タックマンモデル

英語名 Tuckman's Stages of Group Development
読み方 タックマン モデル
難易度
所要時間 30分(理解)
提唱者 ブルース・タックマン
目次

ひとことで言うと
#

チームには**形成期→混乱期→統一期→機能期(→散会期)**という発達段階がある。いきなり高パフォーマンスにはならないし、混乱期は避けて通れない。「今チームがどの段階にいるか」を知ることで、適切なリーダーシップが取れるようになる。

押さえておきたい用語
#

押さえておきたい用語
形成期(Forming)
チームが結成されたばかりの段階。メンバーは互いを探り合い、表面的な礼儀正しさが支配する。リーダーへの依存度が高い。
混乱期(Storming)
メンバーが本音を出し始め、意見の衝突が起きる段階。多くのチームがここで停滞するが、成長に不可欠なプロセス。
統一期(Norming)
衝突を乗り越え、チーム独自の暗黙のルールや共通認識が形成される段階。役割分担が自然にでき始める。
機能期(Performing)
チームが自律的に高いパフォーマンスを発揮する段階。リーダーの指示がほぼ不要になり、問題も自分たちで解決できる。
散会期(Adjourning)
プロジェクト完了や組織変更でチームが解散する段階。1977年にタックマンが追加した第5フェーズ。

タックマンモデルの全体像
#

チームは形成期から機能期へと段階的に発達する
形成期Forming探り合いリーダー依存→ 指示型混乱期Storming意見の衝突対立・反発→ コーチ型統一期Normingルール形成役割分担→ ファシリテーター型機能期Performing自律的行動高パフォーマンス→ サーバント型パフォーマンス推移一時的な低下形成期混乱期統一期機能期散会期(Adjourning)プロジェクト完了・解散ナレッジの引き継ぎ成果の振り返り※ 1977年に追加された第5段階
タックマンモデルのチーム発達フロー
1
形成期(Forming)
探り合い・リーダー依存。指示型リーダーシップが有効
2
混乱期(Storming)
意見の衝突・対立。成長に不可欠なプロセス
3
統一期(Norming)
ルール形成・役割分担。ファシリテーター型へ移行
機能期(Performing)
自律的に高パフォーマンス。メンバー変更で形成期に退行もある

こんな悩みに効く
#

  • 新しいチームを作ったのに、なかなか成果が出ない
  • メンバー間で意見がぶつかって雰囲気が悪い(これは正常なのか?)
  • チームの状態に合わせたマネジメントの仕方がわからない

基本の使い方
#

ステップ1: 形成期(Forming)を理解する

チームが結成されたばかりの段階。メンバーはお互いを探り合っている状態。

特徴:

  • 表面的に礼儀正しく、本音を出さない
  • リーダーへの依存度が高い
  • 「何をすればいいのか」がまだ不明確

リーダーの役割: 明確な方向性とルールを示す。自己紹介やアイスブレイクで関係性の土台を作る。この段階では指示型リーダーシップが有効。

ステップ2: 混乱期(Storming)を乗り越える

メンバーが本音を出し始め、意見の衝突が起きる段階。多くのチームがここで停滞する。

特徴:

  • 役割や進め方をめぐって対立が生まれる
  • 「あの人のやり方が気に入らない」という感情が出る
  • リーダーへの不満や反発が起きることも

リーダーの役割: 対立を避けるのではなく、建設的な議論に変える。「意見がぶつかるのは健全なこと」とチームに伝える。ここを乗り越えられるかがチームの分かれ道。

ステップ3: 統一期(Norming)で仕組みを整える

衝突を乗り越え、チームの暗黙のルールや共通認識ができてくる段階。

特徴:

  • お互いの強み・弱みを理解し、役割分担が自然にできる
  • チーム独自のやり方(ノーム)が生まれる
  • 意見の違いを受け入れられるようになる

リーダーの役割: チームの自律性を尊重し、ファシリテーター型に移行する。決めたルールや進め方を明文化して定着させる。

ステップ4: 機能期(Performing)で成果を最大化する

チームが高いパフォーマンスを発揮する段階。ここに到達できるチームは実は少ない。

特徴:

  • メンバーが自律的に動き、リーダーの指示がほぼ不要
  • 問題が起きても自分たちで解決できる
  • 心理的安全性が高く、失敗を恐れずチャレンジできる

リーダーの役割: 障害物を取り除くサーバント型リーダーシップに徹する。チームの邪魔をしないことが最大の貢献。

具体例
#

例1:SaaS開発チーム(6人)の9ヶ月——混乱期を乗り越え生産性3倍

背景: 新プロダクトのために営業2名・エンジニア3名・デザイナー1名を集めた。

フェーズ期間状態リーダーの打ち手
形成期1〜2ヶ月目全員様子見、会議で発言少ないチーム憲章を作成、週次定例を設定
混乱期3〜4ヶ月目営業「早く出せ」vsエンジニア「品質」で対立対話の場を設計、優先順位を全員で合意
統一期5〜6ヶ月目MVP方針が定着、自然な情報共有ファシリテーターに移行、ルール明文化
機能期7〜9ヶ月目リーダー不在でもスプリント回る障害除去に専念、外部調整を代行

成果: スプリントベロシティが形成期の18ptから機能期には54ptに向上。リリースサイクルは月1回→隔週に短縮。混乱期を「健全な成長痛」と捉え、対立を議論に変えたことが転換点だった。

例2:製造業の品質改善プロジェクトチーム(8人)——退行を経験して再浮上

背景: 品質管理部・製造部・調達部の混成チーム。不良率0.8%を0.3%に下げるミッション。

フェーズ期間エピソード
形成期1ヶ月目部門の壁が厚く「他部署のことは関係ない」ムード
混乱期2〜3ヶ月目「原因は製造の手順」「いや調達部品の問題だ」と責任の押し付け合い
統一期4〜5ヶ月目データで原因を可視化→部門横断で改善策を合意
機能期6ヶ月目各部門が自律的にPDCAを回し、不良率**0.28%**を達成
退行7ヶ月目キーメンバー2名が異動→形成期に逆戻り
再統一8〜9ヶ月目新メンバーに暗黙知を明文化して引き継ぎ、**0.31%**で安定

成果: 不良率0.8%→0.28%、年間コスト削減額は約1,200万円メンバー変更で退行したが、「暗黙知の明文化」をしていたことで復帰が早かった。

例3:自治体DX推進チーム(5人)——形成期が長すぎた反省

背景: 市役所内に部局横断のDX推進チームを発足。メンバーは情報政策課・市民課・税務課・企画課・外部コンサル。

フェーズ期間スコア(チーム健康度/10)
形成期1〜4ヶ月目4.2
混乱期5〜6ヶ月目3.8
統一期7〜9ヶ月目6.5
機能期10〜12ヶ月目8.1

最初の4ヶ月間、「衝突を避けたい」心理が強く、全員が形成期にとどまり続けた。リーダーが意図的に「各部署の本音を聞く場」を設けたことで混乱期に突入。税務課の「現場を知らない人が設計するな」という発言が議論の突破口になった。

成果: オンライン申請率が12%→47%に向上。住民満足度は68点→79点に改善。形成期が長すぎると機能期到達も遅れる。意図的に混乱期を引き起こすリーダーの勇気が必要。

やりがちな失敗パターン
#

  1. 混乱期を「チームの失敗」と捉える — 対立を問題視して早期にメンバーを入れ替えると、また形成期からやり直しになる。混乱期は成長痛であり、必要なプロセス
  2. 形成期のまま表面的な平和を維持する — 本音を出さない「仲良しチーム」は混乱期を経ていないだけ。パフォーマンスは上がらない
  3. 機能期でもリーダーが指示し続ける — チームが自律的に動ける段階なのに細かく管理すると、統一期に逆戻りする
  4. メンバー変更による退行を想定していない — 1人入れ替わるだけでチームは形成期に戻る可能性がある。暗黙知の明文化やオンボーディング設計で退行幅を最小化することが重要
  5. 全チームが同じスピードで進むと思い込む — チームの規模・メンバーの経験値・タスクの難易度によって各フェーズの所要期間は大きく異なる。「3ヶ月で機能期に入るべき」のような画一的な基準は危険

まとめ
#

タックマンモデルは、チームの成長には段階があることを教えてくれる。特に混乱期は「通るべき道」であり、避けるのではなく乗り越えるもの。リーダーは各段階に合わせてスタイルを変えることが大事。今のチームがどのフェーズにいるかを意識するだけで、打ち手が変わる。