ブルーオーシャン戦略

英語名 Blue Ocean Strategy
読み方 ブルー オーシャン ストラテジー
難易度
所要時間 3〜5時間
提唱者 W・チャン・キム、レネ・モボルニュ
目次

ひとことで言うと
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競合とシェアを奪い合う「レッドオーシャン(血みどろの海)」ではなく、競争のない新しい市場空間=ブルーオーシャンを自ら創り出す戦略フレームワーク。W・チャン・キムとレネ・モボルニュがINSEADでの研究をもとに提唱した。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
レッドオーシャン(Red Ocean)
既存の市場空間で競合同士が激しくシェアを奪い合っている状態のこと。価格競争や機能競争が激化し、利益が出にくくなった「血みどろの海」を指す。
ERRCグリッド(Eliminate-Reduce-Raise-Create Grid)
業界の常識を崩すための4つのアクション取り除く・減らす・増やす・付け加えるを整理するフレームワークのこと。差別化とコスト削減を同時に実現する設計ツール。
戦略キャンバス(Strategy Canvas)
横軸に業界の競争要因、縦軸に提供レベルをとり、各社の価値曲線を可視化する分析ツールのこと。ほとんどの企業が似た曲線を描いていればレッドオーシャンの証拠。
非顧客(Non-Customer)
現在その業界のサービスを利用していない人々のこと。ブルーオーシャン戦略では既存顧客より非顧客に着目し、彼らを取り込む新しい価値を創造する。

ブルーオーシャン戦略の全体像
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ブルーオーシャン戦略:ERRCグリッドで価値曲線を再設計する
レッドオーシャン既存市場で競合とシェアを奪い合う価格競争・利益率の低下競合ベンチマーク型の戦略→ 消耗戦に陥りやすいブルーオーシャン競争のない新市場を創造する差別化+低コストの同時実現非顧客に目を向ける→ 競争を無意味にするERRCグリッド ─ 4つのアクションEliminate ─ 取り除く業界が当然視しているが実は不要な要素は?→ コスト削減の源泉Reduce ─ 減らす業界標準より思い切って減らせる要素は?→ コスト削減の源泉Raise ─ 増やす業界標準より大幅に高められる要素は?→ 差別化の源泉Create ─ 付け加える業界にはない、まったく新しい要素は?→ 差別化の源泉
ブルーオーシャン戦略の適用フロー
1
戦略キャンバス
業界の競争要因と各社の価値曲線を可視化
2
ERRCグリッド
4つのアクションで価値の組み替えを設計
3
新価値曲線
競合とは形の異なる価値曲線を描く
非顧客の獲得
今まで業界にいなかった顧客を取り込む

こんな悩みに効く
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  • 価格競争に巻き込まれて利益が出ない
  • 競合との差別化ポイントがどんどん小さくなっている
  • 業界の常識にとらわれず、新しい価値を生み出したい

基本の使い方
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ステップ1: 戦略キャンバスで業界の現状を可視化する

横軸に業界の競争要因(顧客が重視するポイント)を並べ、縦軸にそれぞれの提供レベルをとる。

  • 競合各社の戦略プロフィール(価値曲線)を描く
  • ほとんどの企業が似たような曲線を描いていれば、その業界はレッドオーシャン

例(フィットネスジム業界の競争要因): 設備の充実度、立地、価格、トレーナーの質、営業時間、スタジオプログラム

ステップ2: 4つのアクションで価値曲線を再設計する

ERRCグリッドを使って、業界の常識を崩す。

  • Eliminate(取り除く): 業界が当然視しているが、実は不要な要素は?
  • Reduce(減らす): 業界標準より減らせる要素は?
  • Raise(増やす): 業界標準より大幅に高められる要素は?
  • Create(付け加える): 業界にはない、まったく新しい要素は?

この4つのアクションで差別化とコスト削減を同時に実現するのがブルーオーシャン戦略の核心。

ステップ3: 新しい価値曲線を描き、実行する

ERRCグリッドの結果をもとに、既存の価値曲線とはまったく形の違う新しい価値曲線を描く。

チェックポイント:

  • 競合とは明らかに違う曲線になっているか?
  • 顧客にとって魅力的な価値提案になっているか?
  • 実行可能なコスト構造か?

具体例
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例1:QBハウスに見るブルーオーシャン戦略

従来の理髪店業界の競争要因と、QBハウスのERRCグリッド:

Eliminate(取り除く)

  • シャンプー・ブロー → 廃止(エアウォッシャーで代替)
  • 予約制 → 廃止(来店順)
  • 会話・接客 → 最小限に

Reduce(減らす)

  • 施術時間 → 10分に短縮(従来の理髪店は60〜90分)
  • 料金 → 1,200円(当時の相場4,000円の約1/3)
  • 店舗の内装 → シンプル・コンパクトに

Raise(増やす)

  • 立地の利便性 → 駅ナカ・オフィス街に集中出店(全国約700店舗)
  • 回転率 → 1日あたりの施術人数を大幅増(1席で1日約30人)

Create(付け加える)

  • 「空き状況の見える化」(信号機式のランプ表示)
  • 「カット専門」という新カテゴリの確立

結果: 「シャンプーもブローもいらない、短時間で安くカットだけしたい」という非顧客層(忙しいビジネスパーソン)を取り込み、従来の理髪店とは競争しない新市場を創造。年間売上約200億円、営業利益率15%以上を実現。

例2:カーブスに見る女性専用フィットネスの創造

従来のフィットネスジム業界は、設備・マシン・プログラムの充実度で競争するレッドオーシャンだった。

Eliminate(取り除く)

  • 大型マシン → 廃止(油圧式の簡易マシン12台のみ)
  • プール・サウナ → 廃止
  • 鏡 → 廃止(体型を気にせず運動できる環境)
  • 男性会員 → 完全排除(女性専用)

Reduce(減らす)

  • 月会費 → 6,820円(大手ジムの約半額)
  • 運動時間 → 1回30分の定型プログラム
  • 営業時間 → 平日10:00〜19:00(夜間・週末は閉店)

Raise(増やす)

  • スタッフの声かけ → インストラクターが全員に声をかける手厚いサポート
  • 通いやすさ → 住宅街の路面店に出店(全国約2,000店舗)

Create(付け加える)

  • 「50〜70代女性の健康習慣」という新カテゴリ
  • 予約不要・着替え不要の気軽さ
  • 月1回の体力測定で効果を実感させる仕組み

結果: ジムに通ったことのない50〜70代女性という巨大な非顧客層を取り込み、会員数約80万人。従来のジムとは競合せず、「健康維持のための生活インフラ」として新市場を創造

例3:町の学習塾がERRCで差別化する

状況: 生徒数50名の個人経営学習塾。大手チェーン塾(月謝2.5万円〜3.5万円)と個別指導塾の間で苦戦。価格で勝てず、ブランド力もない。

戦略キャンバスの分析: 大手チェーン塾と個別指導塾は「テスト対策」「教材の豊富さ」「講師の数」で競争。どちらも保護者の「偏差値を上げたい」ニーズに応える設計。

ERRCグリッド(自塾の再設計):

アクション要素詳細
Eliminateテスト対策用の大量プリント市販教材で十分。独自プリント作成の時間を削減
Reduce教科数全教科対応→算数/数学と英語の2教科に特化
Raise保護者面談の頻度年2回→月1回15分のオンライン面談。子供の学習態度を共有
Create「勉強の仕方」を教える週1回の自習サポート(追加料金なし)

非顧客の発見: 「塾に通わせたいが、大手は高い。かといって個別指導は月4万円超。家で勉強する習慣がつけばいいのに」と考える保護者層(地域の調査で全家庭の35%が該当)

結果: 月謝1.5万円(2教科+自習サポート込み)で再設計。「成績を上げる塾」ではなく**「勉強習慣をつける塾」**として独自ポジションを確立。18ヶ月で生徒数50名→120名に増加。大手塾からの転塾ではなく、これまで塾に通っていなかった家庭からの入塾が全体の70%

やりがちな失敗パターン
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  1. 単なる低価格戦略と混同する — ブルーオーシャンは「安くする」ではなく「価値の組み替え」。Eliminateだけやると単なるコストカットになる。Raise/Createとセットで考えること
  2. 既存顧客だけを見る — ブルーオーシャンの鍵は「非顧客」。今その業界のサービスを使っていない人に目を向ける
  3. 一度作ったら安心してしまう — ブルーオーシャンも時間が経てば模倣され、レッドオーシャン化する。継続的に価値曲線を進化させる必要がある
  4. ERRCのバランスが偏る — Eliminate/Reduceばかりでは単なるコストカット、Raise/Createばかりではコストが膨らむ。4つのアクションのバランスで差別化と低コストの両立を実現する

まとめ
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ブルーオーシャン戦略は、競争を避けるのではなく「競争を無意味にする」フレームワーク。ERRCグリッドで価値の要素を組み替え、既存の業界にはない価値曲線を描くことがカギ。競合ばかり見ていると視野が狭くなる。たまには目線を上げて、「まだ誰もいない海」を探してみよう。