if-thenプランニング

英語名 Implementation Intention
読み方 インプリメンテーション インテンション
難易度
所要時間 5〜10分(プラン作成)
提唱者 ペーター・ゴルヴィツァー(ニューヨーク大学・1999年)
目次

ひとことで言うと
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「もしXが起きたら、Yする」という形式で行動計画を事前に決めておくことで、意志力に頼らず行動を自動的に起動させる手法。94件のメタ分析で目標達成率を平均d=0.65(中〜大の効果量)向上させることが確認されている。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
実行意図(Implementation Intention)
目標を達成するために**「いつ・どこで・どうやって行動するか」を事前に具体的に決める**計画のこと。「もしXなら、Yする」の形式を取る。
目標意図(Goal Intention)
「〜したい」「〜を達成する」という望む結果を表す意図のこと。目標意図だけでは行動に移りにくく、実行意図と組み合わせることで達成率が大幅に上がる。
キュー(Cue)
行動を引き起こすきっかけとなる状況や刺激を指す。if-thenプランの「if」の部分に当たり、時間・場所・直前の行動・感情状態などが使える。
習慣ループ
きっかけ(キュー)→ 行動(ルーティン)→ 報酬の3要素で構成される行動の自動化パターンである。if-thenプランニングはこのループを意図的に設計する手法。

if-thenプランニングの全体像
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if-thenプランニング:キューと行動の事前結合
意志力 → 自動化への転換目標意図「運動を習慣にしたい」具体化IF(もし〜なら)月曜・水曜・金曜の朝7時にアラームが鳴ったら= キュー(きっかけ)THEN(〜する)ランニングシューズを履いて家の周りを20分走る= 具体的行動効果状況に遭遇 → 考える前に身体が動く意志力を消費せず行動が自動化される
if-thenプランニングの進め方フロー
1
目標を決める
達成したいことを1つ明確にする
2
IFを設計
確実に発生するキューを選ぶ
3
THENを具体化
迷わない精度で行動を記述
自動化
繰り返しで意志力不要に

こんな悩みに効く
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  • 「やろう」と思っているのに、いつも先延ばししてしまう
  • 新しい習慣を始めても3日で挫折する
  • やるべきことはわかっているのに、行動に移せない

基本の使い方
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ステップ1: 目標を1つに絞る

if-thenプランニングの対象となる目標を1つ決める。

  • 「健康になりたい」→ 抽象的すぎる
  • 「週3回、20分間走る」→ 具体的で良い

目標は「行動」で表現するのがポイント。「痩せたい」は結果であって行動ではない。

ステップ2: IF(キュー)を設計する

行動のきっかけとなる状況を具体的に決める。良いキューの条件:

  • 確実に発生する: 毎日必ず起きる状況を選ぶ
  • 具体的: 「時間ができたら」ではなく「朝7時のアラームが鳴ったら」
  • 既存の習慣に紐づける: 「コーヒーを入れたら」「歯を磨いたら」

キューの種類:

タイプ
時間「朝7時になったら」
場所「オフィスに着いたら」
直前の行動「昼食を食べ終わったら」
感情状態「イライラしたら」
ステップ3: THEN(行動)を迷わないレベルで具体化する

キューが発生したときに取る行動を、判断の余地がないレベルで記述する。

  • 悪い例: 「運動する」→ 何をするか迷う時点で脱落する
  • 良い例: 「ランニングシューズを履いて、家の周りを20分走る」

最初の1アクションを決めるだけで十分。「シューズを履く」まで到達すれば、走り出す確率は格段に上がる。

ステップ4: 書き出して、3回声に出す

if-thenプランを紙に書き、声に出して読む。

  • 書くだけで効果がある: ゴルヴィツァーの実験では、書き出しただけのグループが書かなかったグループの2〜3倍の達成率を記録
  • 声に出す: 「もし朝7時にアラームが鳴ったら、ランニングシューズを履いて20分走る」と3回唱える
  • 目につく場所に貼る: 冷蔵庫、デスク、スマホのロック画面

脳内で状況と行動が事前に結合されることで、実際の場面で考える前に身体が動くようになる。

具体例
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例1:営業担当が先延ばし癖を克服して日報を定着させる

状況: 不動産仲介会社の営業担当(25歳)。日報を毎日書くよう上司に言われているが、帰宅するとやる気が消えて先延ばし。月末にまとめて書くため内容は薄く、上司からの評価も低い。

if-thenプランの設計:

  • IF: 「最後の顧客アポが終わり、カフェに入ったら」
  • THEN: 「スマホのメモアプリを開き、今日の商談3つのポイントを各2行で書く」

なぜこのプランが効くか:

  • キューが具体的: 「最後のアポ後」は毎日確実に発生する
  • 行動がミニマル: 「3つ×2行」なら5分で終わる
  • 場所が固定: カフェという環境がルーティンを強化する

結果: 初週は5日中3日成功。2週目から5日中5日。4週目には「カフェに入る=メモアプリを開く」が自動化された。日報の内容が具体的になり、上司から「最近の報告が的確になった」と評価。3ヶ月後、日報をベースにした提案が成約し、**月間売上が前年比140%**に。

例2:エンジニアチームがコードレビューの習慣を自動化する

状況: 従業員30名のスタートアップの開発チーム6名。コードレビューが後回しになり、レビュー待ちのPRが常時15件以上溜まっている。リリースの遅延が月平均3.2日発生。

チーム全員で共有したif-thenプラン:

メンバーIFTHEN
全員共通朝のスタンドアップが終わったらSlackのレビュー依頼チャンネルを開き、最も古いPRを1件レビューする
全員共通自分のPRがマージされたら次に古いPRを1件レビューする
リーダー金曜15時になったらレビュー待ちPRが5件以上ないか確認し、あれば担当を割り振る

導入プロセス:

  • 全員でif-thenプランを付箋に書き、モニターに貼った
  • 1週目: 平均レビュー完了数が1日2件→5件に増加
  • 2週目: レビュー待ちPRが15件→6件に減少
  • 1ヶ月後: リリース遅延が月平均3.2日→0.5日に改善

チームリーダーは「レビューしてくれ」と言う回数が週8回→0回に。仕組みが人の代わりにリマインドする状態が完成した。

例3:地方の和菓子店主が健康診断の数値を改善する

状況: 創業60年の和菓子店を営む54歳の店主。健康診断でHbA1cが6.8%(糖尿病予備群)と診断された。医師から「食事と運動を見直してください」と言われたが、具体的に何をすればいいかわからず2ヶ月が経過。

3つのif-thenプランを設定:

  1. IF: 「朝、工房に入る前にエプロンをつけたら」→ THEN: 「工房の裏口から出て、商店街を10分歩いて戻る」
  2. IF: 「試食で和菓子をつまみたくなったら」→ THEN: 「代わりにナッツを5粒食べる」
  3. IF: 「夕食のご飯をよそうとき」→ THEN: 「茶碗を小サイズに持ち替えてから盛る」

いずれも「考える余地」を排除した設計にした。6ヶ月後の健康診断でHbA1cは6.8%→6.1%に改善。体重は4.2kg減。本人いわく「意志が強くなったわけじゃない。考える前に手が動くようになっただけ」。

やりがちな失敗パターン
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  1. キューが曖昧すぎる — 「時間ができたら」「余裕があれば」は永遠に発生しない。具体的な時間・場所・直前の行動をキューにする。「昼食後にデスクに戻ったら」のレベルまで落とし込む
  2. THENの行動が大きすぎる — 「毎日1時間運動する」は挫折する。最初の1アクションだけを決める。「シューズを履く」だけでよい。始めてしまえば続けられる
  3. 一度に複数のif-thenプランを作りすぎる — 同時に5つも6つも作ると管理できず、どれも定着しない。まず1つを2週間続けてから次を追加する

まとめ
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if-thenプランニングは、「もしXなら、Yする」と事前に決めるだけで行動の自動化を実現する、極めてシンプルかつ強力な手法。意志力に頼らず、状況が行動を起動する仕組みを作れる。キューは具体的に、行動はミニマルに設計するのがコツ。まず1つ、今日から作ってみよう