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災害の雑損控除とは?確定申告のやり方・計算方法・必要書類を税理士監修で解説

更新 2026年4月10日

災害で家や家財に被害を受けた場合、確定申告をすることで税金が戻ってきます。

これを「雑損控除」といい、被害額に応じて所得税・住民税が軽減される制度です。知らずに申告しないと、受け取れるはずの還付金を逃すことになります。

被災後の生活再建は一円でも多くの資金が必要です。

雑損控除とは?災害で使える税金の還付制度
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雑損控除の対象となる損害
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雑損控除は、以下の原因で資産に損害を受けた場合に適用されます。

  • 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象による災害
  • 火災、火薬類の爆発など人為的な災害
  • 害虫などの生物による異常な災害
  • 盗難・横領

対象となる資産は「生活に通常必要な資産」です。具体的には、

  • 住宅(建物)
  • 家財(家具・家電・衣類など)
  • 車両(通勤用など生活に必要なもの)

対象外: 別荘、貴金属・骨董品(1個または1組の価額が30万円超のもの)、事業用資産(事業所得の必要経費として処理)

災害減免法との違いと有利な方の選び方
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災害による税金軽減には「雑損控除」と「災害減免法」の2つの制度があります。どちらか有利な方を選択できます(併用不可)。

項目雑損控除災害減免法
対象災害・盗難・横領災害のみ
所得制限なし合計所得金額1,000万円以下
控除方法所得から控除税額を直接軽減
繰越3年間繰越可能繰越なし(その年限り)
対象損害損害金額 - 保険金住宅・家財の損害が時価の1/2以上

災害減免法による所得税の軽減・免除額(国税庁タックスアンサーNo.1902)

その年の所得金額の合計額軽減・免除額
500万円以下所得税の全額免除
500万円超 750万円以下所得税の2分の1軽減
750万円超 1,000万円以下所得税の4分の1軽減

どちらが有利かの判断基準:

  • 被害額が大きい場合: 雑損控除が有利(繰越で3年間還付を受けられる)
  • 被害額が比較的小さく所得が低い場合: 災害減免法が有利な場合あり
  • 所得が1,000万円超の場合: 雑損控除しか使えない

迷ったら雑損控除を選ぶのが無難です。繰越控除ができるため、1年で控除しきれない大きな被害でも、3年間にわたって税金の軽減を受けられます。

雑損控除の計算方法【具体例つき】
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損害金額の算出方法
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雑損控除の計算式は以下の通りです。

控除額 = 次のいずれか大きい方(国税庁タックスアンサーNo.1110)

  • (A) (損害金額 + 災害等関連支出の金額 − 保険金等の額) − 総所得金額等 × 10%
  • (B) (災害関連支出の金額 − 保険金等の額) − 5万円

差引損失額 = 損害金額 + 災害関連支出 - 保険金等で補填された金額

「損害金額」は、被害を受けた資産の修繕費用または再取得費用(時価ベース)で算出します。

保険金を差し引く計算
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火災保険や地震保険で保険金を受け取った場合、その金額を差し引きます。

: 住宅の修繕費300万円、保険金100万円の場合 → 差引損失額 = 300万円 - 100万円 = 200万円

保険金で全額カバーされた場合は、雑損控除の対象にはなりません。保険金が損害額を超える場合(いわゆる「利益」が出る場合)は、その超過分は非課税です。

控除額のシミュレーション(年収別)
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ケース: 住宅の修繕費500万円、保険金200万円、災害関連支出50万円

差引損失額 = 500万円 + 50万円 - 200万円 = 350万円

年収(給与所得者)総所得金額控除額(A)控除額(B)適用される控除額還付目安(所得税)
400万円276万円322.4万円45万円322.4万円約32万円
600万円436万円306.4万円45万円306.4万円約61万円
800万円596万円290.4万円45万円290.4万円約67万円

この他に住民税も軽減されます。所得税の確定申告で雑損控除を選ぶと、その情報が市区町村に送られて住民税(翌年度分)にも同じ控除が反映されます。災害減免法に相当する住民税の減免は各自治体の条例で別途定められており、自動適用されない場合もあるため、お住まいの市区町村窓口で要件・申請方法を確認してください。

年収400万円の方が500万円の住宅被害を受けた場合、所得税だけで約32万円の還付。知らずに申告しなければ、この金額を受け取り損ねることになります。

確定申告のやり方【災害の雑損控除版】
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e-Taxでの申告手順
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確定申告は税務署への書面提出でもできますが、e-Tax(電子申告)が便利です。

手順:

  1. 国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセス
  2. 「所得税の確定申告書作成」を選択
  3. 収入金額を入力(源泉徴収票をもとに)
  4. 「所得控除」の画面で「雑損控除」を選択
  5. 損害金額・保険金額・災害関連支出を入力
  6. 還付金額を確認して送信

マイナンバーカードがあればスマホからも申告可能。確定申告に慣れていない方でも、画面の指示に従えば入力できます。

必要書類一覧
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書類入手先
罹災証明書市区町村の窓口
被害状況の写真自分で撮影
修繕費の見積書・領収書工務店・修理業者
保険金の支払い通知書保険会社
源泉徴収票勤務先
被害資産のリスト自分で作成

写真と修繕費の領収書は特に重要です。片付けや修繕を始める前に、必ず被害状況の記録を残してください。

申告期限と繰越控除(最大3年)
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項目期限
確定申告の期限翌年3月15日まで(通常)
災害の場合の期限延長被災状況により個別延長あり
繰越控除控除しきれない金額を翌年以降3年間繰越可能(特定非常災害の指定を受けた災害による損失は5年間)

被害額が大きく1年分の所得では控除しきれない場合、残りの控除額を翌年以降3年間にわたって繰り越せます。これが雑損控除の大きなメリットです。

: 差引損失額が500万円、今年の控除可能額が200万円の場合 → 残り300万円を翌年以降3年間で控除

よくある間違いと注意点
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原状回復費用と資本的支出の区分
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被災した住宅を修繕する際、「元に戻す費用(原状回復)」は雑損控除の対象ですが、「グレードアップする費用(資本的支出)」は対象外です。

対象になる例: 壊れた壁を元通りに修理する費用 対象にならない例: 被災を機に最新設備にリフォームした費用のうち、グレードアップ分

修繕の際は、見積書を「原状回復分」と「改良分」に分けてもらうと、申告がスムーズです。

生活に通常必要でない資産の除外
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前述の通り、別荘、30万円超の貴金属・骨董品、趣味のコレクションなどは対象外。事業用資産は事業所得の必要経費として処理するため、雑損控除とは別の扱いになります。

確定申告を忘れた場合
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年末調整を受けた給与所得者など、もともと確定申告義務がない方については、その年の翌年1月1日から5年間、還付申告を行うことができます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。「もう遅い」と諦めず、被害年の翌年1月以降、5年以内に申告してください。

まとめ|災害の確定申告チェックリスト
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  • 被害状況の写真を保存しているか確認
  • 修繕費の見積書・領収書を保管
  • 保険金の支払い通知書を保管
  • 罹災証明書を入手
  • 雑損控除と災害減免法のどちらが有利か計算
  • 確定申告書等作成コーナーで申告(翌年3月15日まで)
  • 控除しきれない場合は翌年以降も繰越控除の申告を忘れずに

税金の還付は「申告しないともらえない」制度です。被災後の生活再建に、1円でも多くの資金を確保するために、必ず確定申告を行ってください。手続きがわからない場合は、税務署の相談窓口(電話: 0570-00-5901)や、被災地に派遣される税理士の無料相談を活用しましょう。

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