ひとことで言うと#
営業チームの担当領域(テリトリー)を地域・業種・企業規模・製品ラインなどの軸で戦略的に設計・配分する管理手法。「誰がどこを担当するか」を勘や慣習ではなく、データと戦略に基づいて最適化することで、チーム全体の売上を最大化する。
押さえておきたい用語#
- テリトリー(Territory)
- 営業担当に割り当てられた担当範囲・領域のこと。地域だけでなく業種・企業規模・製品ラインなど多様な軸で設定される〜である。
- カバレッジ(Coverage)
- テリトリー内の見込み客に対して実際にアプローチできている割合のこと。カバレッジが低い=ポテンシャルの取りこぼしが多い〜を指す。
- TAM(Total Addressable Market)
- テリトリー内の獲得可能な最大市場規模のこと。既存売上だけでなく未開拓のポテンシャルも含めてテリトリーを評価する指標〜を指す。
- テリトリーバランス(Territory Balance)
- 各テリトリーのポテンシャルと営業リソースが適切に均衡している状態のこと。一部の営業に案件が集中し、他の営業が暇を持て余す状態はバランスが崩れている〜である。
テリトリーマネジメントの全体像#
こんな悩みに効く#
- 一部の営業に案件が集中し、他の営業は暇を持て余している
- 担当の割り振りが属人的で、引き継ぎのたびに混乱する
- ポテンシャルの高い市場がカバーされていない
基本の使い方#
何を基準にテリトリーを分けるかを決める。
- 地域(東日本/西日本、都道府県など)
- 業種(製造業、金融、小売など)
- 企業規模(大企業/中堅/SMBなど)
- 製品ライン(製品A担当/製品B担当)
- これらの組み合わせも可能
ポイント: 自社のビジネスモデルと顧客特性に合った軸を選ぶ。地域だけで分けると業種知識が活かせないこともある。
各テリトリーの売上ポテンシャルを定量的に算出する。
- 既存顧客の売上実績
- 未開拓市場の規模(TAM)
- 競合のシェア状況
- 成長率やトレンド
ポイント: 現在の売上だけでなく、将来のポテンシャルも加味する。今は小さくても伸びる市場を見逃さない。
ポテンシャルに応じて営業リソースを配分する。
- 高ポテンシャルのテリトリーには経験豊富な営業を配置
- 各テリトリーの工数バランスを均等に近づける
- 1人あたりの担当企業数が適正範囲に収まるよう調整
ポイント: ポテンシャルと人材のマッチングが重要。新人にいきなり大企業テリトリーを任せるのはリスクが高い。
四半期〜半期ごとにテリトリーの成果を評価し、必要に応じて再配分する。
- テリトリー別の売上実績 vs 目標を比較
- カバレッジ率(訪問・接触できている割合)を確認
- 市場変化や組織変更に応じて柔軟に再設計
ポイント: テリトリーは固定するものではない。変化に合わせて柔軟に見直す。
具体例#
現状: 地域ベースで担当を分割。東京担当8名、大阪担当4名、その他8名。東京は案件過多で対応しきれず、地方は案件が少なく稼働率が低い。
ポテンシャル分析:
| テリトリー | 既存売上 | 未開拓TAM | カバレッジ率 |
|---|---|---|---|
| 東京・大手 | 8億円 | 12億円 | 45% |
| 東京・中堅 | 3億円 | 8億円 | 30% |
| 関西・中部 | 4億円 | 6億円 | 50% |
| 地方・製造業 | 1億円 | 7億円 | 15% |
| 新規市場 | 0円 | 5億円 | 0% |
再設計: 地域×業種のマトリクスでテリトリーを再設計。
- 東京・大手企業チーム(6名)
- 東京・中堅企業チーム(4名)
- 関西・中部チーム(4名)
- 製造業専門チーム(4名)※全国横断
- 新規開拓チーム(2名)
結果: 製造業専門チームが地方の未開拓企業を集中攻略し、6ヶ月で売上20%増。全体のカバレッジ率が35%→65%に向上。特に地方製造業テリトリーのカバレッジは15%→55%に劇的改善。
状況: クラウド会計ソフトの営業チーム30名。全員が企業規模を問わずすべての案件を担当。月間新規商談数は合計300件だが、大企業と中小企業で商談の進め方がまったく異なり、専門性が育たない。
テリトリー再設計:
| セグメント | 担当人数 | ポテンシャル | 特徴 |
|---|---|---|---|
| エンタープライズ(1000名以上) | 8名 | 年間10億円 | 長期商談、複数決裁者、カスタマイズ必須 |
| ミッドマーケット(100-999名) | 12名 | 年間8億円 | 中期商談、ROI提案が有効 |
| SMB(99名以下) | 6名 | 年間4億円 | 短期商談、セルフサーブ+インサイドセールス |
| 新規開拓(業種特化) | 4名 | 年間3億円 | 医療・介護業界に集中 |
結果:
| 指標 | 再設計前 | 再設計後 |
|---|---|---|
| 営業1人あたり売上 | 2,800万円/年 | 5,200万円/年 |
| エンタープライズ受注率 | 8% | 22% |
| SMB受注率 | 15% | 35% |
| 新規業界の開拓 | 0件 | 年間45件 |
営業1人あたりの売上が1.9倍に。エンタープライズ担当は「大企業の決裁プロセス」に精通し、SMB担当は「短期クロージング」のスキルが研ぎ澄まされた。専門化による効率向上が最大の成果。
状況: 地方の医療機器販売会社。営業8名が県別に担当。しかし病院数が多い県と少ない県で営業負荷に4倍の差があり、A営業は月20件の訪問で精一杯、B営業は月5件で暇を持て余していた。
テリトリー再設計:
分析: 県別ではなく「病院数×ベッド数」でポテンシャルを算出。
| テリトリー | 営業 | 病院数 | ベッド数 | 既存顧客 | 未開拓 |
|---|---|---|---|---|---|
| 旧:A県全域 | 1名 | 85 | 12,000 | 30 | 55 |
| 旧:B県全域 | 1名 | 20 | 3,000 | 15 | 5 |
再設計: 県境を越え、ポテンシャルが均等になるよう再配分。さらに大規模病院(300床以上)は専任チーム2名が全域対応。
結果: 未訪問だった病院55施設のうち38施設に新規訪問が実現。1年で新規取引12施設を開拓し、年間売上は前年比135%を達成。営業負荷の偏りも解消され、全員の残業時間が平均20時間→10時間に半減。
やりがちな失敗パターン#
- 既得権益を崩せない — 「ずっと担当しているから」という理由でテリトリーを変えられず、最適化が進まない。データに基づく公平な基準で再配分する
- 均等分割にこだわりすぎる — 企業数を均等に割ればいいわけではない。ポテンシャルと工数のバランスで配分するのが正解
- 再配分のたびに顧客関係がリセットされる — 引き継ぎを適切に行わないと顧客の信頼を失う。引き継ぎ期間と共同訪問を計画に組み込む
- 一度設計したら見直さない — 市場は常に変化する。半年前の最適配分が今も最適とは限らない。四半期ごとの見直しサイクルを仕組みとして組み込む
まとめ#
テリトリーマネジメントは、営業リソースを戦略的に配分して売上を最大化する管理手法。地域・業種・企業規模などの軸でテリトリーを設計し、ポテンシャルに応じて人材を配置する。定期的な見直しで市場変化に対応し、カバレッジの穴をなくすことが重要。