避難所で本当に必要なものとは#
深夜の地震。建物がきしむ音に飛び起きて、「避難所に行かないと」と判断した。でもリュックに何を詰めればいいか分からず、とりあえず財布とスマホだけ持って家を出た――。
これは2024年の能登半島地震で実際に多くの方が経験した状況です。「何を持っていけばいいか、事前に決めていなかった」という後悔の声を、防災士として何度も聞きました。
避難所への持ち物は「最低限」が大事。大量の荷物を抱えては逃げ遅れるリスクがあります。本当に必要なものだけを厳選して、すぐ持ち出せる状態にしておくこと。それが命を守る準備です。
避難所で支給されるもの・されないもの#
避難所に行けば何でも揃うと思われがちですが、現実はそうではありません。
支給される可能性が高いもの
- 飲料水(給水車が来る場合)
- おにぎり・パン等の食料(発災後数日以降)
- 毛布(数に限りあり)
支給されない、あるいは不足しがちなもの
- 常備薬
- 生理用品
- おむつ・ミルク
- 着替えの下着
- 衛生用品(歯ブラシ・ウェットティッシュ)
- スマホの充電手段
- アレルギー対応食
内閣府の「避難所運営ガイドライン」(2016年)でも、避難所の物資は「最低限の生命維持に必要なもの」が優先とされています。個人的に必要なものは、自分で持参する前提と考えてください。
特に常備薬。これは避難所ではまず手に入りません。処方薬を服用している方は、最低3日分を防災リュックに入れておくのが鉄則です。
「最低限」の基準と考え方#
避難所持ち物の「最低限」とは、避難所に支給物資が届くまでの1〜2日を乗り切れる量が目安です。
リュック1つに収まる量。重さは大人で5〜7kg、女性やお年寄りなら3〜5kgが無理なく背負える上限。これを超えると避難行動そのものに支障が出ます。
避難所持ち物リスト【必須】#
水・食料・常備薬#
| アイテム | 量の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 飲料水 | 500ml × 2〜3本 | ペットボトルが持ち運びやすい |
| 食料 | 3食分 | カロリーメイト・えいようかん等の軽量品 |
| 常備薬 | 3日分以上 | 処方薬は主治医に予備処方を相談 |
| お薬手帳のコピー | 1枚 | 原本でなくスマホの写真でもOK |
食料は「軽くてカロリーが高い」ものを選ぶのがポイント。缶詰は重いので、避難所用の持ち出し袋には不向きです。えいようかん(井村屋)は1本171kcalで、非常にコンパクト。私の防災リュックには常に5本入っています。
貴重品・身分証明書のコピー#
- 現金:小銭を含めて1〜2万円。停電でキャッシュレス決済が使えない場合に備える。特に10円・100円硬貨は公衆電話用に重要
- 健康保険証のコピー
- 運転免許証のコピー(本人確認用)
- 銀行口座・保険証書のメモ
- 家族の連絡先メモ:スマホが使えなくなった場合に備え、紙にも記録
「コピーなんて…」と思うかもしれませんが、被災後に身分を証明できないと、支援を受けるのに時間がかかります。避難所の受付でもスムーズに手続きができます。
衛生用品・着替え#
- 歯ブラシ・歯磨き粉(旅行用の小さいもの)
- ウェットティッシュ:手指の清潔に必須。大判タイプが便利
- マスク:感染症対策。避難所は密になりやすい
- 下着の替え:最低1〜2枚
- タオル:1〜2枚。手拭い兼用で
- ビニール袋(大・小各数枚):ゴミ入れ・汚れ物入れに万能
- トイレットペーパー(芯を抜いてつぶすとコンパクト)
避難所で一番困るのは衛生面だと、多くの被災経験者が語っています。特にウェットティッシュは「いくらあっても足りない」というのが共通の声。100均の大容量パックでいいので、多めに入れてください。
あると助かるプラスアルファの持ち物#
プライバシー確保グッズ#
避難所の体育館やホールでは、見知らぬ人と隣り合わせで過ごすことになります。
- アイマスク・耳栓:睡眠の質を確保するのに効果絶大
- 大判のストール・ブランケット:着替え時の目隠しにもなる
- 携帯スリッパ:避難所の床は冷たく硬い。土足禁止エリアでの移動に
2016年の熊本地震で避難所を訪問した際、最も多かった要望が「プライバシーの確保」でした。仕切りがない空間で何日も過ごすストレスは想像以上に大きい。アイマスクと耳栓だけでも、だいぶ楽になるんです。
子ども・高齢者向けの追加アイテム#
子ども(乳幼児)
- おむつ(3日分以上)
- おしりふき
- ミルク・液体ミルク・哺乳瓶
- お気に入りのおもちゃやぬいぐるみ(安心材料として重要)
- 母子手帳のコピー
子ども(幼児〜小学生)
- お菓子(ストレス軽減に)
- 暇つぶしグッズ(折り紙・ノート・色鉛筆)
- 上履き(避難所の体育館で走り回ることも)
高齢者
- 常備薬(絶対に忘れない)
- 入れ歯・入れ歯洗浄剤
- 補聴器の予備電池
- 老眼鏡の予備
- 杖(折りたたみ式があると収納しやすい)
高齢の親御さんの防災リュックを用意する場合、中身の総重量を3kg以下に抑えることを意識してください。重すぎると持ち出せず、結局置いていくことになります。
持ち出し袋の作り方と置き場所#
リュックの選び方#
避難用の持ち出し袋はリュックサック一択です。両手が空く状態でないと、暗闘の中の移動や瓦礫の回避ができません。
選び方のポイント
- 容量:20〜30リットルが目安。大きすぎると詰め込みすぎて重くなる
- 防水性:雨の中の避難も想定。完全防水でなくとも撥水加工は欲しい
- 背負い心地:肩紐にパッドが入っているもの。長時間背負っても疲れにくい
- 反射材:夜間の移動時に車から視認されやすい
防災専用のリュックを買う必要はありません。普段使っている登山用やアウトドア用のリュックで十分。ただし、防災用と兼用していると、いざという時に「今日は会社に持っていっている」という事態になるので、専用に1つ用意しておくのがベストです。
玄関付近に置くのがベスト#
持ち出し袋の置き場所は玄関付近が鉄則です。
- 避難時に必ず通る場所
- 靴を履くついでに手に取れる
- 外出中の家族以外の誰かが持ち出せる
寝室の枕元にもミニマムセット(ヘッドライト・スリッパ・ホイッスル)を置いておくと、夜間の地震で真っ暗な中でもすぐ行動できます。
私の家では、玄関の下駄箱の上に家族全員分のリュックを並べています。「あれ、防災リュックどこだっけ?」と探す時間は、災害時にはありません。家族全員が「玄関の下駄箱の上」と即答できる。この状態が理想です。
まとめ|避難所持ち物チェックリスト(印刷用)#
必須アイテム
- 飲料水(500ml × 2〜3本)
- 食料(3食分、軽量なもの)
- 常備薬(3日分以上)
- お薬手帳のコピー
- 現金(小銭含む1〜2万円)
- 健康保険証・免許証のコピー
- 家族の連絡先メモ
- スマートフォン + 充電器 + モバイルバッテリー
- 懐中電灯(予備電池付き)
- 歯ブラシ
- ウェットティッシュ
- マスク(3〜5枚)
- 下着の替え(1〜2枚)
- タオル
- ビニール袋(大小各数枚)
- トイレットペーパー(芯を抜いたもの)
プラスアルファ
- アイマスク・耳栓
- 携帯スリッパ
- レインコート
- ホイッスル(笛)
- 簡易トイレ(2〜3回分)
- ラジオ(手回し充電式)
家族構成に応じて
- おむつ・ミルク(乳幼児)
- おもちゃ・お菓子(子ども)
- 入れ歯・補聴器電池・老眼鏡(高齢者)
- 生理用品(女性)
このリストを印刷して冷蔵庫に貼っておく。半年に1回、中身を点検する日を決めておく。これだけで、いざという時の安心度が格段に変わります。「なんとかなるだろう」ではなく、「なんとかする準備」をしておく。それが避難所での生活を少しでも楽にしてくれます。



