GE・マッキンゼーマトリクス

英語名 GE-McKinsey Matrix
読み方 ジーイー マッキンゼー マトリクス
難易度
所要時間 1〜2週間(データ収集含む)
提唱者 GE社 & McKinsey & Company(1970年代)
目次

ひとことで言うと
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「業界の魅力度」と「自社の競争力」の2軸で事業を9つのマスに分類し、どこに投資し、どこから撤退すべきかを判断するフレームワーク。BCGマトリクスの「市場成長率×市場シェア」が単純すぎるという反省から生まれた、より多角的な事業評価ツール。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
業界の魅力度(Industry Attractiveness)
市場規模、成長率、収益性、競争環境、技術変化の速度など外部要因の総合評価。自社の力では変えにくい「場」としての魅力を測る。
競争力(Competitive Strength)
市場シェア、ブランド力、技術力、コスト優位性、顧客基盤など自社がその業界で戦える力の総合評価。
9セル(Nine-Cell Matrix)
魅力度と競争力をそれぞれ高・中・低の3段階に分け、3×3=9つのセルに事業をプロットする。セルの位置によって「投資」「選択的投資」「撤退」の方針が決まる。
加重スコア
各評価項目に重要度の重みをつけてスコアを算出する方法。「市場成長率は重要度0.3、規制リスクは0.1」のように配分し、恣意性を減らす。

GE・マッキンゼーマトリクスの全体像
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GE・マッキンゼーマトリクス:9セルの投資判断
業界の魅力度自社の競争力強い中程度弱い高い中程度低い積極投資成長を加速選択的投資強みを伸ばす選択的投資競争力構築選択的投資ポジション維持選択と集中利益重視で判断縮小・撤退リソース回収限定投資キャッシュ回収縮小・撤退損切り検討即撤退早期売却・清算左上ほど投資優先度が高く、右下ほど撤退を検討すべき事業
GE・マッキンゼーマトリクスの作成手順
1
評価項目の設定
魅力度・競争力それぞれの評価項目と重みを決める
2
加重スコア算出
各事業のスコアを項目×重みで計算する
3
マトリクスにプロット
9セル上に各事業を配置する
4
投資方針の決定
セルの位置に基づき資源配分を決定

こんな悩みに効く
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  • 事業が増えすぎて、どこにリソースを集中すべきかわからない
  • 「赤字だが将来性がある事業」と「黒字だが先細りの事業」の優先順位をつけられない
  • 事業撤退の判断基準が属人的で、感情論になりやすい

基本の使い方
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業界の魅力度を評価する

各事業が属する業界を、以下のような項目で評価する。

  • 市場規模と成長率(大きく伸びている市場か)
  • 業界の収益性(利益率の平均はどの程度か)
  • 競争の激しさ(プレイヤー数、参入障壁)
  • 技術変化の速度、規制リスク

各項目に重要度の重みを配分し(合計1.0)、1〜5点で評価して加重スコアを算出する。

自社の競争力を評価する

自社がその業界でどれだけ戦えるかを評価する。

  • 市場シェアとシェアの推移
  • ブランド力・認知度
  • 技術力・特許・独自ノウハウ
  • コスト構造の優位性
  • 顧客基盤の強さ

こちらも同様に加重スコアを算出する。

マトリクスにプロットし投資方針を決める

各事業を9セル上に配置し、位置に応じた方針を設定する。

  • 左上3セル(緑): 積極投資 — 人材・資金を優先配分
  • 対角線3セル(黄): 選択的投資 — 条件次第で投資か縮小かを判断
  • 右下3セル(赤): 撤退・縮小 — キャッシュを回収して他事業に振り向ける

具体例
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例1:地方食品メーカーの3事業評価

状況: 売上50億円の食品メーカー。漬物事業(主力)、冷凍食品事業(3年前参入)、惣菜EC事業(1年前開始)の3事業を持つ

評価結果:

事業業界魅力度競争力セル位置
漬物事業低い(市場縮小)強い(シェア1位)左下
冷凍食品事業高い(成長市場)弱い(後発・シェア0.5%)右上
惣菜EC事業高い(急成長)中程度(差別化あり)中央上

投資方針:

  • 漬物事業: 限定投資。追加投資は抑え、キャッシュカウとして利益を確保
  • 冷凍食品事業: 大手と正面勝負は無理。撤退してリソースを惣菜ECに集中
  • 惣菜EC事業: 積極投資。漬物の製造ノウハウを活かしたD2C展開を強化

冷凍食品からの撤退で浮いた年間3億円を惣菜ECに投入し、2年後にEC売上が5億円→15億円に成長した。

例2:ITサービス企業の事業ポートフォリオ見直し

状況: 売上200億円のITサービス企業。SIer事業、クラウドSaaS事業、セキュリティコンサル事業、レガシー保守事業の4つを運営

評価結果:

事業業界魅力度競争力方針
SIer事業中程度強い選択的投資(利益重視)
クラウドSaaS高い中程度積極投資
セキュリティコンサル高い強い積極投資
レガシー保守低い中程度縮小・撤退

アクション:

  • レガシー保守の新規受注を停止し、既存顧客をクラウド移行に誘導
  • SIer事業の利益をクラウドSaaSの開発投資に充当
  • セキュリティコンサルに専門人材を10名採用

3年後、クラウドSaaSとセキュリティの売上構成比が20%→45%に上昇。全社営業利益率が8%→14%に改善した。

例3:個人経営の学習塾チェーンの教室評価

状況: 5教室を運営する学習塾。少子化で市場が縮小する中、どの教室に投資すべきか迷っている

評価(教室ごとに「地域の魅力度×教室の競争力」で分析):

教室地域魅力度教室の競争力方針
A教室(駅前)高い(人口増加地域)強い(口コミ評価1位)積極投資:増床・講師増員
B教室(住宅街)中程度中程度現状維持:コスト管理を徹底
C教室(郊外)低い(人口減少地域)弱い(大手塾が近隣に進出)撤退:年度末で閉鎖

結果: C教室の閉鎖で固定費が年間800万円削減。その資金でA教室を拡張し、定員を1.5倍に。A教室の年間売上が2,400万円→3,800万円に成長した。

感情的に「どの教室も大切」と考えがちだが、マトリクスで数値化することで、合理的な撤退判断が可能になった。

やりがちな失敗パターン
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  1. 評価項目の重みづけを「全部均等」にしてしまう — 業界によって重要な要素は異なる。IT業界なら技術変化の速度が重要で、食品業界なら規制環境が重要になる。重みこそが戦略的判断の核心
  2. スコアリングが「気分」になる — 「なんとなく3点」ではなく、データや根拠に基づいて評価する。可能ならチームで合議し、個人の思い込みを補正する
  3. マトリクスを作って満足する — 配置した後の「だからどうするか」が本題。投資額・人員配置・撤退スケジュールまで具体化しなければ、きれいな図で終わる
  4. 撤退の判断を先送りする — 右下に位置する事業は早期に意思決定するほど損失が小さい。「もう少し様子を見よう」が最も高くつくパターンである

まとめ
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GE・マッキンゼーマトリクスは「どの事業に賭けるか」を9つのセルで可視化する道具であり、限りある経営資源を配分するための共通言語になる。業界の魅力度と自社の競争力を分けて評価することで、「儲かっているが先がない事業」と「赤字だが将来性のある事業」を冷静に比較できる。ただし、マトリクスが教えてくれるのは「方向性」であって「正解」ではない。最終的に投資と撤退を決めるのは経営者の意志であり、このフレームワークはその判断の精度を高めるためにある。