イシューツリー

英語名 Issue Tree
読み方 イシュー ツリー
難易度
所要時間 30〜60分
提唱者 マッキンゼー・アンド・カンパニー
テンプレート あり ↓
目次

ひとことで言うと
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「答えを出すべき問い(イシュー)」を頂点に置き、その問いに答えるために必要なサブ論点をツリー状に分解していくフレームワーク。ロジックツリーが「原因や打ち手」を分解するのに対し、イシューツリーは**「問い」そのものを分解する**。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
イシュー(Issue)
今、答えを出すべき最も重要な問いのこと。「テーマ」や「課題」ではなく、Yes/Noや選択肢で答えられる問いの形にする。
サブイシュー(Sub-Issue)
メインイシューに答えるために検討すべき下位の論点のこと。サブイシューすべてに答えが出れば、メインイシューの答えが導ける。
MECE(ミーシー)
Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略。「モレなく、ダブりなく」分解できている状態のこと。イシューツリーの品質を左右する基本原則。
仮説ドリブン(Hypothesis Driven)
最初に仮の答え(仮説)を置いてから検証するアプローチのこと。イシューツリーでは仮説を持ってサブイシューを設計すると効率が上がる。
ロジックツリー(Logic Tree)
事象を原因や打ち手に分解するツリー。イシューツリーが「問い」を分解するのに対し、ロジックツリーは**「答え」の構造を分解する**点が異なる。

イシューツリーの全体像
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イシューツリー:問いを分解して検証可能なレベルまで落とし込む
メインイシュー答えを出すべき最も重要な問いサブイシュー1市場の成長余地はどの程度あるか?サブイシュー2自社リソースは対応可能か?サブイシュー3競合の動向はどうなっているか?市場規模推移データで検証可能未充足ニーズ調査で検証可能競合シェアデータで検証可能競合の戦略分析で検証可能Level 0Level 1Level 2MECE で分解検証可能なレベルまで分解
イシューツリーの進め方フロー
1
メインイシュー設定
答えを出すべき問いを1つ決める
2
サブイシュー分解
MECEを意識して論点を分ける
3
検証レベルまで深掘り
データで答えが出る粒度まで分解
統合・結論導出
各論点の答えを統合して結論を出す

こんな悩みに効く
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  • 議論がいつも散らかって、「結局何を決めるんだっけ?」となる
  • プロジェクトの方向性を考えるとき、何から検討すればいいかわからない
  • 報告書や提案書の論理構成がうまく組み立てられない

基本の使い方
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ステップ1: メインイシューを設定する

まず「今、答えを出すべき最も重要な問い」を一つ設定する。

良いイシューの条件:

  • Yes/Noまたは選択肢で答えられる形になっている

  • 答えが出れば意思決定や行動につながる

  • 自分たちでコントロールできる範囲にある

  • 悪い例 「我が社の未来について」(問いになっていない)

  • 良い例 「来期、国内市場と海外市場のどちらに注力すべきか?」

ステップ2: サブイシューに分解する

メインイシューに答えるために「何がわかれば答えが出せるか?」を考え、サブイシューに分解する。

例)「来期、国内と海外のどちらに注力すべきか?」

  • 国内市場の成長余地はどの程度あるか?
  • 海外市場の参入障壁はどれくらい高いか?
  • 自社のリソース(人材・資金)はどちらに対応できるか?
  • 競合はどちらの市場に力を入れているか?

このときMECEを意識して、論点のモレ・ダブりをチェックする。

ステップ3: さらに分解して検証可能なレベルにする

各サブイシューを、データや調査で答えが出せるレベルまでさらに分解する。

「国内市場の成長余地はどの程度あるか?」

  • 過去5年の市場規模の推移は?
  • 顧客の未充足ニーズはあるか?
  • 自社のシェアを伸ばす余地はあるか?

ここまで分解できれば、「何を調べればいいか」が明確になる。

ステップ4: 各サブイシューに答えを出し、統合する

分解した各論点を調査・分析し、それぞれに答えを出していく。最後に、すべての答えを統合してメインイシューへの回答を導く。

各サブイシューの答えが矛盾する場合は、どの論点を最も重視するかの優先順位をつけて判断する。

具体例
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例1:中堅SaaS企業が次期主力プロダクトの方向性を決める

状況: 従業員200名のBtoB SaaS企業。現行プロダクトの成長率が年8%に鈍化。経営会議で「次の柱」を検討中。

メインイシュー: 「次の主力プロダクトは、既存顧客向けのアップセル製品にすべきか、新規市場向けの新製品にすべきか?」

サブイシューの分解:

サブイシュー検証方法結果
既存顧客のアップセル余地はどの程度か?顧客300社にアンケート調査68%が「追加機能に月5万円まで払う」と回答
新規市場の規模と成長性は?市場調査レポート分析年間2,400億円、CAGR 22%
自社の開発リソースは両方に対応可能か?エンジニアリング部門と協議片方に全力投球で12ヶ月、両方は24ヶ月以上
競合はどちらに注力しているか?競合5社の発表を分析4社が新規市場に参入、アップセル領域は手薄

統合と結論: 競合が新規市場に殺到する中、既存顧客のアップセル領域は手薄。既存顧客の68%が追加投資を意向し、競合も少ないアップセル製品を先に開発し、収益基盤を固めてから新規市場に参入するという2段階戦略を採用。

例2:個人がキャリアチェンジすべきか判断する

状況: 32歳の経理担当者。勤続8年だが、データサイエンティストへの転職を検討中。年収は520万円。

メインイシュー: 「今のタイミングでデータサイエンティストに転職すべきか?」

サブイシューの分解:

  1. データサイエンティストの市場需要は十分か?
    • 求人数: 前年比35%増(Indeed調べ)
    • 平均年収: 650〜900万円(経験3年以上)
  2. 自分のスキルギャップはどの程度か?
    • Python: 独学6ヶ月で基礎は習得済み
    • 統計学: 大学で専攻していたが10年ブランク
    • 実務経験: ゼロ(最大の弱点)
  3. 転職リスクは許容範囲か?
    • 最悪シナリオ: 6ヶ月の求職期間で貯金200万円を消費
    • 現職の復帰可能性: 1年以内なら戻れる(上司に確認済み)
  4. 今のタイミングである理由は?
    • 経理×データの掛け合わせ人材は希少(転職エージェント談)
    • 35歳を超えると未経験転職の難易度が上がる

**まとめると、スキルギャップを埋めてから転職する。まず現職のまま6ヶ月間、データ分析の副業案件を2〜3件こなし、実務経験を作ってから本格的に転職活動を開始する。

例3:地方自治体が観光戦略の優先施策を決める

状況: 人口5万人の地方都市。年間観光客数が10年前の120万人から75万人に減少。限られた予算(年間3,000万円)で最も効果的な施策を選ぶ必要がある。

メインイシュー: 「年間観光客数を3年以内に100万人に回復させるために、最優先で取り組むべき施策は何か?」

サブイシューの分解:

  1. なぜ観光客が減少しているのか?
    • 宿泊施設の老朽化(稼働率38%→22%)
    • 主要観光スポットのリピーター頼み(初訪問率が15%に低下)
    • SNS上の口コミ件数が近隣自治体の1/5
  2. どの観光客層に伸びしろがあるか?
    • インバウンド: 近隣空港の国際線が年20%増加中
    • 20〜30代: 地域のSNS発信がほぼゼロで未開拓
    • ワーケーション需要: Wi-Fi環境が整った施設が皆無
  3. 予算3,000万円で最もレバレッジが効く施策は?
    • 宿泊施設改修: 1億円以上必要(予算不足)
    • SNS発信・インフルエンサー招致: 500万円で年間12件の取材誘致が可能
    • 体験型コンテンツ開発: 1,000万円で3プログラム作成可能

**まとめると、宿泊施設改修は国の補助金を申請しつつ、即効性のあるSNS発信(500万円)と体験型コンテンツ(1,000万円)に優先投資する。残り1,500万円はワーケーション対応のWi-Fi整備に充て、新規客層を開拓する。

やりがちな失敗パターン
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  1. イシューが「問い」になっていない — 「売上拡大について」はイシューではない。「売上を来期20%伸ばすには何をすべきか?」が正しいイシュー。問いの形にしないと分解できない
  2. サブイシューが答えのほうに寄ってしまう — 「広告費を増やすべきか?」は打ち手の一つであって論点ではない。「顧客獲得コストをどう最適化するか?」が論点
  3. 全部のサブイシューを同じ深さまで掘り下げてしまう — 重要度の低い論点は浅く、重要な論点は深く。メリハリをつけないと時間がいくらあっても足りない
  4. 分解して満足し、統合を怠る — サブイシューを個別に調査しても、それらを組み合わせてメインイシューへの答えを導かなければ意味がない。最後の「統合」がイシューツリーのゴール

まとめ
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イシューツリーは「何を考えるべきか」を明確にするツール。問題解決の9割は「正しい問いを立てること」で決まるとも言われる。答えを急ぐ前に、まず問いを分解する。この一手間で、検討の質が劇的に変わる。

イシューツリーのフレームワークテンプレート

このフレームワークを実際に使ってみましょう。