テリトリーマネジメント

英語名 Territory Management
読み方 テリトリー マネジメント
難易度
所要時間 設計に1〜2週間
提唱者 伝統的な営業管理手法
目次

ひとことで言うと
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営業チームの担当領域(テリトリー)を地域・業種・企業規模・製品ラインなどの軸で戦略的に設計・配分する管理手法。「誰がどこを担当するか」を勘や慣習ではなく、データと戦略に基づいて最適化することで、チーム全体の売上を最大化する。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
テリトリー(Territory)
営業担当に割り当てられた担当範囲・領域のこと。地域だけでなく業種・企業規模・製品ラインなど多様な軸で設定される〜である。
カバレッジ(Coverage)
テリトリー内の見込み客に対して実際にアプローチできている割合のこと。カバレッジが低い=ポテンシャルの取りこぼしが多い〜を指す。
TAM(Total Addressable Market)
テリトリー内の獲得可能な最大市場規模のこと。既存売上だけでなく未開拓のポテンシャルも含めてテリトリーを評価する指標〜を指す。
テリトリーバランス(Territory Balance)
各テリトリーのポテンシャルと営業リソースが適切に均衡している状態のこと。一部の営業に案件が集中し、他の営業が暇を持て余す状態はバランスが崩れている〜である。

テリトリーマネジメントの全体像
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データに基づいてテリトリーを設計・配分し、定期的に見直す
分割軸の設定地域・業種・企業規模製品ラインなどポテンシャル評価既存売上+未開拓TAM+競合シェア+成長率リソース配分ポテンシャルに応じて人材を最適配置定期的な見直し四半期〜半期ごとに再評価実績vs目標・カバレッジ率を確認✕ 勘と慣習で担当を決める→ 案件集中・カバレッジの穴◎ データと戦略で最適配分→ カバレッジ最大化・売上向上
テリトリーマネジメントの進め方フロー
1
分割軸の決定
地域・業種・企業規模など、テリトリーの分け方を決める
2
ポテンシャル評価
各テリトリーの既存売上+未開拓TAMを定量分析する
3
リソース配分
ポテンシャルに応じて営業人材を最適に配置する
4
定期的な見直し
四半期〜半期ごとに実績を評価し再配分する
カバレッジ最大化・売上向上
市場のポテンシャルを漏れなく獲得し、チーム全体の売上を最大化する

こんな悩みに効く
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  • 一部の営業に案件が集中し、他の営業は暇を持て余している
  • 担当の割り振りが属人的で、引き継ぎのたびに混乱する
  • ポテンシャルの高い市場がカバーされていない

基本の使い方
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ステップ1: テリトリーの分割軸を決める

何を基準にテリトリーを分けるかを決める

  • 地域(東日本/西日本、都道府県など)
  • 業種(製造業、金融、小売など)
  • 企業規模(大企業/中堅/SMBなど)
  • 製品ライン(製品A担当/製品B担当)
  • これらの組み合わせも可能

ポイント: 自社のビジネスモデルと顧客特性に合った軸を選ぶ。地域だけで分けると業種知識が活かせないこともある。

ステップ2: 各テリトリーのポテンシャルを評価する

各テリトリーの売上ポテンシャルを定量的に算出する

  • 既存顧客の売上実績
  • 未開拓市場の規模(TAM)
  • 競合のシェア状況
  • 成長率やトレンド

ポイント: 現在の売上だけでなく、将来のポテンシャルも加味する。今は小さくても伸びる市場を見逃さない。

ステップ3: 営業リソースを配分する

ポテンシャルに応じて営業リソースを配分する

  • 高ポテンシャルのテリトリーには経験豊富な営業を配置
  • 各テリトリーの工数バランスを均等に近づける
  • 1人あたりの担当企業数が適正範囲に収まるよう調整

ポイント: ポテンシャルと人材のマッチングが重要。新人にいきなり大企業テリトリーを任せるのはリスクが高い。

ステップ4: 定期的に見直しと再配分を行う

四半期〜半期ごとにテリトリーの成果を評価し、必要に応じて再配分する

  • テリトリー別の売上実績 vs 目標を比較
  • カバレッジ率(訪問・接触できている割合)を確認
  • 市場変化や組織変更に応じて柔軟に再設計

ポイント: テリトリーは固定するものではない。変化に合わせて柔軟に見直す。

具体例
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例1:全国20名の法人営業チームのテリトリー再設計で売上20%増

現状: 地域ベースで担当を分割。東京担当8名、大阪担当4名、その他8名。東京は案件過多で対応しきれず、地方は案件が少なく稼働率が低い。

ポテンシャル分析:

テリトリー既存売上未開拓TAMカバレッジ率
東京・大手8億円12億円45%
東京・中堅3億円8億円30%
関西・中部4億円6億円50%
地方・製造業1億円7億円15%
新規市場0円5億円0%

再設計: 地域×業種のマトリクスでテリトリーを再設計。

  • 東京・大手企業チーム(6名)
  • 東京・中堅企業チーム(4名)
  • 関西・中部チーム(4名)
  • 製造業専門チーム(4名)※全国横断
  • 新規開拓チーム(2名)

結果: 製造業専門チームが地方の未開拓企業を集中攻略し、6ヶ月で売上20%増。全体のカバレッジ率が35%→65%に向上。特に地方製造業テリトリーのカバレッジは15%→55%に劇的改善。

例2:SaaS企業が企業規模別テリトリーで営業効率を3倍に

状況: クラウド会計ソフトの営業チーム30名。全員が企業規模を問わずすべての案件を担当。月間新規商談数は合計300件だが、大企業と中小企業で商談の進め方がまったく異なり、専門性が育たない。

テリトリー再設計:

セグメント担当人数ポテンシャル特徴
エンタープライズ(1000名以上)8名年間10億円長期商談、複数決裁者、カスタマイズ必須
ミッドマーケット(100-999名)12名年間8億円中期商談、ROI提案が有効
SMB(99名以下)6名年間4億円短期商談、セルフサーブ+インサイドセールス
新規開拓(業種特化)4名年間3億円医療・介護業界に集中

結果:

指標再設計前再設計後
営業1人あたり売上2,800万円/年5,200万円/年
エンタープライズ受注率8%22%
SMB受注率15%35%
新規業界の開拓0件年間45件

営業1人あたりの売上が1.9倍に。エンタープライズ担当は「大企業の決裁プロセス」に精通し、SMB担当は「短期クロージング」のスキルが研ぎ澄まされた。専門化による効率向上が最大の成果。

例3:地方の医療機器ディーラーがテリトリー見直しで空白地帯を解消

状況: 地方の医療機器販売会社。営業8名が県別に担当。しかし病院数が多い県と少ない県で営業負荷に4倍の差があり、A営業は月20件の訪問で精一杯、B営業は月5件で暇を持て余していた。

テリトリー再設計:

分析: 県別ではなく「病院数×ベッド数」でポテンシャルを算出。

テリトリー営業病院数ベッド数既存顧客未開拓
旧:A県全域1名8512,0003055
旧:B県全域1名203,000155

再設計: 県境を越え、ポテンシャルが均等になるよう再配分。さらに大規模病院(300床以上)は専任チーム2名が全域対応。

結果: 未訪問だった病院55施設のうち38施設に新規訪問が実現。1年で新規取引12施設を開拓し、年間売上は前年比135%を達成。営業負荷の偏りも解消され、全員の残業時間が平均20時間→10時間に半減。

やりがちな失敗パターン
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  1. 既得権益を崩せない — 「ずっと担当しているから」という理由でテリトリーを変えられず、最適化が進まない。データに基づく公平な基準で再配分する
  2. 均等分割にこだわりすぎる — 企業数を均等に割ればいいわけではない。ポテンシャルと工数のバランスで配分するのが正解
  3. 再配分のたびに顧客関係がリセットされる — 引き継ぎを適切に行わないと顧客の信頼を失う。引き継ぎ期間と共同訪問を計画に組み込む
  4. 一度設計したら見直さない — 市場は常に変化する。半年前の最適配分が今も最適とは限らない。四半期ごとの見直しサイクルを仕組みとして組み込む

まとめ
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テリトリーマネジメントは、営業リソースを戦略的に配分して売上を最大化する管理手法。地域・業種・企業規模などの軸でテリトリーを設計し、ポテンシャルに応じて人材を配置する。定期的な見直しで市場変化に対応し、カバレッジの穴をなくすことが重要。