在宅避難とは?避難所に行かない選択肢#
「地震が来たら避難所に行く」。
多くの方がそう考えていると思います。でも実は、建物の安全が確認できる場合は自宅にとどまる「在宅避難」が推奨されるケースが多いんです。
内閣府の「避難所運営ガイドライン」(2016年)でも、「避難所はあくまで自宅での生活が困難な場合の一時的な施設」と位置づけられています。2020年以降はコロナ禍を受けて、避難所の過密を避けるため在宅避難の重要性がさらに高まりました。
私は2023年の防災訓練で在宅避難の3日間シミュレーションを体験しました。その経験から言えるのは、在宅避難は事前の備蓄がすべてを左右するということ。備蓄がなければ、自宅にいても避難所に行かざるを得なくなります。
在宅避難が推奨されるケース#
以下の条件を満たす場合、在宅避難が適切な選択肢になります。
- 自宅の建物が安全である(倒壊・傾斜の恐れがない)
- 土砂災害・浸水の危険区域に入っていない
- 必要な備蓄がある
- ライフラインが止まっても数日間は自力で生活できる
在宅避難できる条件の確認方法#
在宅避難の可否は、災害の種類と自宅の状況で判断します。
確認すべき項目
- 建物の耐震性:1981年以降の新耐震基準で建てられているか。旧耐震の場合は耐震診断の実施を
- ハザードマップの確認:洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域に入っていないか
- 周辺環境:崖の近く、河川の近くなど、二次災害リスクの有無
- 建物の被災状況:地震後は目視で傾き・亀裂・構造体の損傷を確認
判断に迷う場合は、無理に在宅避難にこだわらず避難所に移動してください。安全の確保が最優先です。
在宅避難に必要なものリスト#
在宅避難は「ライフラインがすべて止まった状態で、自宅で何日過ごせるか」のシミュレーションです。
ライフライン代替(水・食料・トイレ・電源)#
水
- 飲料水:1人1日3リットル × 7日分 = 21リットル
- 生活用水:浴槽の残り湯 + ポリタンク20リットル × 1〜2個
- 合計の目安:4人家族で飲料水84リットル + 生活用水200リットル以上
食料
- 1人1日3食 × 7日分 = 21食分
- カセットコンロ + カセットガスがあれば、レトルト食品・缶詰・乾麺を温かく調理可能
- 加熱不要な食品も一定量確保(停電初日はカセットガスの節約優先)
トイレ
- 簡易トイレ(凝固剤付き):1人1日5回 × 人数 × 7日分
- 4人家族7日分 = 140回分
- トイレットペーパー:普段の在庫 + 予備2〜3パック
電源
- モバイルバッテリー(10,000mAh以上):家族の人数分
- 乾電池(各サイズ):ラジオ・ランタン・懐中電灯用
- カセットガス発電機やポータブル電源があれば理想的(ただし高額)
情報収集手段#
ライフラインが止まっても、情報は途切れさせてはいけません。
- 防災ラジオ:手回し充電式があれば電池切れの心配なし
- スマートフォン:モバイルバッテリーで充電を維持
- ワンセグ対応機器:テレビのニュースを視聴可能
北海道ブラックアウトの際、情報が途絶したことで不安が増大したという声が多数報告されています。「何が起きているか分かる」だけで、精神的な安定度が全然違うんです。
衛生用品・医療品#
避難所と違い、在宅避難では衛生用品を自分で確保する必要があります。
- ウェットティッシュ・除菌シート:水が使えないときの手指清潔に必須
- 歯磨きシート・液体歯磨き:水を使わずに口腔ケア
- ドライシャンプー:入浴できない日が続くときのケア
- 常備薬:最低1週間分(処方薬のある方は主治医に相談して予備を確保)
- 救急セット:絆創膏、消毒液、包帯、体温計
- 生理用品:女性は1〜2ヶ月分をストック
実際に在宅避難シミュレーションをして分かったのは、「水なしの生活で一番つらいのは体を洗えないこと」でした。ドライシャンプーとウェットタオルがあるだけで、QOLが段違いに上がります。
在宅避難の期間別シミュレーション#
1日目〜3日目の過ごし方#
1日目:情報収集と安全確認
- 建物の安全確認(傾き・亀裂の目視チェック)
- 家族の安否確認(災害用伝言ダイヤル171等)
- 防災ラジオで最新情報を収集
- 冷蔵庫の傷みやすい食品から消費開始
- トイレは簡易トイレに切り替え(排水管の安全が確認できるまで)
2日目:生活リズムの確立
- 水の消費量を計測し、残量を管理
- カセットコンロで温かい食事を1日1回は確保
- 近所の情報交換(給水拠点・支援物資の情報)
- カセットガスの消費ペースを確認
3日目:補給と判断
- 備蓄の残量を棚卸し
- 給水車・支援物資の情報を確認
- ライフライン復旧の見通しを確認
- このまま在宅避難を続けるか、避難所に移るか判断
4日目〜7日目(長期化した場合)#
3日を過ぎると、精神的な疲労が蓄積してきます。
- 食事のバリエーションを意識する(同じものばかりだと気が滅入る)
- 適度な運動を心がける(室内でできるストレッチなど)
- 近所との情報交換を欠かさない(孤立は最大の敵)
- 子どものケア:退屈やストレスへの対応(トランプ、塗り絵、本などアナログの遊び道具)
2024年の能登半島地震では、在宅避難が2週間以上に及んだ家庭もありました。長期化を見据えて、食料・水は7日分を基本として備蓄しておくのが現在の政府推奨です。
在宅避難の判断基準と注意点#
避難所に切り替えるべきタイミング#
在宅避難を続けてはいけないケースがあります。以下に該当したら、速やかに避難所へ移動してください。
- 建物に新たな亀裂や傾きが発見された
- 余震で建物の安全性に不安が生じた
- 備蓄の水・食料が尽きそうで補給の見通しが立たない
- 体調を崩した家族がいて医療が必要
- 周辺で火災やガス漏れが発生した
- 行政から避難指示が出された
特に高齢者や乳幼児がいる家庭は、無理な在宅避難は禁物。体調の変化に敏感に対応してください。
近所との情報共有の重要性#
在宅避難の最大のリスクは孤立です。
避難所にいれば情報が集まりますが、自宅にいると情報が入ってこない。給水車がどこに来ているか、支援物資はどこで配布されているか――こうした情報は近所の人とのつながりがないと得られません。
日頃から隣近所と挨拶を交わしておく。災害時に声をかけ合える関係性を作っておく。これも立派な防災対策です。
私の住むマンションでは、災害時にLINEグループで情報共有するルールを管理組合で決めています。こうした仕組みがあるかないかで、在宅避難の安心感が全く違います。
まとめ|在宅避難準備チェックリスト#
備蓄品(7日分を目標)
- 飲料水:1人1日3リットル × 人数 × 7日
- 食料:1人1日3食 × 人数 × 7日
- 簡易トイレ:1人1日5回 × 人数 × 7日
- カセットコンロ + カセットガス(最低6本)
- モバイルバッテリー・乾電池
- 防災ラジオ
- LEDランタン・懐中電灯
衛生用品
- ウェットティッシュ・除菌シート
- ドライシャンプー・歯磨きシート
- 常備薬(1週間分以上)
- 救急セット
- 生理用品
事前確認
- 自宅の耐震性(新耐震基準か)
- ハザードマップで浸水・土砂災害リスクを確認
- 近隣との情報共有手段(連絡先交換・LINEグループ等)
- 最寄りの避難所の場所と経路
在宅避難は「自宅が無事なら、自宅が最高の避難所になる」という考え方です。プライバシーが守られ、慣れた環境で過ごせるメリットは計り知れません。ただし、そのためには備蓄という「準備」が絶対に必要。1週間分の備蓄があれば、在宅避難の選択肢が手に入ります。



