デシジョンツリー

英語名 Decision Tree
読み方 デシジョン ツリー
難易度
所要時間 30〜60分
提唱者 ハワード・ライファ、ロバート・シュライファー(統計的決定理論)
テンプレート あり ↓
目次

ひとことで言うと
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意思決定のポイントを**樹形図(ツリー)**で描き、各選択肢の先にある結果やリスクを可視化する手法。「なんとなく」の判断を「見える化された根拠」に変えてくれる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
決定ノード(Decision Node)
図中で□で表される自分で選択できる分岐点のこと。「参入する/しない」「内製/外注」のように、意思決定者がコントロールできる選択肢を示す。
確率ノード(Chance Node)
図中で○で表される自分ではコントロールできない不確実な事象のこと。「市場が拡大する(60%)/縮小する(40%)」のように確率で表現する。
期待値(Expected Value)
各結果の金額に確率を掛けて合計した加重平均の値のこと。複数の選択肢を同じ基準で比較するために使う。
リーフ(Leaf / End Node)
ツリーの末端にある最終的な結果のこと。売上見込み・利益・損失額などの具体的な数値を記入する。

デシジョンツリーの全体像
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デシジョンツリー:決定ノードから確率ノードを経て結果に至る構造
決定ノード選択肢A選択肢B確率ノード成功 60%失敗 40%成功 80%失敗 20%+3,000万円−500万円+1,500万円−200万円期待値A+1,600万期待値B+1,160万
デシジョンツリーの作り方フロー
1
決定ノードを描く
今判断しなければいけないことを□で表す
2
枝を伸ばす
選択肢(□)と不確実性(○)を分けて描く
3
数値を入れる
末端に金額、確率ノードに確率を記入
期待値で比較判断
右端から左に向かって期待値を計算し最適解を選ぶ

こんな悩みに効く
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  • AとBのどちらを選ぶべきか、頭の中だけでは比較しきれない
  • リスクがあるのはわかっているが、どのくらいのリスクか定量的に把握したい
  • 複数の選択肢があり、それぞれの結果が連鎖的に変わるので複雑すぎる

基本の使い方
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ステップ1: 意思決定ポイントを描く

まず、今判断しなければいけないことを左端に四角(□)で描く。

例:

  • □「新規事業に参入するか?」
  • □「内製するか外注するか?」

ここが「出発点」になる。

ステップ2: 選択肢と不確実性を枝で描く

四角(□)から出る枝は自分で選べる選択肢。丸(○)から出る枝は自分ではコントロールできない不確実な事象

例:

  • □ 新規事業に参入する → ○ 市場が拡大する(確率60%)/ 市場が縮小する(確率40%)
  • □ 参入しない → 現状維持

各枝の先にさらに判断や不確実性がある場合は、同じルールで枝を伸ばしていく。

ステップ3: 各結果に数値をつける

ツリーの末端(リーフ)に、期待される成果やコストを数値で記入する。

  • 売上見込み、利益、コスト、損失額など
  • 不確実性の枝には確率をつける
  • 確率は正確でなくてOK。「だいたい6割くらい」のレベルで十分

数値化することで「なんとなく良さそう」を「具体的にどのくらい良いか」に変換できる。

ステップ4: 期待値を計算して比較する

ツリーの右端から左に向かって、期待値を計算していく。

期待値 = 結果の数値 × 確率

例:

  • 参入して市場拡大(60%)→ 利益3,000万円 → 期待値 = 1,800万円
  • 参入して市場縮小(40%)→ 損失500万円 → 期待値 = -200万円
  • 参入の総期待値 = 1,800万 - 200万 = 1,600万円
  • 参入しない → 0円

→ 期待値1,600万円なので、参入する方が合理的と判断できる。

具体例
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例1:BtoB SaaS企業が「自社開発 vs SaaS導入」を判断する

状況: 従業員60名のBtoB SaaS企業。業務管理システムの刷新が必要。自社開発とSaaS導入の2案がある。

□ 判断:業務システムをどうするか?

枝A:自社開発する(初期コスト2,000万円)

  • ○ 開発が予定通り完了(確率70%)→ 年間コスト削減800万円/年
  • ○ 開発が遅延・追加費用(確率30%)→ 追加コスト1,000万円、年間削減400万円/年

枝B:SaaSを導入する(初期コスト200万円)

  • ○ 業務にフィットする(確率80%)→ 年間コスト削減500万円/年
  • ○ カスタマイズが必要(確率20%)→ 追加費用500万円、年間削減300万円/年

3年間の期待値比較:

シナリオ初期コスト3年間の削減純利益確率期待値
自社開発・成功-2,000万+2,400万+400万70%+280万
自社開発・遅延-3,000万+1,200万-1,800万30%-540万
SaaS・フィット-200万+1,500万+1,300万80%+1,040万
SaaS・要カスタマイズ-700万+900万+200万20%+40万
  • 自社開発の期待値 = 280万 + (-540万) = -260万円
  • SaaS導入の期待値 = 1,040万 + 40万 = +1,080万円

SaaS導入の期待値が1,080万円と圧倒的に高い。自社開発は「成功したとき」のリターンは大きいが、遅延リスク込みで考えるとマイナス。リスク調整後の合理的な判断はSaaS導入。

例2:飲食店オーナーが2号店の出店判断をする

状況: 個人経営のラーメン店。1号店の月商350万円(利益率18%)。駅前に好物件が出たが、2号店の出店には初期投資1,500万円が必要。

□ 判断:2号店を出店するか?

枝A:出店する(初期投資1,500万円)

  • ○ 繁盛する(確率50%)→ 月商300万円(利益率15%)= 年間利益540万円
  • ○ 普通(確率35%)→ 月商200万円(利益率10%)= 年間利益240万円
  • ○ 不振(確率15%)→ 月商100万円(利益率-5%)= 年間損失60万円

枝B:出店しない

  • 1号店に集中。現状維持 = 年間利益756万円(変化なし)

3年間の期待値(初期投資込み):

シナリオ確率3年間利益投資回収後期待値
繁盛50%+1,620万+120万+60万
普通35%+720万-780万-273万
不振15%-180万-1,680万-252万
  • 出店の期待値 = 60万 + (-273万) + (-252万) = -465万円
  • 出店しない = 0円

期待値はマイナス465万円。「繁盛する」シナリオでも3年で初期投資を回収しきれない。出店するなら、初期投資を1,000万円以下に抑えるか、繁盛確率を高める施策(事前マーケティング・デリバリー併用など)を検討すべき。

例3:転職するかフリーランスになるか、キャリアの意思決定

状況: 32歳のWebエンジニア。現職の年収550万円。転職オファー(年収700万円)とフリーランス独立の2つの選択肢がある。

□ 判断:キャリアをどうするか?

枝A:転職する(年収700万円)

  • ○ 会社にフィット(確率70%)→ 年収700万円が安定的に続く
  • ○ フィットせず1年で再転職(確率30%)→ 1年は700万、その後550万に戻る

枝B:フリーランスになる

  • ○ 案件が安定(確率40%)→ 年収900万円
  • ○ まあまあ(確率40%)→ 年収600万円
  • ○ 案件獲得に苦労(確率20%)→ 年収350万円

3年間の期待値(現職を基準 = 0):

選択肢シナリオ確率3年間収入現職比期待値
転職・フィット70%2,100万+450万+315万
転職・ミスマッチ30%1,800万+150万+45万
フリー・安定40%2,700万+1,050万+420万
フリー・まあまあ40%1,800万+150万+60万
フリー・苦労20%1,050万-600万-120万
  • 転職の期待値 = 315万 + 45万 = +360万円
  • フリーランスの期待値 = 420万 + 60万 + (-120万) = +360万円

期待値はほぼ同じ(+360万円)。ただし分散が異なる。転職はローリスク・ミドルリターン、フリーランスはハイリスク・ハイリターン。リスク許容度で選ぶべき。貯蓄が1年分以上あり、案件獲得のネットワークがあるならフリーランス、安定重視なら転職が合理的。

やりがちな失敗パターン
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  1. 確率や数値の精度にこだわりすぎる — デシジョンツリーの目的は「完璧な予測」ではなく「判断の構造化」。数値は概算でよく、大事なのは選択肢と結果の全体像が見えること
  2. 選択肢を2つに絞ってしまう — 「やるか、やらないか」だけでなく「段階的にやる」「一部だけやる」「パートナーと組む」など、第3の選択肢を意識的に探す
  3. 一度描いたら更新しない — 状況が変わったら確率や数値も変わる。デシジョンツリーは「一度描いて終わり」ではなく、新しい情報が入るたびにアップデートする
  4. 期待値だけで判断する — 期待値が高くても、最悪ケースの損失が許容できないなら選ぶべきではない。期待値に加えて「最悪ケースに耐えられるか」も必ず確認する

まとめ
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デシジョンツリーは、複雑な意思決定を「見える化」して合理的な判断を導くツール。選択肢・確率・結果を一枚の図にすることで、直感に頼らない意思決定ができる。大きな判断を前にしたら、まずは紙に四角を一つ描くところから始めてみよう。

デシジョンツリーのフレームワークテンプレート

このフレームワークを実際に使ってみましょう。