台風前の家の点検とは、強風で飛ばされる・割れる・詰まる箇所を、台風が来る前の安全なうちに確認し、必要なら補修しておくことです。屋根・雨どい・外壁・窓・側溝・アンテナ・カーポートといった「弱点」を平常時にチェックしておけば、台風被害の多くは未然に防げます。
この記事では、何を・どこで・どう点検するかを場所ごとにチェックリスト化しました。あわせて、絶対に守ってほしい安全のルール(強風時や雨天時に屋根へ登る・高所作業をするのは厳禁)と、万一被害が出たときに備える火災保険(風災)の確認方法まで、毎シーズン使える形でまとめます。
まず、この記事で一番大事な3点だけ覚えてください。
- 点検・補修は「平常時(台風シーズン前)」に。台風接近中・雨天・強風時の屋根作業は絶対にしない
- 高所や屋根は無理に自分で登らず、地上から目視・写真で確認し、不安があればプロ(屋根・外装業者)に依頼する
- 被害に備え、点検時の写真を残し、火災保険(風災補償)の内容を控えておく
台風が近づいてからやることは台風が近づいたら?やることチェックリスト、全体像は台風対策の完全ガイドもあわせてご覧ください。
なぜ「台風前」の事前点検が必要なのか#
台風による住宅被害の多くは、もともとあった小さな不具合が、強風・豪雨で一気に拡大して起きます。ゆるんだ瓦や板金、詰まった雨どい、固定の甘い物干し竿——平常時は問題なく見えても、最大瞬間風速が増す台風時には「飛ぶ・剥がれる・あふれる」原因になります。
事前点検の目的は、大きく2つです。
- 飛散防止…屋根材・アンテナ・物干し竿・カーポートなど、飛ばされて自宅や近隣・通行人を傷つけるものを減らす
- 浸水・雨漏り防止…雨どい・側溝・排水口の詰まりを取り、外壁・窓まわりのすき間をふさいで、雨水の侵入を防ぐ
国土交通省も、令和元年房総半島台風(2019年)の甚大な屋根被害を踏まえ、住宅所有者・施工者向けに建築物の強風対策の啓発を行っています(国土交通省「令和元年房総半島台風を踏まえた建築物の強風対策」)。台風が来てからでは外作業は危険で間に合いません。動けるうち(平常時)の点検が被害を最小化する最大のポイントです。
⚠️ 点検前に必ず守る安全ルール#
防災のための点検が、かえって事故につながっては本末転倒です。次のルールは必ず守ってください。
- 強風時・雨天時・台風接近中に屋根へ登らない…濡れた屋根は滑りやすく、毎年、点検・修理中の転落事故が起きています。
- 高所点検は単独で行わない/無理をしない…2階の屋根やアンテナなどは、地上から双眼鏡やカメラのズーム、スマホで写真を撮って確認します。
- 少しでも不安があればプロに依頼する…屋根・外壁業者は屋根材ごとの弱点を把握しており、見落としや判断ミスを防げます。点検は台風シーズンや梅雨の前後など、負担がかかる時期の前に行うのが基本です。
- 悪質な「無料点検」商法に注意…突然訪問して不安をあおり高額契約を迫る業者がいます。契約は急がず、複数社で見積もりを取りましょう。
この記事の「自分でできる点検」は、原則として地上から/室内から安全に確認できる範囲を指します。屋根の上など高所の作業はプロの領域です。
屋根・外壁・雨どいの点検(※平常時に地上・室内から)#
台風被害が最も集中するのが屋根まわりです。ただし前述のとおり、屋根に登っての点検はプロに任せ、自分では地上から目視・写真撮影で確認します。
屋根のチェックリスト(地上から目視)#
- 瓦・スレート・板金のズレ・浮き・割れがないか(地上から、または双眼鏡で)
- 棟板金(屋根のてっぺんの金属)の浮き・釘の抜けがないか
- 屋根の漆喰の崩れ・ひびがないか(瓦屋根の場合)
- 過去の台風後にブルーシートのまま放置している箇所がないか
- スマホで屋根全体を複数方向から撮影し、記録を残す
少しでも浮き・ズレ・割れが見えたら、台風前に屋根業者へ補修を依頼してください。1枚の浮きが強風で飛び、連鎖的に被害が広がります。
外壁・窓まわりのチェックリスト(室内・地上から)#
- 外壁のひび割れ(クラック)・塗装の剥がれ・コーキング(目地)の劣化がないか
- 窓まわり・サッシのコーキングの隙間・剥がれがないか(雨水侵入の経路になる)
- ベランダ・バルコニーの防水層の劣化・ひびがないか
- 室内側で雨染み・カビ(過去の雨漏りのサイン)が出ていないか
外壁のひびや目地の劣化は、豪雨時の浸水・雨漏りの入り口になります。気になる箇所は早めに専門業者に相談しましょう。
雨どい(雨樋)のチェックリスト#
雨どいが詰まると、雨水があふれて外壁を伝い、浸水や雨漏りの原因になります。台風前の手入れが効果的です。
- 雨どいに落ち葉・土・ゴミが詰まっていないか(手の届く1階部分は安全に掃除)
- 雨どいのつなぎ目の外れ・ゆがみ・傾きがないか
- 雨どいを固定する金具(受け金具)のゆるみ・破損がないか
- 高所の雨どい清掃は無理せず、不安があればプロに依頼する
台風前は、雨どいや排水口の掃除に加え、ゆるんだ釘・ビスの補強をしておくと安心です。
窓・雨戸・アンテナ・カーポートの点検#
屋根に次いで被害が多いのが、窓・雨戸・アンテナ・カーポートなどの外部設備です。
窓・雨戸・シャッター#
- 雨戸・シャッターがスムーズに開閉できるか(固着していないか)
- 雨戸・シャッターのレール・固定金具のゆるみがないか
- 窓ガラスにひび・欠けがないか
- 雨戸がない窓には、飛散防止フィルムの貼付を検討(台風前の平常時に施工)
気象庁・自治体も、台風時はシャッター・雨戸を閉めること、無い窓には飛散防止フィルム等でガラスが割れるリスクを下げることを推奨しています(政府広報オンライン「大雨や台風の気象情報に注意して」)。
飛散防止フィルムや雨戸・シャッターは、養生テープより確実な対策です。窓の対策の詳細は台風のベランダ対策もあわせてご覧ください。
テレビアンテナ・室外機・プロパンガス#
- テレビアンテナの傾き・固定ワイヤー(支線)のゆるみ・サビがないか(地上から目視)
- エアコン室外機がぐらついていないか、転倒・移動の恐れがないか
- プロパンガスのボンベが鎖などで確実に固定されているか
- アンテナの不安がある場合は、台風前にアンテナ業者へ点検・補強を依頼
アンテナや室外機、プロパンガスがしっかり固定されているかは、台風前に必ずチェックしたいポイントです。倒れたアンテナは屋根や窓を傷つけ、飛べば近隣の被害にもつながります。
カーポート・物置・フェンス#
- カーポートの屋根材(パネル)の固定金具のゆるみ・破損がないか
- カーポートの柱・基礎のぐらつきがないか
- 物置の**アンカー(基礎固定)**が効いているか
- フェンス・ラティス・よしずなどの固定が十分か
カーポートは屋根が風で持ち上げられて壊れやすい設備です。台風シーズン前に固定部分のゆるみを点検し、必要なら屋根パネルを外す・補強するなどの対策を検討します。
側溝・排水口の点検(浸水を防ぐ)#
豪雨時の浸水・冠水を防ぐには、水の通り道を確保しておくことが重要です。詰まりは平常時のうちに取り除きましょう。
- 敷地内・家の周りの側溝・排水溝に落ち葉・土砂・ゴミが詰まっていないか
- **ベランダ・バルコニーの排水口(ドレン)**が詰まっていないか
- 雨どいから地面への排水経路がふさがっていないか
- 玄関・ガレージなど低い場所への浸水経路がないか(必要なら土のうの準備)
側溝や排水溝は掃除して水はけをよくしておくことが、浸水対策の基本です。自宅の浸水・土砂リスクは事前にハザードマップで確認しておきましょう。
直前(接近の前日まで)にやる固定・片付け#
平常時の点検・補修が終わっていることを前提に、台風が近づいたら(最接近の前日まで)、飛散物の固定・収納を行います。この作業も、風雨が強まる前に終えることが鉄則です。
- ベランダ・庭の飛ばされる物を屋内へ(物干し竿・植木鉢・サンダル・ゴミ箱・すだれなど)
- 屋内に入れられない大型の物はロープ・ネットで固定する
- 雨戸・シャッターを閉める(無い窓は飛散防止フィルム済みか確認)
- 側溝・排水口・雨どいの詰まりを最終チェック
- 自転車・バイクを倒して固定する、または屋内へ
- 車を冠水・倒木の恐れがない安全な場所へ移動
接近後の時系列の動き方は台風が近づいたら?やることチェックリストにまとめています。風が強まってからの屋外作業・高所作業は中止してください。命が最優先です。
火災保険(風災補償)の確認#
事前点検をしても、想定を超える台風で被害が出ることはあります。そのときの備えが火災保険の風災補償です。台風前の平常時に、内容を確認しておきましょう。
加入内容のチェックリスト#
- 加入中の火災保険に**「風災」補償が付いている**か
- 「水災」補償の有無(床上浸水・土砂災害は水災補償の対象。付帯していないと出ない場合がある)
- **免責金額(自己負担額)**や支払条件
- 補償の対象が建物のみか、家財も含むか
台風などの強い風による損害は、一般に火災保険の風災補償の対象です。一方、床上浸水などの水濡れ被害は水災補償の範囲で、付帯していないと支払われない場合があります。
被害が出たときに備えて控えておくこと#
- 保険会社の連絡先・証券番号をすぐ出せる場所に控える
- 平常時(被害前)の家の状態を写真で記録しておく(点検時の写真が役立つ)
- 被害が出たら、片付け・修理の前に被害箇所を写真撮影する(全体+損傷部、できれば4方向)
- 修理の見積書・領収書を保管する
被害時は、片付ける前に損害状況を写真に残すことが、スムーズな保険金請求につながります。火災保険金の請求権には**時効(保険法上、原則3年)**があるため、被害が出たら早めに請求してください。
⚠️ 「保険金で無料修理できる」とうたい、保険申請の代行で高額な手数料を取る業者とのトラブルが増えています。日本損害保険協会も注意を呼びかけています。契約は慎重に、まずは加入先の保険会社に直接相談しましょう。
よくある質問(FAQ)#
Q. 台風前に自分で屋根に登って点検してもいい? A. おすすめしません。屋根の上は転落の危険が大きく、特に風雨のある日は厳禁です。自分での確認は地上から双眼鏡やスマホのズームで撮影する範囲にとどめ、浮き・ズレ・割れが見えたら屋根業者に依頼してください。
Q. 点検はいつやればいい? A. 台風シーズンや梅雨の前など、平常時に行うのが基本です。台風が来てからでは外作業が危険で間に合いません。年1回程度、定期的に点検・補修しておくと安心です。
Q. 雨どいの掃除はどこまで自分でやっていい? A. 手の届く1階部分までが目安です。脚立や屋根に登る必要がある高所は、無理をせずプロに依頼してください。詰まりを放置すると、雨水があふれて外壁の劣化や雨漏りの原因になります。
Q. カーポートの屋根は外したほうがいい? A. 強い台風が予想され、簡単に着脱できるタイプであれば、屋根パネルを外すのが最も確実です。難しい場合は、固定金具のゆるみを点検し、メーカー指定の方法で補強します。自己流のロープ固定は、かえって柱に負担をかけることもあるため、取扱説明書やメーカー情報を確認してください。
Q. 養生テープを窓に貼れば安心? A. 養生テープは「割れたガラスの飛散を抑える」程度の効果で、ガラスの強度は上がりません。雨戸・シャッターや飛散防止フィルムのほうが確実です。まずは飛来物を減らすため、庭・ベランダの物を片付けることを優先しましょう。
Q. 台風で家が壊れたら火災保険で直せる? A. 強風による損害は一般に風災補償の対象です。ただし浸水被害は水災補償の範囲で、付帯がないと支払われないことがあります。免責金額や対象(建物・家財)も契約により異なるため、平常時に内容を確認し、被害時は片付け前の写真を残してください。
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出典・参考(公的機関・専門情報)#
- 国土交通省「令和元年房総半島台風を踏まえた建築物の強風対策」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000146.html
- 政府広報オンライン「大雨や台風の気象情報に注意して 早めに防災対策・避難行動を」 https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201206/1.html
- 気象庁「台風について」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/index.html
- 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」 https://disaportal.gsi.go.jp/