防災グッズのリストを作ろうとして、「何をどれだけ用意すればいいのか」で手が止まった経験はありませんか。
筆者は防災士として年2回、自宅の防災備蓄を棚卸ししています。その中で「リストは2種類に分けて管理するのが一番わかりやすい」という結論に至りました。1つは避難所へ持ち出す「一次持ち出し品リスト」、もう1つは自宅に備蓄する「在宅避難用リスト」です。
防災グッズリストの使い方ガイド#
「在宅避難用」と「持ち出し用」を分けて考える#
多くの方が「防災リュック1つにすべてまとめよう」としますが、これは現実的ではありません。
持ち出し用(一次持ち出し品):避難所へ向かう際に持ち出すリュック1つ分。重量は10kg以内が目安。「命を守る」「最初の1〜2日を乗り切る」ためのもの。
在宅避難用(備蓄品):自宅に留まる場合に使う備蓄。「3〜7日間の生活を維持する」ためのもの。重量制限がないので、十分な量を確保できる。
この2つを混同すると、持ち出し用が重すぎて避難できなくなったり、在宅用の備蓄が不十分になったりします。
家族人数別の必要量計算式#
基本的な計算式は以下の通りです。
水:1人 × 3リットル/日 × 日数 食料:1人 × 3食/日 × 日数 非常用トイレ:1人 × 5〜7回/日 × 日数
例えば4人家族で7日分を備蓄する場合:
- 水:4人 × 3L × 7日 = 84リットル(2Lペットボトル42本)
- 食料:4人 × 3食 × 7日 = 84食分
- トイレ:4人 × 6回 × 7日 = 168回分
この数字を見ると「多すぎる」と感じるかもしれませんが、まずは3日分から始めれば大丈夫です。一度に全部揃える必要はなく、毎月少しずつ追加していく方法がおすすめです。
定期見直しのタイミング(年2回推奨)#
防災グッズの点検は年2回、「防災の日(9月1日)」と「春分の日(3月頃)」を目安にすると忘れにくいです。
点検項目は3つ。
- 期限チェック:食料・水・電池の賞味期限を確認
- 動作チェック:ライト・ラジオ・モバイルバッテリーが動くか確認
- 過不足チェック:家族構成の変化(出産・引越し等)に合わせて調整
持ち出し用防災グッズリスト(一次持ち出し品)#
絶対必携の10品目#
- □ 飲料水500ml × 2本
- □ 携行食(カロリーメイト等)3食分
- □ LEDヘッドライト + 予備電池
- □ モバイルバッテリー(10,000mAh以上)+ 充電ケーブル
- □ 携帯トイレ(5回分)
- □ ホイッスル
- □ 現金(1万円分、小銭含む)
- □ 身分証明書のコピー + 緊急連絡先メモ
- □ 常備薬(1週間分)
- □ マスク(5枚)
この10品目なら、合計重量は約2〜3kg。これだけでも「何も持っていない」状態とは雲泥の差です。
追加で持ちたい20品目#
- □ アルファ米 3食分
- □ ウェットティッシュ 1パック
- □ 歯磨きシート
- □ ゴミ袋(大)5枚
- □ アルミブランケット 1枚
- □ レインコート
- □ タオル 1枚
- □ 着替え(下着・靴下)1セット
- □ 救急セット(絆創膏・消毒液・ガーゼ)
- □ 使い捨てカイロ 2個
- □ ラップ(小)1本
- □ ポリ袋(各サイズ)10枚
- □ 手回しラジオ
- □ 軍手
- □ スリッパ(室内用)
- □ 筆記用具
- □ 保険証のコピー
- □ 耳栓 + アイマスク
- □ テープ(布テープ)
- □ 予備のメガネ・コンタクト
10品目 + 20品目を合わせて約6〜8kg。成人なら十分持ち運べる重量です。
チェックリスト形式で一覧表示#
上記の30品目を含むフルリストを、以下のカテゴリで整理します。
| カテゴリ | 品目数 | 重量目安 |
|---|---|---|
| 水・食料 | 5品目 | 約2kg |
| 照明・電源 | 3品目 | 約0.5kg |
| 衛生・トイレ | 6品目 | 約1kg |
| 防寒・雨具 | 4品目 | 約0.5kg |
| 情報・通信 | 3品目 | 約0.5kg |
| 医薬品 | 3品目 | 約0.3kg |
| 書類・貴重品 | 4品目 | 約0.2kg |
| その他 | 2品目 | 約0.3kg |
| 合計 | 30品目 | 約5〜6kg |
在宅避難用防災グッズリスト(二次持ち出し・備蓄)#
食物アレルギーへの配慮#
2025年4月1日から、くるみが食物アレルギーの特定原材料(表示義務)に追加され、計8品目になりました(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)。特定原材料に準ずる20品目と合わせると計28品目が対象です。
家族にアレルギーがある場合は、備蓄食料の原材料表示を必ず確認してください。アルファ米・缶詰・フリーズドライ食品でも、くるみ・落花生・小麦を含む製品があります。購入時に「特定原材料等28品目不使用」の表記を確認するか、メーカーのアレルゲン情報を事前にチェックする習慣をつけましょう。
水・食料の備蓄量計算#
在宅避難用は「最低3日分、理想は7日分」が基準です。
| 品目 | 1人3日分 | 1人7日分 | 4人家族7日分 |
|---|---|---|---|
| 飲料水 | 9L | 21L | 84L |
| 生活用水 | 6L | 14L | 56L |
| 主食(米・パン等) | 9食 | 21食 | 84食 |
| おかず(缶詰等) | 6個 | 14個 | 56個 |
生活用水は手洗い・調理・簡易的な清拭に使います。飲料水とは別に確保しておくと安心です。ポリタンクに水道水を入れておき、3日ごとに入れ替えれば無料で備蓄できます。
生活用品・衛生用品#
- □ 非常用トイレ(家族人数 × 7回 × 日数分)
- □ トイレットペーパー 予備6ロール以上
- □ ウェットティッシュ 大容量パック × 3
- □ ゴミ袋(45L)30枚以上
- □ ラップ 2本
- □ ポリ袋(大・中・小)各20枚
- □ 洗面用品(石鹸・シャンプー・歯ブラシ)
- □ 生理用品(1周期分以上)
- □ おむつ(乳幼児がいる場合)
電源・情報収集機器#
- □ ポータブル電源(500Wh以上推奨)
- □ ソーラーパネル(ポータブル電源の充電用)
- □ カセットコンロ + ボンベ(最低6本)
- □ 予備の乾電池(単3・単4各20本以上)
- □ 手回し充電ラジオ(予備)
家族構成別 カスタムリスト#
一人暮らし版リスト#
一人暮らしの場合、「すべて自分1人で判断・行動する」前提で備える必要があります。
追加すべき品目:
- □ 近隣の避難所マップ(印刷して貼っておく)
- □ 救急講習の修了証コピー(自分で応急処置する可能性)
- □ 大家さん・管理会社の緊急連絡先
- □ 合鍵を信頼できる人に預ける
子どもがいる家族版リスト#
- □ 液体ミルク(乳児がいる場合)
- □ 離乳食・子ども用おやつ
- □ おむつ + おしりふき
- □ 子ども用の着替え(サイズが変わるので定期更新)
- □ お気に入りのおもちゃ・絵本
- □ 母子手帳のコピー
- □ 子ども用ヘルメット
- □ 抱っこ紐(小さな子どもがいる場合)
高齢者同居・介護が必要な場合のリスト#
- □ 処方薬の予備(2週間分推奨)
- □ お薬手帳のコピー
- □ 入れ歯 + 洗浄剤
- □ 大人用おむつ(必要な場合)
- □ 歩行補助具(杖・歩行器の予備)
- □ 老眼鏡の予備
- □ 介護者の連絡先リスト
- □ 福祉避難所の所在地確認
2026年版の追加推奨品#
能登半島地震(2024年)の教訓から追加すべき品目#
2024年1月1日の能登半島地震では、真冬・長期断水・道路寸断という三重苦が重なり、従来の備蓄では不十分な場面が多数報告されました。以下の品目を優先的に追加してください。
- □ 防寒着・毛布(避難所は暖房が不十分なことが多い)
- □ カイロ(使い捨て・くり返し両方)10個以上
- □ 非常用トイレ(最低7日分:家族人数 × 6回 × 7日) ※能登では仮設トイレ不足が深刻で、簡易トイレの家庭備蓄が命綱になった
- □ ポータブル電源(500Wh以上)+ ソーラーパネル ※停電が数週間〜1か月超に及んだ地域があり、充電手段の確保が重要
- □ 飲料水を最低7日分(1人3L × 7日) ※能登では断水が一部地域で数か月続いた
感染症対策グッズ#
コロナ禍の教訓を踏まえ、以下を追加推奨します。
- □ 不織布マスク(50枚入り1箱)
- □ アルコール消毒液(携帯用 + 自宅用)
- □ 非接触体温計
- □ 使い捨てゴム手袋(20枚以上)
- □ パーテーション用のビニールシート
デジタル対応#
- □ モバイルバッテリー(大容量20,000mAh)※後述の航空機持込ルール注意
- □ USB-C + Lightning両対応ケーブル
- □ 防災アプリのインストール(Yahoo!防災速報、NHK防災等)
- □ 重要書類のクラウドバックアップ(スマホで閲覧可能に)
- □ 家族間の安否確認方法の取り決め(災害用伝言ダイヤル171の使い方含む)
【2026年4月24日から適用】モバイルバッテリー航空機持込の新ルール 国土交通省の改正により、2026年4月24日以降、日本発着の全便(国内線・国際線)でモバイルバッテリーの持込に以下の制限が加わりました。
- 個数制限:機内持込は1人あたり2個まで(160Wh以下に限る)
- 機内充電禁止:機内でのモバイルバッテリーへの充電、およびモバイルバッテリーから他機器への充電が禁止
- 罰則:違反した場合、航空法違反として2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象
避難時に旅行・避難移送で航空機を利用する場合は、モバイルバッテリーの本数を確認し、機内ではコンセントや機内充電設備を利用してください。
よくある質問(FAQ)#
Q. リストの品目、全部揃えないとダメ? A. 最初から全部揃える必要はありません。まずは「絶対必携の10品目」だけ用意してください。その後、月に2〜3品目ずつ追加していけば、半年もあれば十分な備えが完成します。
Q. 防災グッズリストはプリントして使った方がいい? A. プリントして冷蔵庫やクローゼットに貼っておくのがおすすめです。スマホのメモでもいいですが、停電時にスマホの電池を節約したい場面では紙の方が便利です。
Q. 備蓄品の保管場所が足りない場合は? A. 分散保管がおすすめです。水はベッド下、食料はパントリーや押入れ、トイレ用品はトイレの上棚など。1か所にまとめず分散することで、一部が被災しても残りは使えます。



