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暮らし・家族の防災

高齢者の防災対策と備え|離れて暮らす親の安全を守る方法

更新 2026年4月18日

高齢者が災害で命を落とすリスクは、若い世代とは比較になりません。

内閣府の「令和元年版 防災白書」によると、東日本大震災における死者の約6割が60歳以上でした。熊本地震の災害関連死に至っては、約78%が70歳以上。2024年1月の能登半島地震では、災害関連死の約98%が60歳以上という深刻な実態が明らかになっています(内閣府「令和7年版防災白書」)。高齢者にとって災害は、他の世代以上に命に直結する脅威です。

私は防災士として高齢者施設での防災講座も担当していますが、「自分は大丈夫」と思っている方が驚くほど多い。そして、離れて暮らすお子さん世代からは「親の防災が心配だけど、何をしてあげればいいかわからない」という相談をよく受けます。

この記事は、高齢のご本人と、離れて暮らすご家族の両方に向けて書きました。

高齢者が災害時に直面するリスク
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避難の遅れ・体力の問題
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高齢者が被災時に最も危険なのは「逃げ遅れ」です。

足腰の衰え、視力・聴力の低下、判断力の鈍化——これらが複合的に重なると、避難開始が遅れます。消防庁の統計では、水害による死者の多くが「避難しなかった」または「避難が間に合わなかった」高齢者です。

加えて、避難行動そのものが体力的に厳しい。重い防災リュックを背負って長距離を歩くことは、70代・80代にとって大きな負担です。通常の防災リュックの重量目安は5〜8kgですが、高齢者の場合は3〜5kgに抑える必要があります。

持病の薬・医療機器への依存
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高齢者の多くは何らかの持病を抱えています。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の約8割が何らかの慢性疾患を持っています。

高血圧の薬、糖尿病の薬、心臓病の薬——これらは「飲み忘れたら命に関わる」レベルのものが多い。災害時に薬が手に入らなくなる事態は、高齢者にとって直接的な生命の危機です。

在宅酸素療法を受けている方、人工透析が必要な方、ペースメーカーを使用している方は、さらにリスクが高い。これらの医療機器は電力を必要とするため、停電が命に直結します。

高齢者向け防災グッズリスト
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お薬手帳・常備薬の備蓄
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最重要アイテムはお薬手帳のコピーです。

災害時、かかりつけ医にかかれない場合でも、お薬手帳があれば別の医師が同じ薬を処方できます。原本とは別に、コピーを防災袋に入れておいてください。スマホにお薬手帳アプリを入れておくのも有効です。

常備薬は最低1週間分を備蓄。東日本大震災では、医療支援が行き届くまでに1週間以上かかった地域もありました。かかりつけ医に「災害用に多めに処方してほしい」と相談すれば、対応してくれるケースが多いです。

その他の医療関連備蓄:

  • 保険証のコピー
  • かかりつけ医の連絡先(紙に書いて)
  • 持病や服薬情報を記したカード(財布に入れておく)
  • 血圧計(電池式)

杖・補聴器・老眼鏡の予備
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普段使っている補助器具の予備を防災袋に入れてください。

  • 老眼鏡の予備 — 避難所での情報収集に必要。100均でも良いので1本
  • 補聴器の予備電池 — 聞こえないことは避難情報の取得に直結する
  • — 折りたたみ式の杖を防災袋に入れておく
  • 入れ歯ケース+洗浄剤 — 食事に直結

これらは「なくても死なない」と思われがちですが、避難所生活のQOLを大きく左右します。老眼鏡がなければ配布される書類が読めない。補聴器がなければ避難所のアナウンスが聞こえない。

軽量な持ち出し袋
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高齢者の持ち出し袋は軽さが正義です。

標準的な防災リュックの中身を減らし、3〜5kgに収めてください。重くて持てない防災リュックは、結局持ち出さずに避難することになります。

軽量化の優先順位:

  1. 薬・医療関連(絶対に外さない)
  2. 水500ml × 2本(1L分のみ)
  3. 簡易トイレ × 5回分
  4. ヘッドライト
  5. モバイルバッテリー
  6. 食料(えいようかん等の軽量高カロリー食品)
  7. 身分証明書・保険証のコピー

リュック型が理想ですが、腰が曲がっている方はショルダーバッグ型やキャリーバッグ型も選択肢に入ります。

離れて暮らす親のためにできること
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安否確認の手段を複数持つ
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災害時、電話はまず繋がりません。東日本大震災では、固定電話・携帯電話ともに約90%の通話規制がかかりました。

複数の連絡手段を事前に決めておくことが不可欠です。

  • 災害伝言ダイヤル171 — 固定電話・携帯電話から利用可能。毎月1日と15日に体験利用できるので、親御さんと一緒に練習してください
  • 災害用伝言板(web171) — インターネット経由で安否を確認
  • LINE — 高齢者でも使いやすいツール。既読機能で安否がわかる
  • 家族間の集合場所を決めておく — 連絡が取れない場合の合流地点

ポイントは「高齢の親が実際に使えるか」です。災害伝言ダイヤルの使い方は、事前に一緒に練習しないと本番で使えません。

自治体の避難行動要支援者名簿への登録
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災害対策基本法に基づき、各自治体は「避難行動要支援者名簿」を作成しています。この名簿に登録すると、災害時に自治体や地域の支援者が安否確認や避難支援を行ってくれます。

登録対象は、要介護認定を受けている方、障害のある方、75歳以上の一人暮らし高齢者などです。対象条件は自治体によって異なるので、親御さんの住む自治体に確認してください。

名簿への登録は親御さん本人の同意が必要です。「自分は大丈夫」と登録を嫌がる方もいますが、「万が一のための保険」として説得してください。

見守りサービスの活用
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近年、高齢者向けの見守りサービスが充実しています。

  • 自治体の見守りサービス — 定期的な安否確認電話や訪問
  • セキュリティ会社のサービス — ALSOKやSECOMの高齢者向けプラン。緊急ボタン付き
  • IoT見守り機器 — 電気ポットの使用状況で安否を確認するサービス(象印「みまもりほっとライン」など)
  • スマートスピーカー — 「OK Google、○○に電話して」で簡単に連絡

費用は月額数百円〜数千円と幅がありますが、離れて暮らす不安を考えれば十分に価値のある投資です。

高齢者の避難のポイント
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警戒レベル3(高齢者等避難)で行動
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2021年の災害対策基本法改正で、警戒レベル3は「高齢者等避難」と名称が変更されました。

この意味は明確です。レベル3が出たら、高齢者は避難を開始する。レベル4(避難指示)を待ってはいけません。

高齢者は移動に時間がかかります。早め早めの行動が命を守ります。レベル3の段階で避難所に向かい、レベル4の段階では既に安全な場所にいる——これが理想です。

離れて暮らすご家族は、警戒レベル3が発令されたらすぐに親御さんに電話して「今すぐ避難して」と伝えてください。本人の判断に任せると「まだ大丈夫」と避難が遅れるケースが非常に多いのです。

福祉避難所の確認
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一般の避難所での生活が困難な高齢者のために、「福祉避難所」が指定されています。バリアフリー対応で、介護スタッフが配置される避難所です。

2021年の内閣府ガイドライン改定により、個別避難計画に福祉避難所への直接避難が明記されている場合は、一般避難所を経由せず直接福祉避難所へ避難できる仕組みが整備されました。ただし、自治体によって受入対象者の指定や運用状況が異なります。事前に親御さんの住む自治体に確認しておきましょう。

親御さんのお住まいの地域の福祉避難所がどこにあるか、どうすれば利用できるか——これを把握しておくだけでも、いざという時の安心感が違います。

まとめ|高齢者防災チェックリスト
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高齢者の防災は、本人だけの問題ではありません。離れて暮らす家族が一緒に備えることで、格段に安全性が高まります。

高齢者ご本人の準備:

  • お薬手帳のコピーを防災袋に入れる
  • 常備薬1週間分を備蓄
  • 軽量な持ち出し袋を準備(3〜5kg)
  • 老眼鏡・補聴器電池の予備を確保
  • 避難行動要支援者名簿に登録

離れて暮らす家族の準備:

  • 安否確認手段を3つ以上決めておく
  • 災害伝言ダイヤル171を一緒に練習する
  • 親の住む地域のハザードマップを確認
  • 福祉避難所の場所を把握
  • 見守りサービスの導入を検討

次の帰省のとき、親御さんと一緒に防災について話してみてください。「防災袋を作ろう」と声をかけるだけでも、大きな一歩になります。

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