ひとことで言うと#
Substitute(代える)・Combine(組み合わせる)・Adapt(適応させる)・Modify(変える)・Put to other uses(別の使い方)・Eliminate(取り除く)・Reverse/Rearrange(逆にする・並び替える) の7つの切り口で、既存のものに「ゆさぶり」をかけて新しいアイデアを生み出す手法。
押さえておきたい用語#
- Substitute(サブスティテュート)
- 既存の素材・手段・人・場所などを別のものに置き換える発想のこと。SCAMPERの「S」にあたる。
- Combine(コンバイン)
- 2つ以上の要素・機能・アイデアを組み合わせて新しい価値を作る発想のこと。SCAMPERの「C」にあたる。
- Eliminate(エリミネート)
- 既存の要素・機能・工程を取り除いて簡素化する発想のこと。SCAMPERの「E」にあたる。引き算のイノベーションを生む。
- Reverse / Rearrange(リバース / リアレンジ)
- 順序・役割・向きなどを逆転・並び替えする発想のこと。SCAMPERの「R」にあたる。常識を覆すアイデアが生まれやすい。
SCAMPER法の全体像#
こんな悩みに効く#
- 「何かいいアイデアない?」と言われても、白紙から思いつけない
- 既存の商品やサービスをもっと良くしたいが、切り口が見つからない
- ブレストがマンネリ化して、いつも似たようなアイデアしか出ない
基本の使い方#
SCAMPERはゼロからの発想ではなく、既存のものを変化させる手法。まず対象を明確にする。
対象は何でもOK:
- 自社の商品・サービス
- 業務プロセスや会議のやり方
- 日常の習慣や生活スタイル
対象に対して、以下の7つの問いを順に考える:
- S - Substitute(代える): 何かを別のものに置き換えたら?
- C - Combine(組み合わせる): 何かと何かを合体させたら?
- A - Adapt(適応させる): 他の分野のアイデアを取り入れたら?
- M - Modify(変える): 大きさ・形・色・順番を変えたら?
- P - Put to other uses(別の使い方): 他の目的に使えないか?
- E - Eliminate(取り除く): 何かを削除・簡略化したら?
- R - Reverse / Rearrange(逆にする・並び替える): 順番や役割を逆にしたら?
各質問につき3分を目安に、とにかく量を出す。
7つの質問で出たアイデアを一覧にして、以下の基準で絞り込む:
- 実現可能性: 今のリソースで実行できるか?
- インパクト: やったらどれくらい効果がありそうか?
- 新しさ: 競合がやっていない独自性はあるか?
すべてのアイデアが使えるわけではない。むしろ7割はボツでいい。残りの3割に宝が隠れている。
具体例#
状況: 月商120万円のパン屋。近隣に大手チェーンのベーカリーが出店し、客数が月850人→600人に減少。
SCAMPERを適用:
| 切り口 | 質問 | アイデア |
|---|---|---|
| S(代える) | 販売場所を代えたら? | 店舗だけでなく、オフィス街に移動販売車を出す |
| C(組み合わせる) | 何かと組み合わせたら? | 近所のコーヒー専門店と「パン×コーヒー」セットを共同販売 |
| A(適応させる) | 他業界の仕組みを取り入れたら? | サブスク型の「毎朝パンお届けサービス」(月額3,500円) |
| M(変える) | サイズや形を変えたら? | 1人暮らし向けの「ハーフサイズ」パンを新設 |
| P(別の使い方) | パン以外に使えないか? | パン教室を月2回開催(参加費3,000円/回) |
| E(取り除く) | 何かをやめたら? | 全30種類のうち売れ行き下位10種を廃止し、看板商品に集中 |
| R(逆にする) | 順番を逆にしたら? | 「予約してから焼く」完全受注生産の高級食パンライン |
選択した施策: サブスク型お届けサービス(A)と品種絞り込み(E)を組み合わせて実施。3ヶ月で定期会員85人を獲得し、月商が120万円→148万円に回復。品種を20に絞ったことで廃棄ロスも月4万円削減。
状況: 従業員350名のIT企業。年間研修予算800万円。研修の受講率が42%と低迷し、「つまらない」「業務に活かせない」との声が多い。
SCAMPERを適用:
| 切り口 | アイデア |
|---|---|
| S(代える) | 外部講師をやめて、社内のトップエンジニアが講師を担当 |
| C(組み合わせる) | 研修と実プロジェクトを合体。学んだ技術をその場でプロジェクトに適用 |
| A(適応させる) | ゲーム業界の「レベルアップ」の仕組みを取り入れ、スキルバッジ制度を導入 |
| M(変える) | 4時間の集合研修を、15分×12回のマイクロラーニングに変更 |
| E(取り除く) | 座学パートを全カット。ハンズオン(実技)100%に |
| R(逆にする) | 受講者が「教える側」に回る「逆研修」。ジュニアがシニアに最新技術を教える |
選択した施策: マイクロラーニング化(M)+ スキルバッジ制度(A)+ ハンズオン100%(E)の3つを組み合わせて導入。受講率が42%→89%に向上。研修後のスキル適用率も従来の18%から52%に改善し、予算は600万円に削減。
状況: 蔵書8万冊の地域図書館。年間利用者数が5年前の12万人から7.5万人に減少。特に20〜40代の利用が激減。
SCAMPERを適用:
- S(代える): 紙の本を「電子書籍の貸し出し」に代える → アプリで24時間貸出可能に
- C(組み合わせる): 図書館とカフェを合体 → 館内にコーヒースタンドを設置
- A(適応させる): コワーキングスペースの仕組みを取り入れ → Wi-Fi・電源完備の「仕事もできる図書館」に
- M(変える): 開館時間を変える → 平日夜22時まで延長(ビジネスパーソン向け)
- P(別の使い方): 閲覧スペースを「地域の交流拠点」として活用 → 読書会・勉強会の定期開催
- E(取り除く): 延滞金をなくす → 心理的ハードルを下げて利用促進
- R(逆にする): 利用者が「おすすめ本を紹介する」コーナーを設置 → 利用者参加型の選書
選択した施策: Wi-Fi・電源整備(A)+ 夜間延長(M)+ カフェ設置(C)の3施策を優先実施。1年後に20〜40代の利用者が2.3倍に増加。年間利用者数が7.5万人→10.2万人に回復し、満足度調査でも「また来たい」が92%に達した。
やりがちな失敗パターン#
- すべての質問に無理やり答えようとする — 対象によっては当てはまらない質問もある。「これは合わないな」と思ったらスキップしてOK
- アイデアを出しながら評価してしまう — 発想フェーズと評価フェーズは分ける。出しているときに「それは無理」と言わない
- 一人でやって行き詰まる — SCAMPERはチームでやるとアイデアの幅がぐっと広がる。一人で考えているときは、あえて「他の人ならどう答えるか?」と想像してみる
- アイデアを出して満足する — SCAMPERの真価はアイデアの量産ではなく、そこから実行に移す施策を選び、効果を測定するところにある
まとめ#
SCAMPER法は、「白紙からアイデアを出す」のが苦手な人にこそおすすめ。既存のものに7つの質問を投げかけるだけで、思いもよらない改善案や新しいアイデアが飛び出してくる。次に「何かいいアイデアない?」と聞かれたら、SCAMPERの7文字を思い出そう。