ジョイントクローズプラン

英語名 Joint Close Plan
読み方 ジョイント クローズ プラン
難易度
所要時間 初回作成1〜2時間、更新は週10分
提唱者 エンタープライズ営業のミューチュアルアクションプラン(MAP)として発展
テンプレート あり ↓
目次

ひとことで言うと
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売り手と買い手が契約・導入までのアクション項目とスケジュールを共同で1枚のシートにまとめる手法。「次に何をすればいいか」を両者で共有し、商談の停滞と認識のズレを防ぐ。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
ジョイントクローズプラン(Joint Close Plan)
売り手と買い手が共同作成する、契約・導入までの行動計画書のこと。ミューチュアルアクションプランとも呼ぶ。
マイルストーン(Milestone)
契約に至るまでの重要な中間地点を指す。技術検証完了、稟議提出、法務確認など。
ゴーライブ日(Go-Live Date)
製品・サービスが顧客の本番環境で稼働開始する日である。
逆算スケジュール
ゴーライブ日を起点に必要な作業を逆算して配置する計画手法。
オーナー(Owner)
各アクション項目の実行責任者。売り手側と買い手側の両方に設定する。

ジョイントクローズプランの全体像
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共同計画の構造とゴーライブまでの逆算
ゴーライブ日ここから逆算 ←技術検証・PoC□ 環境構築(売り手)□ テストデータ準備(買い手)□ 評価レポート作成期限: Week 2社内承認・稟議□ ROI試算提供(売り手)□ 稟議書提出(買い手)□ 法務確認(買い手)期限: Week 4契約・導入準備□ 契約書締結□ キックオフ実施□ データ移行・研修期限: Week 6共有スプレッドシート(売り手×買い手)アクション項目オーナー期限ステータス環境構築売り手SE3/25完了稟議書提出買い手課長4/8進行中
ジョイントクローズプランの進め方フロー
1
ゴーライブ日合意
いつまでに稼働開始するかを顧客と決定
2
逆算でアクション設計
ゴーライブから逆算しマイルストーンを配置
3
週次進捗管理
共有シートでオーナーと期限を毎週確認
契約・ゴーライブ
計画通りに導入完了し本稼働開始

こんな悩みに効く
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  • 「検討します」と言われた後、連絡が途絶えて商談が自然消滅する
  • 顧客の社内手続き(稟議・法務・情シス確認)がブラックボックスで進捗が見えない
  • 契約後の導入が遅延し、顧客のプロジェクトが炎上する

基本の使い方
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ステップ1:ゴーライブ日を顧客と合意する

「いつまでに本稼働を開始したいですか?」を最初に聞く。ゴーライブ日が決まれば、そこから逆算して全スケジュールが決まる。

ゴーライブ日を顧客が決められない場合は、Critical Event(法規制施行、既存契約の満了、年度末)を起点にする。

ステップ2:マイルストーンとアクションを逆算で配置する

ゴーライブ日から逆算し、主要なマイルストーンを設定する。

マイルストーン典型的な所要期間
データ移行・研修ゴーライブの2〜4週間前
契約締結データ移行の1〜2週間前
法務確認契約の1〜2週間前
稟議承認法務確認と並行
PoC・技術検証稟議提出の2〜3週間前

各マイルストーンの下に具体的なアクション項目を書き出し、オーナー(売り手/買い手どちら)期限 を明記する。

ステップ3:共有スプレッドシートで週次管理する

Googleスプレッドシートなど、両者がリアルタイムで編集できるツールに計画を記載する。

週次で15分のチェックインを行い、遅延しているアクションを早期に発見する。遅延が出た場合はその場でリカバリープランを決める。

具体例
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例1:SaaS企業が中堅小売業との3か月クローズプランを実行する

従業員40名のPOSレジSaaS企業。従業員200名の小売チェーン(12店舗)に提案中。ゴーライブ日は4月1日(新年度の店舗改装に合わせて)。

ジョイントクローズプラン(1月15日作成):

Weekマイルストーンアクションオーナー期限
W1-2PoCテスト店舗でPOSレジ1台設置売り手SE1/31
W3PoC評価2週間の売上データ精度を検証買い手店長2/7
W4ROI提示全店展開時のコスト削減試算を提出売り手営業2/14
W5-6稟議稟議書提出・取締役会上程買い手情シス部長2/28
W7法務契約書レビュー買い手法務3/7
W8契約契約締結両者3/14
W9-10導入全12店舗への設置・研修売り手SE3/28
W11ゴーライブ本稼働開始両者4/1

Week5で稟議が1週間遅れるリスクが発生。チェックインで「経理部のレビューが追加で必要」と判明し、売り手がROI補足資料を即日提供して遅延を3日に圧縮した。

結果、予定通り4月1日にゴーライブ。プランがなければ「稟議遅延→導入遅延→新年度に間に合わない」というシナリオだった。年間契約 480万円

例2:ERPベンダーが製造業の半年プロジェクトを管理する

従業員150名のERPベンダー。従業員800名の自動車部品メーカーに生産管理ERPを提案。ゴーライブは10月の新工場稼働に合わせて。

商談が長期化しがちなエンタープライズ案件で、ジョイントクローズプランを4月時点で作成。

全42のアクション項目のうち、買い手側のアクションが24項目(57%)。従来のプロジェクト計画では売り手側のタスクばかり記載されていたが、共同計画にしたことで「買い手がやるべきこと」が可視化された。

特に効果があったのは「マスターデータ整備(買い手の生産管理部が担当、8週間必要)」の早期着手。従来なら契約後に初めて取り掛かるタスクを、稟議と並行で進めた。

指標従来JCP適用
契約〜ゴーライブ8か月5か月
遅延マイルストーン数平均4.2個1個
追加費用の発生平均380万円0円

年間契約 3,200万円。導入遅延ゼロで顧客満足度も高く、追加モジュールの受注につながった。

例3:研修会社が大手サービス業の意思決定プロセスを可視化する

講師4名の研修会社。従業員5,000名のホテルチェーンに全社マネージャー研修を提案。

過去に同規模案件で「社内調整に時間がかかり半年経っても契約に至らない」経験があったため、初回提案後すぐにジョイントクローズプランを提示。

ポイントは、買い手の社内手続きを具体的にリストアップしたこと。

  • 人材開発部での企画承認
  • 各エリアマネージャーへの事前説明(全国5エリア)
  • 経営企画部での予算確認
  • 取締役会での承認(月1回しか開催されない)

「取締役会が月1回」という制約から逆算すると、3月の取締役会に間に合わせるには1月中に企画承認が必要と判明。

人材開発部長は「3月の取締役会に出すつもりだった」が、プランを見て「1月中に企画承認をしないと間に合わない」と気づき、スケジュールを前倒しした。

結果、2月の取締役会で承認。年間研修契約 1,200万円。プランなしでは「4月の取締役会」にずれ込み、さらに年度替わりの予算凍結に巻き込まれるリスクがあった。

やりがちな失敗パターン
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  1. 売り手側のタスクしか書かない — 売り手が主導するプロジェクト計画ではなく、買い手の社内手続き(稟議・法務・データ準備)も含めた「共同計画」にすることが核心。買い手のタスクが入っていないプランはジョイントクローズプランではない。

  2. ゴーライブ日を決めずに始める — 終点が決まっていないスケジュールは逆算できない。「いつ使い始めたいか」を最初に合意しないと、各タスクの期限に根拠がなくなる。

  3. 作って終わり、更新しない — 週次チェックインなしのプランは、1〜2週間で形骸化する。15分でいいので毎週の進捗確認を必ず実施する。

  4. 遅延を放置する — 1つのタスクの遅延が後続のマイルストーンすべてに波及する。遅延を検知したら即日でリカバリープランを立て、ゴーライブ日への影響を最小化する。

まとめ
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ジョイントクローズプランは、売り手と買い手が共同で「契約・導入までの行動計画」を作成・管理する手法である。ゴーライブ日からの逆算設計、買い手側タスクの可視化、週次チェックインの3要素が商談停滞を防ぎ、予定通りの契約・導入を実現する。特にエンタープライズ案件で、買い手の社内手続きがブラックボックス化しやすい場面で効果を発揮する。

ジョイントクローズプランのフレームワークテンプレート

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