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水害・洪水対策

高潮とは?仕組み・対策・避難方法を防災士が分かりやすく解説

更新 2026年4月10日

高潮は、台風シーズンに沿岸部で最も警戒すべき災害の一つ。該当地域にお住まいの方は、今すぐハザードマップを確認してください。

1959年の伊勢湾台風では、高潮によって名古屋市を中心に甚大な被害が発生し、死者・行方不明者は5,098名に達しました(気象庁資料)。日本の自然災害史上、最悪級の被害です。

「でも60年以上前の話でしょ?」と思うかもしれません。しかし、気候変動による海面上昇と台風の強大化により、高潮のリスクはむしろ増大しています。2018年の台風21号では、関西国際空港が高潮で浸水し、連絡橋の損傷などで最大約8,000人が孤立する事態が発生しました。

筆者は防災士として高潮ハザードマップの読み方を講演で解説する機会がありますが、「高潮の存在自体を知らなかった」という参加者が意外なほど多い。知らなければ備えようがありません。

高潮とは何か
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高潮の発生メカニズム(吸い上げ効果・吹き寄せ効果)
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高潮は、台風などの強い低気圧が接近した際に海面が異常に上昇する現象です。2つの効果が重なって発生します。

吸い上げ効果: 台風の中心気圧が低いと、海面が持ち上げられます。気圧が1hPa下がると海面が約1cm上昇。台風の中心気圧が950hPaなら、通常(1013hPa)より約60cm海面が上がる計算です。

吹き寄せ効果: 台風の強風が海水を海岸に向かって押し寄せます。湾の奥では海水が逃げ場を失い、さらに水位が上昇。この効果は風速の2乗に比例するため、風が強いほど急激に水位が上がります。

この2つの効果が合わさると、数メートルもの海面上昇が起きます。さらに満潮のタイミングが重なると、被害はさらに深刻に。

高潮と高波・津波の違い
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高潮、高波、津波は混同されがちですが、メカニズムが全く異なります。

項目高潮高波津波
原因台風の低気圧+強風強風による波地震・海底地殻変動
海面上昇数m(広範囲)波の高さは数〜10m以上数m〜数十m
持続時間数時間〜半日風が収まるまで繰り返し(数分〜数十分間隔)
予測台風接近で予測可能風の予測で可能地震後に発表
前兆台風の接近風の強まり地震の揺れ

高潮は「海全体が持ち上がる」現象であり、高波は「海面上の波が高くなる」現象。高潮の上にさらに高波が重なると、堤防を越える水の量が一気に増えます。

過去の高潮被害事例
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台風主な被害地域最大潮位偏差主な被害
1959年伊勢湾台風名古屋市3.45m(最高潮位3.89m)死者・行方不明者5,098名
1999年台風18号熊本県不知火町観測史上最大級死者12名
2004年台風16号高松市約1.3m床上・床下浸水計約1.5万棟
2018年台風21号大阪湾最高潮位329cm(観測史上最高)関西空港浸水・約8,000人孤立

大阪湾は地形的に高潮が発生しやすく、南海トラフ巨大地震と台風が重なった場合のシミュレーションでは、想定浸水深が5m以上のエリアも出ています。

高潮のリスクが高いエリア
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湾奥・河口付近・海抜ゼロメートル地帯
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高潮のリスクが特に高いのは以下の地域です。

湾奥(わんおう): 東京湾、大阪湾、伊勢湾などのV字型やU字型の湾の奥。台風の吹き寄せ効果で海水が集中するため、湾の入口より水位が高くなります。

河口付近: 河川と海が交わる場所。高潮で海水が河川を遡上し、河川沿いの広い範囲が浸水する可能性があります。

海抜ゼロメートル地帯: 東京都東部(江東区、墨田区、足立区、葛飾区、江戸川区)や名古屋市西部は、海面より低い土地が広がっています。高潮で堤防を越えた水が流入すると、長期間の浸水が続く恐れがあります。

高潮ハザードマップの確認方法
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確認手順:

  1. 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」にアクセス
  2. 「重ねるハザードマップ」で「高潮」レイヤーをON
  3. 自宅の位置を確認

高潮浸水想定区域の色分け:

浸水深
黄色0.5m未満
オレンジ0.5〜3m
3〜5m
5〜10m
ピンク10m以上

高潮ハザードマップは2015年の水防法改正以降、沿岸の自治体で順次整備されています。まだ未整備の自治体もあるので、ハザードマップポータルサイトで表示されない場合は自治体に問い合わせてください。

高潮浸水想定区域とは
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高潮浸水想定区域は、想定し得る最大規模の高潮に対して浸水が想定される区域。台風の規模、コース、満潮のタイミングなどの最悪の条件を設定して計算されています。

この区域内では:

  • 大型台風接近時に浸水する可能性がある
  • 不動産取引時に水害ハザードマップでの所在地説明が義務化(宅建業法施行規則改正、2020年8月28日施行)
  • 地下街等の管理者は避難確保計画の作成義務あり

高潮への備えと対策
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事前の備え(ハザードマップ確認・備蓄)
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  • 高潮ハザードマップで自宅のリスクを確認
  • 浸水想定区域にいる場合は避難場所と避難ルートを決定
  • 3日分以上の備蓄品を準備(停電・断水に備えて)
  • 火災保険の水災補償の確認
  • マイ・タイムラインの作成

高潮は台風の接近に伴って発生するため、台風対策と一体で備えるのが効率的です。

台風接近時の行動(早期避難)
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台風接近時の高潮対策で最も重要なのは「早期避難」。高潮は台風の接近とともに急激に水位が上がるため、避難のタイミングが遅れると取り返しがつきません。

行動の時系列:

  • 台風接近3日前: ハザードマップの再確認、備蓄品チェック、避難場所の確認
  • 台風接近1日前: 避難の判断。高潮警報が出ていたら避難準備
  • 台風接近当日: 高潮浸水想定区域内にいる場合は早めに避難完了

特に注意すべきは「満潮の時間帯」。台風接近が満潮と重なると、高潮被害が格段に大きくなります。気象庁の台風情報と潮汐表を照らし合わせて確認してください。

止水板・土のうによる浸水対策
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高潮による浸水が軽度(数十cm)と見込まれる場合は、止水板や土のうで被害を軽減できます。

ただし、高潮はメートル単位の浸水になることもあり、その場合は止水板や土のうでは防ぎきれません。あくまで軽度の浸水対策として位置づけ、本命は「早期避難」であることを忘れないでください。

高潮警報・注意報が出たときの避難行動
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避難のタイミング
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情報意味行動
高潮注意報高潮による被害のおそれ最新情報に注意、避難準備
高潮警報高潮による重大な被害のおそれ避難行動開始
高潮特別警報数十年に一度の高潮ただちに命を守る行動

高潮警報が出たら、浸水想定区域内にいる人は避難を開始。高潮特別警報(2013年の特別警報制度開始以降)は発表されれば「数十年に一度」級の事態であり、発表を待ってから避難したのでは手遅れの可能性が高い。

避難先の選び方(高台・鉄筋コンクリート建物)
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高潮からの避難先は「高い場所」が基本。

  • 高台にある避難場所: 最も安全。浸水想定区域外の避難場所を選ぶ
  • 鉄筋コンクリート造の高い建物: 浸水深を超える階数の建物。垂直避難の選択肢
  • 親戚・知人の高台の家: 事前に打ち合わせておく

木造住宅の2階への垂直避難は、高潮の場合は推奨しません。高潮による浸水はメートル単位になりえるのと、水流の力で木造住宅が破壊されるリスクがあるためです。

車での避難の注意点
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高潮浸水想定区域からの避難は、早い段階であれば車が効率的。ただし注意点があります。

  • 避難する人が一斉に動くと渋滞が発生する(早めの行動が重要)
  • 沿岸部の道路は冠水リスクが高い(高台への経路を事前に確認)
  • アンダーパスは絶対に避ける
  • すでに冠水している道路には進入しない

江東5区(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川)の「大規模水害ハザードマップ」「広域避難計画」では、大規模水害発生時に浸水域内人口は約250万人に達すると想定されています。その際、車での一斉避難は大渋滞を引き起こす可能性が高いため、公共交通機関や徒歩での広域避難も含めて検討してください。

よくある質問(FAQ)
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Q. 高潮は台風以外でも発生する? A. 温帯低気圧(爆弾低気圧)でも高潮は発生します。冬の日本海側で発生することがあり、台風シーズン以外でも油断できません。

Q. 高潮と満潮が重なるとどうなる? A. 被害が格段に大きくなります。通常の満潮水位+高潮偏差が合算されるため、想定浸水深よりさらに高い水位になることがあります。台風接近時は潮汐表で満潮時刻を確認してください。

Q. 高潮の被害に火災保険は使える? A. 火災保険の「水災」補償で高潮による浸水被害もカバーされます。ただし、高潮が来る前に窓ガラスが割れるなどの風災は「風災」補償で別途対応。保険の契約内容を確認してください。

Q. マンションの高層階なら高潮は関係ない? A. 建物自体は安全でも、1階のエントランスが浸水すると外出できなくなります。停電でエレベーターが止まり、断水する可能性も。高層階でも備蓄は必要です。

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