ひとことで言うと#
チームには**形成期→混乱期→統一期→機能期(→散会期)**という発達段階がある。いきなり高パフォーマンスにはならないし、混乱期は避けて通れない。「今チームがどの段階にいるか」を知ることで、適切なリーダーシップが取れるようになる。
押さえておきたい用語#
- 形成期(Forming)
- チームが結成されたばかりの段階。メンバーは互いを探り合い、表面的な礼儀正しさが支配する。リーダーへの依存度が高い。
- 混乱期(Storming)
- メンバーが本音を出し始め、意見の衝突が起きる段階。多くのチームがここで停滞するが、成長に不可欠なプロセス。
- 統一期(Norming)
- 衝突を乗り越え、チーム独自の暗黙のルールや共通認識が形成される段階。役割分担が自然にでき始める。
- 機能期(Performing)
- チームが自律的に高いパフォーマンスを発揮する段階。リーダーの指示がほぼ不要になり、問題も自分たちで解決できる。
- 散会期(Adjourning)
- プロジェクト完了や組織変更でチームが解散する段階。1977年にタックマンが追加した第5フェーズ。
タックマンモデルの全体像#
こんな悩みに効く#
- 新しいチームを作ったのに、なかなか成果が出ない
- メンバー間で意見がぶつかって雰囲気が悪い(これは正常なのか?)
- チームの状態に合わせたマネジメントの仕方がわからない
基本の使い方#
チームが結成されたばかりの段階。メンバーはお互いを探り合っている状態。
特徴:
- 表面的に礼儀正しく、本音を出さない
- リーダーへの依存度が高い
- 「何をすればいいのか」がまだ不明確
リーダーの役割: 明確な方向性とルールを示す。自己紹介やアイスブレイクで関係性の土台を作る。この段階では指示型リーダーシップが有効。
メンバーが本音を出し始め、意見の衝突が起きる段階。多くのチームがここで停滞する。
特徴:
- 役割や進め方をめぐって対立が生まれる
- 「あの人のやり方が気に入らない」という感情が出る
- リーダーへの不満や反発が起きることも
リーダーの役割: 対立を避けるのではなく、建設的な議論に変える。「意見がぶつかるのは健全なこと」とチームに伝える。ここを乗り越えられるかがチームの分かれ道。
衝突を乗り越え、チームの暗黙のルールや共通認識ができてくる段階。
特徴:
- お互いの強み・弱みを理解し、役割分担が自然にできる
- チーム独自のやり方(ノーム)が生まれる
- 意見の違いを受け入れられるようになる
リーダーの役割: チームの自律性を尊重し、ファシリテーター型に移行する。決めたルールや進め方を明文化して定着させる。
チームが高いパフォーマンスを発揮する段階。ここに到達できるチームは実は少ない。
特徴:
- メンバーが自律的に動き、リーダーの指示がほぼ不要
- 問題が起きても自分たちで解決できる
- 心理的安全性が高く、失敗を恐れずチャレンジできる
リーダーの役割: 障害物を取り除くサーバント型リーダーシップに徹する。チームの邪魔をしないことが最大の貢献。
具体例#
背景: 新プロダクトのために営業2名・エンジニア3名・デザイナー1名を集めた。
| フェーズ | 期間 | 状態 | リーダーの打ち手 |
|---|---|---|---|
| 形成期 | 1〜2ヶ月目 | 全員様子見、会議で発言少ない | チーム憲章を作成、週次定例を設定 |
| 混乱期 | 3〜4ヶ月目 | 営業「早く出せ」vsエンジニア「品質」で対立 | 対話の場を設計、優先順位を全員で合意 |
| 統一期 | 5〜6ヶ月目 | MVP方針が定着、自然な情報共有 | ファシリテーターに移行、ルール明文化 |
| 機能期 | 7〜9ヶ月目 | リーダー不在でもスプリント回る | 障害除去に専念、外部調整を代行 |
成果: スプリントベロシティが形成期の18ptから機能期には54ptに向上。リリースサイクルは月1回→隔週に短縮。混乱期を「健全な成長痛」と捉え、対立を議論に変えたことが転換点だった。
背景: 品質管理部・製造部・調達部の混成チーム。不良率0.8%を0.3%に下げるミッション。
| フェーズ | 期間 | エピソード |
|---|---|---|
| 形成期 | 1ヶ月目 | 部門の壁が厚く「他部署のことは関係ない」ムード |
| 混乱期 | 2〜3ヶ月目 | 「原因は製造の手順」「いや調達部品の問題だ」と責任の押し付け合い |
| 統一期 | 4〜5ヶ月目 | データで原因を可視化→部門横断で改善策を合意 |
| 機能期 | 6ヶ月目 | 各部門が自律的にPDCAを回し、不良率**0.28%**を達成 |
| 退行 | 7ヶ月目 | キーメンバー2名が異動→形成期に逆戻り |
| 再統一 | 8〜9ヶ月目 | 新メンバーに暗黙知を明文化して引き継ぎ、**0.31%**で安定 |
成果: 不良率0.8%→0.28%、年間コスト削減額は約1,200万円。メンバー変更で退行したが、「暗黙知の明文化」をしていたことで復帰が早かった。
背景: 市役所内に部局横断のDX推進チームを発足。メンバーは情報政策課・市民課・税務課・企画課・外部コンサル。
| フェーズ | 期間 | スコア(チーム健康度/10) |
|---|---|---|
| 形成期 | 1〜4ヶ月目 | 4.2 |
| 混乱期 | 5〜6ヶ月目 | 3.8 |
| 統一期 | 7〜9ヶ月目 | 6.5 |
| 機能期 | 10〜12ヶ月目 | 8.1 |
最初の4ヶ月間、「衝突を避けたい」心理が強く、全員が形成期にとどまり続けた。リーダーが意図的に「各部署の本音を聞く場」を設けたことで混乱期に突入。税務課の「現場を知らない人が設計するな」という発言が議論の突破口になった。
成果: オンライン申請率が12%→47%に向上。住民満足度は68点→79点に改善。形成期が長すぎると機能期到達も遅れる。意図的に混乱期を引き起こすリーダーの勇気が必要。
やりがちな失敗パターン#
- 混乱期を「チームの失敗」と捉える — 対立を問題視して早期にメンバーを入れ替えると、また形成期からやり直しになる。混乱期は成長痛であり、必要なプロセス
- 形成期のまま表面的な平和を維持する — 本音を出さない「仲良しチーム」は混乱期を経ていないだけ。パフォーマンスは上がらない
- 機能期でもリーダーが指示し続ける — チームが自律的に動ける段階なのに細かく管理すると、統一期に逆戻りする
- メンバー変更による退行を想定していない — 1人入れ替わるだけでチームは形成期に戻る可能性がある。暗黙知の明文化やオンボーディング設計で退行幅を最小化することが重要
- 全チームが同じスピードで進むと思い込む — チームの規模・メンバーの経験値・タスクの難易度によって各フェーズの所要期間は大きく異なる。「3ヶ月で機能期に入るべき」のような画一的な基準は危険
まとめ#
タックマンモデルは、チームの成長には段階があることを教えてくれる。特に混乱期は「通るべき道」であり、避けるのではなく乗り越えるもの。リーダーは各段階に合わせてスタイルを変えることが大事。今のチームがどのフェーズにいるかを意識するだけで、打ち手が変わる。