ひとことで言うと#
医療現場の「トリアージ(傷病者の優先度選別)」をプロジェクト管理に応用し、複数の依頼やPJを緊急度・重要度・リソース可用性の3軸で素早く仕分ける意思決定フレームワーク。
押さえておきたい用語#
- トリアージ(Triage)
- フランス語の「選別する」に由来。限られたリソースで最大の成果を出すために対象の優先順位を迅速に判定する手法。
- 緊急度(Urgency)
- 対応を先延ばしにした場合のダメージが発生するまでの時間的余裕。余裕がないほど緊急度が高い。
- 戦略整合性(Strategic Alignment)
- そのPJが組織の中長期戦略にどれだけ貢献するかを示す指標。重要度の中核要素にあたる。
- キャパシティチェック
- 現時点で「実際に着手できるリソースがあるか」を確認する手続きを指す。
プロジェクト・トリアージマトリクスの全体像#
こんな悩みに効く#
- 部門にPJ依頼が殺到し、全部引き受けて全部中途半端になる
- 新しい依頼が来るたびに既存PJが後回しになる
- 「緊急です」と言われると断れず、本当に重要なPJが進まない
基本の使い方#
具体例#
従業員400名のメーカー。社内IT部門(8名)に各部門からの依頼が月平均 15件 届くが、これまでは「先に言った者勝ち」で対応順が決まっていた。
週次30分のトリアージ会議を導入。Notionのインテークフォームで依頼を標準化し、3軸で評価して色を割り当てた。
| 色 | 月平均件数 | 対応方針 | 例 |
|---|---|---|---|
| 赤 | 2件 | 即日着手 | セキュリティインシデント対応 |
| 黄 | 5件 | 翌月のスプリントに組み込み | 業務システムの機能追加 |
| 緑 | 4件 | 簡易対応 or SaaS導入提案 | 部門別ダッシュボード作成 |
| 黒 | 4件 | 見送り(代替案提示) | 独自CRM構築(Salesforce導入を推奨) |
導入3か月後、IT部門の「依頼対応にかかる平均リードタイム」が 23日→11日 に短縮。黒判定で見送ったPJの依頼者からも「理由が明確で納得できた」というフィードバックが 87% を占めた。
従業員150名のコンサルファーム。PMO(3名)が同時進行 12案件 を管理していたが、全案件に均等にリソースを配分した結果、どれも進捗が遅く顧客満足度が低下していた。
トリアージマトリクスを導入し、12案件を再評価。
- 赤 2件(売上インパクト大・納期逼迫)→ シニアコンサルを集中配置
- 黄 4件(重要だが納期に余裕)→ 四半期計画に組み込み
- 緑 3件(緊急だが戦略的重要度低)→ ジュニア主体で簡易対応
- 黒 3件(低重要度・低緊急度)→ 顧客と合意の上で一時停止
赤2件に集中した結果、これらの案件の顧客NPS(推奨スコア)が +15ポイント 改善。停止した3件も翌四半期に再開し、顧客からの信頼を損なわずに乗り切れた。
生徒数1,200名の私立中高一貫校。教員・保護者・生徒からの施設改修要望が年間 40件 を超えるが、年間予算は 2,000万円 で全てには対応できない。
事務局が3軸のトリアージマトリクスを導入。緊急度は「安全性への影響」、重要度は「教育活動への貢献」、リソースは「今年度予算で対応可能か」で評価。
年間40件のうち、赤 6件(雨漏り修繕、防災設備更新など安全関連)に予算の 45% を配分。黄 10件 は優先度順にスケジュール化。黒 12件 は理由を明示して見送りとした。
従来は「声の大きい人の要望が通る」状態だったが、判定基準が透明化されたことで教員からの不満が 年間18件→3件 に減少している。
やりがちな失敗パターン#
| パターン | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 全部「赤」にしてしまう | トリアージの意味がなくなり、結局全部やろうとする | 赤は全体の20%以下に制限するルールを設ける |
| 黒を伝えられない | 見送りの判断を先延ばしにし、依頼者が待ち続ける | 判定後48時間以内に結果をフィードバックするルールにする |
| トリアージ会議をスキップする | 「忙しいから」と会議を飛ばし、場当たり的な対応に戻る | 週次30分を固定し、議題がなければ5分で終了してよいルールにする |
| 評価基準が属人的 | 担当者によって判定が変わり、依頼者が不公平を感じる | 3軸の評価基準を数値化し、スコアリングシートで定量的に判定する |
まとめ#
プロジェクト・トリアージマトリクスは、複数のPJ依頼を緊急度・重要度・リソースの3軸で仕分け、赤・黄・緑・黒の4段階で対応方針を決めるフレームワーク。最も重要なのは「黒(見送り)」を明確に宣言すること。全部やる選択は全部中途半端になる選択と同じ。仕分けることで、本当に重要なPJにリソースを集中できる。