ひとことで言うと#
対立場面での行動を**「自分の利益への関心(自己関心)」と「相手の利益への関心(他者関心)」の2軸**で整理し、5つのスタイル——競争・協調・妥協・回避・譲歩——に分類するモデル。ディーン・プルイットとジェフリー・ルービンが体系化し、トーマス=キルマンのコンフリクトモードとも共通する枠組みとして広く使われている。
押さえておきたい用語#
- 自己関心(Self Concern)
- 対立場面で自分の利益・目標を追求する度合い。高いほど自分の主張を通そうとする。
- 他者関心(Other Concern)
- 対立場面で相手の利益・目標を尊重する度合い。高いほど相手の要望を満たそうとする。
- 統合的交渉
- 自己関心と他者関心の両方が高い状態で生まれる双方の利益を最大化する解決策を探る交渉スタイル。「パイを大きくする」発想。
- BATNA
- Best Alternative To a Negotiated Agreement の略。交渉が決裂した場合の最善の代替案であり、自己関心の強さを左右する要因になる。
二重関心モデルの全体像#
実践ステップ#
ここが難しい——「協調が常に正解」という誤解#
二重関心モデルを学ぶと「常に協調を目指すべきだ」と考えがちだが、これは誤りだ。協調は時間とエネルギーを多く消費する。些細な問題にまで協調で臨むと、意思決定が遅くなりチーム全体が疲弊する。
判断基準は**「この対立の結果が長期的な関係と成果にどれだけ影響するか」**。影響が大きければ協調に時間を投資する価値がある。影響が小さければ妥協や譲歩で素早く処理し、重要な対立にリソースを集中させる。
実践例#
営業部と開発部の間で「カスタマイズ対応の範囲」をめぐる衝突が慢性化していたIT企業。営業は「顧客要望にすべて応えたい」(自己関心:高)、開発は「標準機能で対応したい」(自己関心:高)と、両者が競争スタイルで対峙していた。
マネージャーが二重関心モデルを共有し、「両方の関心を満たすにはどうするか」という協調の問いに切り替えた。結果、「カスタマイズは上位プランの有料オプション」という解が生まれ、営業は売上拡大の武器を得て、開発は工数を正当に確保できるようになった。
共働き夫婦で家事分担をめぐる対立が続いていた。妻は「公平に半分ずつ」(競争寄り)、夫は「話し合いたくない」(回避寄り)で、議論自体が成立しなかった。
カウンセラーの助言で二重関心モデルを使い、まず互いのスタイルを可視化。夫の回避は「批判されるのが怖い」という他者関心の低さではなく自己防衛だと判明した。「批判なしで事実だけ話す」ルールを設けて対話の場を作り、妻は優先度の低い家事では譲歩、夫は育児関連は自分から担当すると申し出た。完全な折半ではないが、両者の満足度は10点中3→7に上がった。
まとめ#
二重関心モデルは「対立=悪いこと」という前提を崩してくれる。対立そのものではなく、対立へのアプローチが問題を生む。自分のデフォルトスタイルを知り、状況に応じて5つのスタイルを使い分けられるようになれば、どんな対立場面でも適切な落としどころを見つけやすくなる。