台風や大雨が迫っている時、土のうは最も手軽で効果的な浸水対策です。
2019年の台風19号の接近時、筆者は近所の防災倉庫で土のう作りを手伝いました。老若男女が集まって黙々と砂を詰める光景は、地域の連帯を感じる場面でしたが、同時に「事前に準備していれば、こんなに慌てなくて済んだのに」という反省もありました。
土のうは作り方さえ知っていれば、誰でも短時間で準備できます。もし砂がなくても、家にあるもので代用品を作れます。
土のうの効果と使い方#
土のうで防げる浸水と防げない浸水#
土のうで防げるのは、水深10〜30cm程度の浸水です。玄関前や排水溝周りに積むことで、水の侵入を食い止めたり、水の流れを誘導したりできます。
防げる浸水:
- 道路からの緩やかな浸水(じわじわ水位が上がるタイプ)
- 排水溝からの逆流を抑制
- 低い部分への水の流入を遮断
防げない浸水:
- 50cmを超える本格的な洪水
- 強い水流を伴う河川の氾濫
- 地下からの湧水
土のうは「完璧な防水」ではなく「浸水を遅らせ、被害を軽減する」ためのもの。これを理解した上で使ってください。
土のうの基本的な積み方(1段・2段・3段)#
1段積み: 高さ約10cm。道路からの水の流入を遅らせる程度。応急処置として。
2段積み: 高さ約20cm。玄関前の軽度な浸水対策として一般的な使い方。
3段積み: 高さ約30cm。ある程度の浸水に対応。ただし3段目は安定性が悪くなるので、しっかりと積む技術が必要。
なお、国土交通省の水防指針では、しっかりした止水効果を得るには**最低45cm(概ね4〜5段)**の高さが必要とされています。30cm未満は「浸水を遅らせる」程度と考えてください(出典: 国土交通省中部地方整備局 手作り水防講座)。
積み方のコツ(国土交通省・自治体マニュアル準拠):
- レンガ積みのように互い違いに配置(目地が通らないように)
- 口を縛った側を**下流(水が流れていく方向)**に向ける
- 土のうの上から踏み固めて隙間を減らす(止水効果が向上)
- 隣の土のうと密着させる
- ブルーシートを水が来る側に敷き、土のうで押さえるとさらに止水効果アップ
必要な個数の計算方法#
開口部を塞ぐのに必要な土のうの数:
| 開口幅 | 1段 | 2段 | 3段 |
|---|---|---|---|
| 90cm(玄関) | 3〜4個 | 7〜8個 | 12〜15個 |
| 180cm(ガレージ小) | 6〜7個 | 14〜16個 | 24〜30個 |
| 270cm(ガレージ大) | 9〜10個 | 20〜24個 | 36〜45個 |
玄関1箇所を2段で塞ぐなら約8個。これが基本的な目安です。
土のうの作り方#
必要な材料(袋・砂・スコップ)#
- 土のう袋: ホームセンターで10枚500〜800円程度。ポリエチレン製が主流
- 砂: ホームセンターで1袋(20kg)200〜400円。園芸用の砂でもOK
- スコップ: 平型スコップが使いやすい
- 紐: 袋の口を縛る用(土のう袋に付属していることも)
砂がない場合、庭の土でも代用可能。なお国土交通省は「水分を含まない乾いた土や砂」の使用を推奨しています。粘土質の土は止水性が高い反面、重く扱いづらいので、入手しやすい乾いた砂・真砂土が現実的です。
効率よく作るコツ(2人作業の手順)#
1人でも作れますが、2人のほうが圧倒的に効率が良い。
手順(2人作業):
- 1人が土のう袋を広げて口を開いて持つ
- もう1人がスコップで砂を入れる(国交省テキストでは「スコップ約6杯」が目安)
- 袋の6〜7割まで砂を入れる(満杯にしない)
- 土が入っていない部分をねじり、紐を2〜3回巻いてしっかり縛る
ポイント: 満杯にしないことが重要。6〜7割にすることで、積んだ時に土のう同士が密着しやすくなり、隙間ができにくくなります。パンパンに詰めると硬くなり、隣の土のうとのなじみが悪くなります(出典: 国土交通省中部地方整備局 水防技術研修テキスト)。
2人作業なら1袋あたり1〜2分。10袋でも20分程度で完成します。
重さの目安と運搬方法#
土のう1袋の重さは約20〜30kg。これを何十個も運ぶのはかなりの重労働。
運搬のコツ:
- 一輪車(ねこ車)があれば3〜4袋まとめて運べる
- ブルーシートの上に並べて引きずるのも有効
- 車で運ぶ場合はトランクにブルーシートを敷いてから積む
作る場所は設置場所の近くがベスト。遠くで作って運ぶのは体力の浪費です。
土のうの代用品 5選#
水のう(ゴミ袋+水で簡単に作れる)#
最も手軽な代用品。家庭にあるゴミ袋と水道水だけで作れます(葛飾区・新座市・草加市など多くの自治体が公式に推奨)。
作り方:
- 40〜45Lのゴミ袋を二重にする
- 持ち運べる程度(袋の半分程度・20L前後)まで水を入れる
- 袋内の空気を抜いて、ねじりながら口をしっかり結ぶ
玄関の幅(約90cm)を塞ぐなら、水のう3〜4個を並べます。さらに段ボール箱に水のうを詰めて連結すると、単独で置くよりも強度が増します(取手市「水のう入り防水壁」)。
砂が手に入らない都市部では、水のうが最も現実的な選択肢です。ただし水のうも土のうと同じく、浅い浸水の初期対応用であり、河川氾濫のような大規模浸水は防げません。危険を感じたら早めの避難が最優先です。
ポリタンク・ペットボトル#
灯油用のポリタンク(18L)や2Lペットボトルに水を入れて並べる方法。土のうほどの効果はありませんが、何もしないよりはマシ。
ポリタンク同士の隙間をタオルや古着で詰めると密閉度が上がります。
吸水土のう(水で膨らむ市販品)#
水を吸って膨張するタイプの市販品。代表的な「アクアブロック」は乾燥状態で約400g、真水に浸けると約3分で約20kgに膨らみます(日水化学工業 公式情報)。
メリット: 軽量コンパクトで保管しやすい、砂・土が不要 デメリット: 1枚500〜800円とやや高い、一度膨らませると乾燥に時間がかかる
事前に購入しておけば、台風接近時に水をかけるだけで即席の土のうが完成。忙しい人や体力に自信がない方に特におすすめ。
段ボール+ゴミ袋#
段ボール箱にゴミ袋を入れ、水を入れる方法。段ボールの箱が型枠の役割を果たし、安定した「水の壁」を作れます。
スーパーでもらえる段ボールとゴミ袋だけで作れるので、コストはほぼゼロ。効果は水のうと同程度。
レジャーシート+重し#
長いレジャーシートを玄関前に広げ、室内側を重し(水入りペットボトルなど)で固定。シートの外側を持ち上げて水を受ける「簡易堤防」を作る方法。
高さは10cm程度が限界ですが、じわじわ来る浸水の初期対応には使えます。
土のうの入手方法#
自治体の無料配布(事前申請の方法)#
多くの自治体では、台風シーズン前に土のう(砂入り完成品)を無料配布しています。
確認方法: 「○○市 土のう 配布」で検索、または市区町村の防災課・道路管理課に問い合わせ
配布方法は自治体によりさまざま:
- 「土のうステーション」で24時間持ち出し可能(例: 水戸市は市内10か所に設置し、必要時にいつでも持ち出せる)
- 市民センター等での窓口配布(例: 藤沢市は最寄りの市民センターで配布、事前連絡が必要)
- 台風接近時に防災部門が戸別配送するケース(蒲郡市など)
- 町内会・自治会を通じての配布
配布数に限りがある場合が多いので、早めの確認がおすすめ。台風直前は在庫がなくなることもあります。
ホームセンターでの購入#
ホームセンターでは土のう袋と砂を別々に購入できます。
- 土のう袋: 10枚500〜800円
- 砂: 20kg入り200〜400円
- 砂利: 20kg入り300〜500円(砂の代用可)
袋と砂を合わせても、10袋分で3,000〜5,000円程度。事前に購入して物置に保管しておくと安心です。
吸水土のうのおすすめ商品#
アクアブロック(日水化学工業): 吸水前400g → 真水に浸けて約3分で約20kgに膨張。国交省NETIS登録品。再利用可能版(ND型)と使い捨て版(NX型)、海水対応版があり、再利用は2〜3回が目安。10枚入りで約8,000〜12,000円程度。 吸水ポリマー土のう(各社): 使い切りタイプが主流。20枚入り6,000円〜とコスパ重視の選択肢。 保管のコツ: 直射日光を避けて屋内で保管。濡れると膨張してしまうため湿気対策も必要。
使用後の処分方法#
使用後の土のうは、中の砂を出して分別する必要があります。
- 袋: 可燃ゴミまたは産業廃棄物(自治体のルールに従う)
- 砂: 庭に撒く、または自治体の回収に出す
- 汚水に浸かった土のう: 細菌汚染の可能性があるため、素手で触らない
自治体によっては、災害後に土のうの回収サービスを行っているところもあります。大量の土のう処分に困ったら、自治体の環境課に問い合わせてください。
吸水土のうは乾燥させれば再利用可能なタイプもありますが、汚水に浸かったものは衛生上、廃棄したほうが安全です。
よくある質問(FAQ)#
Q. 土のうは何日前から積んでおくべき? A. 台風接近の24〜48時間前が目安。早く積みすぎると通行の邪魔になりますが、直前は危険。天気予報で台風接近が確実になったら設置してください。
Q. 土のうを積むのに体力がない場合は? A. 吸水土のうなら軽量で扱いやすい。または水のう(ゴミ袋+水)なら砂を運ぶ必要がなく、蛇口があればその場で作れます。
Q. 土のうの保管期間は? A. 袋の素材にもよりますが、ポリエチレン製で3〜5年、UVカット加工されたもので5〜10年。紫外線に当たると劣化が早まるので、屋内保管が理想です。
Q. マンションの1階でも土のうは使える? A. 使えます。玄関前や共用部の出入口に設置できます。ただし、共用部分への設置は管理組合の了承を得てから行ってください。



