マネジリアル・グリッド

英語名 Managerial Grid
読み方 マネジリアル グリッド
難易度
所要時間 30分〜1時間
提唱者 ロバート・ブレーク、ジェーン・ムートン
目次

ひとことで言うと
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リーダーシップスタイルを 「業績への関心」と「人間への関心」の2軸 で分類し、9段階のグリッド上にプロットするモデル。ブレークとムートンが1964年に提唱し、理想型として「チーム型リーダーシップ(9,9)」を目指すべきとした。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
業績への関心(Concern for Production)
成果・効率・目標達成をどの程度重視するかの度合い。横軸に配置され、1(低い)〜9(高い)でスコア化する。
人間への関心(Concern for People)
メンバーの満足度・人間関係・成長をどの程度重視するかの度合い。縦軸に配置される。
チーム型(9,9)
業績も人間も最大限重視するスタイル。メンバーの主体性を引き出しながら高い成果を追求する理想型とされる。
無関心型(1,1)
どちらへの関心も低い放任状態。最低限の仕事だけをこなし、積極的なマネジメントをしないスタイル。

マネジリアル・グリッドの全体像
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2軸上の5つのリーダーシップスタイル
人間への関心(高→)業績への関心(高→)(1,9)カントリークラブ型人間重視・業績軽視居心地は良いが成果が出ない(9,9)チーム型業績も人間も最大重視理想型(5,5)中道型バランス型だが中途半端妥協的な運営になりがち(1,1)無関心型どちらも低い放任状態最低限の仕事しかしない(9,1)権威服従型業績最優先・人間軽視成果は出るが人が離れる
マネジリアル・グリッド活用フロー
1
自己診断
自分のスタイルがグリッド上のどこにあるかを把握する
2
ギャップを認識
理想(9,9)と現状の距離を確認する
3
行動を変える
弱い軸の行動を意図的に増やす
チーム型を目指す
業績と人間の両方を高いレベルで追求する

こんな悩みに効く
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  • 成果は出ているが、メンバーが次々と辞めていく
  • 雰囲気は良いのに、目標達成率が低い
  • 自分のマネジメントスタイルの偏りに気づきたい

基本の使い方
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自分のスタイルをグリッド上にプロットする

「業績への関心」と「人間への関心」をそれぞれ1〜9で自己評価する。他者からのフィードバックも合わせると精度が上がる。

  • 部下に「私は業績と人間、どちらを重視していると感じるか」を聞く
  • 360度フィードバックと組み合わせると効果的
現在のスタイルの利点と問題点を分析する

各スタイルには強みと弱みがある。自分の偏りが何を生んでいるかを認識する。

  • 権威服従型(9,1): 短期成果は出るが離職率が高い
  • カントリークラブ型(1,9): 居心地は良いが成長がない
弱い軸の行動を意図的に増やす

業績偏重なら人間への関心を、人間偏重なら業績への関心を意識的に高める。

  • 業績偏重の人: 週1回の1on1を新設し、メンバーの声を聴く時間を確保
  • 人間偏重の人: 週次で目標進捗を数字で確認する習慣をつける

具体例
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例1:営業マネージャーが権威服従型(9,1)から脱却する

状況: 不動産会社の営業課長(部下8名)。売上目標は常に達成するが、毎年2〜3名が退職。部下からは「数字の話しかしない」「人として見られていない」と不満。

グリッド診断: 業績9・人間2の典型的な権威服従型。

改善アクション

  • 毎週月曜の朝礼を「今週の目標確認」から「先週のよかったこと共有」に変更
  • 月1回の1on1を新設。最初の15分は業務以外の話題から入る
  • 部下が達成した小さな成功を朝礼で紹介する「ナイスプレー」コーナーを追加

半年後の360度評価で「人間への関心」スコアが 2.1 → 4.8(7点満点)に上昇。離職率は前年の 37% → 12% に改善し、売上目標の達成も維持された。

例2:開発マネージャーがカントリークラブ型(1,9)から脱却する

状況: ゲーム開発会社のチームリーダー(部下6名)。チーム内の雰囲気は抜群だが、直近3プロジェクト連続で納期遅延。上層部から「仲良しクラブ」と批判されていた。

グリッド診断: 業績2・人間8のカントリークラブ型。メンバーの残業を避けるためにスコープを安易に縮小し続けていた。

改善アクション

  • スプリントごとにベロシティ(消化ポイント数)を計測し、チーム全体で目標値を設定
  • 「頑張らなくていい」ではなく「適切な挑戦を設定する」スタンスに切り替え
  • 遅延が見えたら早期にアラートを出すルールを導入(やさしさと透明性の両立)

次のプロジェクトで納期を 初めて予定通り に達成。メンバーからは「前より大変だけど、達成感がある」「適度なプレッシャーは悪くない」との声が出た。

例3:介護施設の施設長が中道型(5,5)から成長する

状況: 職員30名の特別養護老人ホーム。施設長は「可もなく不可もなく」の運営で、大きなトラブルはないが、職員の離職率は業界平均と同等の 14%、利用者満足度も横ばい。

自己診断: 業績5・人間5の中道型。どちらも「そこそこ」だが突き抜けていない。

チーム型(9,9)を目指す取り組み

  • 業績向上: 利用者のQOL指標(食事量・活動参加率・家族面会頻度)を月次で可視化し、改善目標を設定
  • 人間重視: 職員の「やりたいケア」を聞くアンケートを実施し、担当利用者のマッチングに活用
  • 月1回の「ケースカンファレンス」で、業績(ケアの質)と人間(職員のやりがい)を同時に議論

1年後、利用者家族の満足度は 3.6 → 4.2(5点満点)に上昇。職員離職率は 14% → 9% に改善され、「ここで働き続けたい」という声が増えた。

やりがちな失敗パターン
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  1. 「チーム型(9,9)= 完璧」と勘違いする — 理想型ではあるが、常に9,9を維持できるわけではない。状況に応じて一時的に他のスタイルが必要なこともある
  2. 自己評価だけで判断する — 自分では「人間にも配慮している」と思っていても、部下からは「数字しか見ていない」と見られていることがある。他者フィードバックが必須
  3. 弱い軸を無理に上げようとして、強い軸を下げる — 人間への関心を上げるために業績基準を緩めるのは本末転倒。両方を上げることがゴール
  4. レッテル貼りに使う — 「あの上司は1,9型だ」と固定ラベルにすると成長の余地を閉ざす。あくまで現時点の傾向として扱う

まとめ
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マネジリアル・グリッドは、自分のマネジメントの偏りを客観的に認識するためのツール。大事なのは、業績か人間かの二者択一ではなく、両方を高いレベルで追求する姿勢。まずは自分のスタイルを正直にプロットし、弱い軸を少しずつ伸ばすところから始めればよい。