根本原因分析

英語名 Root Cause Analysis
読み方 ルートコーズ アナリシス
難易度
所要時間 30〜90分
提唱者 桜井淳一(トヨタ生産方式)/ NASA
目次

ひとことで言うと
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問題が起きたとき、**目に見える「症状」ではなく、その奥にある「根本原因」**を掘り下げて特定し、対症療法ではなく根本的な対策を打つ分析手法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
根本原因(Root Cause)
問題を引き起こしている最も深いレベルの原因のこと。これを取り除けば問題が再発しなくなる。多くの場合、個人のミスではなく仕組みやプロセスの欠陥にあたる。
直接原因(Direct Cause)
問題に直接つながっている表面的な原因のこと。根本原因に到達するための出発点になるが、ここで対策を止めると再発する。
対症療法(Symptomatic Treatment)
問題の症状だけを一時的に抑える対応のこと。根本原因に手を打たないため、形を変えて同じ問題が繰り返される。
水平展開(Yokoten)
一つの問題で見つかった根本原因と対策を、他の類似プロセスにも適用すること。トヨタ生産方式に由来する概念。

根本原因分析の全体像
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根本原因分析:症状から根本原因へ掘り下げ、恒久対策を設計する
深く掘り下げる症状目に見える問題「不良率が6%に」直接原因すぐ上の原因「部品の取付角度ズレ」なぜ?×5根本原因仕組み・プロセスの欠陥「マニュアル化未整備」暫定対策今すぐ: 応急処置で被害を止める例: ベテランを一時的に戻す恒久対策根本解決: 仕組みを変える例: 全工程のマニュアル整備水平展開他のプロセスにも同じ対策を適用例: 他工程の暗黙知を棚卸し
根本原因分析の進め方フロー
1
問題を具体的に定義
何が・いつ・どこで・どの程度起きたかを事実ベースで記述
2
直接原因を特定
時系列分析・変化点分析で問題に直結する原因を見つける
3
なぜ?を繰り返す
5回のなぜで仕組み・プロセスレベルの根本原因に到達
恒久対策+水平展開
根本原因に対する仕組みの対策を設計し類似プロセスにも適用

こんな悩みに効く
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  • 同じ問題が何度も繰り返される
  • 対策を打ったはずなのに、形を変えて同じ問題が再発する
  • 問題が起きると犯人探しになり、建設的な改善につながらない

基本の使い方
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ステップ1: 問題を具体的に定義する

「何が、いつ、どこで、どの程度」起きたかを事実ベースで記述する。

  • 「品質が悪い」(曖昧)
  • 「3月5日に出荷した製品ロットAの不良率が通常の3倍(6%)だった」(具体的)

感情や推測を排除して、客観的な事実だけを書く

ステップ2: 直接原因を特定する

問題に直接つながっている原因を特定する。

方法:

  • 時系列分析: 問題発生前後に何が起きたかを時間順に並べる
  • 変化点分析: 「以前はうまくいっていたのに、何が変わったか?」
  • 5W1H: 誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように

例:不良率上昇の直接原因 → 「組立工程で部品Bの取り付け角度がズレていた」

ステップ3: 「なぜ?」を繰り返して根本原因に到達する

直接原因に対して**「なぜそうなったか?」を5回繰り返す**。

  1. なぜ角度がズレた? → 新しい作業員が担当していた
  2. なぜ新人が担当? → ベテランが異動した
  3. なぜ引き継ぎが不十分? → 引き継ぎマニュアルがなかった
  4. なぜマニュアルがない? → 暗黙知に頼っていた
  5. なぜ暗黙知のまま? → マニュアル化の仕組みがなかった(根本原因)

根本原因は「個人のミス」ではなく「仕組みの欠陥」であることが多い

ステップ4: 根本原因に対する対策を立てる

根本原因に対して恒久的な対策を設計する。

  • 暫定対策(今すぐ): ベテランに一時的に戻ってもらう
  • 恒久対策(根本解決): 全工程のマニュアル整備 + 新人配属時の引き継ぎチェックリスト作成
  • 水平展開: 他の工程でも同様の暗黙知依存がないか確認

対策の効果を測定する指標も設定する(例:不良率を2%以下に戻す)。

具体例
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例1:SaaS企業がカスタマーサポートのクレーム急増を分析する

問題定義: 4月のクレーム件数が前月比200%(30件→90件)。顧客満足度スコアも4.2→3.1に急落。

時系列分析:

  • 3月末:カスタマーサポートのシステムを新ツールに移行
  • 4月1日:新ツール運用開始
  • 4月第1週:対応漏れが12件発生
  • 4月第2週:クレームが急増、解約申し出が5件

5つのなぜ:

  1. なぜ対応漏れが発生? → 新ツールの通知設定が旧ツールと異なり気づかなかった
  2. なぜ通知設定を確認しなかった? → 移行テスト期間を設けなかった
  3. なぜテスト期間がなかった? → 「ツールを変えるだけだから大丈夫」と判断した
  4. なぜその判断? → ツール移行のリスク評価プロセスがなかった
  5. なぜプロセスがない? → システム変更時のチェックリスト・テスト手順が未整備

対策:

  • 暫定: 旧ツールを並行稼働させ、漏れがないか確認
  • 恒久: システム変更時のテスト手順書を作成、移行前に最低1週間のテスト運用を義務化
  • 水平展開: マーケ、営業のツールも同様のリスク評価プロセスを適用

結果: 恒久対策の導入後、5月のクレーム件数は90件→25件に減少(移行前より改善)。その後6ヶ月間、システム変更起因のクレームはゼロ。「テスト手順書」は全社の標準プロセスになった。

例2:製造業の工場が製品不良率の急上昇を分析する

問題定義: 従業員120名の電子部品工場で、Q3の不良率が1.8%→4.7%に急上昇。年間損失額は推定3,200万円。

変化点分析:

時期不良率変化
Q11.6%-
Q21.8%新ライン稼働開始
Q34.7%急上昇

5つのなぜ(Q2→Q3の変化に注目):

  1. なぜ不良が増えた? → はんだ付け工程の温度ばらつきが±3℃→±8℃に拡大
  2. なぜ温度がばらついた? → 新ラインのはんだ装置が旧型と異なるメーカー品
  3. なぜ温度校正を行わなかった? → 新装置の校正手順書がなかった
  4. なぜ手順書がなかった? → 旧装置の手順書をそのまま適用し、機種差を確認しなかった
  5. なぜ機種差を確認しなかった? → 新設備導入時の立ち上げ検証プロセスが存在しなかった

対策:

  • 暫定: 新ラインの温度校正を手動で毎日実施(不良率を2.0%に暫定的に低下)
  • 恒久: 新設備導入チェックリストを作成(校正方法・許容公差の確認を必須化)。装置メーカーとの合同立ち上げ研修を義務化
  • 水平展開: 既存5ラインの装置校正手順を全て見直し → 2ラインで同様の未校正を発見し修正

結果: Q4の不良率は4.7%→1.4%に改善。水平展開で発見した2ラインの修正も含め、年間で推定4,800万円のコスト削減。「設備導入チェックリスト」はISO品質マニュアルに組み込まれた。

例3:個人ブロガーがPV半減の原因を分析する

問題定義: 月間PV5万の個人ブログが、3ヶ月で2.4万PVに半減。広告収入が月4万円→1.8万円に減少。

時系列分析:

  • 1月: PV 5.0万(通常通り)
  • 2月: PV 3.8万(Google検索からの流入が30%減)
  • 3月: PV 2.4万(さらに減少、SNSからの流入も減)

5つのなぜ:

  1. なぜ検索流入が減った? → 主力記事10本の検索順位が1〜3位→8〜15位に下落
  2. なぜ順位が下落? → Googleのコアアップデートで競合の大手メディアが上位に
  3. なぜ大手に負けた? → 記事の情報量と専門性で大手に劣るようになった
  4. なぜ更新しなかった? → 新規記事の執筆に追われ、既存記事のリライトをしていなかった
  5. なぜリライトの仕組みがない? → コンテンツのメンテナンス計画(定期的なリライトスケジュール)が存在しなかった

対策:

  • 暫定: 検索順位が下落した上位10記事を優先的にリライト(2週間で完了)
  • 恒久: 月次でSearch Consoleをチェックし、順位下落した記事をリライト対象にする仕組みを導入。新規:リライト比率を8:2→5:5に変更
  • 水平展開: アフィリエイト記事、まとめ記事など全カテゴリで情報鮮度をチェック

結果: リライト開始から3ヶ月後にPVが2.4万→4.8万に回復。リライトした10記事のうち7記事が3位以内に復帰。「新規記事を書き続けるだけでは、ブログは維持できない。定期メンテナンスの仕組みが必要だった」という学びを得た。

やりがちな失敗パターン
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  1. 「人のせい」で止まる — 「担当者がミスした」は根本原因ではない。「なぜミスが起きる仕組みになっていたか」まで掘り下げる。根本原因は常に仕組み・プロセスのレベルにある
  2. 「なぜ」の深さが足りない — 1〜2回の「なぜ」で止まると、対症療法的な対策しか出ない。最低5回は繰り返す。ただし機械的に5回やればいいわけではなく、「仕組みレベル」に到達したら止める
  3. 対策が「気をつける」「注意する」になる — 精神論は対策ではない。チェックリスト、自動化、プロセス変更など、仕組みとして再発を防止する対策を立てる
  4. 水平展開を忘れる — 1つの問題で見つかった根本原因は、他のプロセスにも潜んでいる可能性が高い。「同じ構造の問題が他にないか?」を必ず確認する。ある工場では1件のRCAから水平展開で12件の潜在リスクを発見した

まとめ
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根本原因分析は、表面的な症状ではなく問題の真の原因を突き止め、再発を防止する手法。「なぜ?」を繰り返して個人のミスから仕組みの欠陥にたどり着き、精神論ではなく構造的な対策を打つ。同じ問題が繰り返されるのは、根本原因に手を打っていないサインだと考えよう。対策を立てたら水平展開で他のプロセスにも適用することが、組織全体の改善につながる。