ミューチュアル・クローズプラン

英語名 Mutual Close Plan
読み方 ミューチュアル クローズ プラン
難易度
所要時間 作成30分、クロージングフェーズで随時更新
提唱者 Mutual Action Planのクロージング特化版。SaaS営業のベストプラクティス
目次

ひとことで言うと
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商談の最終フェーズ(提案承認後〜契約締結)で、「契約日から逆算して、売り手と買い手が何を・いつまでに完了するか」を共同で計画するクロージング特化型の行動計画。「あとは契約を待つだけ」の受け身を「一緒に完了させる」に変える。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
クローズデート(Close Date)
契約書に署名する目標日のこと。この日から逆算してすべてのタスクを配置する。
法務レビュー(Legal Review)
契約書の内容を法務部門が確認・修正するプロセスを指す。クロージングが遅延する最大の原因の1つ。
調達プロセス(Procurement Process)
購買部門が定める発注手続き・承認フローのこと。企業によって必要書類やリードタイムが大きく異なる。
パワーレター(Power Letter)
契約締結の最終後押しとして、自社の経営層から顧客の経営層に送る公式レター。エグゼクティブ同士の関係構築にも使う。

ミューチュアル・クローズプランの全体像
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クローズプラン:契約日から逆算する最終フェーズの共同計画
契約日6月30日← 契約日から逆算 ←6/1-7□ 最終提案書提出□ 価格条件の最終合意担当: 営業6/8-14□ 稟議書提出□ 経営会議承認担当: 顧客6/15-21□ 契約書ドラフト送付□ 法務レビュー担当: 双方法務6/22-30□ 法務修正の反映□ 最終確認・署名担当: 双方クロージングを遅延させる典型的なブロッカー法務レビュー平均2〜4週間かかる購買部の承認社内規定のリードタイム予算の確保年度予算 or 補正予算セキュリティ審査IT部門の技術チェックブロッカーを事前に特定し、クローズプランに組み込むことで遅延を防ぐ「あとは契約を待つだけ」が最も危険な油断
ミューチュアル・クローズプランの進め方フロー
1
クローズデートの合意
顧客と「○月○日に契約する」という目標日を合意する
2
ブロッカーの洗い出し
法務・購買・予算・技術審査など潜在的な障害を先に特定する
3
週次タスクの設定
逆算で各週のタスク・担当・期日を双方で合意する
契約締結
すべてのタスクが完了し、予定日に署名を完了する

こんな悩みに効く
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  • 「提案は通ったのに契約が2ヶ月も遅れている」
  • 法務レビューや購買手続きで毎回想定外の遅延が発生する
  • クロージング段階でやるべきことが多すぎて漏れが出る

基本の使い方
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クローズデートを具体的に合意する

「いつ契約しますか?」を曖昧にせず、日付で合意する。

  • 顧客のビジネスイベントに紐付ける(「新年度開始に間に合わせるなら3月15日までに契約が必要」)
  • 法務レビューや購買手続きのリードタイムを確認してから日付を決める
  • 「○月末」ではなく「○月○日」と特定する

ポイント: 「なるべく早く」は日程ではない。営業側の都合で期限を切るのではなく、顧客のビジネス上の理由で期限を設定する。

ブロッカーを事前に洗い出す

クロージングを遅延させる可能性がある障害を先に特定する。

  • 法務レビュー: 何日かかるか?特に確認されるポイントは?
  • 購買プロセス: 必要書類は?承認フローは何段階?
  • セキュリティ審査: IT部門のチェックリストはあるか?
  • 予算: 確保済みか?補正が必要か?

ポイント: 「御社の調達プロセスを教えてください」とストレートに聞く。コーチやチャンピオンに確認するのも有効。

週次でタスクの進捗を確認する

クローズプランを共有し、週次で双方のタスク完了状況を確認する。

  • 未完了タスクがあれば原因を確認し、対策を打つ
  • 新たなブロッカーが出たら即座にプランに追加
  • 遅延が発生したらクローズデートの再設定を相談

ポイント: 「どうですか?」と状況確認だけのメールを送るのではなく、「今週のタスクは○○と△△です。進捗はいかがですか?」と具体的に聞く。

具体例
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例1:SaaS企業がクロージング期間を4週間→2週間に短縮

状況: 従業員60名のマーケティングSaaS。提案承認後から契約締結まで平均4週間かかっていた。営業マネージャーが「もっと早く閉じろ」と言うが、原因が不明。

分析: 遅延の原因を30案件で分析。

  • 法務レビュー待ち: 平均12日(最大21日)
  • 購買部の書類不備による差し戻し: 5件
  • 「契約書をメールで送ったのに見ていなかった」: 8件

クローズプランの導入:

  • 提案承認後、即座にクローズプランを顧客と共有
  • 法務レビューの開始を「提案承認後即日」に前倒し(従来は予算承認後に開始していた)
  • 購買部の必要書類リストを事前に入手し、不備を防止
  • 契約書のレビュー依頼はメールだけでなく電話でも確認
指標クローズプラン前導入後(6ヶ月平均)
提案承認→契約の平均期間28日14日
法務レビュー待ち12日5日
書類差し戻し件数/月5件1件

クロージング期間が半減し、月末の追い込みによる値引き交渉も減少。四半期の売上予測精度が**62%→84%**に改善した。

例2:ITコンサルが大手製造業の調達プロセスを攻略

状況: 従業員100名のITコンサルティング会社。大手製造業(従業員5,000名)から「提案を承認する」と連絡。しかし過去の経験で、大手企業の調達プロセスに3ヶ月かかることがあった。

クローズプランの共同作成: 購買部門の担当者を含めた3者(営業+顧客チャンピオン+購買)でクローズプランを作成。

タスク担当期限
W1購買部への正式見積もり提出営業5/5
W1取引先登録申請購買部5/7
W2信用調査(帝国データバンク)購買部5/14
W2セキュリティチェックシート提出営業5/12
W3契約書ドラフト作成営業法務5/19
W4法務レビュー(顧客側)顧客法務5/28
W5修正反映・最終確認双方法務6/4
W6署名・押印双方6/10

早期発見した問題: W2の信用調査で「資本金が基準を下回る」と指摘される可能性を購買担当者が事前に教えてくれた。すぐに自社の財務諸表と取引実績リストを追加提出し、翌日に審査通過。

計画通り6月10日に契約締結。過去の類似案件(3ヶ月)と比べて半分以下の期間で完了。購買部門を初期から巻き込んだことで、「知らなかった手続き」による遅延をゼロにできた。契約額3,200万円

例3:中小のWeb制作会社が「社長の承認待ち」を解消

状況: 従業員10名のWeb制作会社。中小企業(従業員50名)のコーポレートサイトリニューアルを受注寸前。担当の総務部長は「社長のOKが出れば即契約」と言うが、3週間経っても進展なし。

分析: 社長は多忙で、総務部長が提案書を見せるタイミングがなかった。社長の承認が「ブロッカー」になっていることに担当者が気づいていなかった。

クローズプラン作成:

タスク担当期日
社長向けの1ページサマリー作成営業翌日
社長との15分面談の設定総務部長今週中
面談でサマリーを説明営業+総務部長来週月曜
社長承認社長来週月曜(面談当日)
契約書送付営業承認翌日
署名・入金総務部長翌週金曜

結果: 社長向けに「投資効果が30秒でわかる」1ページサマリーを作成し、15分の面談で説明。社長はその場で「いいね、進めて」と承認。

「社長の承認待ち」が3週間ストップしていた案件が、クローズプランを作ってから10日で契約締結。ブロッカーを「社長のスケジュール」と特定し、営業側から解決策(短い面談+1ページサマリー)を提供したことが突破口になった。契約額250万円

やりがちな失敗パターン
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  1. 提案承認後に安心して放置する — 「あとは契約を待つだけ」が最も危険。法務・購買・予算の各プロセスにブロッカーが潜んでいる
  2. クローズプランを営業だけで作る — 顧客の社内プロセス(稟議・法務・調達)は外からは見えない。必ず顧客と共同で作成する
  3. 法務レビューのリードタイムを甘く見る — 「1週間で終わるだろう」と見込むと遅れる。企業規模が大きいほど法務レビューは長い。事前に必ず確認する
  4. 週次の進捗確認をサボる — プランを作っても追跡しなければ意味がない。毎週5分でいいから進捗を確認する

まとめ
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ミューチュアル・クローズプランは、契約日から逆算して売り手と買い手のクロージングタスクを共同管理する手法。法務レビュー・購買プロセス・社長承認などのブロッカーを事前に特定し、週次で進捗を確認する。「提案が通った後」こそ計画的に動くことで、クロージング期間を大幅に短縮できる。