コーピング戦略モデル

英語名 Coping Strategy Model
読み方 コーピング ストラテジー モデル
難易度
所要時間 20分〜40分
提唱者 リチャード・ラザルス / スーザン・フォルクマン
目次

ひとことで言うと
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ストレスへの対処(コーピング)には大きく 問題焦点型(原因そのものを解決する)と 情動焦点型(感情の調整で楽にする)の2種類がある。状況に応じて使い分けることで、ストレスを効果的にコントロールできる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
コーピング(Coping)
ストレスフルな状況に対して意識的に行う対処行動のこと。無意識の防衛機制とは区別される。
問題焦点型コーピング(Problem-Focused Coping)
ストレスの原因そのものに働きかけ、状況を変えようとする対処法。計画立案・情報収集・直接行動など。
情動焦点型コーピング(Emotion-Focused Coping)
ストレスによって生じた否定的な感情を調整する対処法。気分転換・リフレーミング・感情表出などを指す。
回避型コーピング(Avoidance Coping)
ストレス源から物理的・心理的に距離を取る対処法。短期的には有効だが、長期化すると問題が悪化する傾向がある。
ストレッサー(Stressor)
ストレス反応を引き起こす外的・内的な刺激や出来事を指す。

コーピング戦略の全体像
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2つのコーピング戦略と使い分け
ストレッサー発生認知的評価 → 対処戦略の選択変えられる変えられない問題焦点型コーピング原因を直接解決する・計画を立てて実行する・情報を集めて判断する・周囲に助けを求める・環境を変える(異動・交渉)有効: 自分でコントロール可能な問題情動焦点型コーピング感情を調整して楽にする・気分転換をする・捉え方を変える(リフレーミング)・誰かに話を聞いてもらう・瞑想・運動で感情を落ち着ける有効: コントロール不可能な問題ストレスの軽減・適応両方を柔軟に使い分けることが健全な対処
コーピング戦略の選択フロー
1
ストレスに気づく
身体・感情のサインを観察する
2
コントロール可能性を判断
この問題は自分で変えられるか?
3
戦略を選んで実行
変えられる→問題焦点型、変えられない→情動焦点型
振り返りと調整
効果を確認し、戦略を切り替える

こんな悩みに効く
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  • ストレスを感じたとき、いつも同じ対処法(飲酒・買い物など)に頼ってしまう
  • 問題に対して「どうにもならない」と感じて動けなくなる
  • チームのメンタルヘルス施策が「休憩を取ろう」だけで効果が薄い

基本の使い方
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ストレスの正体を特定する

漠然とした不安を具体的なストレッサーに分解する。

  • 書き出す: 今ストレスに感じていることを箇条書きで5つ以上挙げる
  • 分類する: 仕事・人間関係・健康・経済・将来の不安など、カテゴリに分ける
  • 優先順位をつける: 最もストレスが大きいものから1つ選ぶ
コントロール可能性で分類する

選んだストレッサーに対して「自分で変えられるか?」を判断する。

  • 変えられる: 仕事の進め方、スキル不足、コミュニケーション不足
  • 変えられない: 上司の性格、景気、過去の失敗、他人の評価
  • 部分的に変えられる: 多くの問題はここ。変えられる部分と変えられない部分に切り分ける
2つの戦略を組み合わせる

ほとんどのストレスには両方の戦略を併用するのが効果的。

  • 問題焦点型: まず小さく動く。情報を1つ集める、相談を1人にする、計画を1ステップ書く
  • 情動焦点型: 感情のケアも並行する。運動・会話・リフレーミングで気持ちを整える
  • 回避型に注意: 問題を先延ばしにしていないか定期的にチェックする

具体例
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例1:フリーランスデザイナーが案件過多のストレスを解消する

フリーランス歴5年のWebデザイナー。月の稼働時間が 280時間 を超え、睡眠時間が平均 4.5時間 まで減少していた。「断ったら次の仕事が来なくなるかもしれない」という不安から、依頼をすべて受けていた。

ストレッサーを書き出して分類した。

ストレッサーコントロール可能性戦略
案件数が多すぎる変えられる問題焦点型: 受注基準を設定する
クライアントの修正指示が曖昧部分的に変えられる問題焦点型: ヒアリングシートを導入
「断ったら仕事がなくなる」不安変えられない(予測不能)情動焦点型: 認知の歪みを修正
睡眠不足による体調悪化変えられる問題焦点型: 最低6時間睡眠のルール

問題焦点型として、月の受注上限を 4件 に設定し、5件目以降は翌月に回すルールを導入。情動焦点型として、「断っても仕事はなくならない」という過去3年の実績(断った月の翌月も新規問い合わせ平均 3.2件)を数字で確認し、不安を客観視した。

3ヶ月後、稼働時間は 280時間 → 180時間 に削減。単価交渉の余裕も生まれ、平均単価が +23% 上昇した。

例2:IT企業のプロジェクトマネージャーがチームのバーンアウトを防ぐ

従業員200名のSIer。大型案件のPMを担当するチーム12名のうち、3名が体調不良で休職寸前だった。チームの残業時間は月平均 65時間、ストレスチェックの高ストレス者率は 42%

PMがチーム全員と30分の面談を実施し、ストレッサーとコーピング傾向を可視化した。

問題焦点型が有効な領域:

  • 仕様変更の頻度が高い → クライアントとの変更管理プロセスを制度化。変更依頼は週1回の定例で一括判断するルールに変更
  • テスト工程の手戻りが多い → レビューチェックリストを標準化し、手戻り率を 38% → 12% に削減

情動焦点型が必要な領域:

  • 「この案件が失敗したらキャリアが終わる」という認知の歪み → 1on1で「過去に失敗した案件のPMはその後どうなったか」を具体的に確認。全員が別案件で活躍していた事実を共有
  • チーム内の孤立感 → 毎日15分の朝会で「昨日困ったこと」を1人30秒でシェアする場を設定

4ヶ月後、残業時間は 65時間 → 38時間、高ストレス者率は 42% → 15% に改善。休職寸前だった3名も全員復帰できた。

例3:農業法人が後継者不足の不安に向き合う

従業員15名の果樹農家(りんご・ぶどう)。代表は62歳、後継者が決まらず「あと5年で畑をたたむかもしれない」という不安を抱えていた。従業員のモチベーションも低下し、収穫量は3年前比で 18% 減少。

コーピング戦略モデルでストレッサーを整理した。

変えられること(問題焦点型):

  • 農業の魅力を発信していない → Instagramで作業風景を毎日投稿。フォロワーが半年で 150 → 2,800人
  • 収入の不安定さが後継者を遠ざけている → 直販比率を 15% → 45% に引き上げ、収益を安定化
  • 新規就農者との接点がない → 地域の農業インターンプログラムに参加し、年間 6名 を受け入れ

変えられないこと(情動焦点型):

  • 「後継者が見つからなかったらどうしよう」→ 同じ悩みを持つ農家5名と月1回のオンライン情報交換会を開始。「一人で抱えない」仕組みをつくった
  • 体力の衰えへの不安 → リフレーミングで「経験値で補える部分」に注目を切り替え

2年後、インターン経験者の1人が正式に就農を決意。直販の安定収入と情報発信の効果が、後継者候補に「ここならやっていける」という安心感を与えた。

やりがちな失敗パターン
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  1. 変えられない問題に問題焦点型で立ち向かい続ける — 上司の性格を変えようとする、景気を嘆くなど。コントロール不可能なものには情動焦点型に切り替える勇気が必要
  2. 情動焦点型を「逃げ」と捉えて使わない — 気分転換やリフレーミングは立派なコーピング戦略。感情を無視して問題解決だけに走ると、いずれ燃え尽きる
  3. 回避型コーピングに依存する — お酒、ネットサーフィン、先延ばしは短期的に楽になるが、問題は悪化する。回避が増えていないか定期的に自己チェックする
  4. コーピングのレパートリーが少なすぎる — 1〜2種類の対処法しか持たない人は、環境が変わると対応できなくなる。意識的にレパートリーを増やしておく

まとめ
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コーピング戦略モデルは、ストレスへの対処を「問題焦点型」と「情動焦点型」に整理し、状況に応じた使い分けを促すフレームワーク。どちらか一方が正解ではなく、両方を柔軟に組み合わせることが健全な対処につながる。まずは今のストレスを書き出して「変えられるか?」の仕分けから始めてみるといい。