ひとことで言うと#
問題に対して 「なぜ?」を5回繰り返し、表面的な原因ではなく根本原因(真因)にたどり着く思考法。トヨタ生産方式の柱として大野耐一氏が体系化した、日本発の問題解決の基本。
押さえておきたい用語#
- 真因(Root Cause)
- 問題を引き起こしている最も根本的な原因のこと。表面的な原因を取り除いても再発するが、真因を潰せば問題は根絶できる。
- 表層原因
- 最初に目につく見かけ上の原因を指す。「機械が止まった」→「ヒューズが飛んだ」のヒューズ部分がこれにあたる。
- 再発防止策
- 同じ問題が二度と起きないようにする仕組みや対策である。なぜなぜ5回の最終アウトプットがこれ。
- なぜなぜ展開
- 「なぜ?」を段階的に繰り返して因果関係を掘り下げていくプロセスのこと。5回は目安で、真因に到達すれば3回でも7回でもよい。
なぜなぜ5回の全体像#
こんな悩みに効く#
- 同じトラブルが何度も起きて、対処療法の繰り返しになっている
- 問題の原因を聞かれても「なんとなく」でしか答えられない
- 原因分析が表面的で、打ち手に自信が持てない
基本の使い方#
「何が」「いつ」「どこで」「どのくらい」起きたかを明確にする。
- NG: 「品質が悪い」 → 曖昧すぎて掘り下げられない
- OK: 「3月の出荷品のうち12件(不良率1.5%)が外観不良で返品された」
問題の記述が曖昧だと、なぜなぜも曖昧になる。
1つの原因に対して「なぜそれが起きたか?」を問いかけ、次の層の原因を探す。
- 事実ベースで答える(推測・感情を排除する)
- 1つの「なぜ」に対して複数の原因がある場合は分岐させてもOK
- 5回はあくまで目安。3回で真因に到達することもあれば、7回かかることもある
止め時の判断基準: 「これ以上深掘りしても制御可能な対策が出てこない」ところが真因。
真因に到達したら、それを潰す仕組みを作る。
- 「気をつける」「注意する」は対策にならない
- 仕組み・チェックリスト・設計変更など、人の注意力に頼らない対策にする
- 対策を打った後、問題が再発しないかモニタリングする
具体例#
問題: 4月の顧客クレーム件数が前月比3倍の45件に急増(うち38件が「料理の提供が遅い」)
| 回 | なぜ? | 答え |
|---|---|---|
| Why 1 | なぜ料理の提供が遅い? | キッチンの調理完了から配膳までに平均8分かかっている |
| Why 2 | なぜ配膳に8分もかかる? | ホールスタッフが料理完成に気づくのが遅い |
| Why 3 | なぜ気づくのが遅い? | 完成通知のベルが壊れて2週間放置されていた |
| Why 4 | なぜ2週間放置? | 故障報告を受けた店長が修理手配を忘れた |
| Why 5 | なぜ忘れた? | 設備故障の報告・対応を管理する仕組みがない |
再発防止策: 設備故障の報告用フォームを作成し、報告があったら店長と副店長に自動通知。対応完了まで毎日リマインドが飛ぶ仕組みに。導入翌月にクレーム件数は45件 → 11件に戻った。
問題: 直近4回のリリースで平均12件の本番バグが発生。修正対応に毎回エンジニア3名×2日を費やしている
| 回 | なぜ? | 答え |
|---|---|---|
| Why 1 | なぜ本番バグが多い? | テストで検出できていないバグがある |
| Why 2 | なぜテストで検出できない? | ステージング環境のデータが本番と大きく異なる |
| Why 3 | なぜデータが異なる? | ステージングのデータは半年前のスナップショットで更新されていない |
| Why 4 | なぜ更新されていない? | データ更新作業が属人化しており、担当者が異動後に引き継がれなかった |
再発防止策: 本番データの匿名化コピーを毎週自動でステージングに反映するパイプラインを構築。工数は初期構築に2人日、運用コストは月額1.2万円。導入後、リリースあたりのバグ数は12件 → 2.3件に減少し、修正対応の工数は月あたり24人日 → 4人日に圧縮された。
問題: 直近6か月のキャンセル率が平均22%。業界平均の12%を大幅に上回り、機会損失は月あたり推定180万円
| 回 | なぜ? | 答え |
|---|---|---|
| Why 1 | なぜキャンセルが多い? | キャンセル料が発生しない予約が全体の85%を占める |
| Why 2 | なぜキャンセル料なしの予約が多い? | OTA(楽天・じゃらん)経由の予約が90%で、OTAのデフォルト設定がキャンセル料なし |
| Why 3 | なぜOTA経由が90%? | 自社予約サイトへの導線がほぼない(SNSフォロワー8,000人いるがリンクが貼られていない) |
| Why 4 | なぜ導線がない? | Web施策の担当者がおらず、OTAに「お任せ」の運用が10年続いている |
再発防止策: 3つを同時に実施。(1) OTAのキャンセルポリシーを「3日前から50%」に変更、(2) SNSプロフィールとフィード投稿に自社予約サイトへのリンクを設置、(3) 自社予約限定の特典(ドリンク1杯無料)を追加。3か月後、キャンセル率は**22% → 13%**に改善し、自社予約比率がOTA90%:自社10%から70%:30%に変化した。
やりがちな失敗パターン#
- 「人のせい」で止めてしまう — 「担当者が注意を怠った」で終わると対策は「気をつける」にしかならない。人の行動の背景にある仕組み・設計・環境の問題まで掘り下げる
- 複数の原因を1本の線でつなごうとする — 原因が分岐する場合は無理に1本にせず、枝分かれさせてそれぞれを掘り下げる。1本にまとめると論理が飛躍しやすい
- 5回にこだわりすぎる — 3回で真因に到達することもあれば、7回かかることもある。「5回」は目安であって、真因にたどり着いたかどうかで判断する
- 推測で答えてしまう — 「たぶんこうだと思う」で掘り進めると、的外れな真因にたどり着く。各層の答えは事実・データ・現場確認に基づいて出す
まとめ#
なぜなぜ5回は「なぜ?」を繰り返すだけのシンプルな手法だが、表面的な対処療法から脱却し、根本原因を潰すための強力な武器になる。大事なのは事実ベースで掘り下げること、そして真因に対して「人の注意力に頼らない仕組み」を作ること。トヨタの工場で生まれたこの手法は、IT、サービス業、日常の問題解決まで、あらゆる場面で使える。