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水害・洪水対策

水害・洪水対策の完全ガイド|浸水を防ぐ方法から避難判断まで

更新 2026年4月10日

2020年7月、熊本県の球磨川が氾濫し、流域で甚大な被害が発生しました。熊本県内の死者は65名、災害関連死を含めると67名に上り、県内の住家被害は約7,400棟に達しました(内閣府・熊本県「令和2年7月豪雨」被害報告)。

この災害は、線状降水帯による記録的な大雨が原因でした。しかし、事前に避難していた方と逃げ遅れた方の差は大きかった。ハザードマップを確認して早期避難した人は助かり、「まだ大丈夫」と判断して自宅にとどまった人が被害に遭いました。

筆者は防災士として被災地支援に参加した経験があります。泥まみれの家を見て、水害の恐ろしさを身体で感じました。

水害の種類を知る(洪水・内水氾濫・土砂災害・高潮)
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洪水(河川氾濫)のメカニズム
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洪水は、大雨により河川の水位が上昇し、堤防を越えたり決壊したりして周辺に水があふれる現象です。

水害は「外水氾濫」(河川の堤防からの越水・決壊による浸水)と、「内水氾濫」(市街地の排水能力を超えて発生する浸水)の2種類に大別されます。

特に注意すべきは、上流で降った雨が数時間後に下流で洪水を引き起こすパターン。自分の地域では雨が弱くても、上流の状況次第で突然水位が上がることがあります。

内水氾濫(都市型水害)の特徴
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内水氾濫は、市街地の排水能力(下水道や水路の容量)を超える雨が降った時に発生します。都市部ではアスファルトやコンクリートが多く、雨水が地面に染み込まないため起きやすい。

2022年9月の台風15号では、静岡市駿河区で24時間降水量416.5mm(観測史上1位)を記録し、市内各所で大規模な内水氾濫が発生。マンホールから水が噴き出し、道路が川のようになる映像は衝撃的でした(気象庁「令和4年台風第15号による大雨」)。

内水氾濫の特徴は「予測が難しい」こと。河川氾濫と違い、水位の上昇が見えにくいため、急に足元の水が増えてパニックになるケースが多い。

土砂災害との複合リスク
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大雨は河川氾濫だけでなく、土砂災害も引き起こします。特に山間部や丘陵地では、洪水と土砂災害が同時に発生する「複合災害」のリスクがあります。

土砂災害は洪水より死亡率が高い。がけ崩れや土石流はスピードが速く、逃げる時間がほとんどないためです。山の近くにお住まいの方は、浸水だけでなく土砂災害のハザードマップも必ず確認してください。

自宅の水害リスクを調べる方法
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ハザードマップの確認手順
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水害対策の第一歩は「自宅のリスクを知ること」。これなしに対策は始まりません。

ステップ1: 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」にアクセス ステップ2: 「重ねるハザードマップ」で自宅の住所を検索 ステップ3: 「洪水」「内水」「高潮」のレイヤーをそれぞれONにして確認 ステップ4: 自宅がどの色のエリアにあるかを確認

色別の浸水深の目安(国交省ハザードマップの閾値0.5m/3m/5m/10m/20mを簡略化):

浸水深被害イメージ
薄黄色0.5m未満床下〜大人の膝下
黄〜オレンジ0.5〜3m1階天井付近まで水没
3〜5m2階床〜天井まで水没
5m以上2階以上(3階建ても危険)

自宅がオレンジ以上のエリアにある場合は、台風・大雨時の早期避難を強くおすすめします。

詳しい読み方は「洪水ハザードマップの見方|色の意味・浸水深・避難行動」で解説しています。

想定浸水深と自宅階数の関係
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ハザードマップで想定浸水深を確認したら、自宅の階数と照らし合わせます。

  • 浸水深0.5m未満: 床下浸水。1階にいても命の危険は低い
  • 浸水深0.5〜3m: 1階天井まで水没の可能性。2階以上への垂直避難が必要
  • 浸水深3〜5m: 2階も危険。3階以上、もしくは建物外への避難が必要
  • 浸水深5m以上: マンション3〜4階でも危険。高台への避難が不可欠

内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」では、床上1.8m以上の浸水が一見して明らかな場合は全壊判定の対象となります。特に木造住宅は流速が速い場合、浸水深3m前後で倒壊・流失のリスクが高まるとされます。鉄筋コンクリートは構造的に水に強いですが、内部の家財は使い物にならなくなります。

過去の浸水履歴の調べ方
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ハザードマップに加えて、過去の浸水履歴を調べることも重要。

  • 市区町村の防災課に問い合わせ
  • 国土交通省「浸水ナビ」で過去の浸水範囲を検索
  • 地域の古老や自治会長に聞く
  • 不動産の重要事項説明書に記載がある場合も

過去に浸水した場所は、同じ規模の雨で再び浸水する可能性が高い。ハザードマップはあくまで「想定」ですが、浸水履歴は「事実」なので、より信頼性の高い情報です。

自宅を水害から守る対策
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止水板の設置
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止水板は、玄関やガレージの開口部に設置して浸水を防ぐ板状の装置。家庭用の止水板は高さ30〜50cmのものが一般的で、床下浸水レベルの水を防げます。

メリット: 設置が簡単で効果が高い デメリット: 開口部の幅に合ったものが必要、水圧が高いと押し倒される可能性

詳しくは「止水板の家庭用おすすめ7選|選び方・設置方法・DIYまで」をご覧ください。

土のう・水のうの準備
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土のうは水害対策の基本。堤防のように積み上げて、水の侵入を防ぎます。

一般的な土のうは1袋あたり約20〜25kgで、メーカー目安では1mあたり5袋(幅90cmなら1段で4〜5袋)。3段積みだと半開き玄関(幅約80cm)で15袋前後、両開き玄関(幅約160cm)で30袋前後が必要です。自治体で無料配布しているところも多いので、事前に入手方法を確認しておきましょう。

土のうが手に入らない場合は「水のう」で代用可能。ゴミ袋に水を入れるだけで即席の土のうになります。

詳しい作り方は「土のうの作り方と代用品|緊急時にすぐできる水害対策」で解説しています。

排水ポンプの活用
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浸水が始まった場合、排水ポンプで水を汲み出す方法があります。家庭用の水中ポンプは5,000〜20,000円程度で購入可能。

ただし、排水ポンプは電気が必要なので、停電時にはポータブル電源との組み合わせが必要です。また、ポンプの排水能力を超える浸水には対応できないので、過信は禁物。

家財の上階移動
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台風や大雨の予報が出たら、1階にある貴重品や重要書類、家電を2階以上に移動させます。

移動の優先順位:

  1. 重要書類(通帳、保険証券、登記簿など)
  2. パソコン・外付けHDD(データは無形の財産)
  3. 高額な家電(テレビ、冷蔵庫は移動が難しいが可能なら)
  4. 思い出の品(写真アルバム、子どもの作品など)

筆者が被災地支援で見た中で、最も悔やんでいたのが「写真が全部ダメになった」という声。データはクラウドにバックアップしておくのが最も安全です。

水害時の避難判断と行動
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避難情報(警戒レベル1〜5)の意味
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レベル発表者情報名取るべき行動
1気象庁早期注意情報最新情報に注意
2気象庁大雨・洪水注意報避難行動を確認
3市町村高齢者等避難高齢者・障害者は避難
4市町村避難指示危険な場所から全員避難
5市町村緊急安全確保命を守る最善の行動

2021年に災害対策基本法が改正され、「避難勧告」は廃止。レベル4は「避難指示」に一本化されました。レベル4が出たら迷わず避難してください。

垂直避難と水平避難の使い分け
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水平避難: 危険な場所から離れて、避難所や安全な場所に移動すること。最も安全な避難方法。

垂直避難: 自宅や近くの建物の2階以上に避難すること。水平避難が間に合わない場合の次善策。

判断の目安:

  • 避難場所まで安全に移動できる → 水平避難
  • すでに外が冠水している → 垂直避難
  • 夜間で外の状況が見えない → 垂直避難
  • 土砂災害の危険がある → 水平避難(垂直避難では不十分)

「逃げ遅れたら垂直避難」が基本ですが、木造住宅で浸水深3m以上が想定される場合は、倒壊リスクがあるため垂直避難では不十分です。

車での避難が危険な水深
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水深状況
10cmくるぶし程度。歩行に影響なし
30cm膝下。マフラー・吸気口の位置によってはエンジン停止
60cm前後JAFのユーザーテストではセダンでドアが重く開けにくい
タイヤが完全に水没車体が浮き始め、ハンドル・ブレーキが利かなくなる(国土交通省・JAF)

アンダーパス(道路が低くなっている場所)は特に危険。短時間で水深が2m以上に達することがあり、毎年のように車が水没する事故が起きています。冠水した道路には絶対に進入しないでください。

水害時に役立つ情報ツール
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正確な情報をリアルタイムで把握することが、適切な避難判断につながります。

キキクル(気象庁): 土砂災害・浸水害・洪水の危険度を地図上にリアルタイム表示。色別で一目瞭然。紫になったら避難を検討してください。

川の防災情報(国土交通省): 全国の河川水位をリアルタイムで確認可能。河川カメラの映像も公開されており、実際の水の状況を目で見られます。自宅近くの河川を「お気に入り」登録しておくと便利。

Yahoo!防災速報アプリ: 河川洪水情報のプッシュ通知が届く。就寝中でも通知音で気づける設定にしておくことを推奨します。

重ねるハザードマップ(国土交通省): 洪水・内水・土砂災害のリスクを同一マップ上で確認可能。平時のリスク確認に最適なツール。

筆者は台風接近時、キキクルと川の防災情報を30分おきにチェックしています。情報を確認する習慣があるかないかで、避難判断のスピードが全く違います。

水害後の対応と復旧
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浸水した家の片付け手順
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浸水後の片付けは、健康被害を防ぐために正しい手順で行う必要があります。

手順1: 泥の除去 - 水が引いたらすぐに泥をかき出す。時間が経つと固まって除去が難しくなる 手順2: 洗浄 - 水道水で床・壁を洗い流す 手順3: 消毒 - 消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウム(0.1%溶液)で消毒 手順4: 乾燥 - 扇風機や除湿機で徹底的に乾燥。床下は1〜2週間かけて乾かす 手順5: カビ対策 - 乾燥後も1ヶ月程度はカビの発生に注意

浸水した家の泥にはさまざまな細菌が含まれています。作業時は長靴、ゴム手袋、マスク、ゴーグルを必ず着用してください。

罹災証明・保険申請
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罹災証明書: 市区町村に申請。被害の程度(全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊)が認定され、支援金や税の減免の基準になります。

火災保険(水災補償): 火災保険に「水災補償」が付いていれば、浸水被害に対して保険金が支払われます。一般的な支払い基準は、(1)建物・家財の再調達価額の30%以上の損害、または(2)床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水、のいずれかを満たすこと。詳細は契約内容を事前に確認してください。

申請のポイント: 片付け前に被害状況を写真・動画で徹底的に記録すること。日付入りで、さまざまな角度から撮影。これが保険金額に直結します。

水害に強い家づくり・住まい選びのポイント
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これから家を建てる方、引っ越しを検討している方向けに、水害リスクを減らすポイントを紹介します。

立地選び

  • ハザードマップで浸水想定区域外の土地を選ぶ
  • 過去の浸水履歴を自治体に確認する
  • 周囲より標高が高い場所を選ぶ
  • 河川・用水路から十分な距離を取る

建築時の対策

  • 基礎を高くする(かさ上げ基礎)
  • 1階をピロティ(柱のみ)にして居住空間を2階以上に
  • 防水性の高い外壁材を選ぶ
  • 電気設備(分電盤、コンセント)を高い位置に設置

既存住宅の対策

  • 止水板を設置できるように玄関周りを整備
  • 排水ポンプの設置
  • 壁面の防水コーティング
  • 重要な設備(給湯器など)を高い位置に移設

国土交通省は「水害に強いまちづくり」を推進しており、自治体によっては浸水対策のリフォームに補助金を出しているところもあります。

よくある質問(FAQ)
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Q. ハザードマップで安全なエリアなら水害の心配はない? A. 完全には安心できません。ハザードマップは「一定の条件下での想定」であり、想定を超える雨量で浸水する可能性はあります。2019年の台風19号では、ハザードマップの想定範囲を超えた浸水が複数箇所で発生しました。

Q. マンションの高層階に住んでいれば水害は無関係? A. 建物自体は安全でも、停電・断水・エレベーター停止が起きると、生活に大きな影響が出ます。高層階で停電するとポンプが動かず断水になるマンションも多い。備蓄は必要です。

Q. 浸水した車は修理できる? A. 水深や水没時間によります。マフラーまで浸かった程度なら修理可能な場合もありますが、エンジンに水が入った場合は修理不能で廃車になることが多い。車両保険の「水災」または「自然災害」補償で対応できる場合があります。

Q. 水害に備えて引っ越しを検討すべき? A. ハザードマップで浸水深3m以上が想定される地域に住んでいる場合は、検討する価値があります。自治体によっては水害リスクの高い地域からの移転に補助金を出しているところもあります。

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