クリティカルパス法

英語名 Critical Path Method (CPM)
読み方 クリティカル パス メソッド
難易度
所要時間 数時間〜1日
提唱者 デュポン社(1957年)
目次

ひとことで言うと
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プロジェクト内の全タスクの依存関係と所要時間を分析し、「これが遅れるとプロジェクト全体が遅れる」という最長経路(クリティカルパス)を特定するスケジュール管理手法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
クリティカルパス(Critical Path)
プロジェクト内の全経路のうち所要時間が最も長い経路のこと。この経路上のタスクが1日遅れると、プロジェクト全体が1日遅れる。
フロート(Float / Slack)
あるタスクが遅延してもプロジェクト全体に影響しない余裕時間を指す。クリティカルパス上のタスクはフロートがゼロ。
クラッシング(Crashing)
クリティカルパスを短縮するために追加リソースを投入してタスク期間を圧縮する手法のこと。コスト増と引き換えにスケジュールを短縮する。
ファストトラッキング(Fast Tracking)
本来直列で実施するタスクを一部並行して進める手法のこと。リスクは増えるがスケジュールを短縮できる。
ネットワーク図(Network Diagram)
タスクをノード、依存関係を矢印で表現したプロジェクトの工程図を指す。全ルートを可視化してクリティカルパスを特定する。

クリティカルパス法の全体像
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クリティカルパス:最長経路上のタスクが遅延の分岐点
ネットワーク図とクリティカルパス開始タスクA6週間タスクC4週間タスクE2週間タスクB4週間タスクD1週間完了クリティカルパス(12週・フロート0)非クリティカルパス(5週・フロート7週)
クリティカルパス法の進め方フロー
1
タスク・依存関係
全タスクの所要時間と前後関係を整理
2
ネットワーク図
全ルートを可視化する
3
パス特定
フロートゼロの最長経路を発見
重点管理・最適化
クラッシングやファストトラッキングで短縮

こんな悩みに効く
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  • どのタスクが遅れるとプロジェクト全体に影響するかわからない
  • スケジュールにバッファをどこに持たせるべきか判断できない
  • プロジェクトの最短完了日を正確に見積もりたい

基本の使い方
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ステップ1: タスクと依存関係を洗い出す

すべてのタスクをリストアップし、前後関係を整理する

  • WBSをもとに全タスクを列挙する
  • 各タスクの所要時間を見積もる
  • タスク間の依存関係(Aが終わらないとBが始められない、等)を定義する

ポイント: 依存関係は「FS(終了→開始)」が基本。依存がないタスクは並行して進められる

ステップ2: ネットワーク図を描く

タスクをノードにし、依存関係を矢印でつないで図を作る

  • 開始から終了までの全ルート(パス)を可視化する
  • 並行して進むルートが複数ある場合、すべて描く
  • 各ノードに「最早開始日」「最早終了日」「最遅開始日」「最遅終了日」を記入する

ポイント: 手書きでもツールでもOK。大事なのは全ルートを漏れなく可視化すること。

ステップ3: クリティカルパスを特定する

最も所要時間が長いルートがクリティカルパス

  • 前方計算(最早開始・終了日)と後方計算(最遅開始・終了日)を行う
  • フロート(余裕時間)がゼロのタスクを結んだ線がクリティカルパス
  • クリティカルパスの合計時間 = プロジェクトの最短所要期間

ポイント: クリティカルパスは1本とは限らない。複数ある場合はすべて管理対象。

ステップ4: 集中管理と最適化を行う

クリティカルパス上のタスクを重点管理し、必要に応じて短縮する

  • クリティカルパス上のタスクは遅延ゼロを目指して重点監視する
  • 「クラッシング」(リソース追加で短縮)や「ファストトラッキング」(並行化)で短縮を検討
  • クリティカルパスが変わっていないか、定期的に再計算する

ポイント: タスクの短縮によってクリティカルパスが別のルートに移動することがある。常に最新を把握する。

具体例
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例1:オフィス移転プロジェクトでクリティカルパスを特定する

状況: 従業員200名の広告代理店。オフィス移転プロジェクト(目標12週間以内)。

タスクと依存関係:

タスク所要時間先行タスク
A: 物件契約2週間なし
B: 内装設計3週間A
C: 内装工事6週間B
D: 家具搬入1週間C
E: IT設備設置2週間D
F: 引越し1週間E
G: 退去手続き4週間A
H: 届出1週間G

クリティカルパス特定:

  • ルート1: A→B→C→D→E→F = 2+3+6+1+2+1 = 15週間(クリティカルパス)
  • ルート2: A→G→H = 2+4+1 = 7週間(フロート8週間)

最適化: 内装工事(6週間)が最長。工事業者を2チームにして一部並行化し5週間に短縮。さらにIT設備設置を家具搬入と並行して進めることで、最終的に12週間に圧縮。

クリティカルパス分析なしでは「退去手続きが遅れそう」と間違った場所に注力していたが、分析により内装工事こそが最大のボトルネックと判明。2チーム並行化により15週→12週への3週間短縮を実現。

例2:製造業の新製品開発でクリティカルパスを管理する

状況: 従業員350名の電子機器メーカー。新製品の発売を6ヶ月後の展示会に間に合わせる必要がある。全30タスクのプロジェクト。

クリティカルパス(7タスク・合計26週間): 要件定義(3週)→回路設計(5週)→基板試作(4週)→機能テスト(3週)→量産設計(4週)→金型製作(5週)→量産開始(2週)

問題検知: 第8週に回路設計が1週間遅延。このままでは展示会に1週間間に合わない。

対策:

  1. 基板試作にクラッシング: 外部パートナーに並行発注して4週→3週に短縮(追加費用80万円)
  2. 量産設計とファストトラッキング: 基板試作の結果を待たず、暫定設計で並行開始

結果: 1週間の遅延を吸収し、26週間のスケジュールを維持。追加費用80万円で展示会出展(期待売上2,000万円)を確保。

この取り組みが示すように、クリティカルパスを常に監視していたからこそ、1週間の遅延をDay 1で検知し、即座に対策を打てた。80万円の追加投資で2,000万円の機会損失を回避したことになる。

例3:地域イベントの実行委員会がクリティカルパスで段取りを組む

状況: 人口5万人の地方都市の商工会。地域の秋祭り(来場者目標3,000人)の準備プロジェクト。実行委員10名(全員本業あり)で4ヶ月前から準備開始。昨年は準備の遅れで出店者募集が間に合わず、来場者が目標の60%にとどまった。

全タスクの洗い出し(15タスク)とクリティカルパス:

  • クリティカルパス: 企画決定(2週)→出店者募集(4週)→出店者確定・配置(2週)→会場レイアウト(2週)→設営(1週)→当日運営 = 計11週
  • 非クリティカル: 広報制作(3週・フロート5週)、スポンサー交渉(4週・フロート3週)

昨年の失敗分析: 広報制作(非クリティカル)に注力して出店者募集(クリティカル)が後回しになっていた。

今年の対応:

  • 出店者募集を最優先で着手。募集開始を2週間前倒し
  • 広報はフロートがあるため後からでも間に合うと明示
  • 週次で進捗を確認し、クリティカルパスの遅延を即検知
指標昨年今年
出店者数18店32店
来場者数1,800人3,400人
スポンサー収入120万円200万円

ボランティア組織でもクリティカルパスの考え方は使える。「何を先にやるべきか」の優先順位が明確になり、限られた人員と時間を正しい場所に集中できた。

やりがちな失敗パターン
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  1. 依存関係の定義が甘い — 「なんとなくこの順番」で依存をつけると、実は並行できるタスクを直列にしてしまい、無駄に期間が延びる。本当に依存があるか1つずつ確認する
  2. 一度算出して放置する — プロジェクト中に所要時間や依存関係は変わる。定期的にクリティカルパスを再計算しないと、実態とズレる
  3. クリティカルパス以外を軽視する — フロートが少ないタスクも遅延すればクリティカルになる。準クリティカルなパスも注視しておく
  4. クラッシングのコストを無視する — リソース追加で短縮できても、コスト増がROIに見合わない場合がある。短縮効果とコストのバランスを必ず評価する

まとめ
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クリティカルパス法は、プロジェクトの「遅れが許されないタスクの連鎖」を特定するスケジュール管理の基本手法。全体の最短所要期間がわかり、どこにリソースを集中すべきかが明確になる。ガントチャートやWBSと組み合わせて使うことで、スケジュール管理の精度が格段に上がる。