緊急地震速報とは、地震の最初の揺れ(P波)をいち早く検知し、大きな揺れ(S波)が来る前に「強い揺れが来る」と知らせる気象庁の予報・警報です。猶予はわずか数秒から数十秒。だからこそ、鳴った瞬間に迷わず動けるよう、仕組みと行動をあらかじめ知っておくことが命を守ります。
最初に結論をまとめます。緊急地震速報が鳴ったら、やることはたった一つ、**「まず身を守る」**です。
- 頭を守り、姿勢を低くし、丈夫な机の下などへ(家具・窓・落下物から離れる)
- 火の始末や避難は、揺れが収まってから(揺れの最中にコンロへ近づかない)
- 数秒〜数十秒しかない前提で、考えるより先に体が動くよう日頃から練習
地域ごとの地震リスクの調べ方は自分の地域の地震リスクを知る、家庭での備えの全体像は家庭の地震対策ガイドもあわせてご覧ください。
緊急地震速報の仕組み|P波とS波の時間差を使う#
緊急地震速報は、地震波の伝わる速さの違いを利用しています。鍵になるのが「P波」と「S波」です。
地震が起きると、震源から2種類の波が広がります。
| 波の種類 | 速さ | 揺れ | 役割 |
|---|---|---|---|
| P波(Primary=最初の波) | 速い | 小さな初期微動 | これを検知して速報を出す |
| S波(Secondary=二番目の波) | 遅い | 大きな主要動(被害をもたらす) | これが来る前に知らせたい揺れ |
P波はS波より速く伝わりますが、建物の倒壊や家具の転倒など被害をもたらすのは、後から来るS波(大きな揺れ)です。そこで気象庁は、震源近くの地震計が捉えたP波のデータから、震源の位置・規模・各地の震度や到達時刻をすばやく計算し、S波が届く前に警報を発表します。この「速い波で遅い波を予告する」仕組みが緊急地震速報の核心です。(気象庁「緊急地震速報のしくみ」)
緊急地震速報(警報)が発表される条件#
一般向けにテレビやスマホへ届く緊急地震速報(警報)は、次の条件を満たしたときに発表されます。
- 2点以上の地震観測点で地震波を観測したこと
- 最大震度が5弱以上、または最大長周期地震動階級が3以上と予想されること
「2点以上」を条件とするのは、地震計の近くへの落雷などによる誤報を避けるためです。また「震度5弱以上」を基準とするのは、震度5弱以上になると顕著な被害が生じ始めるため、事前に身構える必要があるからです。(気象庁「緊急地震速報(警報)及び(予報)について」)
なお、より詳しい技術者・事業者向けには「緊急地震速報(予報)」もあり、こちらは震度3以上などより低い基準で配信されます。私たちが日常で見聞きするのは、強い揺れが予想されたときに出る「警報」のほうです。
緊急地震速報の受信方法|スマホ・テレビ・アプリ#
緊急地震速報は、複数の経路で受け取れます。一つの手段に頼らず、スマホ+家のテレビ・ラジオのように二重化しておくと安心です。(気象庁「緊急地震速報の入手方法について」)
| 受信方法 | 特徴・注意点 |
|---|---|
| スマホの緊急速報メール/エリアメール | NTTドコモ・au・ソフトバンク・ワイモバイル・楽天モバイルが一斉同報で配信。対応機種なら申込不要・無料で自動受信。マナーモードでも鳴る |
| テレビ・ラジオ | NHK・民放が放送。ただし電源が切れていると受信できない |
| 防災アプリ | 民間各社のアプリで、警報だけでなく予報(より早い・弱い段階の情報)も受信可能。プッシュ通知の許可が必要 |
| 防災行政無線・館内放送 | 自治体の屋外スピーカーや、デパート・駅などの集客施設の館内放送で流れる場合がある |
スマホで受信できないときの確認ポイント#
- 端末が緊急速報メール(エリアメール)に対応しているかを確認する
- 設定で緊急速報メールの受信がオンになっているか確認する
- 古い機種・格安SIMの一部などでは受信できないことがあるため、防災アプリも併用する
緊急地震速報が鳴ったら?場所別の行動#
猶予は数秒から、長くても数十秒程度。鳴ってから「どうしよう」と考えていては間に合いません。共通の原則は 「まず身を守る → 揺れが収まってから次の行動」。場所別に整理します。(気象庁「緊急地震速報を見聞きしたときは」)
家庭・屋内にいるとき#
- 頭を保護し、丈夫な机の下など安全な場所へ
- 家具・窓ガラス・照明・テレビなど倒れたり落ちたりするものから離れる
- あわてて外へ飛び出さない(落下物・転倒の危険)
- 無理に火を消そうとしない(揺れの最中にコンロへ近づくとやけど・転倒の危険)
屋外・街中にいるとき#
- ブロック塀の倒壊、看板や割れたガラスの落下に注意
- 丈夫なビルのそばなら、ビルの中へ避難する
- 頭をかばんなどで守り、安全な場所へ移動する
自動車を運転中#
- あわてて急ブレーキをかけない
- ハザードランプを点灯し、周囲に注意しながらゆるやかに減速
- 大きな揺れを感じたら、道路の左側に停止する
鉄道・バスに乗車中/エレベーター内#
- 電車・バスではつり革や手すりにしっかりつかまる
- エレベーターでは、最寄りの階で停止させてすぐに降りる
「考える時間はない」前提で備える:気象庁も、速報を聞いてから行動を考えていては間に合わないと明言しています。職場・自宅・通勤経路など、よく行く場所ごとに「ここで鳴ったらどう動くか」を事前にイメージし、訓練しておくことが最大の対策です。(気象庁「緊急地震速報を活用した訓練について」)
緊急地震速報の限界と誤報|過信は禁物#
緊急地震速報は極めて有用ですが、技術的な限界があることを気象庁自身が公表しています。「鳴らなかった=安全」「鳴った=必ず大揺れ」ではない点を理解しておきましょう。
1. 震源が近いと「間に合わない」#
最大の限界がこれです。内陸の浅い場所で起きた直下型地震など、震源に近い場所では、強い揺れの到達に速報が原理的に間に合いません。 P波を検知して計算・配信している間に、もうS波(大きな揺れ)が到達してしまうためです。1995年の阪神・淡路大震災のような直下型では、速報より先に激しい揺れが来ることがあります。だからこそ、速報の有無にかかわらず家具固定や耐震化といった「揺れても被害を出さない備え」が土台になります。
家具固定や住まいの備えは家庭の地震対策ガイドで詳しく解説しています。
2. 予想震度には誤差がある#
ごく短時間のP波データだけで計算するため、予想される震度には誤差を伴います。 速報は時間とともに精度が上がり、予想震度が変化することもあります。「予想より弱かった/強かった」が起こり得る前提で受け止めましょう。
3. 誤報・取り消しがある#
落雷など地震以外の現象を地震と誤認して発信されてしまうケースがあります。気象庁は、こうした誤報のみ取り消す運用をしています。まれに大きな予想震度が出て揺れが小さいこともありますが、「空振り」を責めるより、毎回きちんと身を守る練習の機会と捉えるのが安全です。
4. 揺れに伴う二次災害には別の備えを#
緊急地震速報は「揺れ」を知らせる情報です。揺れに伴う火災(通電火災)や津波には、それぞれ別の備えが必要です。地震後の出火対策は地震後の通電火災に注意や感震ブレーカーの選び方を、都市直下で想定される被害は首都直下地震の被害想定と備えもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)#
Q. 緊急地震速報が鳴ってから揺れるまで何秒くらい? A. 数秒から、長くても数十秒程度です。震源から遠いほど猶予は長く、近いほど短くなります。震源の真上付近では、速報が間に合わないこともあります。短い時間で行動できるよう、「まず頭を守る」動作を日頃から練習しておきましょう。
Q. なぜ震度5弱以上で発表されるの? A. 震度5弱以上になると顕著な被害が生じ始めるため、事前に身構える必要があるからです。あわせて誤報を防ぐため、2点以上の観測点で地震波を観測したことも発表条件になっています。
Q. 速報が鳴ったのに揺れなかった(空振り)。故障? A. 故障とは限りません。短時間のデータで計算するため、予想震度には誤差があり、実際の揺れが予想より小さいことがあります。また落雷などによる誤報の場合は取り消されます。空振りを責めず、毎回身を守る練習の機会にしましょう。
Q. スマホがマナーモードでも鳴る? A. 携帯各社が配信する緊急速報メール(エリアメール)は、原則マナーモードでも警報音が鳴る仕様です。ただし対応機種・設定が前提なので、設定で受信がオンになっているか確認してください。
Q. 直下型地震では速報は役に立たない? A. 役に立たない場合があります。震源が近い直下型では、強い揺れの到達に速報が原理的に間に合わないことがあります。そのため、速報に頼り切らず、家具固定・耐震化・備蓄といった「揺れても被害を出さない備え」を平時から整えておくことが重要です。
Q. 受信手段は一つで足りる? A. 一つに頼るのは危険です。テレビは電源が切れていると受信できず、スマホも機種や設定によっては受信できないことがあります。スマホ+テレビ/ラジオ+防災アプリのように複数の手段を備えておくと安心です。
この記事の関連ページ#
出典・参考(公的機関)#
- 気象庁「緊急地震速報のしくみ」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/shikumi/shikumi.html
- 気象庁「緊急地震速報(警報)及び(予報)について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/shikumi/shousai.html
- 気象庁「緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/shikumi/tokusei.html
- 気象庁「緊急地震速報を見聞きしたときは」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/koudou/koudou.html
- 気象庁「緊急地震速報の入手方法について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/katsuyou/receive.html
- 気象庁「携帯電話での緊急地震速報の受信について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/katsuyou/keitai.html
- 気象庁「緊急地震速報を活用した訓練について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/eew/kunren/kunren.html
- 気象庁「緊急地震速報について(FAQ)」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq25.html