親和図法

英語名 Affinity Diagram
読み方 アフィニティ ダイアグラム
難易度
所要時間 30〜60分
提唱者 川喜田二郎(文化人類学者、KJ法の発展形)
目次

ひとことで言うと
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大量のバラバラな情報やアイデアを付箋に書き出し、「似ているもの同士」でグループにまとめることで、全体の構造やパターンを浮かび上がらせる整理手法。頭の中の混沌を「見える秩序」に変えてくれる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
親和性(アフィニティ)
情報やアイデア同士の**「似ている」「近い」と感じる性質**のこと。論理的な分類ではなく直感的な類似感が親和図法の鍵。
表札(ラベル)
グループの内容を一言で表す見出しを指す。グループ化した後に付ける。データから浮かび上がった本質的なテーマを言語化する役割。
ボトムアップ分類
先にカテゴリを決めず、個別データから自然にグループを生み出す分類手法。親和図法の基本原則。
KJ法(ケイジェイホウ)
川喜田二郎が考案した、親和図法の原型となる手法のこと。カード記述→グルーピング→表札→図解化の4ステップで構成される。

親和図法の全体像
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親和図法:バラバラな情報を構造に変える4ステップ
1. 書き出す1枚1項目で付箋に書き出す2. グルーピング似たものを直感で近くに集める3. 表札をつけるグループの本質を一言で表す4. 関係を読む因果・対立・包含を矢印で結ぶバラバラな付箋整理表札A表札B表札C構造化されたグループ
親和図法の進め方フロー
1
付箋に書き出す
1枚1項目、短い文で20〜50枚
2
直感でグルーピング
似たもの同士を無言で近くに集める
3
表札をつける
グループの本質を一言で表す
関係性を発見
因果・対立を矢印で結び優先順位を決める

こんな悩みに効く
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  • ブレストでアイデアは出たが、どう整理すればいいかわからない
  • ユーザーインタビューのメモが大量にあり、どこから手をつけるべきか迷う
  • チームの意見がバラバラで、共通認識が作れない

基本の使い方
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ステップ1: 情報を1枚1項目で付箋に書き出す

対象となる情報やアイデアを1枚の付箋に1つずつ書き出す。

ルール:

  • 短い文で書く(キーワードではなく、意味がわかる文)
  • ✅「若い社員が会議で発言しにくいと感じている」
  • ❌「発言」「若手」
  • 1人で20〜50枚、チームなら50〜100枚が目安
  • この段階では整理しようとしない。思いついた順にどんどん書く

デジタルツール(Miro、FigJamなど)でもOK。

ステップ2: 「似ている」と感じるものをグループにする

書き出した付箋を広い場所(テーブルやホワイトボード)に並べ、直感的に「似ている」と感じるもの同士を近くに集める。

ポイント:

  • 事前にカテゴリを決めない。ボトムアップで自然にグループが生まれるのを待つ
  • 2〜3枚集まったら、仮のグループとして置く
  • どこにも属さない「一匹狼」の付箋があっても無理にグルーピングしない
  • 無言で作業するのが理想(議論すると理屈で分類してしまう)

5〜10のグループに収まるのが理想的。

ステップ3: 各グループに「表札」をつける

各グループの内容を一言で表す**表札(ラベル)**をつける。

  • 表札はグループの本質を捉えた短い文にする
  • ✅「経験の浅い社員が意見を出しにくい組織風土」
  • ❌「若手の問題」(抽象的すぎる)
  • 表札が付箋の内容をうまく包含しているか確認する
  • しっくりこなければ、グループの分け方自体を見直す

この表札が、データから浮かび上がった本質的なテーマになる。

ステップ4: グループ間の関係性を読み解く

表札を付けたグループを俯瞰し、グループ同士の関係性を見出す。

  • 因果関係: 「Aの問題がBの問題を引き起こしている」
  • 対立関係: 「AとBは矛盾している」
  • 包含関係: 「AはBの一部である」

関係性を矢印で結ぶと、問題の全体像や優先順位が見えてくる。最も多くの矢印が集まるグループが、最も影響力の大きいテーマ

具体例
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例1:従業員300人の企業が社員満足度アンケートの自由回答を分析

状況: 社員300人のアンケートで、自由回答欄に200件のコメントが集まった。

ステップ1: 200件のコメントを1枚1件で付箋化。

ステップ2〜3: グルーピングと表札付けの結果:

表札付箋数代表的な声
「評価基準が不透明で努力の方向がわからない」45枚「何をすれば評価されるのかわからない」
「部署間の壁が厚く、情報が流れない」38枚「隣の部署が何をしてるか全く知らない」
「挑戦より安全を選ぶ風土が蔓延している」32枚「新しい提案をしても却下されるだけ」
「リモートワークで孤立感がある」30枚「雑談がなくなり、相談しにくい」
「成長機会が限られている」28枚「研修が形式的で実務に活きない」
その他(3グループ)27枚

ステップ4: 関係性の分析:

  • 「評価基準の不透明さ」→「挑戦より安全を選ぶ風土」(評価が不明確だからリスクを取れない)
  • 「部署間の壁」→「リモートでの孤立感」(もともと交流がない上にリモート化で悪化)

最優先課題は「評価基準の透明化」であり、これが解決すると「挑戦する風土」にも波及する。200件の自由記述を「5つの構造」に整理できたことで経営会議で15分で共有でき、翌月から評価制度改定プロジェクトが始動した。

例2:SaaS企業がユーザーインタビュー15件の結果を整理

状況: プロジェクト管理ツールの解約防止のため、解約ユーザー15名にインタビュー実施。メモは合計48ページ。

ステップ1: インタビュー内容から132枚の付箋を作成。

ステップ2〜3: グルーピングの結果:

表札付箋数インサイト
「導入直後の設定で挫折して、そのまま使わなくなった」34枚初期設定完了率が42%しかなかった
「チーム全員が使わないと価値が出ない」28枚1人でも使わない人がいると全体が崩れる
「結局Excelのほうが早い作業が多い」25枚簡易的な管理にはオーバースペック
「カスタマーサポートに聞いても解決しなかった」22枚FAQが古く、最新UIに対応していない
その他23枚

「初期設定の挫折」が解約の最大要因だと特定できたケースだ。オンボーディングフローを12ステップから5ステップに簡素化し、設定完了率が42%→78%に改善、3ヶ月後の解約率が月5.2%→3.1%に低下(年間で約2,400万円のMRR維持効果)。

例3:地方の観光協会が外国人観光客の不満をリサーチ

状況: 年間12万人の外国人観光客が訪れる温泉地。口コミサイトの低評価レビュー80件を分析。

ステップ1: 80件のレビューから95枚の付箋を作成(英語レビューは翻訳)。

ステップ2〜3: グルーピングの結果:

表札付箋数
「英語の案内がなく、何をすればいいかわからない」28枚
「キャッシュレス非対応で現金を大量に持ち歩く必要がある」22枚
「温泉のマナーを知らず、恥ずかしい思いをした」20枚
「公共交通が不便で移動に時間がかかりすぎる」15枚
その他10枚

ステップ4: 「英語案内の不足」→「温泉マナーの無理解」に因果関係。情報提供の不備が複数の不満を連鎖的に生んでいた。

多言語QRコードガイドを主要20スポットに設置(制作費85万円)した結果、口コミ評価3.2→4.1、外国人リピート率8%→15%、年間観光収入推定1,800万円増加。情報提供の不備が複数の不満を連鎖的に生んでいたことが親和図法で明らかになった。

やりがちな失敗パターン
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  1. 先にカテゴリを決めてから分類する — 「組織」「制度」「環境」と先に箱を作ると、既存の枠組みに押し込めてしまう。カテゴリなしでボトムアップにグルーピングするのが親和図法の本質
  2. 付箋の記述が短すぎる — 「コミュニケーション」のようなキーワードだけでは、後からグルーピングするときに意味がわからなくなる。主語と述語を含む短い文で書く
  3. 1人で完結してしまう — 1人でやると自分の思考パターンに縛られる。複数人で黙って作業→議論の流れが最も効果的
  4. 表札が曖昧で「その他」になる — 「その他」は思考停止のサイン。グループの中身をもう一度見て、共通する本質を言葉にする努力が必要。しっくりくる表札が付くまでグループの分け方自体を見直す

まとめ
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親和図法は、バラバラな情報を「似ているもの同士」でグループにまとめ、全体の構造を発見する手法。ブレスト後の整理、インタビュー分析、課題の構造化など、「情報が多すぎて混乱している」場面で威力を発揮する。まずは付箋に書き出し、黙ってグルーピングするところから始めてみよう。