ひとことで言うと#
Task(タスク)、Team(チーム)、Individual(個人) の3つの領域に同時に注意を払い、バランスよくリーダーシップを発揮するモデル。英国の経営学者ジョン・アデアが提唱し、軍や企業で広く使われている。
押さえておきたい用語#
- Task(タスク)
- チームが達成すべき目標や課題のこと。期限・品質・成果物など、具体的なアウトプットを指す。
- Team(チーム)
- メンバー間の協力関係やチームワークを指す。役割分担、コミュニケーション、士気の維持が含まれる。
- Individual(インディビジュアル)
- チーム内の一人ひとりのメンバー。個々の能力開発、モチベーション、キャリアへの配慮が対象となる。
- 3つの円の重なり
- タスク・チーム・個人は互いに影響し合うため、ベン図のように重なる関係で表現される。一つが崩れると他の二つにも波及する考え方。
アクション中心型リーダーシップの全体像#
こんな悩みに効く#
- 目標達成を急ぐあまり、メンバーが疲弊している
- チームの雰囲気は良いのに、成果がなかなか出ない
- 個人のケアに時間を取られ、プロジェクト全体の進捗が見えなくなっている
基本の使い方#
チームが達成すべきゴールを具体化する。曖昧な目標のままでは全員の動きがバラつく。
- 目標の明確化: 何を、いつまでに、どの水準で仕上げるか
- 計画と優先順位: タスクを分解し、取り組む順番を決める
- 進捗のモニタリング: 定期的に確認し、遅れがあれば介入する
メンバー同士が協力して動ける環境を作る。ここが弱いと、個々が優秀でもチームとして機能しない。
- 役割分担: 誰が何を担当するかを明示する
- コミュニケーション設計: 情報共有の場と頻度を決める
- 規範づくり: 「困ったらすぐ共有」など、チームのルールを言語化する
一人ひとりの状態に目を向ける。成長実感がないとメンバーは離れていく。
- 1on1の実施: 定期的に個別の対話時間を設ける
- 強みの活用: 得意分野を活かせるタスクをアサインする
- フィードバックと承認: 成果を認め、改善点を具体的に伝える
週次や隔週で「今どの円が弱い?」を自問する。偏りに気づいたら意識的にリソースを振り向ける。
- タスク偏重: 納期に追われて人が壊れていないか
- チーム偏重: 仲良しクラブになっていないか
- 個人偏重: 全体最適より個人の要望を優先していないか
具体例#
状況: 居酒屋チェーン(全国42店舗)の新店オープンまで残り3週間。店長候補のAさんがリーダーを務めるが、アルバイト8名のうち5名が未経験。
Task領域の取り組み
- オープン日から逆算した研修スケジュールを日単位で作成
- 接客・調理・レジの3スキルを「一人で回せる」レベルまで引き上げる基準を設定
- 毎日終業後15分で進捗を確認し、遅れている項目を翌日に優先配置
Team領域の取り組み
- 経験者3名をそれぞれ接客・調理・レジの「ミニリーダー」に任命し、未経験者とペアを組ませた
- LINEグループで日次の「今日の学び」を共有するルールを導入
Individual領域の取り組み
- 初日に全員と15分の1on1を実施し、飲食経験・希望シフト・不安点をヒアリング
- 接客に苦手意識のあるメンバーにはロールプレイを多めに設計
オープン初日のオペレーション達成率は 92%(チェーン平均の新店初日は78%)。2週目にはクレーム件数がゼロになり、3名が「ミニリーダーの経験が自信になった」とアンケートに回答した。
状況: 従業員300名のSIer。官公庁向けシステム開発プロジェクト(予算1.2億円)が2か月遅延し、メンバー12名の残業が月80時間を超えている。
まずTask領域を再定義
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| スコープ | 全機能を一括リリース | 必須機能を3フェーズに分割 |
| 報告頻度 | 月次レポート | 週次デモ+日次の15分スタンドアップ |
| 品質基準 | テストカバレッジ90% | フェーズ1は結合テスト重点、単体は70%許容 |
次にTeam領域を再構築
- 「誰が何に詰まっているか」が見えていなかったため、物理カンバンボードを設置
- 週1回30分のふりかえりを新設し、「助けてほしいこと」を全員が1つ出す形式に
Individual領域は最優先で対応
- 残業が最も多い3名に即座に代替要員をアサインし、翌週から残業 月80時間 → 45時間 に削減
- 全員と30分の1on1を実施し、キャリアへの不安を聞き取り
フェーズ1は当初の遅延から 6週間で納品完了。離職者ゼロでプロジェクトを完遂し、顧客満足度調査で「前任PMより信頼できる」と全員が回答した。
状況: 職員45名の介護施設。ベテラン主任の退職に伴い、入職3年目の28歳が初めてユニットリーダー(部下7名)を任される。
リーダー研修で3つの円を教える
- 施設長が「タスク・チーム・個人、今どれに偏っている?」と毎週問いかけるメンタリングを設定
- 最初の1か月はタスク領域(シフト作成、記録管理)に集中しがちだったため、チームと個人にも意識を向ける練習を重ねた
3か月後の変化
| 指標 | リーダー就任前 | 3か月後 |
|---|---|---|
| ユニット内のヒヤリハット報告数 | 月2件 | 月8件(報告しやすい雰囲気が醸成された結果) |
| 職員満足度スコア | 3.1/5.0 | 3.8/5.0 |
| 利用者家族からの感謝の声 | 月1件 | 月4件 |
「タスクだけ見ていた頃は、メンバーの顔色に気づけなかった」と本人がふりかえりで語っている。
やりがちな失敗パターン#
- タスク偏重になる — 成果を出そうと焦ると「とにかくやれ」になり、チームの信頼関係が壊れる。短期的に成果が出ても、人が辞める
- 個人のケアをチームの課題と混同する — メンバー間の対立はTeam領域の問題。個人面談だけでは解決しない。チーム全体のルールや場の設計が必要
- 3つを順番にやろうとする — タスク→チーム→個人と直列で取り組むと、最初に手を付けた領域しか回らない。3つは常に並行して動かす
- バランスチェックを仕組み化しない — 「意識する」だけでは偏りに気づけない。週次のふりかえりに「今週はどの円が弱かった?」の問いを組み込む
まとめ#
アクション中心型リーダーシップは、タスク・チーム・個人という3つの円を同時に回し続けるシンプルなモデル。どれか一つに偏ると、他の二つも崩れる。週次で「今どの円が弱い?」と自問する習慣をつけるだけで、リーダーとしての視野が変わってくる。