バリューチェーン分析

英語名 Value Chain Analysis
読み方 バリューチェーン アナリシス
難易度
所要時間 2〜4時間
提唱者 マイケル・ポーター
目次

ひとことで言うと
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事業活動を**「主活動」と「支援活動」**に分解して、どの工程で価値が生まれ、どこにコストがかかっているかを可視化するフレームワーク。マイケル・ポーターが提唱した、競争優位の源泉を特定するためのツール。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
主活動(Primary Activities)
顧客に直接価値を届ける一連の直接的な事業活動のこと。購買物流・製造・出荷物流・マーケティング/販売・サービスの5つに分類される。
支援活動(Support Activities)
主活動を下支えする間接的な事業活動を指す。全般管理・人材資源管理・技術開発・調達活動の4つに分類される。
マージン(Margin)
顧客が支払う価格から全活動のコストを差し引いた付加価値の総額である。バリューチェーン分析の最終的な指標であり、マージンを最大化することが目標。
アウトソーシング
自社の業務の一部を外部の専門企業に委託すること。バリューチェーン分析で「価値が低くコストが高い」と判明した工程の選択肢になる。

バリューチェーン分析の全体像
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主活動5つと支援活動4つで価値の流れを分解する
支援活動全般管理経営・財務・法務・経理人材資源管理採用・教育・評価制度技術開発R&D・システム開発・プロセス改善調達活動購買の仕組み・サプライヤー管理主活動購買物流原材料の調達在庫管理製造製品・サービスを作る出荷物流配送・倉庫流通販売・マーケ広告・営業チャネル管理サービスアフターサポート保守・修理→ マージン(付加価値の総額)価値が高くコストが低い工程 = 競争優位の源泉
バリューチェーン分析の進め方
1
活動の分解
主活動と支援活動を洗い出す
2
価値とコストの評価
各工程の付加価値とコストを測定
3
競合との比較
相対的な優位性を特定
リソース配分の意思決定
集中する工程と外注する工程を判断

こんな悩みに効く
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  • どの業務に一番コストがかかっているか把握できていない
  • 自社の「本当の強み」がどの工程から生まれているかわからない
  • 何を内製し、何を外注すべきか判断がつかない

基本の使い方
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ステップ1: 主活動を分解する

顧客に価値を届けるまでの直接的な活動を5つに分ける。

  • 購買物流: 原材料の調達、在庫管理、仕入先との関係
  • 製造(オペレーション): 製品やサービスを作るプロセス
  • 出荷物流: 完成品の配送、倉庫管理、流通
  • マーケティング・販売: 広告、営業、チャネル管理、価格設定
  • サービス: アフターサポート、保守、修理、顧客対応

サービス業の場合は、自社のビジネスに合わせて工程名をカスタマイズして問題ない。

ステップ2: 支援活動を整理する

主活動を下支えする間接的な活動を4つに分ける。

  • 全般管理(インフラ): 経営、財務、法務、経理
  • 人材資源管理: 採用、教育、評価制度
  • 技術開発: R&D、システム開発、プロセス改善
  • 調達活動: 購買の仕組み、サプライヤー管理
ステップ3: 各工程の価値とコストを評価する

各工程ごとに以下を評価する。

  • 付加価値: その工程は顧客にとってどれだけの価値を生んでいるか?
  • コスト: どれだけのリソース(人件費、時間、資金)を使っているか?
  • 競合比較: 競合と比べて優れているか、劣っているか?

価値が高くコストが低い工程 = 競争優位の源泉。逆に、価値が低くコストが高い工程は改善やアウトソーシングの候補になる。

具体例
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例1:年商5億円のD2Cアパレルブランドがバリューチェーンを最適化する
工程付加価値コスト売上比率評価
調達(素材選定)高:オーガニック素材が差別化要因中:売上の18%18%強み。維持すべき
デザイン・企画高:独自のデザインがブランドの核中:売上の12%12%最大の競争優位。社内に保持
製造中:品質は重要だが外注でも担保可能高:売上の28%28%コスト改善余地あり
物流・配送低:顧客は配送自体に価値を感じにくい高:売上の15%15%アウトソーシング候補
ECサイト・マーケティング高:ブランドストーリーの発信が顧客獲得の鍵中:売上の14%14%強み。SNS運用は内製を維持
カスタマーサポート中:リピート率に直結低:売上の5%5%投資を増やしてLTV向上に活用

製造を海外パートナー工場に移管(コスト28%→20%)、物流を3PLに委託(15%→10%)。浮いた年間4,000万円をデザインチーム増員とブランドマーケティングに投下する。

例2:従業員120名のBtoB SaaS企業がバリューチェーンで投資判断をする
工程付加価値コスト(年間)評価
開発(プロダクト)高:プロダクトの機能がLTVの源泉3.6億円(人件費60名分)最大の競争優位。開発人材は最優先で確保
マーケティング高:リード獲得がパイプラインの入口1.8億円(広告費+人件費)費用対効果を継続的に最適化
営業中:提案力はあるが属人的1.2億円(人件費15名分)営業プロセスの標準化で生産性向上
カスタマーサクセス高:解約率に直結(月次1.5%→0.8%で年間ARR+6,000万円)0.6億円(人件費8名分)投資増の最優先候補
管理(バックオフィス)低:直接価値は生まないが安定運営に必須0.8億円SaaS活用で効率化。人員増は不要

解約率**1.5%→0.8%**の改善だけで年間ARR +6,000万円。カスタマーサクセスを8名→12名に増員し、バックオフィスはSaaS導入で20%効率化。浮いた2名を営業支援に配置転換する。

例3:地方の食品メーカーが競合との比較でバリューチェーンを分析する

前提: 年商8億円の漬物メーカー。競合A社(年商25億円)と比較分析。

工程自社の評価競合A社差異
原料調達地元農家との独占契約で品質安定大量仕入れで単価15%安自社が品質で優位
製造手作業の漬け込み。職人3名機械化で生産量5倍A社がコストで優位
商品開発年4品の新商品。成功率50%年12品。データ分析活用A社がスピードで優位
販路・営業地元スーパー35店舗中心全国チェーン280店舗+ECA社が圧倒的に優位
ブランディング「創業80年の手作り」訴求「健康志向」でテレビCM差別化の方向が異なる

教訓: 製造の機械化でA社と張り合うのは非現実的。勝てない土俵で戦わず、「手作り×地元農家の独占素材」に集中する。客単価を480円→1,200円に引き上げ、量ではなく質で勝負する。

やりがちな失敗パターン
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  1. 工程を粗く分けすぎる — 「製造」を一括りにすると、どこに問題があるかわからない。工程はできるだけ細かく分解するほうが改善ポイントが見つかりやすい
  2. 「コスト削減」だけに使う — バリューチェーン分析はコスト削減ツールではなく、「価値の源泉を見つける」ツール。コストカットばかりに目が行くと、強みまで削ってしまう
  3. 競合のバリューチェーンと比較しない — 自社だけ見ても相対的な優位性はわからない。競合がどこに投資しているかも合わせて分析する
  4. 支援活動を無視する — 主活動ばかりに注目して支援活動(技術開発・人材管理など)を軽視しがち。支援活動が主活動の生産性を大きく左右するケースは多い

まとめ
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バリューチェーン分析は、事業活動を工程ごとに分解して「どこで価値が生まれ、どこにコストがかかっているか」を可視化するフレームワーク。競争優位の源泉を特定し、リソース配分の意思決定に使える。「全部自分たちでやる」時代は終わり。価値を生む工程に集中し、それ以外は最適化する。