プロジェクト・トリアージマトリクス

英語名 Project Triage Matrix
読み方 プロジェクト トリアージ マトリクス
難易度
所要時間 30〜60分(トリアージ会議1回あたり)
提唱者 医療トリアージの概念をプロジェクト管理に応用
目次

ひとことで言うと
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医療現場の「トリアージ(傷病者の優先度選別)」をプロジェクト管理に応用し、複数の依頼やPJを緊急度・重要度・リソース可用性の3軸で素早く仕分ける意思決定フレームワーク。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
トリアージ(Triage)
フランス語の「選別する」に由来。限られたリソースで最大の成果を出すために対象の優先順位を迅速に判定する手法。
緊急度(Urgency)
対応を先延ばしにした場合のダメージが発生するまでの時間的余裕。余裕がないほど緊急度が高い。
戦略整合性(Strategic Alignment)
そのPJが組織の中長期戦略にどれだけ貢献するかを示す指標。重要度の中核要素にあたる。
キャパシティチェック
現時点で「実際に着手できるリソースがあるか」を確認する手続きを指す。

プロジェクト・トリアージマトリクスの全体像
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トリアージマトリクス:3軸でPJを4段階に仕分ける
PJ依頼・案件が到着緊急度 × 重要度 × リソースで判定トリアージ判定赤:即時対応高緊急 × 高重要リソースを最優先で確保他PJを止めてでも着手→ 24時間以内に着手黄:計画的対応低緊急 × 高重要計画を立てて着手する次のリソース空きで対応→ 1〜2週間以内に計画緑:待機高緊急 × 低重要急いでいるが戦略的に低い簡易対応 or 別の手段を検討→ 代替案を提示黒:見送り低緊急 × 低重要リソースを投入しない判断→ 明確に断る or 棚上げ── 「全部やる」は最悪の選択。仕分けが最良の選択 ──
トリアージ判定の進め方フロー
1
依頼を受け付ける
PJ依頼をインテークフォームで標準化して受付する
2
3軸で評価する
緊急度・重要度・リソース可用性を各3段階で評価
3
色を割り当てる
赤・黄・緑・黒の4段階で対応方針を決定する
依頼者にフィードバック
対応方針と理由を依頼者に伝え合意を得る

こんな悩みに効く
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  • 部門にPJ依頼が殺到し、全部引き受けて全部中途半端になる
  • 新しい依頼が来るたびに既存PJが後回しになる
  • 「緊急です」と言われると断れず、本当に重要なPJが進まない

基本の使い方
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インテークフォームで依頼を標準化する
PJ依頼をフォームで受け付ける。フォームには「目的」「期待される成果」「希望納期」「ビジネスインパクト」を記載してもらう。口頭の「ちょっとお願い」を排除し、すべての依頼を同じフォーマットで比較可能にする。
緊急度・重要度・リソースの3軸で評価する
緊急度(放置した場合のダメージ発生までの時間)、重要度(戦略への貢献度)、リソース可用性(今着手できる人がいるか)をそれぞれ高/中/低の3段階で評価。週次のトリアージ会議(30分)でPMOまたはマネージャーが判定する。
赤・黄・緑・黒の4段階で対応方針を決める
赤(即時対応)は他PJを止めてでも着手。黄(計画的対応)は次のリソース空きでスケジュールに組み込む。緑(待機)は簡易対応か代替案を検討。黒(見送り)は明確に断るか棚上げする。
依頼者にフィードバックし合意を得る
判定結果と理由を依頼者に伝える。特に黒(見送り)の場合は「なぜ対応しないか」を具体的に説明し、代替案(外注、簡易版、次四半期への延期)を提示する。合意した対応方針を記録に残す。

具体例
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例1:社内IT部門が月15件の依頼を週次トリアージで裁く

従業員400名のメーカー。社内IT部門(8名)に各部門からの依頼が月平均 15件 届くが、これまでは「先に言った者勝ち」で対応順が決まっていた。

週次30分のトリアージ会議を導入。Notionのインテークフォームで依頼を標準化し、3軸で評価して色を割り当てた。

月平均件数対応方針
2件即日着手セキュリティインシデント対応
5件翌月のスプリントに組み込み業務システムの機能追加
4件簡易対応 or SaaS導入提案部門別ダッシュボード作成
4件見送り(代替案提示)独自CRM構築(Salesforce導入を推奨)

導入3か月後、IT部門の「依頼対応にかかる平均リードタイム」が 23日→11日 に短縮。黒判定で見送ったPJの依頼者からも「理由が明確で納得できた」というフィードバックが 87% を占めた。

例2:コンサルファームのPMOが同時進行12案件を仕分ける

従業員150名のコンサルファーム。PMO(3名)が同時進行 12案件 を管理していたが、全案件に均等にリソースを配分した結果、どれも進捗が遅く顧客満足度が低下していた。

トリアージマトリクスを導入し、12案件を再評価。

  • 2件(売上インパクト大・納期逼迫)→ シニアコンサルを集中配置
  • 4件(重要だが納期に余裕)→ 四半期計画に組み込み
  • 3件(緊急だが戦略的重要度低)→ ジュニア主体で簡易対応
  • 3件(低重要度・低緊急度)→ 顧客と合意の上で一時停止

赤2件に集中した結果、これらの案件の顧客NPS(推奨スコア)が +15ポイント 改善。停止した3件も翌四半期に再開し、顧客からの信頼を損なわずに乗り切れた。

例3:学校法人が施設改修要望を優先順位づけする

生徒数1,200名の私立中高一貫校。教員・保護者・生徒からの施設改修要望が年間 40件 を超えるが、年間予算は 2,000万円 で全てには対応できない。

事務局が3軸のトリアージマトリクスを導入。緊急度は「安全性への影響」、重要度は「教育活動への貢献」、リソースは「今年度予算で対応可能か」で評価。

年間40件のうち、赤 6件(雨漏り修繕、防災設備更新など安全関連)に予算の 45% を配分。黄 10件 は優先度順にスケジュール化。黒 12件 は理由を明示して見送りとした。

従来は「声の大きい人の要望が通る」状態だったが、判定基準が透明化されたことで教員からの不満が 年間18件→3件 に減少している。

やりがちな失敗パターン
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パターン何が起きるか対策
全部「赤」にしてしまうトリアージの意味がなくなり、結局全部やろうとする赤は全体の20%以下に制限するルールを設ける
黒を伝えられない見送りの判断を先延ばしにし、依頼者が待ち続ける判定後48時間以内に結果をフィードバックするルールにする
トリアージ会議をスキップする「忙しいから」と会議を飛ばし、場当たり的な対応に戻る週次30分を固定し、議題がなければ5分で終了してよいルールにする
評価基準が属人的担当者によって判定が変わり、依頼者が不公平を感じる3軸の評価基準を数値化し、スコアリングシートで定量的に判定する

まとめ
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プロジェクト・トリアージマトリクスは、複数のPJ依頼を緊急度・重要度・リソースの3軸で仕分け、赤・黄・緑・黒の4段階で対応方針を決めるフレームワーク。最も重要なのは「黒(見送り)」を明確に宣言すること。全部やる選択は全部中途半端になる選択と同じ。仕分けることで、本当に重要なPJにリソースを集中できる。