クリティカルチェーン法

英語名 Critical Chain
読み方 クリティカル チェーン
難易度
所要時間 計画フェーズで1〜2日 / 実行中は週次モニタリング
提唱者 エリヤフ・ゴールドラット『クリティカルチェーン』(1997年)/ TOC理論
目次

ひとことで言うと
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個々のタスクに埋め込まれた安全余裕(バッファ)を取り除き、プロジェクト全体で共有するバッファに集約することで、リソース競合を考慮しながら全体工期を短縮するスケジュール管理手法。

押さえておきたい用語
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押さえておきたい用語
クリティカルチェーン
リソースの競合を考慮した最長の依存関係パス。従来のクリティカルパスがタスク間の論理的依存だけを見るのに対し、同一人物が複数タスクを担当する制約も含める。
プロジェクトバッファ(PB)
クリティカルチェーンの末尾に配置する全体共有のバッファ。個々のタスクから取り除いた安全余裕をここに集約する。
フィーディングバッファ(FB)
クリティカルチェーンに合流する非クリティカルパスの末尾に置くバッファ。合流遅れがクリティカルチェーンに波及するのを防ぐ役割を持つ。
学生症候群
締め切りに余裕があると着手を先延ばしにする心理傾向。個別タスクにバッファがあると発生しやすく、クリティカルチェーン法はこれを構造的に排除する。

クリティカルチェーン法の全体像
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クリティカルチェーン法:個別バッファを集約しプロジェクト全体で管理する
従来方式:各タスクにバッファが隠れているA: 10日+4B: 12日+5C: 8日+3合計 42日D: 7日+2↓ バッファを個別タスクから剥がして集約 ↓クリティカルチェーン方式:バッファを末尾に集約A: 10日B: 12日C: 8日PB: 6日合計 36日D: 7日FB隠れバッファ12日 → PB 6日に集約 →6日短縮
クリティカルチェーン法の導入フロー
1
ネットワーク図作成
タスクの依存関係とリソース割当を明確にする
2
チェーン特定
リソース競合を含む最長パスをクリティカルチェーンとする
3
バッファ集約
個別タスクの安全余裕を取り除きPBとFBに再配置する
バッファ消費監視
PBの消費率を毎週モニタリングし遅延を早期検知する

こんな悩みに効く
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  • 各メンバーが見積もりにバッファを積むためプロジェクト全体が長くなる
  • 余裕があるはずなのにいつもギリギリか遅延する
  • リソースの取り合いでスケジュールが崩れる
  • どのタスクの遅れがプロジェクト全体に影響するかわからない

基本の使い方
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タスクのネットワーク図を作成する
WBSからタスクを洗い出し、依存関係を矢印で結ぶ。このとき各タスクの担当者(リソース)も明記する。同一リソースが複数タスクを担当する箇所がリソース競合ポイントになる。
リソース競合を解消しクリティカルチェーンを特定する
同一リソースが同時期に複数タスクを担当している箇所を見つけ、タスクの順序を調整して競合を解消する。その上で最長パスを特定し、これをクリティカルチェーンとする。
各タスクから安全余裕を取り除く
各タスクの見積もりを「50%の確率で完了できる積極的な見積もり」に短縮する。たとえば「10日」と見積もったタスクは「7日」にする。取り除いた余裕は次のステップでバッファに変換する。
プロジェクトバッファとフィーディングバッファを配置する
クリティカルチェーン末尾にプロジェクトバッファ(取り除いた余裕の合計の約50%)を配置。非クリティカルパスがチェーンに合流する手前にフィーディングバッファを配置する。
バッファ消費率を週次で監視する
毎週、プロジェクトバッファの消費率を確認する。消費が進捗に対して過大なら(例:進捗30%でバッファ50%消費)対策を打ち、許容範囲なら継続。信号灯(緑/黄/赤)で可視化するのが一般的。

具体例
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例1:ITシステム開発の納期を従来計画から3週間短縮する

従業員300名のSIerが、6か月予定の基幹システム刷新プロジェクトにクリティカルチェーン法を適用。

従来の計画では各タスクに安全余裕が埋め込まれ、合計工期は 26週 だった。タスクを50%見積もりに短縮し、取り除いた余裕(合計8週分)のうち4週をプロジェクトバッファ、1週をフィーディングバッファに集約。

項目従来計画CC計画
クリティカルパス工期26週18週 + PB 4週 + FB 1週 = 23週
実績21週で完了(PBを2週残して納品)
短縮効果3週間前倒し

バッファ消費率の週次モニタリングにより、設計フェーズで黄色信号が出た段階で追加レビュアーを投入し、大きな遅延を未然に防いだ。

例2:建設プロジェクトで工期遵守率を60%→90%に改善する

中堅ゼネコン(従業員500名)のマンション建設部門。過去3年間で工期遵守率が 60% にとどまっていた。各協力会社が見積もりに余裕を積み、それでも遅れるパターンが常態化していた。

試行として1棟のプロジェクトにクリティカルチェーン法を導入。各工程を「積極的な見積もり+共有バッファ」に組み替え、バッファ消費率を週次の現場会議で共有した。

結果、試行プロジェクトは計画工期 14か月 に対し 13.5か月 で竣工。翌年から全新規プロジェクトに展開し、部門全体の工期遵守率が 60%→90% に改善した。

例3:製薬企業の新薬開発でリソース競合を解消する

大手製薬会社の研究開発部門。複数の新薬候補を並行開発しているが、分析チーム(6名)がボトルネックとなり、プロジェクト間でリソースの取り合いが発生していた。

3つの開発プロジェクトを統合的にクリティカルチェーンで管理し、分析チームの稼働を時系列で最適化。プロジェクトAの分析が終わってからBの分析に着手する順序を明確にし、フィーディングバッファで合流遅延を吸収する設計にした。

3プロジェクトの平均開発期間は従来 36か月 から 31か月 に短縮。分析チームのマルチタスクが解消され、品質面でも分析エラーが前年比 40%減少 した。

やりがちな失敗パターン
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  1. タスク見積もりの短縮にメンバーが抵抗する ─ 「バッファはプロジェクト全体で守る」という仕組みを説明し、個人が責められない文化をまず作る
  2. バッファ消費率を監視しない ─ バッファを置いただけでは効果は出ない。週次のモニタリングと信号灯による可視化がセット
  3. リソース競合を無視してクリティカルパスだけ見る ─ 同一人物の担当が重なる箇所を見落とすと、計画通りに進まない
  4. プロジェクトバッファを「予備日」として使い切る ─ バッファは遅延吸収のための保険。個別タスクの「もう少し作り込みたい」に消費させない

まとめ
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クリティカルチェーン法は、各タスクに隠れた安全余裕を取り除き、プロジェクト全体で共有するバッファに集約することで工期を短縮する手法。リソース競合を考慮した最長パスをクリティカルチェーンとして特定し、末尾にプロジェクトバッファを配置する。導入の効果を最大化するには、バッファ消費率の週次モニタリングと、個人を責めない文化づくりが不可欠。