政府推奨の備蓄日数とその根拠#
「備蓄って3日分でいいんですよね?」
防災セミナーで最も多い質問のひとつです。結論から言うと、最低3日分、できれば7日分。ただし、これには明確な根拠があり、住んでいる地域や想定する災害によって変わります。
最低3日分の根拠(ライフラインの復旧目安)#
内閣府の「防災基本計画」では、各家庭に最低3日分の備蓄を推奨しています。この「3日」は、大規模災害発生後に救援物資の供給が始まるまでの目安です。
具体的には以下のデータに基づいています。
- 電気:大規模地震後の停電復旧まで数日〜数週間(東日本大震災では発生後8日で約94%復旧)
- 水道:断水からの復旧まで数日〜数週間(首都直下地震の東京都被害想定では約17日)
- ガス:都市ガスの復旧は電気・水道より大幅に遅く、首都直下地震では1〜2か月を要すると想定される
- 物流:救援物資が避難所に届き始めるまで約72時間(内閣府のシミュレーション)
つまり3日分というのは「最低限ここまでは自力で持ちこたえてください」というラインです。
7日分が推奨される理由(大規模災害時)#
南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような超広域災害では、3日分では足りない可能性が高い。
東京都は「東京備蓄ナビ」など公式ツールで、まず3日分を目標に、1週間(7日分)を見据えた備蓄を推奨しています。理由は以下のとおり。
- 広域で同時被災するため、救援物資の供給が遅れる
- 道路やインフラの損傷で物流が長期間停滞する
- 避難所の収容能力を超える避難者が発生する
2024年の能登半島地震では、孤立集落の陸路アクセス解消まで約18日を要し、一部集落では1か月以上孤立が続きました。半島という地理的条件もありましたが、3日分の備蓄では到底足りなかった実例です。
筆者の結論は明確です。まずは3日分を確実に揃え、余裕ができたら7日分に拡充する。「7日分じゃないと意味がない」と考えて何もしないよりも、3日分でもいいから今日始めるほうが100倍重要です。
1人1日分の備蓄量の具体例#
「3日分」「7日分」と言われても、具体的にどれだけの量なのか想像しにくいですよね。ここでは1人1日分の内訳を示します。
水:1日3リットルの内訳#
厚生労働省のガイドラインでは、1人1日あたり3リットルの飲料水が必要とされています。
内訳は以下の通りです。
- 飲み水:約1.5〜2リットル
- 調理用水:約1〜1.5リットル(アルファ米、カップ麺など)
3日分 = 9リットル(2Lペットボトル約5本) 7日分 = 21リットル(2Lペットボトル約11本)
これとは別に生活用水(トイレ、洗い物、体拭きなど)が必要です。生活用水は備蓄水とは別に、浴槽に水を張っておくか、ポリタンクで確保するのが現実的です。
食料:1日3食 + 間食の内訳#
1人1日分の食料は、成人男性で約2,000〜2,400kcalが目安(農林水産省の食事摂取基準を参考)。
1日分の食事例
| 食事 | メニュー例 | カロリー目安 |
|---|---|---|
| 朝食 | カロリーメイト1箱 + 野菜ジュース | 約500kcal |
| 昼食 | アルファ米(五目ごはん)+ さば缶 | 約600kcal |
| 夕食 | パックごはん + レトルトカレー | 約700kcal |
| 間食 | ようかん + ビスケット | 約300kcal |
| 合計 | 約2,100kcal |
ここで見落としがちなのが間食です。災害時はストレスがかかるため、甘いものやお菓子の備蓄も重要。特に子どもがいる家庭では、お菓子が心の支えになります。
お菓子の備蓄については「非常食のお菓子おすすめ12選」で詳しく紹介しています。
トイレ:1日5〜7回分#
トイレは見落としがちですが、水と食料と同じくらい重要です。
- 成人の平均トイレ回数:1日5〜7回
- 3日分 = 15〜21回分
- 7日分 = 35〜49回分
非常用トイレの選び方は「非常用トイレ完全ガイド」を参照してください。
家族人数別の備蓄量早見表#
1人暮らし / 2人暮らし / 4人家族#
以下の表で、お住まいの家族人数に合わせた備蓄量をすぐに確認できます。
3日分の備蓄量
| 品目 | 1人 | 2人 | 4人 |
|---|---|---|---|
| 水(2Lペットボトル) | 5本 | 9本 | 18本 |
| 非常食 | 9食 | 18食 | 36食 |
| 非常用トイレ | 15回分 | 30回分 | 60回分 |
| カセットボンベ | 3本 | 3本 | 6本 |
7日分の備蓄量
| 品目 | 1人 | 2人 | 4人 |
|---|---|---|---|
| 水(2Lペットボトル) | 11本 | 21本 | 42本 |
| 非常食 | 21食 | 42食 | 84食 |
| 非常用トイレ | 35回分 | 70回分 | 140回分 |
| カセットボンベ | 6本 | 6本 | 12本 |
4人家族で7日分の水42本(84リットル)を見ると途方に暮れるかもしれませんが、段ボール箱にすると約7箱分。押入れ1か所に収まるサイズです。
乳幼児・高齢者がいる場合の追加分#
標準の備蓄量に加えて、以下を追加してください。
乳幼児(0〜2歳)の追加分
- 液体ミルク:1日6〜8回分 × 日数
- 紙おむつ:1日8〜10枚 × 日数
- おしりふき:1パック以上
- 離乳食(月齢に応じて)
高齢者の追加分
- 常備薬:最低7日分(処方薬)
- お薬手帳のコピー
- 柔らかい非常食(おかゆ、ゼリー飲料等)
- 大人用おむつ(必要に応じて)
- 入れ歯・入れ歯洗浄剤
備蓄量を減らすコツ#
「7日分なんて量が多すぎる…」という方のために、備蓄量を効率的に減らす方法を紹介します。
給水拠点・炊き出しとの組み合わせ#
災害発生から24〜72時間で、自治体による給水車の巡回や炊き出しが始まるケースが一般的です。つまり、すべての食料と水を自前で賄う必要はありません。
自治体の支援を見込んだ備蓄の考え方
- 1〜3日目:100%自前の備蓄で賄う
- 4〜7日目:自前50% + 自治体支援50%
この考え方なら、7日分のフル備蓄ではなく「3日分のフル備蓄 + 4日分の半量備蓄」で対応可能。実質的には5日分程度の備蓄量で7日間を乗り切れます。
ただし、これは給水拠点や炊き出しが実施されることが前提です。自宅が給水拠点から遠い場合や、過疎地域では自前の備蓄量を多めに見積もってください。
カセットコンロで調理幅を広げる#
カセットコンロがあると、お湯を沸かせるので食べられる非常食の幅が広がります。
- アルファ米をお湯で作ると15分(水だと60分)
- カップ麺がそのまま食べられる
- レトルト食品を温められる
- コーヒーやお茶を入れられる(精神的な安定)
カセットボンベ1本で約60分使用可能。3日分の調理なら3本、7日分なら6本が目安です。
まとめ|我が家の備蓄量計算シート#
最後に、自分の家庭に必要な備蓄量を計算してみましょう。
計算式
- 水:3L × 家族人数 × 日数 = ____L(÷ 2 = 2Lペットボトル____本)
- 食料:3食 × 家族人数 × 日数 = ____食分
- トイレ:5回 × 家族人数 × 日数 = ____回分
- カセットボンベ:日数 ÷ 1.2 ≒ ____本(端数切り上げ)
例:4人家族・7日分
- 水:3L × 4人 × 7日 = 84L(2Lペットボトル42本)
- 食料:3食 × 4人 × 7日 = 84食分
- トイレ:5回 × 4人 × 7日 = 140回分
- カセットボンベ:7日 ÷ 1.2 ≒ 6本
数字を見て圧倒されるかもしれませんが、一度に全部揃える必要はありません。今月は水、来月は食料、再来月はトイレ…と少しずつ増やしていけば大丈夫。大切なのは「何もしないゼロ」から「最初の1歩」を踏み出すことです。



