ひとことで言うと#
タスクやユーザーストーリーの規模をS・M・L・XLのサイズで直感的に分類する見積もり手法。精密な数値ではなく「相対的な大きさ」を素早く合意するのに向いている。
押さえておきたい用語#
- Tシャツサイズ(T-Shirt Size)
- S / M / L / XL(場合によってXS、XXLも追加)で作業規模を表す分類を指す。
- 相対見積もり(Relative Estimation)
- 絶対的な時間ではなく、タスク同士の大きさの比較で見積もる手法を指す。
- 基準ストーリー(Reference Story)
- チーム内で「これはMサイズ」と全員が合意した基準タスクのこと。他のタスクをこの基準と比較してサイズを決める。
- ストーリーポイント
- タスクの複雑さ・作業量・不確実性を組み合わせた抽象的な数値。Tシャツサイズから変換することもある。
- バックログリファインメント
- プロダクトバックログの項目を整理・優先順位付け・見積もりする定期的な活動である。
Tシャツサイジング見積もりの全体像#
こんな悩みに効く#
- 見積もりミーティングが毎回長引く
- 初期段階でざっくりした規模感を把握したい
- チームメンバーの見積もり経験にばらつきがある
- ストーリーポイントの概念が浸透していないチーム
基本の使い方#
具体例#
従業員15名のSaaS企業で、プロダクトマネージャーがQ3のロードマップを策定するためにバックログ50件の概算見積もりが必要だった。ストーリーポイントで1件ずつ見積もると3時間以上かかる見込み。
Tシャツサイジングを採用し、4人のエンジニアで見積もりセッションを実施。
- 基準ストーリー: 「ユーザープロフィール画面の項目追加」= M
- 進め方: スプレッドシートに全50件を並べ、1件30秒で一斉にサイズを提示
| サイズ | 件数 | ポイント換算 |
|---|---|---|
| S | 12件 | 12pt |
| M | 22件 | 66pt |
| L | 11件 | 55pt |
| XL | 5件 | →分割して再見積もり |
XL5件を分割した結果、合計 約180pt のバックログが判明。チームのベロシティ(1スプリント30pt)と照合し、「Q3で消化できるのは約90pt」と現実的な計画を30分で立てられた。
従業員500名のメーカーの情報システム部で、老朽化した社内システム8件の更改優先順位を決める必要があった。各システムの更改コストを正確に見積もる時間はないが、経営会議で「大きいものから順に」という指示が出ていた。
Tシャツサイジングを使い、IT部門6名で各システムの更改規模を分類。
| システム | サイズ | 理由 |
|---|---|---|
| 勤怠管理 | M | SaaS移行で済む |
| 経費精算 | S | 既存SaaSに統合 |
| 在庫管理 | XL | 基幹連携が複雑 |
| 受発注 | L | カスタマイズ多数 |
| 人事評価 | M | パッケージ導入 |
| 生産管理 | XL | 工場ごとに仕様が違う |
| 顧客管理 | L | データ移行が大変 |
| 文書管理 | S | クラウド移行のみ |
XLの2件は「今期は着手せず来期の重点案件」と整理し、S・Mの4件から着手する計画を30分で策定。経営陣に「規模感の根拠」を示せたことで即承認された。
化粧品ECサイトのマーケティングチーム(5名)が、来月の販促キャンペーン候補8案の工数を比較したかった。マーケターは工数見積もりに慣れておらず、「何日かかるか」と聞いても答えが返ってこない状態だった。
Tシャツサイジングを導入し、「バナー制作1枚がSサイズ」を基準に設定。
全8案を一斉サイジングした結果:
- S: バナーA/Bテスト、メルマガ配信 → すぐ実行可能
- M: LP制作、インフルエンサー連携
- L: 動画制作、SNSキャンペーン設計
- XL: オフラインイベント企画
予算とリソースの制約から「S2件 + M1件 + L1件」の組み合わせに決定。工数の詳細見積もりなしに 15分 で意思決定ができ、「見積もりが怖くなくなった」とチームから好評だったという。
やりがちな失敗パターン#
- 基準ストーリーを決めずに始める — 基準がないと「私のMはあなたのL」という状態になる。最初の5分で基準を1つ合意するだけで、後の見積もり精度が大幅に上がる。
- Tシャツサイズで精密な計画を立てようとする — あくまで概算ツール。詳細な工程表が必要なフェーズでは三点見積もりなど精密な手法に切り替える。
- XLをそのままスプリントに入れる — XLは「まだ分解が足りない」というシグナル。L以下に分割してから計画に組み込む。
- サイズの議論で深入りしすぎる — 1件あたり2分以上議論しているなら、いったん「L寄りのM」で仮置きして先に進む。完璧な合意より速度が重要。
まとめ#
Tシャツサイジング見積もりは、S/M/L/XLという直感的な尺度でタスクの規模を素早く分類する手法。精密な数値は出ないが、ロードマップの策定やバックログの優先順位づけに十分な粒度を短時間で提供する。基準ストーリーの合意が精度の鍵であり、XLが出たら分割のサインと捉えること。詳細見積もりが必要になったら三点見積もりやストーリーポイントに移行すればよい。