ワーキングジーニアス

英語名 The 6 Types of Working Genius
読み方 ワーキング ジーニアス
難易度
所要時間 1〜2時間(アセスメント+共有)
提唱者 Patrick Lencioni (The 6 Types of Working Genius)
目次

ひとことで言うと
#

仕事のプロセスには6つの天才性(Genius)があり、各メンバーがどの天才性を持つかを把握することで適材適所の配置チームの生産性向上を実現するフレームワーク。パトリック・レンシオーニが提唱した。

押さえておきたい用語
#

押さえておきたい用語
天才性(Genius)
その人が自然にエネルギーを感じ、卓越した成果を出せる仕事の領域。6つのうち各人が2つ持つとされる。
能力(Competency)
できるけれど長く続けると消耗する領域。各人が2つ持つ。短期的にはこなせるが、ここに長期間配置すると燃え尽きのリスクがある。
苛立ち(Frustration)
やるとエネルギーを奪われ、苦痛を感じる領域。各人が2つ持つ。ここに配置され続けると離職リスクが上がる。
ワークフローの3段階
6つの天才性は**考案(Ideation)→ 活性化(Activation)→ 実装(Implementation)**の3段階に2つずつ対応している。

ワーキングジーニアスの全体像
#

ワーキングジーニアス:6つの天才性と仕事の3段階
考案Ideation活性化Activation実装ImplementationW — 思索Wonder世の中の疑問や可能性に好奇心を抱き考え続けるI — 発明Invention新しいアイデアやソリューションを生み出すD — 見極めDiscernment直感的にアイデアの良し悪しを見抜くG — 鼓舞Galvanizing周囲を巻き込み行動を引き出すE — 支援Enablement他者のアイデアに応え実現を後押しするT — 粘りTenacity最後までやり遂げ結果を出し切る各人が Genius 2つ ・ Competency 2つ ・ Frustration 2つ を持つ
ワーキングジーニアスの活用フロー
1
個人アセスメント
各メンバーが6タイプの天才性を自己診断
2
チームマップ作成
全員の結果を一覧にして偏りを可視化
3
ギャップと重複を特定
不足している天才性と過剰な領域を確認
役割を再設計
天才性に合った仕事の割り当てに変更

こんな悩みに効く
#

  • メンバーの得意・不得意がわからず、なんとなくで仕事を割り振っている
  • 特定のメンバーがいつも疲弊していて、離職のリスクを感じる
  • チームにアイデアは出るが、実行まで至らないことが多い
  • 逆に実行力はあるが、そもそも良い企画が出てこない

基本の使い方
#

各メンバーが6タイプの天才性を自己診断する

6つの天才性(Wonder・Invention・Discernment・Galvanizing・Enablement・Tenacity)について、自分がエネルギーを感じる消耗するかを評価する。

  • 公式アセスメントツールを使うのが正確だが、簡易版として「この仕事をしているとき、時間を忘れるか?」で判定できる
  • 「できる」と「楽しい」は違う。スキルではなくエネルギーの流れで判断する
  • 結果を上司だけでなく、チーム全員で共有する。透明性がこのフレームワークの力
チームマップを作成する

全メンバーの天才性を一覧表にして、チーム全体の偏りを可視化する。

  • 6つの天才性が最低1名ずつカバーされているのが理想
  • 「Inventionが5人いるのにTenacityが0人」というパターンはアイデア倒れの典型
  • 逆にTenacityばかりだと、現状維持の実行マシンになりやすい
ギャップを埋める施策を決める

不足している天才性をどう補うかを検討する。

  • 配置換え: 他チームとのトレードで天才性のバランスを取る
  • 採用: 次の採用で不足している天才性を持つ人を優先する
  • 役割再定義: 既存メンバーのCompetency領域を短期で使いつつ、Genius領域をメイン業務にする
  • Frustration領域に長期配置されているメンバーがいないか、必ず確認する
定期的に振り返りを行う

天才性に基づく配置変更後、1か月・3か月の時点で効果を検証する。

  • メンバーの満足度・エンゲージメントの変化をトラッキングする
  • 「仕事が楽しくなったか」「消耗が減ったか」を直接聞く
  • チームのアウトプットの量・質に変化があったかを定量的に確認する

具体例
#

例1:プロダクトチームが企画倒れを解消する

メンバー6名のプロダクトチーム。アイデアソンでは盛り上がるが、実行フェーズに入ると進捗が遅く、四半期の目標達成率は**55%**だった。

アセスメント結果:

メンバーGeniusCompetencyFrustration
AさんW・ID・GE・T
BさんI・DW・GE・T
CさんW・DI・GE・T
DさんI・GW・DE・T
EさんD・GW・EI・T
FさんW・ID・EG・T

問題が一目瞭然: Tenacity(粘り)のGeniusを持つメンバーがゼロ。Enablement(支援)も不足していた。つまり、アイデアを出して判断する力は強いが、最後までやり遂げる力がチームにない。

施策:

  • 隣のチームからTenacityのGeniusを持つGさんをトレードで獲得
  • プロジェクトの実行フェーズでは、Dさん(Galvanizing)がキックオフで勢いをつけ、Gさん(Tenacity)が完遂を管理する体制に変更

結果: 四半期の目標達成率が**55% → 82%**に改善。「アイデアはいいのに実行が追いつかない」問題が構造的に解消された。

例2:営業チームのマネージャーが部下の配置を見直す

営業チーム8名を率いるマネージャー。メンバー全員に同じ営業プロセス(リード獲得→提案→クロージング→フォローアップ)を均等にやらせていたが、成果にバラツキが大きかった。トップ2名が売上の**60%を占め、下位3名は目標の70%**に達していなかった。

アセスメント結果(要約):

  • トップ営業のHさん: Galvanizing・Tenacity → 新規開拓からクロージングまで全フェーズにGeniusがフィット
  • 下位のIさん: Wonder・Invention → 市場分析やソリューション設計は得意だが、テレアポやクロージングはFrustration

配置変更: Iさんをフィールドセールスからプリセールスのソリューション設計に異動。代わりにEnablementのGeniusを持つJさんをカスタマーサクセスのフォローアップ専任にした。

6か月後:

  • Iさんの提案書のクオリティが上がり、受注率が**28% → 41%**に向上
  • Jさんの顧客フォローにより、既存顧客のアップセル率が15%上昇
  • チーム全体の売上が前期比23%増。下位3名という概念がなくなり、全員が得意領域で貢献する形になった
例3:リモートチームのエンゲージメント低下を天才性マップで解決する

フルリモートの開発チーム10名。リモート移行後、エンゲージメントスコアが4.0 → 2.8(5点満点)に低下。特に「仕事にやりがいを感じるか」のスコアが低く、離職が2名続いていた。

原因仮説: マネージャーは「リモートでのコミュニケーション不足」が原因だと考え、ミーティングを増やしたが改善しなかった。

天才性アセスメントで判明したこと:

  • 離職した2名はいずれもGalvanizing(鼓舞)のGenius持ち。リモート環境で「人を巻き込む」機会が激減していた
  • 残っているメンバーのうち、Wonder(思索)のGeniusを持つ3名は「リモートの方が集中できる」と高評価
  • Enablement(支援)のGeniusを持つ2名が「誰のサポートをすればいいかわからない」と迷っていた

対策:

  • GalvanizingのGeniusを持つメンバーをスプリントのキックオフ・デモのファシリテーターに固定配置
  • EnablementのGeniusを持つメンバーにバディ制度の運営を任せ、新メンバーのオンボーディング支援を担当
  • WonderのGeniusを持つメンバーには週1日「探索デー」を設け、自由に調査・提案できる時間を確保

3か月後: エンゲージメントスコアが2.8 → 3.9に回復。「自分の得意なことで貢献できている実感がある」というコメントが複数のメンバーから出た。

やりがちな失敗パターン
#

  1. 天才性を固定ラベルとして扱う — 「あなたはTenacityだから雑務担当ね」と短絡的に割り振ると、本人のモチベーションを下げる。天才性は仕事の設計に使うものであり、人を箱に入れるためのものではない
  2. Frustration領域を完全に避ける — 現実にはFrustration領域の仕事もゼロにはできない。大事なのは「主な業務がGenius領域にある」状態を作ること。短期的なFrustration業務はローテーションで分散する
  3. チームマップを作って終わる — 可視化しただけで「面白かったね」と棚上げするケースが多い。具体的な配置変更や役割再定義まで落とし込んで初めて効果が出る
  4. マネージャーだけが結果を持つ — チーム全員で結果を共有してこそ「あの人にこの仕事を頼もう」という自律的な協力が生まれる。透明性がこのフレームワークの前提条件

まとめ
#

ワーキングジーニアスは、6つの天才性を通じて「その人がエネルギーを感じる仕事は何か」を明らかにし、チーム全体のパフォーマンスを構造的に上げるフレームワークである。スキルベースの配置と違い、エネルギーの流れに注目する点が特徴。チームマップを作って偏りを把握し、不足している天才性を補う施策(配置換え・採用・役割再定義)を打つことで、メンバーの燃え尽きを防ぎながら成果を最大化できる。