センスメイキング

英語名 Sensemaking
読み方 センスメイキング
難易度
所要時間 30〜60分(セッション単位)
提唱者 カール・ワイク
目次

ひとことで言うと
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「何が起きているのか?」がわからない状況で、情報に意味を与え、行動の方向性を見出すプロセス。意思決定(Decision Making)が「選択肢の中から選ぶ」のに対し、センスメイキングは「そもそも何が起きているかを理解する」フェーズを扱う。正確な分析より前に、まず「物語」を作ることで状況を把握する。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
キュー(Cue)
混沌とした状況の中から拾い上げる意味のある手がかりのこと。公式データだけでなく、直感・違和感・現場の声なども含む。
ナラティブ(Narrative)
手がかりをつなぎ合わせて作る**暫定的なストーリー(物語)**のこと。「今何が起きているか」をチームで共有するための仮説。
フレーム(Frame)
状況を解釈するための認知の枠組みのこと。同じ事実でもフレームが違えば意味が変わる。センスメイキングではフレームの再構築が重要。
エナクトメント(Enactment)
行動することで環境に働きかけ、新たな手がかりを生み出すこと。センスメイキングでは「理解してから動く」ではなく「動いて理解する」。

センスメイキングの全体像
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センスメイキング:手がかり→物語→行動→更新のサイクル
手がかりを集めるデータ・直感・現場の声から手がかりを拾う物語を作る手がかりをつなぎ仮のストーリーを構築小さく行動する物語に基づいて小さなアクションを実行物語を更新する行動の結果からストーリーを修正意味の構築Sensemaking1234
センスメイキングの進め方フロー
1
混沌を受け入れる
「わからない」を認め、不明点を整理
2
手がかりを集める
多様な情報源から弱いシグナルも拾う
3
物語を作る
複数のストーリーを構築し共有
行動して更新
小さく動き、結果からストーリーを修正

こんな悩みに効く
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  • 情報が多すぎて、何が重要で何が重要でないかわからない
  • 前例のない事態に直面して、どう判断すればいいかわからない
  • チーム内で「今何が起きているか」の認識がバラバラ

基本の使い方
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ステップ1: 混沌を受け入れる

センスメイキングの出発点は「わからない」ことを認めること。

  • 無理に「正解」を探さない: 情報が不十分な段階で結論を出すと、確証バイアスに陥る
  • 曖昧さに耐える: 「もう少し情報が集まるまで待つ」のではなく、曖昧なまま動き始める
  • 「何がわからないか」を明確にする: 不明点をリストアップするだけでも混沌の度合いが下がる

リーダーが「わからない」と言えることが、チームのセンスメイキングの第一歩

ステップ2: 手がかり(Cue)を集める

混沌の中から意味のある手がかりを拾い上げる。

  • 多様な情報源: 公式データだけでなく、現場の声、顧客の反応、SNSの動向、直感も含める
  • 弱いシグナルに注目: 大きなトレンドだけでなく、「なんか違和感がある」という小さなサインを見逃さない
  • 異なる視点を集める: 同じ状況でも、営業・開発・CS・経営で見え方が違う。すべてが手がかり

手がかりは「事実」だけではない。人々の感情、雰囲気、直感も重要な情報。

ステップ3: 物語(Narrative)を作る

集めた手がかりをつなぎ合わせて、「今何が起きているか」のストーリーを構築する。

  • 複数のストーリーを作る: 1つのストーリーに固執しない。同じ手がかりから異なる解釈が可能
  • ストーリーは暫定的: 「これが正しい」ではなく「今のところ最も説得力のある説明はこれ」
  • チームで共有する: 個人のストーリーをチームで共有し、より豊かなストーリーに発展させる

: 「顧客の問い合わせが増えている」「開発チームのリリース頻度が上がっている」「SNSで不満の声が出ている」→ 「リリースを急ぎすぎて品質が下がり、顧客に影響が出始めている」というストーリー。

ステップ4: 行動して、ストーリーを更新する

ストーリーに基づいて行動し、その結果から新たな手がかりを得てストーリーを更新する。

  • 小さく行動する: 大きな賭けをするのではなく、状況を確認するための小さなアクションから
  • 結果を観察する: 行動の結果は新たな手がかり。ストーリーの妥当性を検証する材料
  • ストーリーを修正する: 新しい情報が得られたら、ストーリーを柔軟に書き換える

完璧な理解を待ってから行動するのではなく、行動を通じて理解を深める。

具体例
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例1:SaaS企業が急激な解約増加に対応する

状況: 従業員150名のSaaS企業。先月から解約率が2.1%→4.8%に急上昇。原因は不明。

ステップ1: 混沌を受け入れる

  • CEOが全社ミーティングで「正直、なぜ解約が増えているかまだわからない」と宣言
  • 各部門に「何か気になることはないか」と問いかける

ステップ2: 手がかりを集める

  • CS: 「最近、操作方法の問い合わせが急増。特に新UIについて」
  • 営業: 「更新面談で『使いこなせていない』という声が増えた」
  • 開発: 「先月のUI刷新後、ヘルプページのアクセスが3.2倍に」
  • SNS: 「前のUIに戻してほしい」という投稿が12件

ステップ3: 物語を作る

ストーリーA: 「UI刷新が既存ユーザーの操作体験を壊し、学習コストに耐えられない層が離脱している」

ストーリーB: 「競合が先月から大幅値下げをしており、価格比較で負けている」

ストーリーC: 「景気後退でSaaS全般の見直しが進んでいる」

ステップ4: 行動してストーリーを更新

  • 解約した直近20社に電話ヒアリング → 14社が「UIが変わって使いにくくなった」と回答 → ストーリーA支持
  • 競合の価格を調査 → 値下げはなし → ストーリーB否定
  • 業界全体の解約率を確認 → 横ばい → ストーリーC否定

更新されたストーリー: 「UI刷新の移行サポートが不十分で、既存ユーザーの操作習慣が壊れている。特に利用歴2年以上のヘビーユーザーに影響が大きい」

次のアクション: 旧UIへの一時復帰オプション提供、既存ユーザー向け移行ガイドの即日公開、利用歴2年以上のユーザー100社にCS担当が個別フォロー。翌月の解約率は3.0%に改善。

例2:老舗メーカーが「若者離れ」の真因を探る

状況: 創業60年の文具メーカー。20代の購入率が5年前の32%から18%に低下。「若者が文具を使わなくなった」と社内では語られている。

手がかりの収集:

  • マーケ: 「20代向け広告のクリック率は悪くない(CTR 2.8%)。でも購入に至らない」
  • 営業: 「文具専門店の来客数自体が年12%減少している」
  • SNS調査: 自社ブランドの言及数は減少。しかし「文具」全体の投稿は年18%増加中
  • Z世代社員の声: 「ブランドは知ってるけど、Amazonで検索しても出てこない」

複数のストーリー:

  • ストーリーA: 「若者が文具を使わなくなった」(社内の定説)
  • ストーリーB: 「若者は文具に興味があるが、購入チャネルがずれている。ECでの存在感がない」

小さなアクションと検証:

  • Amazon出品をテスト(3商品・1ヶ月)→ 20代の購入が全体の47%を占めた
  • Instagram広告からECへの導線を設計 → CVR 4.2%(店舗誘導の2.8倍)

更新されたストーリー: 若者の文具離れではなく「チャネル離れ」だった。購買行動がオフラインからオンラインに移行しただけで、需要は存在する。

EC本格展開を決定。半年後、20代の売上構成比が18%→29%に回復。

例3:地方病院が看護師の離職急増に向き合う

状況: 病床数180床の地方総合病院。看護師の年間離職率が8%→15%に悪化。「給与が低いから」という理由で昇給を検討中だが、予算が厳しい。

手がかりの収集:

  • 人事: 「退職面談の理由は『家庭の事情』が65%だが、本音かどうか疑問」
  • 看護師長: 「夜勤の交代が回らず、特定の人に偏っている」
  • 匿名アンケート: 「給与より、夜勤回数と人間関係がつらい」が72%
  • 退職者3名に非公式ヒアリング: 「師長に相談しても『みんな大変だから』で終わる」

物語の構築:

  • ストーリーA: 「給与水準が地域の他病院より低い」→ 調査すると中央値とほぼ同等 → 否定
  • ストーリーB: 「夜勤の負荷が特定の看護師に集中し、声を上げても改善されないことが離職の根本原因」

小さなアクション:

  • 夜勤シフトの偏りを可視化 → 上位10%の看護師が夜勤の38%を担当していた
  • 試験的に1病棟で夜勤の均等配分を実施(3ヶ月)

結果: 試験病棟の離職意向が42%→18%に低下。昇給よりもシフト配分の公平性と「声が届く」実感のほうが離職防止に効果的だと判明。全病棟に展開し、年間離職率は翌年10%に改善。

やりがちな失敗パターン
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  1. すぐに「原因」を特定しようとする — データが不十分な段階で「これが原因だ」と決めつけると、確証バイアスに陥る。まず手がかりを幅広く集め、複数のストーリーを作る
  2. リーダーが一人でストーリーを作る — リーダーの視点だけではストーリーが偏る。現場の声、顧客の声、異なる部門の視点を統合する
  3. ストーリーを固定化する — 最初に作ったストーリーに執着し、新しい情報が入っても修正しない。センスメイキングは継続的なプロセスであり、ストーリーは常に暫定的
  4. 行動せずに分析を続ける — 「もう少し情報が集まってから」と待ち続けるのはセンスメイキングではない。不完全な理解のまま小さく動き、その結果から学ぶのが本質

まとめ
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センスメイキングは「わからない」状況で「意味」を作り出すプロセス。完璧な分析ではなく、手がかりからストーリーを作り、行動して検証し、ストーリーを更新する。不確実性の高い時代に最も必要なスキルは、混沌に耐えながら意味を見出し、チームで共有し、行動につなげる力。「今何が起きているか」をチームで語り合うことから始めよう。