(落下物・破損ガラスのない部屋を拠点に)
- 食事はローリングストックで回す(常温保存食・カセットコンロ・紙皿+ラップで洗い物を減らす)
- ゴミの管理(汚物・生ゴミは消臭袋で密閉。収集再開まで保管場所を決めておく)
- 衛生を保つ(手指消毒、ウェットティッシュ、口腔ケア用品。歯みがきは誤嚥性肺炎の予防にもなる)
- 情報と支援につながる(在宅避難でも自治体に存在を伝える。給水・物資・罹災証明の情報を逃さない)
ポイント: 在宅避難者は避難所の名簿に載らず、支援や物資の情報が届きにくいことがあります。内閣府も在宅・車中泊避難者への支援を課題として整理しています。最寄りの避難所や自治体窓口に「在宅で避難している」ことを伝え、給水・配給・罹災証明の案内を受け取れるようにしておきましょう。
避難所での過ごし方と健康管理#
避難所に入る場合は、限られた空間で多くの人が共同生活を送るため、**感染症と「動かないことによる健康被害」**に特に注意が必要です。
- 感染症対策…手洗い・手指消毒、マスク、こまめな換気。体調不良者とはスペースを分ける
- 食中毒対策…配給食は早めに食べきる。手指を清潔に
- 睡眠・プライバシー…段ボールベッドや間仕切りを活用。床から距離をとり粉じん・冷えを防ぐ
- こころのケア…不安や不眠が続くときは、巡回する保健師・医療チームに相談する
エコノミークラス症候群(肺塞栓症)を防ぐ#
避難所や車中泊で、水分を控えて狭い場所に長時間座ったままでいると、足の血流が悪くなり血栓ができ、肺に詰まる**エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)**を起こす危険があります。過去の地震では車中泊での発症・死亡例も報告されています。厚生労働省は次の予防を呼びかけています。
- こまめに水分をとる(トイレを我慢して水分を控えるのは逆効果)
- ときどき足を動かす(かかとの上げ下ろし、ふくらはぎをもむ、歩く・体操)
- アルコールを控える、ゆったりした服装でベルトをきつく締めない
- 長時間同じ姿勢を避ける。眠るときは足を少し高くする
「トイレに行きたくないから水を飲まない」は最も危険なパターンです。だからこそトイレの確保が、健康を守る土台になります。
支援制度の入口|罹災証明書から始める#
生活再建の手続きの**起点になるのが「罹災証明書」**です。これは住家の被害程度(全壊・大規模半壊・半壊など)を市区町村が公的に証明するもので、各種支援の申請に必要になります。
生活再建の大まかな流れは次のとおりです。
- 被害状況を写真で記録する(片付け・修理の前に、建物の内外を多方向から撮影。日付がわかるように)
- 市区町村に罹災証明書を申請する(被災当時に住んでいた市区町村の窓口。被害認定調査を経て交付)
- 罹災証明書をもとに各種支援を申請する
罹災証明書をもとに使える主な支援の入口は次のとおりです。
| 制度 | 概要 | 窓口 |
|---|---|---|
| 被災者生活再建支援金 | 住宅に著しい被害を受けた世帯へ。基礎支援金+加算支援金で最大300万円 | 市区町村 |
| 各種義援金 | 自治体・日赤等を通じて配分 | 市区町村等 |
| 税・公共料金の減免、各種猶予 | 被害に応じて減免・猶予 | 自治体・事業者 |
注意: 被災者生活再建支援金には申請期限があります。基礎支援金は災害発生日から13か月以内、加算支援金は37か月以内が原則です(延長される場合もあります)。詳しい要件・金額・期限は内閣府および居住する市区町村の最新情報を必ず確認してください。
罹災証明書の申請には、本人確認書類と被害状況がわかる写真が役立ちます。片付け前の写真撮影を忘れないことが、後の手続きをスムーズにします。
よくある質問(FAQ)#
Q. 携帯トイレは何回分あれば足りますか? A. 内閣府・経済産業省の基準では1人1日5回で計算します。最低3日分(1人15回分)、できれば1週間分(1人35回分)が目安です。4人家族で1週間なら約140回分になります。
Q. 断水したとき、トイレを水で流してもいいですか? A. 地震直後は安易に流さないでください。下水管が損傷していると逆流・漏水の恐れがあります。まず携帯トイレ・簡易トイレを使い、配管の安全が確認できてから通水しましょう。
Q. 飲料水は何リットル備えればいい? A. 飲料・調理用に1人1日3Lが目安です。最低3日(9L)、できれば1週間分(21L)。トイレや手洗いの生活用水(1日10〜15L程度)は別に、風呂の残り湯や給水で確保します。
Q. 停電が復旧したら、すぐ電気を使っていい? A. いきなり全部のスイッチを入れず、ガス漏れがないことと電気製品の安全を確認してから一つずつ通電してください。焦げくさいにおいがしたら直ちにブレーカーを遮断します。避難で家を離れるときは、通電火災を防ぐためブレーカーを落としてから出ましょう。
Q. 在宅避難でも支援は受けられますか? A. 受けられます。ただし在宅避難者は情報が届きにくいため、最寄りの避難所や自治体に「在宅で避難している」ことを伝え、給水・物資・罹災証明の案内を受け取れるようにしておきましょう。
Q. 車中泊で気をつけることは? A. エコノミークラス症候群に注意してください。こまめな水分補給、足の体操(かかとの上げ下ろし)、長時間同じ姿勢を避けることが予防になります。トイレを我慢して水分を控えるのは逆効果です。
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出典・参考(公的機関)#
- 内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604hinanjo_toilet_guideline.pdf
- 経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/jyutaku/toirebichiku.html
- 内閣府(防災担当)「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/pdf/tebiki.pdf
- 内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」 https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/
- 政府広報オンライン「大きな地震が起きたときは通電火災にご注意!」 https://www.gov-online.go.jp/prg/prg20345.html
- 経済産業省「感震ブレーカーの普及啓発」 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/10/270105-1.html
- 資源エネルギー庁「停電の時にすべきこと・すべきでないこと」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/teiden_info.html
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170807.html
- 内閣府(防災担当)「被災者生活再建支援制度の概要」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/pdf/140612gaiyou.pdf
- 内閣府「公的支援制度について(防災情報のページ)」 https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/sienseido.html
- 内閣府「被災者支援(防災情報のページ)」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/