「せっかく買ったのに、全然使わなかった……」。防災グッズで後悔した経験のある方は、思った以上に多いはずです。
筆者自身、防災士になりたての頃に「あれもこれも」と買い揃えた結果、半分以上が出番のないまま押入れの肥やしになった経験があります。防災士仲間に聞いても「買いすぎて後悔した」という声は定番の話題です。
防災グッズ いらなかったもの ランキング#
1位〜5位と「なぜいらなかったか」の理由#
1位:十徳ナイフ(マルチツール) 防災セットの定番中の定番。でも「避難生活で実際にナイフを使った」という話をほとんど聞きません。
理由はシンプルで、現代の避難生活では刃物を使う場面がほぼないからです。缶詰はプルトップ、パウチ食品は手で開封できます。必要なのはナイフではなく「はさみ」。テープやパッケージを切る場面では、はさみの方がはるかに使いやすいです。
2位:大量のロウソク 「停電 = ロウソク」のイメージがありますが、避難所ではまず使用禁止です。余震で倒れて火災を起こすリスクがあるためです。自宅でもLEDランタンの方が安全で、明るさも上。ロウソクは「LEDランタンの電池が切れた時の最終手段」程度の位置づけです。
3位:携帯浄水器(ストロータイプ) 都市部・平野部の住宅地に住む人の場合、給水車やペットボトル支援が届くため出番が少ない傾向があります。ただし「日本の災害では給水車が早く届く」は過信が過ぎます。2024年の能登半島地震では最大約13万7千戸が断水し、山間部・孤立集落では5ヶ月近く水道が復旧しなかった地域もあります。給水車が来ても道路寸断で数時間待ちになった事例も多く報告されています。
一般的な市街地在住者であれば保存水を多めに確保する方が優先度は高いですが、山間部・半島・孤立リスクの高い地域に住む場合は携帯浄水器は有効な選択肢です。
4位:固形燃料 カセットコンロがあれば、調理の主役はカセットコンロ+ボンベです。火力・使いやすさともにカセットコンロの方が上です。なお「固形燃料は煙が出る」は誤りで、実際は煙や臭いがほとんど出ないのが固形燃料の特徴です。コンパクトで長期保存もできるため、サブの熱源として少量備えておくことを否定するものではありません。ただし「あれば安心」と大量購入するほどではなく、カセットボンベを優先する方が合理的です。
5位:コンパス スマホのGPSがある時代に、コンパスが必要な場面はまずありません。仮にスマホが使えなくなったとしても、コンパスだけでは方位がわかるだけで目的地にはたどり着けません。
それでも「あなたには必要かも」な例外ケース#
上記の「いらなかったもの」にも、例外はあります。
- 十徳ナイフ:山間部に住んでいて、倒木処理などの可能性がある場合
- 携帯浄水器:離島や山間部で、給水車の到着が遅れる地域
- コンパス:登山が趣味で、山中での被災を想定する場合
つまり「一般的な都市部・住宅地の避難」では不要でも、地域や状況によっては必要なものがあります。自分の住環境を基準に判断してください。
カテゴリ別 過剰投資になりがちなアイテム#
食料・水で「多すぎた」ものは?#
非常食の買いすぎ 「7日分 × 家族4人分」を一気に購入し、気づいたら賞味期限切れで廃棄――という失敗談は非常に多いです。
対策は2つ。
- ローリングストック方式で、普段から消費・補充するサイクルを作る
- 長期保存食(5〜10年保存)を選んで、管理の手間を減らす
特殊な非常食の買いすぎ 「宇宙食」「フリーズドライのフルコース」のような変わり種を大量に買ったものの、味が合わずに食べられなかった、という話も。非常食は「普段から食べ慣れているもの」を選ぶのが鉄則です。
道具類で「使い方が分からなかった」もの#
手回し充電器(安価品) 1,000円以下の安い手回し充電器を買ったが、回してもスマホがほとんど充電されなかった。出力が弱すぎる製品が多いためです。手回し充電機能は「ラジオのおまけ」程度に考え、メインの充電はモバイルバッテリーに頼る方が現実的です。
テント(本格的なキャンプ用) 「避難時にテントがあれば」と購入したが、設営方法がわからず使えなかった。防災用にテントを備えるなら、ワンタッチで開くポップアップテントの方が実用的です。
高額購入して後悔した電源グッズ#
大容量すぎるポータブル電源 一人暮らしで2,000Whのポータブル電源を購入し、重すぎて移動できない上に容量も持て余す――という後悔も。
ポータブル電源は「家族人数 × 必要時間」で容量を計算してから購入しましょう。一人暮らしなら300〜500Whで十分な場合がほとんどです。
手作り防災グッズで意外と代替できるもの#
ペットボトルランタンの作り方#
材料:ペットボトル(500ml or 2L)+ 懐中電灯
手順:
- ペットボトルに水を入れる(水の量は8割程度)
- 懐中電灯を下から上に向けてペットボトルの下に置く
- 水が光を拡散して、部屋全体をほんのり照らすランタンに
これだけです。LEDランタンがなくても、懐中電灯1つで部屋を明るくできます。キャンプでも使えるテクニックで、筆者は子どもの前で実演すると「すごい」と盛り上がるので、防災教育の導入にもおすすめです。
段ボールスリッパ・敷物の作り方#
避難所では床が冷たく、スリッパがないと足元が冷える。段ボールがあれば簡易スリッパが作れます。
手順:
- 段ボールを足のサイズより一回り大きくカット(2枚重ね)
- つま先側を折り上げてテープで固定
- かかと側にひもやテープで固定用のストラップを作る
強度は高くありませんが、避難所の冷たい床から足を守る程度の用途なら十分機能します。
新聞紙の防寒・包帯代わり活用法#
新聞紙は防災の万能素材です。
防寒着として 新聞紙を体に巻いて、その上からゴミ袋をかぶると、即席の防寒着になります。新聞紙の繊維が空気の層を作り、断熱効果を発揮します。
敷物として 新聞紙を何枚か重ねて床に敷くと、冷えを緩和する断熱マットの代わりになります。
包帯・添え木の固定として 骨折時の添え木を固定する際、包帯がなければ新聞紙を細長く折って代用できます。ただし新聞紙は無菌ではないため、傷口に直接当てると感染リスクがあります。傷口にはラップや清潔な布を先に当て、その上から新聞紙で固定するのが正しい手順です。あくまで救急隊員への引き継ぎまでの一時的な応急措置として使用してください。
家にあるものでできる応急処置セット#
専用の救急キットがなくても、自宅にあるもので最低限の応急処置は可能です。
- ラップ → 傷口の保護(ガーゼの代わりに巻いて止血)
- ビニール袋 + 氷 → アイシング
- タオル + 棒 → 止血帯
- 雑誌 + テープ → 骨折時の添え木
- 食品用ラップ + ワセリン → やけどの保護
もちろん、きちんとした救急セットを備えておくのが理想です。でも「何もない時でもできることがある」と知っておくだけで、パニックを防げます。
「買わない」選択と「揃える」選択のバランス#
まず最低限に絞る理由#
防災グッズは「多ければ安心」と思いがちですが、多すぎると以下の問題が起きます。
- 持ち出せない:重すぎて避難時に運べない
- 管理できない:期限切れ・劣化に気づかない
- 置き場所がない:狭い住宅では保管スペースが確保できない
だから、まずは「本当に必要な最低限」に絞ること。そして使ってみて「足りない」と感じたものを追加する。この順番が正しいです。
段階的に揃えるロードマップ#
1か月目:S級品目(水・トイレ・電源・照明)を揃える → 約5,000円 2か月目:A級品目(食料・カセットコンロ・ラジオ)を追加 → 約10,000円 3か月目:家族の属性に応じた追加品目(乳幼児用品・高齢者用品等)→ 約5,000円 4か月目以降:ポータブル電源やソーラーパネルなど、余裕があれば投資
月5,000〜10,000円のペースなら、3か月で基本的な備えは完成します。
よくある質問(FAQ)#
Q. 防災セットの中にいらないものが入っていたら、捨てていい? A. 捨てる前に「本当に使わないか」を考えてみてください。一般論では不要でも、あなたの環境では必要かもしれません。判断がつかないものは、防災リュックから出して自宅の別の場所に保管しておくのが無難です。
Q. 手作り防災グッズはどれくらい頼りになる? A. あくまで「本物が手に入らない時の応急措置」です。ペットボトルランタンはLEDランタンにはかないませんし、段ボールスリッパもスリッパの代わりにはなりません。でも「何もない」よりは確実にマシ。緊急時の引き出しとして知っておいて損はありません。
Q. 「いらなかったもの」を人にあげるのはアリ? A. アリです。防災士仲間の間でも、不要品の交換や譲渡は普通に行われています。ただし、食品は賞味期限を確認してから。電池類は液漏れしていないか確認してから渡しましょう。



