ひとことで言うと#
SAFe(大規模アジャイルフレームワーク)のコアイベントで、ART(アジャイルリリーストレイン)に属する全チームが2日間で次の8〜12週間(PI)の計画を同期させる大規模計画セッション。チーム間の依存関係を可視化し、全員が同じ目標に向かう出発点を作る。
押さえておきたい用語#
- PI(Program Increment)
- SAFeにおける8〜12週間の計画・実行サイクル。PIプランニングはこのサイクルの開始イベントにあたる。
- ART(Agile Release Train)
- 同じ価値ストリームに属する5〜12チーム(50〜125名規模)で構成される大規模アジャイルの実行単位。
- プログラムボード
- チーム間の依存関係とマイルストーンを可視化する物理的な掲示板(またはデジタルボード)。赤い糸で依存の線を引く。
- 信頼度投票(Confidence Vote)
- PIプランニングの最後に全メンバーが「この計画を達成できる自信があるか」を1〜5のスコアで投票する儀式。平均3以上が合格ライン。
SAFe PIプランニングの全体像#
こんな悩みに効く#
- 50名以上の開発組織で四半期の計画を揃えられない
- チーム間の依存関係が見えず、スプリントがブロックされる
- 各チームがバラバラの優先順位で動いている
基本の使い方#
具体例#
従業員120名のECプラットフォーム企業。検索・商品・決済・配送・顧客管理・データ基盤・インフラの7チーム(計55名)でARTを運営。
四半期ごとの2日間PIプランニングで、次10週間の計画を同期。プログラムボードに可視化された依存関係は平均 22件/PI。
| PI | 依存関係数 | うちブロッカー | PI目標達成率 |
|---|---|---|---|
| PI 1 | 28件 | 8件 | 64% |
| PI 2 | 22件 | 4件 | 78% |
| PI 3 | 18件 | 2件 | 89% |
PI 1で依存管理に苦戦したが、Inspect & Adaptで「依存の早期解消ルール」を導入。PI 3では依存関係自体が減り、ブロッカーも 2件 に抑えられた。信頼度投票の平均スコアも 2.8→3.6 に上昇している。
従業員5,000名の地方銀行。デジタルバンキング推進部門(60名・8チーム)がSAFeを導入。COVID-19以降はフルリモートでPIプランニングを実施している。
Miro + Zoom の組み合わせで2日間を運営。RTEが事前にMiroテンプレートを準備し、各チームのブレイクアウトルームを設定。
リモート化で最も課題だったのは「プログラムボード上の依存関係の可視化」。対面なら赤い糸を貼るだけだが、リモートではMiro上の矢印が乱立して見づらくなった。対策として、依存関係をSpreadsheetに一覧化し、Miroのボードとは別で管理する運用に切り替えた。
リモートPIプランニングを5回実施した結果、対面時代と比較してPI目標達成率は 82%→79% と微減にとどまり、移動コスト(出張費 年間約400万円)は完全に削減された。
従業員800名のSIer。大手小売業の基幹システム刷新(80名体制・10チーム)にSAFeを適用。従来のウォーターフォール型では各チームの進捗が統合テスト段階まで見えず、手戻りが多発していた。
PIプランニング導入初回は「2日間も全員の手を止めるのか」と現場の反発があった。しかし実施後、プログラムボード上で 34件の依存関係 と 5件の未解決リスク が初めて可視化された。
特に効果が大きかったのは、信頼度投票で2名が「1」を投じた件。理由は「外部ベンダーのAPI仕様が確定しておらず、Sprint 3以降の作業ができない」。この懸念はウォーターフォール時代には統合テストまで気づかなかった問題だった。
即座にベンダーとの仕様確定を前倒しし、Sprint 2までにAPI仕様書を受領。最終的にプロジェクト全体の統合テスト不具合は前案件比 55%減 を達成した。
やりがちな失敗パターン#
| パターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| バックログの準備が不十分 | PIプランニング当日に「何を作るか」の議論から始まり、2日間で終わらない | PM/POが2〜3週間前からバックログを優先順位付きで準備する |
| 依存関係を放置する | プログラムボードに線を引くが解消策を合意しないまま終わる | 依存1件ごとに「いつまでに・誰が・何を」を具体的に決める |
| 信頼度投票を形骸化する | 「とりあえず3」と投票し、本音の懸念が出ない | 2以下を投じたメンバーの声を必ず全体で聞く時間を確保する |
| PIプランニングだけやってSAFeの他のイベントをやらない | System DemoやInspect & Adaptがなく、計画の検証と改善が回らない | PIプランニングはSAFeの入口。他のイベントとセットで運用する |
まとめ#
SAFe PIプランニングは、50名以上の開発組織が2日間で次の8〜12週間の計画を同期させるコアイベント。ビジョンの共有、チーム別の計画策定、依存関係の可視化と解消、信頼度投票による合意形成の4つが柱。2日間の投資は大きいが、チーム間の依存による手戻りと統合テスト段階での不具合を大幅に削減できる。