問題リフレーミング

英語名 Problem Reframing
読み方 プロブレム リフレーミング
難易度
所要時間 30分〜1時間
提唱者 トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグ『問題解決についての問題』(HBR 2017)
目次

ひとことで言うと
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「解決策がどれもしっくりこない」のは、そもそも問題の定義が間違っているからかもしれない。問題そのものを問い直し、別の角度から再定義することで、まったく新しい解決策を見つける思考法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
フレーム(Frame)
問題を認識するときの枠組みや視点のこと。同じ現象でも、どのフレームで見るかによって問題の定義が変わる。
問題ステートメント(Problem Statement)
解決すべき課題を一文で明確に言語化したものを指す。リフレーミングではこの文自体を書き換える。
ステークホルダー視点(Stakeholder Perspective)
問題に関わる異なる立場の人々からの見え方である。顧客・従業員・経営者など、立場が違えば問題の定義も変わる。
問い直し(Reframing Question)
「本当の問題は何か?」を探るための問いかけの技術。「なぜそれが問題なのか?」「誰にとっての問題か?」などのパターンがある。

問題リフレーミングの全体像
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問題リフレーミング:問題の定義を変えると解決策が変わる
元の問題定義「エレベーターが遅い」→ 解決策: 高速化・増設コスト大・効果限定的リフレーミング後「待ち時間が苦痛」→ 解決策: 鏡の設置低コスト・苦情ゼロに問い直し5つの問い直し❶ 本当の目的は何か?❷ 誰にとっての問題か?❸ 問題の境界はどこか?❹ 何を前提にしているか?❺ 逆に何がうまくいっているか?リフレーミング狭い解決空間同じ枠内の改善策のみコスト増・効果頭打ち広い解決空間異なるカテゴリの解決策低コスト・高効果の発見問題の定義を変えれば、見える解決策がまるごと入れ替わる新しい解決策の発見
問題リフレーミングの進め方フロー
1
問題を言語化
現在の問題定義を一文で書く
2
5つの問いで揺さぶる
目的・主語・境界・前提・例外
3
問題を再定義
別の角度から問題文を書き直す
新しい解決策を探索
再定義した問題に解決策を出す

こんな悩みに効く
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  • 解決策をいくつ出しても、どれもピンとこない
  • 何年も同じ問題が繰り返されて、根本的に解消されない
  • 「もっと良い解き方があるはず」と感じているが、見つからない

基本の使い方
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ステップ1: 現在の問題定義を書き出す

今、自分が解こうとしている問題を一文で書く

例:「新卒の離職率が高い」

ここで大事なのは、すでに暗黙の前提が入り込んでいることに気づくこと。「離職率が高い」には「離職は防ぐべきもの」「問題は新卒側にある」といった前提が隠れている。

ステップ2: 5つの問いで問題を揺さぶる

以下の5つの問いを使って、問題定義を多角的に検証する。

  1. 本当の目的は何か? — 離職を減らすこと自体が目的か? それとも戦力化のスピードが目的か?
  2. 誰にとっての問題か? — 会社にとって? 新卒本人にとって? 配属先のマネージャーにとって?
  3. 問題の境界はどこか? — 全社的な問題か、特定の部署だけの問題か?
  4. 何を前提にしているか? — 「新卒は3年以上いるべき」という前提は正しいか?
  5. 逆にうまくいっている部分は? — 離職しない新卒と離職する新卒の違いは何か?

すべての問いに答える必要はない。1つでも刺さる問いがあれば十分

ステップ3: 問題を再定義する

問いから得た気づきをもとに、問題文を書き直す。

  • 元の問題:「新卒の離職率が高い」
  • 再定義A:「配属後3か月間のサポート体制が整っていない」
  • 再定義B:「新卒の適性と配属先のミスマッチが起きている」
  • 再定義C:「入社前にリアルな業務内容が伝わっていない」

問題の定義が変わると、考えるべき解決策がまったく異なるものになる。

ステップ4: 再定義した問題に解決策を出す

新しい問題定義に対して解決策をブレインストーミングする。

再定義B「適性と配属先のミスマッチ」であれば:

  • 入社後3部署を2週間ずつローテーション体験 → 本人と上長の双方が適性を判断
  • 配属前にジョブシャドウイング(実際の業務を1日見学)を実施
  • 適性診断ツールと配属先の業務特性をマッチングするシステム導入

元の問題定義では「離職防止研修」「メンター制度」といった対症療法に留まりがちだが、リフレーミング後は構造的な打ち手が見えてくる。

具体例
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例1:飲食チェーンが『人手不足』を再定義する

元の問題定義: 「アルバイトが集まらない。時給を上げても応募が来ない」

5つの問いで揺さぶる:

  • 本当の目的は? → 店舗を回すのに十分な労働力を確保すること
  • 何を前提にしている? → 「今の業務量をこなすにはこの人数が必要」という前提

再定義:必要な作業量に対して、オペレーションが非効率

打ち手:

  • セルフオーダー端末を全120店舗に導入(初期投資1台18万円×120台=2,160万円)
  • 配膳ロボット導入(月リース料3.5万円/店舗)
  • ピーク時間帯のメニューを42品から28品に絞り込み

導入から6か月後、1店舗あたりの必要人員が8名から5名に減少。時給アップに使っていた年間4,800万円の追加人件費が不要になった。「人が足りない」ではなく「作業が多すぎる」と読み替えたことで、採用市場に依存しない解決策が生まれた。

例2:SaaS企業がチャーンレート改善に取り組む

元の問題定義: 「月次チャーンレートが**3.2%で、業界平均の1.5%**を大きく上回っている」

5つの問いで揺さぶる:

  • 誰にとっての問題か? → 解約する顧客にとっては「自分に合わない製品を使い続ける方が問題」
  • 逆にうまくいっている部分は? → 導入後60日以内に特定の3機能を使った顧客の解約率は0.4%

再定義: 「解約が多い」のではなく、「初期のオンボーディングで価値体験に到達できていない

打ち手:

  • 契約直後の14日間に、3つのコア機能を順番に案内するガイドツアーを実装
  • 7日目・14日目に未利用機能がある顧客へ自動リマインドメール送信
  • 30日目に未活用の顧客にはCSチームが15分のビデオ通話を実施

施策開始から4か月で、チャーンレートは3.2% → 1.8%に改善。年間で約2,400万円の売上維持につながった。「解約を防ぐ」ではなく「価値を届ける」に問題を変えたことがポイントになっている。

例3:地方自治体が『若者流出』を再定義する

元の問題定義: 「毎年約800人の18〜24歳が市外に転出している」

5つの問いで揺さぶる:

  • 本当の目的は? → 地域の経済活力と人口を維持すること
  • 問題の境界はどこか? → 「流出を止める」だけでなく「流入を増やす」選択肢もある
  • 何を前提にしている? → 「一度出た若者は戻ってこない」は本当か?

再定義: 「若者が出ていく」のではなく「30代で戻ってくる理由がない

打ち手:

  • Uターン希望者向けのリモートワーク対応型シェアオフィスを駅前に開設(家賃補助: 月3万円×24か月)
  • 市外転出者5,200名のメールリストを構築し、地元の求人・住宅情報を月2回配信
  • 子育て世帯向けの家賃補助(月2万円×最大5年間)を新設

3年間でUターン転入者が年間48名 → 187名に増加。施策コストは年間3,800万円だが、転入者による税収増と地域消費で年間約1.2億円の経済効果が試算されている。流出を「止める」のではなく、「戻ってくる動線をつくる」という発想の転換が効いた。

やりがちな失敗パターン
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  1. 元の問題定義に固執する — リフレーミングしても「やっぱり元の定義が正しい」と戻ってしまう。最低でも3つの再定義を出してから比較すること。1つだけでは元に引き戻される
  2. 問いが浅いまま終わる — 「誰にとっての問題?」に「顧客」と一言で答えて終わりにしない。「どんな顧客?」「いつの時点の?」「何をしようとしている最中の?」と具体化しないと、問題は動かない
  3. リフレーミングが目的化する — 問題を何度も再定義するだけで解決策に進まないケース。リフレーミングは15分で区切り、そこから先は解決策の検討に時間を使う

まとめ
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問題リフレーミングは、解決策ではなく問題の定義自体を変える思考法。「エレベーターが遅い」を「待ち時間が苦痛」に変えるだけで、解決策は高速化から鏡の設置に変わる。5つの問い(目的・主語・境界・前提・例外)を使って問題を揺さぶり、別の角度から再定義することで、コストが低く効果の高い解決策が見つかることは多い。行き詰まったら、まず「解いている問題は本当に正しいか?」と立ち止まることから始めてほしい。