プロジェクト・インテークプロセス

英語名 Project Intake Process
読み方 プロジェクト インテーク プロセス
難易度
所要時間 1件あたり評価1〜2週間
提唱者 PMBOKのポートフォリオ管理・ITILのサービスリクエスト管理
目次

ひとことで言うと
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新しいプロジェクトの依頼を**「受付→評価→承認→着手」の標準プロセスで管理する**仕組み。「誰でも好きなときにPJ依頼を出せてしまう」状態を整理し、限られたリソースを最も価値の高いPJに集中させる。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
インテーク(Intake)
新規のプロジェクト依頼や提案を正式に受け付ける窓口・プロセスを指す。
ビジネスケース
プロジェクトの投資対効果(ROI)・目的・リスクを記載した提案書。インテーク評価の中核となる文書。
ポートフォリオ
組織が同時に実行するプロジェクト群の全体集合を指す。インテークはポートフォリオに新しいPJを追加するかどうかの判断プロセスである。
リソースキャパシティ
組織が投入できる人材・予算・設備などの上限。新PJの承認はキャパシティとの照合が前提になる。

プロジェクト・インテークプロセスの全体像
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インテークの4ステップとゲート
1. 受付インテークフォーム目的・スコープ概要期待効果・予算規模誰でも起票可能Gate2. 評価ビジネスケース精査ROI・リスク評価リソース影響分析PMO担当3. 承認承認/却下/保留優先順位の決定リソースの割り当て経営層/委員会4. 着手PM任命チーム編成キックオフ実施正式なPJ開始情報不足 → 差し戻し却下 or 次期検討へ評価基準の例戦略整合性経営方針との合致度ROI投資対効果の見込みリソース影響既存PJへの影響度緊急度遅延コスト・機会損失
インテークプロセスの運用フロー
1
フォームで受付
依頼者がインテークフォームに目的・規模・期待効果を記入
2
PMOが評価
戦略整合性・ROI・リソース影響を定量評価
3
委員会で承認
月次の審議会で承認・却下・保留を判定
PM任命・キックオフ
承認されたPJにPMを任命し正式にスタート

こんな悩みに効く
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  • 部門ごとに勝手にPJを立ち上げ、リソースが分散している
  • 「社長案件」が突然割り込んで、進行中のPJが止まる
  • どのPJ依頼が優先されるべきか、判断基準がない

基本の使い方
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インテークフォームを整備する

PJ依頼の入口を1つに統一する。フォームには以下を含める。

  • 依頼者・依頼日: 誰がいつ依頼したか
  • PJ名称・目的: 何を達成したいか(1〜2文)
  • スコープ概要: どこまでやるか(主要な成果物)
  • 期待効果: 数値化できるビジネス効果(売上○%増、コスト○万円削減)
  • 概算予算・期間: 大まかな規模感
  • 緊急度: なぜ今やる必要があるか

フォームはGoogleフォーム、JIRA、Notionなどチームの標準ツールに統合する。

評価基準に基づいてスコアリングする

PMOが受け付けた依頼を評価基準に沿ってスコアリングする。

評価軸配点評価の観点
戦略整合性30点経営方針・年度計画との合致度
ROI25点投資対効果の大きさ
リソース影響20点既存PJへの影響・人材の確保可能性
緊急度15点遅延による機会損失・リスク
実現可能性10点技術的・組織的な実行可能性

合計100点満点でスコアを出し、70点以上を承認候補50〜69点を保留49点以下を却下候補として審議に持ち込む。

月次の審議会で承認し着手に移る

月次のポートフォリオレビュー会議で、新規依頼の審議を行う。

  • PMOがスコアリング結果と推薦意見をプレゼン
  • 経営層がリソースキャパシティと照合し、承認/保留/却下を判定
  • 承認されたPJにはPMを任命し、キックオフの日程を設定
  • 却下・保留のPJには理由を添えて依頼者にフィードバック

具体例
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例1:IT企業がPJ乱立を抑制しリソース効率を改善する

状況: 従業員200名のIT企業。各部門がバラバラにPJを立ち上げ、同時進行PJが 28件 に膨張。エンジニアの 72% が2つ以上のPJを兼任し、どのPJも中途半端な状態。

インテークプロセスの導入

  • 全PJ依頼をインテークフォーム経由に一本化
  • PMOが月次で評価し、経営会議で承認(月最大3件に制限)
  • 既存の28件も再評価し、12件を中止・統合
指標導入前導入1年後
同時進行PJ数28件15件
PJ完了率(年間)45%78%
エンジニア兼任率72%35%
PJあたり平均リードタイム8か月5か月

「やらないことを決める」ことで、やるべきPJに集中できるようになった。

例2:製造業が「社長案件」の割り込みを制御する

状況: 従業員500名のメーカー。社長が出張先で他社の事例を見るたびに「うちもやろう」とPJを指示。年間 8件 の「社長案件」が割り込み、その都度進行中のPJが止まる。現場のモチベーションは低下の一途。

インテークプロセスで社長案件も標準化

  • 社長にもインテークフォームの記入を依頼(秘書がサポート)
  • 「社長案件でも評価プロセスは同じ」というルールを経営会議で合意
  • ただし社長案件には「緊急枠」を月1件分設け、通常プロセスと分離

社長案件は年 8件 → 4件 に半減。残りの4件は「フォームを書いてみたら、冷静に考えるとROIが低かった」と社長自身が判断して取り下げた。現場からは「やっと計画通りに仕事ができる」との声。

例3:スタートアップが少人数でも依頼管理を仕組み化する

状況: 20名のスタートアップ。営業・CS・経営陣からの「これ作って」が開発チームに直接飛び込み、週 3〜5件 の依頼が未整理のまま積み上がる。開発リーダーが「何から手をつければいいかわからない」状態。

軽量版インテークの導入

  • Notionに「依頼テンプレート」を作成(項目は「何を・なぜ・いつまでに・効果見込み」の4つだけ)
  • 毎週月曜に開発リーダー+PO+CEOの3名で15分のインテーク会議
  • 依頼をS/M/Lで分類し、Sは即着手、M/Lは月次で優先順位を決定

飛び込みの割り込みは 週3〜5件 → 週1件 に減少。開発チームの計画遂行率は 48% → 82% に改善。「依頼がちゃんと評価されるので、営業側も本当に必要なものだけ出すようになった」とCEOが評価。

やりがちな失敗パターン
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  1. フォームが重すぎて誰も出さなくなる — 初期段階では5項目以内に絞る。詳細はPMOが後からヒアリングすればよい
  2. 評価基準がないまま「声の大きい人」で決まる — スコアリング基準を明文化し、定量的に判断する。政治的な判断を減らすことがインテークの目的
  3. 承認されたPJのフォローがない — インテークは「着手まで」の管理。着手後のモニタリングは別の仕組み(ハートビート、ダッシュボード)に接続する
  4. 「緊急」を乱用する — 全ての依頼が「緊急」になると優先順位が機能しない。「緊急」の定義(例:1か月以内に着手しないと○○万円の損失)を明確にする

まとめ
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インテークプロセスは「やるべきPJを選び、やらないPJを決める」ための仕組みだ。依頼の窓口を一本化し、評価基準に基づいてスコアリングし、限られたリソースを最も価値の高いPJに集中させる。プロセスの重さはチーム規模に合わせて調整し、20名のスタートアップなら15分の週次会議で十分機能する。