プロジェクト健全性ダッシュボード

英語名 Project Health Dashboard
読み方 プロジェクト ヘルス ダッシュボード
難易度
所要時間 初回構築1〜3日、更新は週15分
提唱者 EVM(Earned Value Management)とプロジェクトKPIの可視化
目次

ひとことで言うと
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プロジェクトのスケジュール・コスト・品質・リスク・チームの状態を「赤・黄・緑」の信号で一画面に集約するダッシュボード。「このPJは今大丈夫なのか?」に30秒で答えられる状態を作る。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
RAGステータス(Red/Amber/Green)
プロジェクトの健全性を(危険)・黄(注意)・緑(順調)の3色で表す指標。信号機と同じ直感的な表現で、経営層でも一目で状況を把握できる。
EVM(Earned Value Management)
計画値(PV)・実績値(AC)・出来高(EV)の3指標で進捗とコストを定量評価する手法。
SPI(Schedule Performance Index)
SPI = EV / PV。1.0以上なら計画通り、1.0未満なら遅延を示す。
CPI(Cost Performance Index)
CPI = EV / AC。1.0以上なら予算内、1.0未満なら超過を意味する指標。

プロジェクト健全性ダッシュボードの全体像
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ダッシュボードの5つの健全性指標
Project Alpha ── 健全性ダッシュボード(2026年3月第3週)GスケジュールSPI = 1.02MS3完了済み / MS4は予定通り順調AコストCPI = 0.94外注費が予算比+6%注意が必要G品質バグ密度 0.3件/KLOC重大バグ: 0件順調Rリスクオープンリスク: 5件高リスク2件が対応中要エスカレーションGチーム稼働率 85%残業: 月平均12h良好今週のアクション1. 外注費の精査と交渉2. 高リスク2件の対応推進3. MS4の詳細計画レビューGreen: 計画通りAmber: 要注意(閾値の80〜100%)Red: 要対応(閾値超過)
ダッシュボード運用フロー
1
指標と閾値の定義
5指標のRAG判定基準を数値で定義する
2
ダッシュボード構築
ツールで自動集計 or テンプレートで手動更新
3
週次更新・レビュー
毎週データを更新し、週次会議で確認
アクション実行
赤・黄の指標に対してアクションを即座に起こす

こんな悩みに効く
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  • 「このプロジェクト、今どうなってるの?」と聞かれるたびに情報を集め直す
  • 経営層への月次報告を毎回ゼロから作っている
  • 問題が深刻化してから初めて気づく

基本の使い方
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5つの健全性指標とRAG閾値を定義する

ダッシュボードに載せる指標と、赤・黄・緑の判定基準を決める。

指標GreenAmberRed
スケジュール(SPI)≧0.950.85〜0.94<0.85
コスト(CPI)≧0.950.85〜0.94<0.85
品質(重大バグ数)0件1〜2件3件以上
リスク(高リスク件数)0件1〜2件3件以上
チーム(残業時間/月)<20h20〜40h>40h

閾値はプロジェクトの性質に応じて調整する。重要なのは「何が赤なのか」を全員が同じ基準で判断できること。

ダッシュボードを構築する

ツールの選択肢は規模に応じて選ぶ。

  • 小規模(〜10名): Notionテンプレート、Googleスプレッドシート
  • 中規模(10〜50名): JIRA Dashboard、Asana Portfolio
  • 大規模(50名超): Power BI、Tableau、MS Project Online

自動集計できる部分は自動化し、PMの手動更新は 週15分以内 に抑える。「ダッシュボードの更新に1時間かかる」なら設計が間違っている。

週次で更新しアクションにつなげる

毎週金曜にデータを更新し、週次レビューで確認する。

  • Green → 「引き続き監視」(アクション不要)
  • Amber → 「原因分析と対策案を次週までに準備」
  • Red → 「即座にアクションを起こす(エスカレーション含む)」

ダッシュボードは「見て終わり」ではなく「アクションにつなげる」ためのツール。赤や黄がついたまま放置しないルールを設ける。

具体例
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例1:SaaS開発チームがJIRAダッシュボードでスプリント健全性を可視化する

状況: 10名の開発チーム。スプリントレビューのたびにPMが手動でデータを集め、報告資料を 2時間 かけて作成。レビュー中に「バグの傾向は?」「ベロシティは安定してる?」と聞かれても即答できない。

JIRAダッシュボードの構築

  • スプリントバーンダウン、ベロシティチャート、バグ密度の3つを自動集計
  • RAGの閾値を設定(ベロシティが前スプリント比 -20%以上 でAmber)
  • リスクと課題はConfluenceの一覧をダッシュボードにリンク

報告資料の作成時間は 2時間 → 15分 に短縮。スプリントレビューで「ダッシュボードを見ればわかる」状態になり、議論は問題対応に集中できるようになった。

例2:製造業の大型PJでPMOが全PJの健全性を一覧管理する

状況: PMOが 12件 のPJを同時監視。各PMから月次で報告書が上がるが、フォーマットがバラバラで比較ができない。経営会議で「全体的にどうなの?」と聞かれても、各PJの報告書を読み上げるしかない。

PMO統合ダッシュボードの構築

  • 全12PJを1画面にRAGステータスで一覧表示
  • 各PJのスケジュール・予算・品質・リスクの4指標を統一フォーマットで集約
  • 赤が1つでもあるPJは自動でハイライト表示
指標導入前導入後
経営報告の準備時間2日2時間
問題PJの検知タイミング月次(月末)週次(金曜)
PJ間のリソース競合月2件(事後発覚)月0.5件(事前検知)

経営層が「ダッシュボードだけ見ればいい」状態になり、月次報告会議が 2時間 → 30分 に短縮。

例3:フリーランスがスプレッドシートで3案件を同時管理する

状況: フリーランスのマーケティングコンサルタント。3社の案件を同時進行しているが、各社の進捗管理がバラバラ(メモ帳・メール・Notion)。「どの案件が今ヤバいか」を直感でしか判断できない。

Google スプレッドシートで簡易ダッシュボード

  • 1シートに3案件×4指標(納期・予算・成果物・顧客満足)のRAGを表示
  • 各指標のセルに条件付き書式で自動色分け
  • 毎週月曜朝に10分で更新

3か月運用した結果、「黄色になった時点で先手を打てるようになった」と実感。納期遅延は 3件/四半期 → 0件 に。「自分1人のためでもダッシュボードは有効。頭の中の漠然とした不安が、色で可視化されると冷静に対処できる」とのこと。

やりがちな失敗パターン
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  1. 指標を増やしすぎる — 10個も15個も指標があると「どれが重要かわからない」状態になる。5〜7指標が上限
  2. RAGの基準が属人的 — PMの感覚で「なんとなく黄色」だと基準がブレる。数値の閾値で機械的に判定する
  3. ダッシュボードを作って満足する — 見るだけでは何も変わらない。赤・黄に対して「誰が・いつまでに・何をする」のアクションをセットにする
  4. 更新が止まる — 更新に30分以上かかるダッシュボードは続かない。自動集計を最大限活用し、手動更新は週15分以内に設計する

まとめ
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プロジェクト健全性ダッシュボードは「今、大丈夫なのか」を30秒で判断するためのツールだ。5つの指標にRAGの閾値を設定し、週次で更新してアクションにつなげることで、問題を深刻化する前にキャッチできる。ツールの豪華さよりも「継続的に更新される」ことが重要で、スプレッドシート1枚でも十分に機能する。