ひとことで言うと#
チームの発達を7つの段階(形成期4段階+持続期3段階)で捉え、各段階で解決すべき問いと陥りがちな課題を明示することで、チームの現在地と次に取り組むべきことを可視化するモデル。アラン・ドレクスラーとデビッド・シベットが共同開発した。
押さえておきたい用語#
- 形成期(Creating Stages)
- チームが立ち上がり、信頼と方向性を確立するまでの前半4段階。オリエンテーション → 信頼構築 → 目標明確化 → コミットメントの順に進む。
- 持続期(Sustaining Stages)
- チームが実行し、成果を出し、更新していく後半3段階。実行 → ハイパフォーマンス → 更新(リニューアル)の順に進む。
- 解決すべき問い(Key Question)
- 各段階でチームが答えを出すべき中心的な問い。たとえば第1段階は「なぜ自分はここにいるのか?」。この問いに答えが出ないと次の段階に進めない。
- 未解決の問い(Unresolved Question)
- 前の段階で十分に答えが出ないまま先に進んでしまった問い。チームの停滞や後退の多くは、この未解決の問いに起因する。
ドレクスラー=シベットモデルの全体像#
こんな悩みに効く#
- チームが停滞している原因がどこにあるのか特定できない
- タックマンモデルよりも具体的なアクションに落とし込みたい
- チームの立ち上げ段階で「何を先にやるべきか」の優先順位を知りたい
- メンバー入れ替えの後、チームがうまく機能しなくなった
基本の使い方#
各段階の中心的な問いに対して、チームがどの程度答えを出せているかを評価する。
| 段階 | 問い | 評価ポイント |
|---|---|---|
| 1. オリエンテーション | なぜ自分はここにいるのか? | メンバーがチームの存在意義を説明できるか |
| 2. 信頼構築 | あなたは誰? | メンバーが互いの強み・価値観を知っているか |
| 3. 目標明確化 | 何をやるのか? | ゴールと成功指標が全員に共有されているか |
| 4. コミットメント | どうやるのか? | 計画と役割分担に全員が合意しているか |
| 5. 実行 | 誰が何をいつ? | タスクが予定どおりに進んでいるか |
| 6. ハイパフォーマンス | すごい! | 自律的に判断し、柔軟に対応できているか |
| 7. 更新 | なぜ続けるのか? | 振り返りと方向修正が行われているか |
チームの問題は、現在いる段階ではなく、飛ばしてしまった前の段階に原因があることが多い。
- 実行段階(5)で進捗が遅いなら、コミットメント(4)が不十分かもしれない
- コミットメント(4)が弱いなら、目標(3)が曖昧かもしれない
- メンバーが発言しないなら、信頼構築(2)まで戻る必要がある
- 段階を飛ばして先に進むと、必ずどこかで停滞が起きる
特定した段階ごとに、具体的なワークショップやアクティビティを実施する。
- 段階1: チームのミッションを全員で議論し、「なぜこのチームが必要なのか」を言語化する
- 段階2: 自己紹介ワーク、ストレングスファインダーの共有、チームビルディング活動
- 段階3: OKR設定ワークショップ、成功の定義を全員ですり合わせ
- 段階4: タスク分解、RACI表の作成、ワーキングアグリーメントの策定
- 段階5: カンバンボードの導入、デイリースタンドアップ、進捗の可視化
- 段階6: 権限移譲、実験の許容、チーム内ナレッジ共有の仕組み化
- 段階7: レトロスペクティブ、KPT、チームの方向性の再確認
チームの発達は一直線ではなく、メンバーの入れ替えや環境変化で前の段階に戻ることがある。
- メンバーが1名でも変わったら、段階1・2に一時的に後退する前提で計画する
- 四半期ごとに7段階の診断を再実施し、現在地の変化を追う
- 段階7(更新)に到達したら、次のサイクルとして段階1から再出発する
具体例#
IT企業が大型受託案件のために8名のプロジェクトチームを新規編成した。プロジェクト期間は6か月。過去の類似案件では、立ち上げに2か月かかり、実質的な開発期間が不足するのが常だった。
PMがドレクスラー=シベットモデルを使い、最初の2週間で段階1〜4を意図的に駆け抜ける計画を立てた。
- Week 1 Day 1(段階1): キックオフで「なぜこのプロジェクトが存在するのか」をクライアントも含めて共有。全員が目的を1文で言えるようにした
- Week 1 Day 2-3(段階2): チームビルディングワークショップ。各メンバーが「自分の強みと苦手なこと」を共有。ワーキングスタイルの好みもマネージャーREADME形式で交換
- Week 1 Day 4-5(段階3): OKR設定。プロジェクトの成功指標を3つに絞り、全員で合意
- Week 2(段階4): タスク分解とRACIの作成。スプリント計画を策定し、全員がコミットメントを表明
2週間で段階4まで到達し、3週目から実行(段階5)に入った。結果、立ち上げ期間は従来の2か月 → 2週間に短縮。プロジェクトは納期1週間前に完了し、クライアント満足度は5段階中4.8だった。
マーケティングチーム6名。施策の実行が遅く、週次会議ではタスクの進捗報告だけで議論が生まれない。マネージャーは「メンバーの実行力が足りない」と感じていた。
7段階診断を全員で実施した結果:
| 段階 | スコア(5段階) | メンバーの声 |
|---|---|---|
| 1. オリエンテーション | 4.0 | チームの存在意義は理解している |
| 2. 信頼構築 | 2.2 | 「他のメンバーの得意分野を知らない」 |
| 3. 目標明確化 | 2.5 | 「KPIが月次で変わるので何を追えばいいか分からない」 |
| 4. コミットメント | 1.8 | 「計画はあるが誰がオーナーか曖昧」 |
| 5. 実行 | 2.0 | 「着手しても優先順位が変わって中断される」 |
問題は「実行力」ではなく、段階2〜4が未解決だった。特に段階3(目標)が月次で変わることが、段階4と5の弱さを生んでいた。
介入策:
- 段階2: 週1回30分の「スキルシェアタイム」を開始し、互いの専門領域を共有
- 段階3: 四半期OKRを設定し、月次で変えないルールをマネージャーがコミット
- 段階4: RACI表を作成し、各施策のオーナーを明確化
3か月後に再診断したところ、段階2は2.2 → 3.8、段階3は2.5 → 4.2に改善。施策の完遂率が**40% → 78%**に上がり、マネージャーは「実行力の問題だと思い込んでいた自分の誤りだった」と振り返った。
カスタマーサクセスチーム5名。ハイパフォーマンスな状態(段階6)で安定していたが、3か月間でベテラン2名が異動し、新メンバー2名が加入。以後、対応品質が低下し、顧客NPSが72 → 58に落ちた。
リーダーは「新メンバーのスキル不足」と判断してトレーニングを強化したが、改善しなかった。
ドレクスラー=シベットモデルで診断:
| 段階 | 入れ替え前 | 入れ替え後 |
|---|---|---|
| 1. オリエンテーション | 5.0 | 3.0 |
| 2. 信頼構築 | 4.8 | 2.0 |
| 3. 目標明確化 | 4.5 | 3.5 |
| 4. コミットメント | 4.5 | 2.5 |
| 5. 実行 | 4.8 | 2.8 |
メンバー入れ替えによって段階1・2に大きく後退していた。新メンバーは「チームの暗黙のルールが分からない」「既存メンバーに質問しづらい」と感じていた。
介入策:
- 段階1: チームのミッションと行動指針を改めて全員で議論・再定義
- 段階2: 既存メンバーと新メンバーのペアワーク制度を導入(1か月間)
- 段階4: 顧客対応のワーキングアグリーメントを新メンバーの視点を入れて再策定
2か月後、段階2は2.0 → 4.0に回復。顧客NPSも58 → 68に改善し、3か月後にはほぼ元の水準(70)に戻った。リーダーは「スキルではなく信頼関係の問題だった」と学んだ。
やりがちな失敗パターン#
- 段階を飛ばして先に進む — 立ち上げを急いで信頼構築(段階2)を省略すると、実行段階で必ず停滞する。特に段階1〜3は時間をかけてでも確実にクリアする
- メンバー入れ替え時に後退を想定しない — 1名の入れ替えでもチームは段階1・2に後退する。「残りのメンバーが教えればいい」では不十分で、チームとしての再構築が必要
- 段階6(ハイパフォーマンス)を目標にする — 段階6は意図して到達するものではなく、段階1〜5を確実に積み上げた結果として生まれる。「ハイパフォーマンスチームを作ろう」はゴール設定として抽象的すぎる
- 段階7(更新)を怠る — チームが好調なときほど振り返りがおろそかになる。定期的な更新がなければ、環境変化に対応できず急速に機能不全に陥る
まとめ#
ドレクスラー=シベットモデルは、チームの発達を7段階で捉え、各段階の「解決すべき問い」を手がかりにチームの現在地と停滞原因を特定するフレームワークである。最大の教訓は**「段階は飛ばせない」**ということ。停滞しているチームの多くは、前の段階の問いが未解決のまま先に進んでいる。現在地を正直に診断し、未解決の段階まで戻って丁寧に取り組むことが、結果的にチームの発達を最も加速させる。