ロジックツリー

英語名 Logic Tree
読み方 ロジック ツリー
難易度
所要時間 20〜40分
提唱者 マッキンゼー・アンド・カンパニー
テンプレート あり ↓
目次

ひとことで言うと
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問題を「なぜ?」「どうやって?」で枝分かれさせながらツリー状に分解していくフレームワーク。複雑に見える課題も、一段ずつ分けていけば「どこが本当の問題か」が見えてくる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
MECE(ミーシー)
Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略。「モレなくダブりなく」分けること。ロジックツリーの各階層で守るべき基本原則。
Whyツリー
「なぜ?」で分岐させる原因追究型のロジックツリー。問題の根本原因を特定するために使う。
Howツリー
「どうすれば?」で分岐させる解決策探索型のロジックツリー。実行可能なアクションを網羅的に洗い出すために使う。
イシュー(Issue)
ツリーの頂点に置く解くべき問いのこと。このイシューの設定がツリー全体の質を決める。
レバレッジポイント
ツリーの末端の中で、最も効果が大きく着手しやすい打ち手のこと。すべての枝に手を打つのではなく、この点に集中する。

ロジックツリーの全体像
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ロジックツリー:問いを階層的に分解して打ち手を導く
問い(イシュー)なぜ売上が下がったか?客数の減少来店・訪問数が減っている客単価の低下1人あたりの購入額が減少新規が減少広告効果の低下認知が不足既存が離脱リピート率低下満足度に問題購入点数減ついで買いが減っている単価の下落値引き販売が増加しているMECEモレなくダブりなく第0階層第1階層第2階層
ロジックツリーの進め方フロー
1
問いを設定
解決すべき問いを具体的に定義する
2
第一階層を分解
MECEに大きく2〜4つに分ける
3
枝を伸ばす
アクションが取れるレベルまで具体化
優先順位決定
インパクト×実行しやすさで打ち手を絞る

こんな悩みに効く
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  • 問題が大きすぎて、どこから手をつけていいかわからない
  • 原因を探っているうちに、話があちこち飛んでしまう
  • 解決策を出しても「他にないの?」と言われてしまう

基本の使い方
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ステップ1: 頂点に「問い」を置く

まず、解決したい問題やテーマをツリーの一番上(または左端)に書く。

このとき、問いを具体的に設定するのがポイント。「売上を上げたい」より「来月の売上を10%上げるには?」のほうが、分解しやすくなる。

問いの種類によってツリーの性質が変わる:

  • Whyツリー: 「なぜ○○なのか?」→ 原因を探る
  • Howツリー: 「どうすれば○○できるか?」→ 解決策を探る
  • Whatツリー: 「○○は何で構成されるか?」→ 要素を整理する
ステップ2: 第一階層を大きく分ける

問いに対して、最初の分岐を2〜4つに分ける。ここが一番重要。

MECE(モレなくダブりなく) を意識して切ると、後の分解がスムーズになる。

例)「なぜ売上が下がったか?」

  • 客数が減った
  • 客単価が下がった

例)「どうすれば英語力を上げるか?」

  • インプットを増やす
  • アウトプットを増やす
  • 学習環境を整える
ステップ3: さらに枝を伸ばして具体化する

各要素をさらに分解して、アクションが取れるレベルまで掘り下げる。通常は3〜4階層が目安。

「客数が減った」→「新規が減った」→「Web経由の新規が減った」→「広告のクリック率が下がった」

ここまで分解できれば、「広告のクリエイティブを改善する」という具体的なアクションが見えてくる。

ステップ4: 優先順位をつける

ツリーが完成したら、すべての枝に対応する必要はない。インパクトが大きく、すぐ着手できるものから優先順位をつける。

各枝に「影響度:大/中/小」「実行しやすさ:高/中/低」をラベルづけすると、どこから攻めるべきか一目でわかる。

具体例
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例1:月商800万円の飲食店が売上低迷の原因を特定する

状況: 都内で3店舗を展開する居酒屋チェーン。月商が前年比78%に低下し、原因を特定したい。

問い: なぜ月商が800万円→624万円に下がったか?

第1階層(MECE: 売上 = 客数 × 客単価):

  1. 客数が減った
  2. 客単価が下がった

第2階層:

  1. 客数が減った
    • 新規来店が減った(前年比65%)
    • リピーター来店が減った(前年比88%)
  2. 客単価が下がった
    • 1人あたり注文品数が減った(4.2品→3.5品)
    • ドリンク注文率が低下(82%→71%)

第3階層(新規来店の深掘り):

  • 新規が減った → グルメサイトの表示順位が下がった → 口コミ点数が3.8→3.2に低下 → 直近のスタッフ入れ替わりで接客品質が落ちた
影響度実行しやすさ優先度
接客品質の改善★★★
ドリンクメニューの刷新★★
グルメサイトの口コミ対策★★

売上低下の最大要因は「接客品質の低下→口コミ悪化→新規減少」の連鎖。まず接客研修を2週間以内に実施し、口コミ点数の回復を目指す。

例2:BtoB SaaS企業が解約率上昇の原因を分析する

状況: 従業員150名のSaaS企業。月次解約率が1.2%→2.8%に上昇。ARR(年間経常収益)への影響が大きく、早急に原因を特定したい。

問い: なぜ月次解約率が2.8%に上昇したか?

ロジックツリー:

  1. プロダクト起因
    • 機能が競合に劣後(新機能リリースが前年比40%減)
    • バグ・障害の頻度増加(月平均2件→5件)
  2. カスタマーサクセス起因
    • オンボーディング完了率低下(85%→62%)
    • ヘルススコア低下顧客のフォロー漏れ
  3. 市場環境起因
    • 競合の低価格プラン登場
    • 顧客の予算縮小

深掘り結果:

  • オンボーディング完了率低下 → CS1人あたりの担当顧客数が30社→55社に増加 → 顧客増に対してCS人員の増員が追いついていない

対策の優先順位:

  1. CS人員を2名即採用し、1人あたり担当を35社以下に(影響度:大)
  2. オンボーディングの自動化ツール導入で工数30%削減(影響度:大)
  3. バグ対応チームの専任化で障害対応を迅速化(影響度:中)

解約率上昇の根本原因は「CS体制のキャパシティ不足」。プロダクトの機能不足ではなく、顧客が使いこなせていないことが真の問題だった。

例3:地方の中小印刷会社が新規受注を増やす方法を探す

状況: 従業員25名の印刷会社。既存顧客の発注量が年5%ずつ減少しており、新規受注でカバーしたい。年商1.8億円。

問い: どうすれば来期の新規受注を3,000万円獲得できるか?(Howツリー)

第1階層:

  1. 新規顧客を開拓する
  2. 既存顧客から新しい案件を獲得する
  3. 新しいサービスを追加する

第2階層→第3階層:

  1. 新規顧客開拓
    • Web集客を強化 → 自社サイトをリニューアル、SEO対策で「地域名+印刷」で上位表示
    • 異業種交流会への参加 → 月2回、名刺100枚配布目標
  2. 既存顧客から新案件
    • 紙だけでなくノベルティ制作を提案 → 単価アップ(平均+15%)
    • 年賀状・カレンダーなど季節商品の提案 → Q4に集中キャンペーン
  3. 新サービス追加
    • デザイン込みのワンストップサービス → 外注デザイナー2名と提携
    • 小ロット・オンデマンド印刷 → 設備投資600万円で対応可能
施策見込み売上投資額回収期間
Web集客強化年800万円150万円3ヶ月
ノベルティ提案年500万円0円即時
デザインワンストップ年1,200万円月20万円2ヶ月
オンデマンド印刷年1,500万円600万円6ヶ月

まず投資ゼロで始められる「既存顧客へのノベルティ提案」と「デザインワンストップ」を今月中に開始。Web集客は並行して3ヶ月で立ち上げる。

やりがちな失敗パターン
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  1. 最初の分岐がMECEになっていない — 第一階層がズレると、その後すべてがズレる。最初の切り口に一番時間をかけるべき
  2. 分解しすぎて収拾がつかなくなる — 5階層以上は深すぎるサイン。「これ以上分けても行動が変わらない」と思ったらそこが限界
  3. ツリーを描いただけで満足する — 分解は手段であって目的ではない。「で、どこを攻めるのか?」まで決めてこそ意味がある
  4. すべての枝を均等に扱う — ツリーの枝すべてに同じ労力をかけると時間がいくらあっても足りない。影響度と実行しやすさで優先順位をつけ、上位2〜3個に集中するのが実務のコツ

WhyツリーとHowツリーの使い分け
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WhyツリーHowツリー
問いの形なぜ〇〇なのか?どうすれば〇〇できるか?
目的原因・根本原因の特定解決策・打ち手の網羅
使う場面問題が起きた後の分析課題解決の施策を出すとき
典型例なぜ解約率が上がったかどうすれば新規顧客を増やせるか
注意点犯人探しにならないこと実行可能性も並行して評価する

WhyツリーとHowツリーを組み合わせるのが実務の基本。「なぜ売上が落ちているか(Why)」を特定した後、「どうすれば改善できるか(How)」へと展開する。

MECEな切り口の例
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ロジックツリーの第1階層を「MECEに切る」のが最難関。よく使われる切り口:

切り口
構成要素分解売上 = 客数 × 客単価 × 来店頻度
プロセス分解認知 → 興味 → 検討 → 購入 → リピート
主体分解新規顧客 / 既存顧客 / 休眠顧客
時間軸分解短期(〜3ヶ月)/ 中期(〜1年)/ 長期(1年〜)
4P分解Product / Price / Place / Promotion
コスト分解固定費 / 変動費

切り口を間違えると後の分解がすべてズレるため、**第1階層の切り方に全体の時間の30〜40%**をかけるのが正しい優先配分。

よくある質問
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Q: ロジックツリーはマインドマップと何が違いますか? A: マインドマップはアイデアの発散・連想を目的とし、自由な連想で枝を広げます。ロジックツリーはMECE(モレなくダブりなく)という制約のもとで論理的に分解することが目的です。「網羅性」と「相互排他性」を担保するかどうかが最大の違いで、問題分析にはロジックツリー、アイデア出しにはマインドマップが向いています。

Q: 何階層まで分解すればよいですか? A: 「具体的なアクションが取れるレベル」に到達したら止めるのが目安です。一般的には3〜4階層で十分なことが多く、5階層を超えると複雑になりすぎて管理が困難になります。「この枝についてどんな行動をとるか?」がすぐ言えたら、それ以上の分解は不要です。

Q: 一人で作るより複数人で作る方がよいですか? A: 初期のツリー作成は一人で仮組みしてから、チームでレビューするのがベストです。一人だと自分の思考の「盲点」が入りやすく、MECEが崩れやすいです。特に第1階層の切り口は2〜3人で議論すると網羅性が上がります。ホワイトボードや付箋を使って全員が書き込める環境にすると意見が出やすくなります。

Q: ロジックツリーを描くのに適したツールはありますか? A: 紙とペンが最速です。デジタルツールならMiro・FigJam(リアルタイム共同編集)、XMind・MindMeister(マインドマップ系)、PowerPoint・Keynote(プレゼン向け)が使いやすいです。重要なのはツールより「MECE に分解できているか」の思考プロセスなので、慣れるまでは紙で十分です。

まとめ
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ロジックツリーは、大きな問題を小さく分解して「本当に手を打つべきポイント」を見つけるツール。紙とペンがあれば今すぐ使える手軽さと、問題解決の精度を上げてくれる実用性を兼ね備えている。まずは身近な悩みで試してみて、ツリーで考えるクセをつけよう。

ロジックツリーのフレームワークテンプレート

このフレームワークを実際に使ってみましょう。