LEGO Serious Play

英語名 LEGO Serious Play
読み方 レゴ シリアス プレイ
難易度
所要時間 2時間〜1日
提唱者 LEGO
目次

ひとことで言うと
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LEGOブロックで自分の考えを3次元モデルとして組み立て、それをもとにチームで対話するワークショップ手法。「手を動かすことで、頭では気づけなかった思考が浮かび上がる」という認知科学の知見に基づき、LEGO社が2001年に体系化した。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
LEGO Serious Play(LSP)
LEGOブロックを使った戦略構築・対話促進のワークショップ手法。遊びではなく、ビジネス上の重要な問いに取り組むために設計されている。
Hand-Mind Connection(手と脳のつながり)
手を動かすことで無意識の知識や感情が表出するという認知科学の原理。LSPの理論的基盤になっている。
スキルビルディング
ワークショップの冒頭で行う簡単なLEGO組み立て練習。「正解はない」「ブロックに意味を持たせる」という基本ルールを体験的に学ぶ。
シェアードモデル
参加者個人のモデルを統合して作るチーム全体の共有モデル。個人の視点がどう全体に貢献するかを可視化する。

LEGO Serious Playの全体像
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LSP:4段階のプロセスで思考を可視化する
1. 問いかけるテーマを設定する抽象的な問いを投げかける2. 組み立てるブロックで思考を形にする3〜7分で個人モデルを作成3. 共有するモデルを使いストーリーを語る全員が必ず発言質問で深掘り4. 振り返る気づきを統合シェアードモデルへチームの合意を可視化するLSPの3つの基本原則全員が参加する発言しない人ゼロモデルに語らせる人ではなく作品を議論正解はないすべてのモデルに価値
LSPワークショップの基本フロー
1
スキルビルディング
簡単な組み立て練習でルールと感覚を掴む
2
個人モデル作成
問いに対する自分の考えをブロックで表現する
3
共有と対話
モデルを見せながらストーリーを語り、質問し合う
シェアードモデル
個人モデルを統合し、チームの共通理解を形にする

こんな悩みに効く
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  • 会議で声の大きい人ばかりが発言し、全員の意見が出てこない
  • 抽象的なビジョンや戦略をチームで共有しようとしても、言葉だけでは伝わらない
  • ブレストしても表面的なアイデアしか出ず、深い議論にならない

基本の使い方
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スキルビルディングで場を温める(15〜20分)

いきなり本題に入らず、簡単な組み立てで「手を動かすモード」に切り替える。

  • 「3分で塔を作ってください」→「この塔に名前をつけて説明してください」
  • ルールを伝える:「正解はない」「全員が作る」「モデルに語らせる」
  • 笑いが生まれるくらいがちょうどいい。緊張をほぐすのが目的
問いかけて、組み立てて、共有する

ファシリテーターがテーマに関する問いを投げかけ、参加者がブロックで回答する。

  • 問いの例: 「理想のチームを表すモデルを作ってください」「3年後の自社をブロックで表現してください」
  • 制限時間は 5〜7分。考えすぎる前に手を動かすことがポイント
  • 作ったモデルを1人ずつ説明(1人2〜3分)。質問は「なぜこのパーツを選んだのか」「ここは何を表しているのか」
シェアードモデルで統合する

個人のモデルをテーブルの中央に集め、チーム全体のモデルとして再構築する。

  • 共通する要素を見つける:「全員のモデルに"橋"があるのはなぜか」
  • 対立する要素を議論する:「この部分は赤と青で全く違う意味になっている」
  • 最終的にチームの合意を反映したシェアードモデルを完成させる

具体例
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例1:LEGO社自身がLSPで企業戦略の危機を乗り越える

2000年代初頭、LEGO社は売上低迷と過剰な多角化(テーマパーク、衣料品等)により、年間8億ドル以上の赤字 を計上していた。

新CEOのヨアン・ヴィ・クヌッドストープは、経営幹部チームでLSPワークショップを実施。「LEGOの本質とは何か」という問いに対して、各メンバーがブロックで自分の考えを表現した。

結果、全員のモデルに共通していたのは「ブロックの創造体験」であり、テーマパークや衣料品は誰のモデルにも登場しなかった。この気づきが「コア事業への回帰」という戦略の起点になった。

非中核事業を売却し、ブロック製品に集中した結果、LEGOの売上は2004年の 71億デンマーク・クローネ から2015年には 359億クローネ に成長。LSPが経営判断の「最初の共通認識づくり」に活用された典型例。

例2:IT企業がチームビジョン策定にLSPを活用する

大阪のSaaS企業(従業員50名)の新設チーム(8名)は、チーム発足から2ヶ月経っても「何を目指すチームなのか」が定まらず、メンバー間の温度差が大きかった。

マネージャーがLSPワークショップを2時間で実施。

問い:「1年後の理想のチームをブロックで作ってください」

8名のモデルから見えたパターン:

  • 6名 が「チーム内の橋」を作っていた → コミュニケーションが課題
  • 5名 が「旗」を立てていた → 明確な目標がほしい
  • 3名 が「壁」を含んでいた → 他部門との壁を感じている

言葉だけの議論では出てこなかった「全員がコミュニケーションに課題を感じている」という事実が可視化された。シェアードモデルとして「橋でつながった島々に旗が立つ」モデルを作成し、チームの行動指針に落とし込んだ。

3ヶ月後の従業員サーベイで、チームの「目標の明確さ」スコアは 2.8 → 4.3(5点満点)に改善。

例3:自治体が住民参加型まちづくりにLSPを使う

岡山県の自治体(人口5万人)は、中心市街地の再開発計画について住民の意見を集めたかったが、従来の「意見交換会」では毎回同じ高齢男性だけが発言する状況だった。

LSPを使った「まちづくりワークショップ」を開催。参加者は20代〜70代の住民 32名

問い:「10年後のこの街の理想の姿をブロックで作ってください」

特徴的だったのは、普段の意見交換会では発言しない20代女性と外国人住民の参加。ブロックを使うことで言語の壁が下がり、全員が「作品」として意見を出せた。

32個のモデルから抽出された共通テーマ:

  • 「緑のある広場」が 24個 のモデルに出現
  • 「子連れで歩ける歩道」が 18個
  • 「空き店舗の活用」が 15個

この結果は再開発計画に反映され、緑道のある歩行者優先エリア の設計が採用された。従来の意見交換会が「声の大きさ」で決まるのに対し、LSPでは「全員の考えが見える」ことで合意形成がスムーズになった。

やりがちな失敗パターン
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  1. 「遊び」と誤解される — 「LEGOで遊ぶ会議」と思われると、真剣な参加を得られない。事前に目的と効果を明確に伝え、過去の成功事例を共有する
  2. 問いが具体的すぎる — 「売上を10%上げる方法」のような具体的な問いにはLSPは不向き。「理想のチームとは」「3年後のビジョン」のような抽象的な問いが最適
  3. 時間が足りない — 1ラウンド(問い→組み立て→共有)に最低30分は必要。2時間以下のワークショップでは2〜3ラウンドが限界
  4. ファシリテーターが解釈を押し付ける — モデルの意味を決めるのは作った本人。「それはこういう意味ですね」と勝手にまとめない
  5. 共有の時間を削る — 組み立てに時間をかけすぎて共有が駆け足になるパターン。LSPの価値は「作る」ではなく「語る」にある

まとめ
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LEGO Serious Playは、ブロックで思考を3次元的に可視化し、チームの対話を深めるワークショップ手法。LEGO社自身が経営危機の突破に使ったことで知られる。最大の強みは「全員が参加し、全員の考えが見える」こと。言葉だけでは表現しにくいビジョンや価値観を形にするのに適しており、戦略策定・チームビルディング・合意形成の場で高い効果を発揮する。