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防災知識

内水氾濫とは?外水氾濫との違い・都市型水害の原因と対策をわかりやすく解説

更新 2026年4月18日

「うちは川から離れているから水害は関係ない」——この考え、実は非常に危険です。

川が氾濫しなくても浸水は起きます。それが「内水氾濫」です。近年の豪雨で被害が急増しており、特に都市部に住む方は必ず知っておくべき水害のタイプです。

国土交通省の水害統計によると、近年の水害による浸水棟数のうち約6割が内水氾濫によるものです。つまり、浸水被害の過半数は「川が溢れた」のではなく「排水が追いつかなかった」ことが原因なのです。

内水氾濫とは何か
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内水氾濫のメカニズム
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内水氾濫とは、大量の雨水が下水道や排水路の処理能力を超え、排水しきれない水があふれ出す現象です。

通常、雨水は道路の側溝や下水道を通って河川に排出されます。しかし、短時間に大量の雨が降ると、この排水システムのキャパシティを超えてしまう。行き場を失った水が、マンホールから吹き出したり、低い土地に流れ込んだりして浸水被害を起こします。

多くの都市の下水道は、1時間あたり50mm程度の降雨に対応する設計になっています。近年の豪雨では1時間100mmを超える雨が珍しくなくなっており、下水道の能力では対処しきれないケースが増えています。

外水氾濫との違い
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水害には「内水氾濫」と「外水氾濫」の2種類があります。

外水氾濫:河川の水位が上昇し、堤防を越えたり堤防が決壊したりして、河川の水が市街地に流れ込む現象。いわゆる「川の氾濫」。

内水氾濫:河川が氾濫していなくても、排水が追いつかずに市街地が浸水する現象。「排水の氾濫」と言えます。

外水氾濫は河川沿いの地域で発生しますが、内水氾濫は河川から離れた場所でも発生するのが特徴。だから「川が近くにないから安心」という油断が危険なのです。

さらに厄介なのは、外水氾濫と内水氾濫が同時に起きるケース。河川の水位が上昇すると、下水道の排出口が水没して排水できなくなり、内水氾濫が悪化します。

内水氾濫が起きやすい場所
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都市部のアスファルト・地下街
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都市部は内水氾濫のリスクが特に高い場所です。

理由は明確。地面がアスファルトやコンクリートで覆われていて、雨水が地中に浸み込まないからです。

自然の土地なら、雨水の一部は地面に浸透し、地下水となってゆっくり排出されます。しかし都市部では、降った雨のほぼ100%が地表を流れて排水システムに集中します。

都市部のアスファルト舗装の流出係数は約0.85とされており、降った雨のほとんどが地中に染み込まず下水道へ一気に集中します。下水道の処理能力を超えるのは当然です。

地下街はさらに危険。地上で浸水が始まると、水は当然低い方へ流れます。地下街の入り口から大量の水が流れ込み、逃げ場を失った水が地下空間を満たします。

低地・窪地・アンダーパス
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地形的に水が集まりやすい場所は、内水氾濫の「常連」です。

  • 窪地・谷底:周囲から水が集まる地形。ハザードマップでは「浸水深が深い」エリアとして表示される
  • アンダーパス(道路の立体交差の下部):車が水没する事故が毎年発生。わずか10分で水没することもある
  • 半地下・地下室のある建物:浸水するとポンプで排水するしかなく、停電時は手の打ちようがない

地形的に標高が低い地域や、かつて沼や河道だった土地は、排水が集中しやすく内水氾濫の被害を受けやすい傾向があります。

内水氾濫の被害事例
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都市部での浸水被害事例
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2019年の台風19号では、東京都世田谷区で多摩川の外水氾濫と内水氾濫が同時に発生しました。世田谷区の検証報告によると、区内で床上浸水が相次ぎ、下水道からの逆流を含む複合的な浸水が住宅街を直撃しました。

2021年8月の記録的大雨では、佐賀県武雄市で六角川の氾濫と内水氾濫が発生。市内で約1,756棟(床上1,184棟・床下572棟)が浸水被害を受けました。排水ポンプが追いつかず、住宅街が水没した映像は衝撃的でした。

2023年6月の台風2号による大雨では、静岡県磐田市で内水氾濫が発生。道路が冠水し、車が次々と水没しました。

地下街・地下鉄の浸水リスク
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1999年、福岡市の博多駅周辺で集中豪雨による内水氾濫が発生。地下街に大量の水が流れ込み、1名が死亡しました。

この事故をきっかけに、地下街の浸水対策が強化されました。しかし、想定を超える豪雨に対して「絶対安全」とは言えません。

地下街にいるときに大雨が降り始めたら、地上の状況を確認し、冠水が始まる前に地上に出ることが重要です。地下街の水は腰の深さになると、水圧でドアが開かなくなり、脱出が極めて困難になります。

内水氾濫への対策
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ハザードマップで浸水リスクを確認
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まず、お住まいの地域の「内水ハザードマップ」を確認してください。

多くの自治体が、外水氾濫のハザードマップとは別に、内水氾濫のハザードマップを公開しています。国土交通省の「重ねるハザードマップ」でも、内水氾濫の浸水想定区域を確認できます。

確認のポイント:

  • 自宅周辺の想定浸水深はどれくらいか
  • 通勤・通学ルートにアンダーパスはないか
  • 最寄りの避難場所は浸水想定区域外にあるか

止水板・土嚢の備え
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内水氾濫は「水が来る前に防ぐ」ことが可能な場合があります。

止水板:玄関や駐車場の入り口に設置し、水の浸入を防ぐ板。簡易型なら1万円前後から購入可能。

土嚢(どのう):自治体によっては無料配布しているところもある。ホームセンターでも購入可能。

水嚢(すいのう):ゴミ袋に水を入れるだけの簡易的な方法。土嚢がない場合の代替手段として覚えておいてください。

浸水が始まったら:

  1. 玄関・勝手口に止水板や水嚢を設置
  2. トイレ・浴室・洗濯機の排水口に水嚢を置く(下水の逆流防止)
  3. 1階の貴重品を2階に移動

地下室・半地下住宅の対策
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地下室や半地下の住居は、内水氾濫で最もリスクの高い構造です。

  • 排水ポンプの設置 — 停電対応のバッテリー式が望ましい
  • 防水壁・防水扉の設置 — 新築時に検討
  • 保険の加入 — 水災補償がある火災保険に加入しているか確認
  • 浸水時は速やかに1階以上に避難 — 地下に閉じ込められると脱出困難

特に重要なのは保険です。水害による住宅被害は修繕費が高額になります。火災保険の水災補償に加入していれば、内水氾濫による浸水被害も補償対象になります。

まとめ|内水氾濫対策チェックリスト
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内水氾濫は「川が近くなくても起きる水害」です。都市部に住んでいる方、低地に住んでいる方、地下街を利用する方は、特に注意してください。

今すぐ確認すること:

  • 内水ハザードマップで自宅の浸水リスクを確認
  • 通勤・通学路にアンダーパスがないか確認
  • 火災保険の水災補償に加入しているか確認
  • トイレ・浴室の排水口に使える水嚢(ゴミ袋 + 水)の作り方を把握

大雨が予想されたら:

  • 1階の貴重品・家電を2階以上に移動
  • 車を高台の駐車場に移動
  • 土嚢・止水板を設置
  • 排水口に水嚢を設置(下水逆流防止)
  • 浸水が始まったら2階以上に垂直避難

「自分の地域は大丈夫」と思わず、まずはハザードマップを確認する。その一歩が、内水氾濫から身を守る最初の対策です。

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