ウィン・ロス分析

英語名 Win Loss Analysis
読み方 ウィン ロス アナリシス
難易度
所要時間 分析1件あたり60〜90分、四半期レビュー半日
提唱者 マーケティングリサーチから発展した営業プロセス改善手法
テンプレート あり ↓
目次

ひとことで言うと
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受注(Win)と失注(Loss)の案件を振り返り、勝敗の要因を構造的に分析して次の営業活動にフィードバックする手法。「なぜ勝てたか」「なぜ負けたか」を属人的な感想ではなくデータで解明する。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
ウィン(Win)
受注に至った商談。勝因の再現性を高めるために分析対象とする。
ロス(Loss)
失注した商談。敗因を特定し再発防止策を設計するための分析対象。
No Decision
競合に負けたのではなく、顧客が「何も買わない」と判断した案件を指す。失注とは別カテゴリで分析する。
ウィンレート(Win Rate)
商談総数に対する受注件数の割合。ウィン・ロス分析の最重要KPIである。
ポストモーテム(Post-mortem)
案件終了後に行う振り返り分析。成功・失敗の両方について実施する考え方。

ウィン・ロス分析の全体像
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受注・失注の分析プロセスとフィードバック構造
Win(受注)なぜ勝てたか?勝因の再現性を分析成功パターンを抽出Loss(失注)なぜ負けたか?敗因を特定再発防止策を設計No Decisionなぜ止まったか?購買意欲の見極め資格評価を改善要因分析(6カテゴリ)1. 製品・機能2. 価格・条件3. 営業プロセス4. 関係構築5. タイミング6. 競合優位性改善アクション勝ちパターン → 営業プレイブック化負けパターン → 対策を標準プロセスに組込四半期ごとにウィンレートの変化を追跡
ウィン・ロス分析の進め方フロー
1
データ収集
案件情報・顧客インタビュー・CRMデータを集約
2
要因分類
6カテゴリに分類し勝敗要因を特定
3
パターン抽出
複数案件を横断し共通の勝ち負けパターンを発見
勝率改善
プレイブック更新と標準プロセスへの反映

こんな悩みに効く
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  • 失注理由が「価格」で片付けられ、本当の敗因が組織に蓄積されない
  • トップ営業の勝ちパターンが暗黙知のまま共有されていない
  • 四半期レビューで「次は頑張ろう」以上の改善施策が出てこない

基本の使い方
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ステップ1:分析対象の案件を選定する

直近四半期の全案件からWin・Loss・No Decisionを分類する。全件分析が理想だが、リソースが限られる場合は以下を優先する。

  • 大型案件(年間契約額が平均の2倍以上)
  • 僅差の勝敗(最終2社に残った案件)
  • 想定外の結果(勝てるはずだった失注、難しいはずだった受注)
ステップ2:顧客インタビューを実施する

案件終了後 2週間以内 に顧客へインタビューを依頼する。担当営業ではなく第三者(マネージャーやセールスオペレーション)が聞くと、顧客が本音を話しやすい。

質問項目の例:

  • 最終的に決め手になったポイントは何か
  • 検討中に最も懸念していたことは何か
  • 他社と比較して当社が劣っていた点はどこか
  • 社内の意思決定プロセスで障壁になったことはあるか
ステップ3:6カテゴリで要因を分類する
カテゴリ分析観点
製品・機能必要な機能は満たしていたか
価格・条件価格は競合と比較して妥当だったか
営業プロセス適切なタイミングで適切な情報を提供できたか
関係構築キーマンとの信頼関係は構築できていたか
タイミング顧客の予算サイクルや導入期限に合っていたか
競合優位性競合に対する差別化ポイントは伝わっていたか

各カテゴリを 勝因/敗因/影響度(高・中・低) で整理する。

ステップ4:パターンを抽出し改善施策に落とす
複数案件を横断し、繰り返し出現する勝因・敗因をパターン化する。パターンごとに改善アクションを設計し、営業プレイブックや標準プロセスに反映する。四半期ごとにウィンレートの推移を追跡し、施策の効果を測定する。

具体例
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例1:クラウドERPベンダーが失注パターンを特定する

従業員200名のクラウドERP企業。直近2四半期で失注率が 42% → 55% に悪化し、原因を分析した。

分析対象: 失注18件(うちNo Decision 5件)

敗因カテゴリ件数影響度「高」の割合
製品・機能4件25%
価格・条件6件50%
営業プロセス3件33%
関係構築8件75%
タイミング2件50%
競合優位性7件57%

顧客インタビューで判明した真の敗因は「価格」ではなく関係構築の不足だった。8件中6件で「経営層との接点がなかった」と回答。営業は「価格で負けた」と報告していたが、実際は意思決定者にリーチできていなかったことが根本原因。

対策として経営層向けの業界別ビジョンセッション(30分)を標準プロセスに組み込んだところ、翌四半期のウィンレートが 45% → 58% に回復した。

例2:広告代理店が勝ちパターンをプレイブック化する

従業員25名のデジタル広告代理店。受注案件15件を分析して勝ちパターンを抽出した。

受注案件の共通要因:

勝因出現率具体的な行動
初回提案前の競合調査共有87%(13/15件)顧客業界の広告出稿状況レポートを無料提供
2回目商談での成果シミュレーション80%(12/15件)具体的なCPA・CV数をスプレッドシートで提示
決裁者同席の最終プレゼン73%(11/15件)CMOまたはマーケ部長が参加

一方、失注案件ではこの3要素がすべて揃った案件はゼロだった。

この分析結果から「競合調査レポート → 成果シミュレーション → 決裁者プレゼン」の3ステップを営業プレイブックに標準化。新人営業にも同じ手順を徹底させた結果、チーム全体のウィンレートが 38% → 52% に向上している。

例3:産業機械メーカーがNo Decision案件を削減する

従業員400名の産業機械メーカー。年間の失注案件48件中、No Decisionが 21件(44%) を占めていることが判明。

No Decision案件の顧客インタビュー(13件実施)で浮かび上がったパターン:

停滞理由件数典型的な顧客コメント
社内合意形成の失敗6件「現場は欲しいが経営層の承認が取れなかった」
ROIの不明確さ4件「導入効果を数字で説明できず稟議が通らなかった」
他の投資案件に予算を奪われた3件「DX投資に予算が回ってしまった」

対策は2つ。まず、ROI試算ツール(Excel)を営業全員に配布し、顧客がそのまま稟議書に添付できる形式にした。次に、案件の初期段階で「予算の競合」(同時期に検討中の他の投資案件)を確認する質問を商談チェックリストに追加した。

翌年度のNo Decision率は 44% → 23% に低下。ウィンレート自体も 31% → 40% に改善した。

やりがちな失敗パターン
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  1. 営業の自己申告だけで分析する — 失注理由を担当営業に聞くと「価格」と答えがち。顧客インタビューを省略すると、本当の敗因(関係構築不足、タイミングのズレ)を見逃す。第三者による顧客ヒアリングが分析の生命線。

  2. Win案件を分析しない — 失注の振り返りだけで満足し、受注案件の分析を怠る。勝てた理由を構造化しなければ、成功の再現性は上がらない。Win分析はLoss分析と同じかそれ以上に重要である。

  3. 分析結果を個人の評価に使う — 「あなたの失注率が高い」と個人攻撃の材料にすると、営業が正直に情報を出さなくなる。分析の目的はプロセス改善であり、個人の責任追及ではないことを明示する。

  4. 改善施策が抽象的すぎる — 「もっと丁寧に提案する」「関係構築を強化する」では行動が変わらない。「初回商談前に業界レポートを送付する」「2回目商談で必ずROI試算を提示する」のように、具体的なアクションに落とす。

まとめ
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ウィン・ロス分析は、受注・失注の理由を属人的な感覚から構造的なデータに変換する手法である。顧客インタビューによる真の要因特定と、6カテゴリによる分類、複数案件の横断パターン抽出が分析の核になる。分析で終わらせず、プレイブックや標準プロセスへの反映まで行い、ウィンレートの変化を追跡するところまでがこの手法の範囲である。

ウィン・ロス分析のフレームワークテンプレート

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