2018年(平成30年)9月6日午前3時7分、北海道胆振地方中東部を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生し、厚真町で最大震度7を観測しました。40名を超える犠牲者を出したほか、全道が停電する日本初のブラックアウト(エリア全域停電)が発生しています。
(出典:内閣府 令和元年版防災白書)
この地震は、土砂崩れと液状化(地震の揺れで地中の水と砂が混合し、地盤が流動化する現象)という直接被害に加え、現代社会の電力依存という構造的脆弱性を広く顕在化させた点で、防災史上の大きな転換点となりました。「停電になれば水も情報も医療も止まる」という現実が、全道民に突きつけられた震災です。
地震の概要と被害データ#
基本情報#
| 項目 | データ |
|---|---|
| 発生日時 | 2018年(平成30年)9月6日(木)午前3時7分 |
| 震源 | 北海道胆振地方中東部(北緯42.7度、東経142.0度)、深さ約37km |
| 規模 | マグニチュード6.7 |
| 最大震度 | 7(厚真町) |
| 地震の型 | 内陸地殻内地震 |
(出典:内閣府 平成30年北海道胆振東部地震に係る被害状況等について)
北海道で震度7が観測されたのは観測史上初のことです。安平町では最大加速度1,796galが計測され、1995年の阪神・淡路大震災の2倍以上の加速度が地表を直撃しています。
(出典:気象庁 平成30年9月6日03時08分頃の胆振地方中東部の地震について)
主要地点の震度分布は以下のとおりです。
| 震度 | 主な該当地域 |
|---|---|
| 震度7 | 厚真町 |
| 震度6強 | 安平町、むかわ町 |
| 震度6弱 | 札幌市東区、千歳市、日高町、平取町 |
| 震度5強 | 苫小牧市、江別市、恵庭市、長沼町など |
| 震度5弱 | 函館市、室蘭市、岩見沢市、登別市など |
(出典:内閣府 平成30年北海道胆振東部地震に係る被害状況等について)
人的・物的被害#
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 死者 | 44名(うち厚真町の土砂崩れによる犠牲者36名) |
| 負傷者 | 760名以上 |
| 住家全壊・半壊・一部損壊 | 約25,000棟 |
| 最大避難者数 | 約40,000人(ピーク時) |
| 停電戸数 | 約295万戸(道内全域) |
| 断水戸数 | 最大68,249戸(44市町村) |
| 農林水産関係被害額 | 1,144.7億円 |
(出典:内閣府 令和元年版防災白書、内閣府 平成30年北海道胆振東部地震に係る被害状況等について)
死因の分析#
| 死因 | 割合 | 人数 |
|---|---|---|
| 土砂崩れによる圧死・窒息 | 約82% | 36名 |
| その他(建物倒壊等) | 約18% | 8名 |
(出典:見守りサービスPeaceSign 北海道胆振東部地震)
死者の多くが厚真町の土砂崩れに集中している点が、阪神・淡路大震災や熊本地震とは大きく異なる特徴です。厚真町では就寝中に土砂崩れが直撃し、震度7の直撃地域では家屋倒壊等による犠牲者も出ました。火山灰地質の斜面が台風直後の飽和水分を含んだ状態で地震動を受け、6,000か所以上の山腹崩壊が同時多発したため、深夜に就寝していた住民が逃げる時間を持てませんでした。
(出典:内閣府 事例コード201802)
発災から復興までの時系列#
前例のない全道停電が人々の生活を長期間にわたって脅かした震災です。
発災直後〜3日間(救命期)#
| 日時 | 出来事 |
|---|---|
| 9月6日 3:07 | 地震発生。厚真町で震度7を観測 |
| 9月6日 3:09 | 北海道災害対策本部が設置。官邸対策室も同時刻に設置 |
| 9月6日 3:10 | 総理指示(被害状況把握・救助対策・被害拡大防止の3点) |
| 9月6日 3:25頃 | 苫東厚真火力発電所の緊急停止をきっかけに全道で停電が発生。約295万戸が停電 |
| 9月6日 6:00 | 陸上自衛隊に災害派遣要請。救出救助・給水支援が開始 |
| 9月6日終日 | 新千歳空港が全面閉鎖・全便欠航。JR北海道・地下鉄等の公共交通が全面運休 |
| 9月7日 | プッシュ型支援調整会議が設置。食料・飲料水・生活物資の供給が開始。自衛隊ヘリによる水の輸送も実施 |
| 9月7日 22:00 | 避難者数が最大13,111人(札幌市だけで7,257人)に達する |
| 9月8日 0:13 | 北海道電力の復旧作業が進み、道内概ね全域で電力供給が再開(停電発生から約45時間) |
(出典:北海道庁 平成30年北海道胆振東部地震災害検証について、内閣府 令和元年版防災白書)
停電の解消までに約45時間を要しています。苫東厚真火力発電所の主力3基のうち2号機・4号機が地震直後に自動停止し、1号機もボイラー管損傷により停止したことが引き金でした。発電所1か所への集中依存が、地震の直接被害を全道規模の機能不全へと増幅させた構図です。
一方、政府の初動は迅速でした。発災2分後に官邸対策室が設置され、プッシュ型支援(被災自治体の要請を待たずに国が物資を送り込む方式)も翌日には発動しています。阪神・淡路大震災で問題になった「要請主義の壁」が制度的に解消されていたことが、この速さを支えました。
(出典:内閣府 災害事例)
1週間〜1か月(避難期)#
| 日時 | 出来事 |
|---|---|
| 9月14日 | 「被災者生活再建支援法」の適用が決定 |
| 9月21日 | 政府が激甚災害指定の見込みを公表 |
| 9月25日 | 厚真町・安平町・むかわ町で第1期応急仮設住宅の建設が着工 |
| 9月28日 | 「激甚災害」の指定政令を閣議決定。国の財政支援が強化 |
(出典:内閣府 災害事例、安平町 北海道胆振東部地震 災害検証報告書)
ライフラインの応急復旧状況は以下のとおりです。
| ライフライン | 概ね復旧までの期間 |
|---|---|
| 電力 | 約45時間(9月8日未明) |
| 断水 | 概ね3日(電力復旧後に順次解消) |
| 新千歳空港 | 翌9月7日に一部再開 |
| 公共交通(JR等) | 9月6日中に順次再開 |
(出典:北海道庁 平成30年北海道胆振東部地震災害検証について)
電力の復旧が断水解消の前提条件だった点に、今回の震災の構造的な特徴があります。水の供給が電力に紐付いていたため、電力さえ戻れば断水も急速に解消に向かいました。阪神・淡路大震災で水道の応急復旧に3か月を要したのとは対照的です。
1か月〜復旧始動期#
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 10月4〜9日 | 最後まで残っていた一部地域の停電・断水がほぼ完全に解消 |
| 2018年度中 | 7県から延べ2,951名の応援職員が被災3町(厚真・安平・むかわ)へ派遣。罹災証明書交付や避難所運営を支援 |
| 2020年度末 | 札幌市清田区里塚地区等の地盤復旧が完了(「早期復旧モデル」として注目) |
(出典:総務省 平成30年北海道胆振東部地震における被災市町村への応援職員の派遣、北海道 平成30年北海道胆振東部地震 検証報告書)
札幌市清田区の復旧では、有識者を意思決定の主体ではなく技術的アドバイザーに位置づけ、行政が主体的に判断を行う「早期復旧モデル」が採用されました。過去の震災事例を事前研究し、発生しうるトラブルを先回りして対処することで、通常は長期間を要する大規模地盤復旧を約2年で完了させています。
発生条件がもたらした特有の問題#
この震災の被害を拡大させた要因は、「深夜の発生」「台風直後の地盤飽和」「火山灰地質」「電力の一極集中」という4つの条件が重なり合ったことにあります。
深夜(午前3時7分)に発生したことによる問題#
午前3時7分は、住民の大半が就寝中の時間帯です。厚真町における大規模な山腹崩壊は、ほとんどの住民が逃げる間もなく発生しました。建物の倒壊や家具の転倒に対してとっさの行動をとることが困難だったうえ、地震直後に全道停電が重なったため、真っ暗闇の中で状況把握も避難もしなければならない状況に陥りました。
(出典:見守りサービスPeaceSign 北海道胆振東部地震)
暗闇の中では、足元の危険に気づかないまま動き出すリスクがあります。懐中電灯や電池式ランタンを枕元に置く習慣が、こうした深夜発生の地震では命取りを分けます。
台風直後(地盤飽和)という時期特有の問題#
地震発生の前日、9月5日には台風21号が北海道を直撃していました。強風と大雨により、震源周辺の山間部の地盤はすでに含水量が限界に達した状態でした。この気象災害によって脆弱化した地盤に対して強烈な地震動が加わったことが、厚真町を中心とする前述の大規模崩壊を引き起こした主因です。
(出典:内閣府 令和元年版防災白書)
火山灰地質という地域特有の問題#
震源周辺の厚真町一帯は、樽前山などの噴火に由来する軽石・火山灰層(Ta-d2テフラ等)が厚く堆積している地域です。火山灰は通常の土壌より軽く、隙間が多く水を含みやすい性質を持ちます。この地質的特性が、前述の大規模な山腹崩壊を引き起こした地域固有の要因です。
(出典:北海道大学 いいね!Hokudai 厚真に生きる、厚真に学ぶ)
また札幌市清田区里塚地区では、谷を火山灰質の土で埋め立てた盛土造成地が液状化し、国内2例目となる「地盤流動」が発生しました。山の斜面そのものが流動化するこの現象は、平地が振動する一般的な液状化とは異なり、住宅地に壊滅的な打撃を与えています。
(出典:内閣府 令和元年版防災白書)
電力依存社会という時代背景特有の問題#
北海道の電力ネットワークは本州との電力連系が弱く、孤立系統に近い特性を持っていました。そのうえ、道内電力の約半分を苫東厚真火力発電所1か所に依存していたため、この発電所が停止した瞬間に全道の需給バランスが崩壊し、他の発電所も連鎖的に停止する事態に至りました。
2018年はインバウンド(訪日外国人観光客)が急増していた時期でもあります。新千歳空港や札幌市内で多くの外国人が帰宅困難者となりましたが、多言語での情報発信が不十分で、行き先を失った観光客がパニックに陥る事態が発生しました。
(出典:国土交通省 北海道胆振東部地震における旅行者対応の振り返り)
現在も変わらない「停電=情報途絶」のリスク#
2018年の北海道での経験は、2024年の能登半島地震でも形を変えて繰り返されています。能登半島地震では基地局の損壊により被災地の通信が長期間途絶し、「情報の孤島」状態が復旧活動を妨げました。スマートフォンが普及した現代でも、停電と回線断絶が重なれば情報環境は急速に崩壊します。
家族がバラバラの場所にいる時間帯に被災した場合を想定し、災害用伝言ダイヤル(171)の使い方、連絡がつかない場合の集合場所、避難先の優先順位を事前に家族で決めておくことが重要です。
震災時の困りごとと想定外のトラブル#
通信網の途絶と情報孤立・デマの拡散#
停電によってテレビからの情報収集ができなくなり、頼みの綱であるスマートフォンも充電できなくなりました。時間が経つにつれて携帯電話の基地局の予備電源が枯渇し、通信障害が拡大。家族の安否確認すらできない「情報孤立」状態に陥った住民が続出しました。
情報が不足する中で、SNSや口コミを通じて「あと数時間で札幌市内の水道がすべて止まる」「〇〇地区に断水が来る」といった根拠のないデマが急速に拡散し、不安に駆られた市民が水の買い占めに走るパニックが発生しています。
(出典:サーベイリサーチセンター 北海道胆振東部地震から1年 災害によるライフラインの停止)
マンション等での断水とトイレ問題#
停電がもたらした被害の中でも、とりわけ深刻だったのが集合住宅(マンション)の給水システム停止です。高層階へ水を汲み上げる電動ポンプ(受水槽方式)が止まったため、建物自体に被害がなくても蛇口から水が出なくなりました。飲料水の確保もさることながら、水洗トイレが使えなくなったことで衛生環境が急速に悪化しています。
(出典:空気調和・衛生工学会北海道支部 平成30年北海道胆振東部地震建築設備関連被害報告書)
「電気が止まると水も止まる」という現代インフラの構造が、被害の及ばなかったはずの地域にまで生活機能不全をもたらしました。断水の主因が地盤崩壊ではなく「停電によるポンプ停止」であったため、電力が復旧した後は断水も比較的速やかに解消に向かいましたが、その数日間に携帯トイレの備蓄がない家庭は過酷な状況に置かれました。
物流の停止と生活物資の枯渇#
信号機が消灯したことで道路交通が混乱し、貨物輸送も滞りました。スーパーやコンビニエンスストアではレジが動かず、冷蔵・冷凍ショーケースの停止により大量の食品が廃棄されています。物流網が寸断された状態で、市民は不安から開いている店舗に殺到し、パン、おにぎり、飲料水、乾電池、カセットコンロ、モバイルバッテリーなどの生活必需品が一瞬にして店頭から消えました。
(出典:内閣府 令和元年版防災白書)
医療機関・福祉施設の機能停止#
自家発電設備を持たないクリニックや燃料が枯渇した病院では、人工呼吸器や人工透析といった「電気と水」を命綱とする医療機器が使用できなくなりました。冷所保存が必要な医薬品の廃棄、透析患者の受け入れ先を探して医療従事者が奔走するなどのトラブルが相次いでいます。福祉施設ではエレベーターが停止したため、車椅子を利用する高齢者の移動や避難が困難を極めました。
(出典:空気調和・衛生工学会北海道支部 平成30年北海道胆振東部地震建築設備関連被害報告書)
酪農業への壊滅的打撃#
北海道は日本を代表する酪農地帯です。停電によって自動搾乳機(ミルカー)と生乳を冷却するバルククーラーが停止しました。乳牛は定時に搾乳しないと乳房炎を発症して命に関わるため、自家発電機のない農家は甚大な被害を受けています。さらに、生乳を受け入れる乳業工場も停電で稼働停止したため、全道で約2万3,427トン(約23.6億円相当)の生乳が廃棄されました。
(出典:乳の学術連合 平成30年北海道胆振東部地震によるミルクサプライへの影響)
農林水産関係全体の被害額は1,144.7億円に達しており、その内訳は農作物・畜産が84.6億円、農地・農業用施設が579.6億円、林野関係が475.4億円です。産業を支える電力インフラへの集中依存が、被害を経済全体に波及させた構図が浮かび上がります。
(出典:内閣府 平成30年北海道胆振東部地震に係る被害状況等について)
この地震を機に変わった制度と意識#
北海道胆振東部地震と全道停電の経験は、個人の備え意識から国のエネルギー政策まで、幅広い分野に変化をもたらしました。
制度・技術面の変化#
| 分野 | 震災前 | 震災後に確立された制度・技術 |
|---|---|---|
| 電力インフラ | 苫東厚真火力発電所に道内電力の約半分を依存 | 北本連系線の増強、再生可能エネルギーを含む電源分散化の推進 |
| 企業BCP(事業継続計画) | 停電リスクを軽視した事業継続計画 | 自家発電設備の導入・燃料備蓄、停電を想定したBCPの策定・見直しが加速 |
| 酪農・農業 | 停電時の搾乳・冷却手段が未整備の農家が多数 | 自家発電機の導入補助、停電対応マニュアルの整備 |
| 行政の復旧意思決定 | 有識者会議が意思決定に関与し、決定が遅延するケースがあった | 札幌市「早期復旧モデル」:行政主体で決定し、有識者は技術アドバイザーに限定 |
| 段ボールベッド | 一部自治体での試験的運用にとどまった | 避難所での段ボールベッドの有効性が実証。全国自治体での備蓄・協定締結が加速 |
| インバウンド対応 | 多言語での災害情報発信が不十分 | 訪日外国人向けの多言語防災情報発信の整備推進 |
(出典:経済産業省北海道経済産業局 北海道胆振東部地震に係る対応及びBCP普及・策定支援について、北海道 平成30年北海道胆振東部地震 検証報告書)
「食料の備蓄」から「エネルギーの備蓄」へ#
かつての防災備蓄といえば「水と非常食」が中心でしたが、この震災を経て市民の意識が大きく変わりました。震災後に備えるようになった物品のトップは、モバイルバッテリー、乾電池、LEDランタン・懐中電灯、カセットコンロ・ガスボンベ、電池式・手回しラジオといったエネルギーと情報通信を維持するためのアイテムです。ポータブル電源やソーラーチャージャーを購入する家庭も急増しました。
(出典:株式会社mitoriz 防災グッズの備蓄保有率48.8%)
水と食料の備蓄が不要になったわけではありません。ただ、「電気さえあれば情報も物流も動く」という前提が崩れたことで、電気そのものを備蓄する発想が広まったという意味での転換です。
電力の一極集中リスクと分散化への転換#
苫東厚真火力発電所への過度な依存がブラックアウト(全域停電)を招いたという反省から、国・電力会社レベルでの電源分散化が進められています。本州と北海道を結ぶ送電網(北本連系線)の増強工事が進められたほか、再生可能エネルギーを組み合わせた分散型電源の整備が政策的に後押しされるようになりました。
企業・農業の現場でも、停電が直接的な事業の死活問題になることへの認識が深まり、BCP(事業継続計画)の見直しや自家発電設備の導入が加速しています。
(出典:経済産業省北海道経済産業局 北海道胆振東部地震に係る対応及びBCP普及・策定支援について)
厳冬期の停電を想定した備えの意識化#
「もし真冬に同じ規模の停電が起きていたら」という問いは、北海道民の防災意識を根本から変えました。電気を使わずに暖をとれるポータブル石油ストーブやカセットガスヒーター、防寒着や寝袋の備えが広く推奨されるようになっています。
避難所においては、床からの冷気を遮断し、エコノミークラス症候群(長時間同じ姿勢を続けることで静脈に血栓ができる症状)を防ぐ「段ボールベッド」の有用性が実証されました。これを契機に、全国の自治体での段ボールベッドの備蓄や協定締結が急速に進んでいます。
(出典:空気調和・衛生工学会北海道支部 平成30年北海道胆振東部地震建築設備関連被害報告書)
個人として取るべき備えと震災時の行動#
ここまで紹介した課題は、電力インフラや企業BCP、行政の復旧モデルといった社会制度側の変化が中心でした。しかし実際に45時間の全道停電を乗り切ったのは、家庭単位での電源と水と情報手段の備えです。ここでは、震災前にやっておくべきことと、震災時の動き方を、この地震の教訓に即して整理します。
平時にやっておくべき備え#
- エネルギーの備蓄:モバイルバッテリーは常時フル充電を保ち、世帯人数分+1個を目安に確保します。長時間停電に備えてポータブル電源(500Wh以上)やソーラーチャージャーの導入も有効です。カセットコンロとガスボンベ(1本で約1時間、7日分で1人6〜9本)は停電時の調理と暖の基本装備となります。
- 電気を使わない暖房手段:北海道胆振東部地震は9月の発生でしたが、仮に真冬であれば低体温症など深刻な二次被害が広がっていた可能性があります。石油ストーブ(反射式・対流式の非電気型)、湯たんぽ、寝袋、アルミブランケット、防寒着を、家族人数分確保してください。石油の備蓄は18L以上が目安です。
- 情報手段の多重化:電池式・手回し式ラジオ(AM/FM両対応)を1台備えます。基地局の予備電源が枯渇するとスマホでの情報収集が途絶えるため、ラジオが唯一の情報源になります。自治体の防災メール登録と、家族全員のスマホに気象庁・NHKの公式アプリを入れておくことも基本です。
- マンション住人特有の備え:集合住宅は停電で給水ポンプが止まり、建物自体は無傷でも水が出なくなります。浴槽の水を張ったままにする、水のペットボトルを多めに備蓄する、携帯トイレ(1人1日5回×7日分)を確保する、という3点は戸建てより優先度が高くなります。
- 深夜発災を想定した枕元装備:懐中電灯・ヘッドライト、スリッパ(ガラス片対策)、メガネ、スマホ、ホイッスルを枕元のまとまった場所に置く習慣をつけます。北海道胆振東部地震は午前3時7分、全道停電と重なった真っ暗闇での避難でした。装備が手の届く場所にあるかが命運を分けます。
震災発生時の動き方#
- 揺れている最中:丈夫なテーブルの下に身を隠し、頭部を守ります。慌てて外に飛び出さず、落下物・転倒物から離れることを優先します。寝ている場合は枕で頭を守り、布団を被ります。
- 揺れが収まった直後(数分以内):まず自分と家族の無事を確認、火の始末、出口の確保(玄関ドアを開ける)。停電している場合は懐中電灯で足元を照らしながら行動し、割れたガラスを踏まないよう靴を履きます。ガス臭があれば元栓を閉め、換気してから避難します。
- 発災後〜数時間:ブレーカーを落として避難することで、通電火災(停電復旧時の発火)を防げます。ラジオで震源・津波情報・余震情報を確認。冷蔵庫は開閉を最小限にすれば約2〜3時間は冷気を保てます。SNSで見た情報は公的機関(気象庁・自治体・NHK)の発表と突き合わせ、未確認情報は拡散しないこと。
- 発災後〜数日:自宅が安全なら在宅避難が基本です。カセットコンロで温かい食事を摂り、電池とモバイルバッテリーを節約しながら運用します。避難所に移る場合は、モバイルバッテリー・電池・携帯トイレ・常備薬・スリッパを必ず持参すると避難所生活の質が大きく変わります。マンションでは階段での水運搬が避けられないため、複数人で分担できる体制を近隣で作っておくと負担が軽減されます。
45時間の停電は「数時間で復旧する通常の停電」とは質的に違います。備えがあるかどうかで、この時間を安全圏で過ごせるかどうかが決まります。
防災チェックリスト#
北海道胆振東部地震の教訓から、特に優先度の高い備えを以下に整理しました。水は1人1日3リットル×7日分、簡易トイレは1人1日5回×7日分が備蓄の目安です。
| ☐ | 項目 | 北海道胆振東部地震との関連 |
|---|---|---|
| ☐ | モバイルバッテリーを常に充電しておく。ポータブル電源やソーラーチャージャーも検討する | 停電でスマホが充電できず、情報孤立状態に陥った |
| ☐ | 電池式・手回し式ラジオを用意する | 停電時にテレビが使えず、ラジオが唯一の情報源となった |
| ☐ | 携帯トイレを備蓄する | 停電によるポンプ停止でマンションの水洗トイレが使用不可に |
| ☐ | カセットコンロとガスボンベを備蓄する | 停電でオール電化住宅は調理も暖房も不可になった |
| ☐ | 電気を使わない暖房器具(石油ストーブ等)と燃料を備蓄する | 厳冬期に同規模の停電が起きれば低体温症など深刻な二次被害が広がる可能性 |
| ☐ | 懐中電灯・ヘッドライトを枕元に置く | 深夜の停電で、真っ暗闇の中での避難・状況把握を強いられた |
| ☐ | 飲料水を最低3日分、できれば7日分備蓄する | 停電によるポンプ停止で断水が発生。物流もストップし買い出しが困難だった |
| ☐ | 災害用伝言ダイヤル(171)の使い方と家族の集合場所を事前に確認する | 通信基地局の停止で安否確認が困難になった |



